保証金が返ってくる時期と額
| 中身 | 返ってくる時期 | 差し引き |
|---|
| 担保(敷金と同じ) | 退去して物件を返したあと | 未払いの賃料など、償却の分 |
| 建設協力金 | 契約で決めた時期(分けて返ることもある) | 契約による |
担保として預けた保証金は、明け渡したあと何か月以内に返すかを契約書で決めていることがあります。
返ってくる額の計算の例
月額賃料50万円、保証金10か月分(500万円)、償却2か月分の店舗を退去する例です。原状回復の工事に150万円かかり、未払いの賃料はないとします。
| 項目 | 金額 |
|---|
| 預けた保証金 | 500万円 |
| 償却(2か月分) | −100万円 |
| 原状回復の費用 | −150万円 |
| 返ってくる額 | 250万円 |
金額は計算のための例です。原状回復の費用を保証金から差し引くか、借主が工事の代金を直接払うかは、契約によって分かれます。
居抜きで退去するとき
居抜きでは、内装や設備を次の借主に買い取ってもらう(造作譲渡)ことで、原状回復の工事を減らせる場合があります。造作譲渡は前の借主と次の借主の取引で、保証金の精算は貸主との取引です。2つは別に進むため、貸主の承諾と、保証金からの差し引きの範囲をそれぞれ確かめます。詳しくは「造作譲渡とは」で説明しています。
賃借権ごと譲り受けて入るとき
前の借主から賃借権そのものを譲り受けて店舗に入る場合、貸主は、借主が適法に賃借権を譲り渡したときに、前の借主に敷金を返さなければなりません(民法第622条の2第1項第2号)。前の借主が預けていた保証金が、そのまま新しい借主の保証金になるわけではないので、新しい借主が預ける額は、貸主との契約で確かめます。
返ってくるのが遅れたとき
契約で決めた返還の期限を過ぎても返ってこないときは、まず差し引きの明細と、返す予定の日を書面で求めます。明細に納得できない項目があれば、原状回復の見積もりや入居時の記録と照らして、根拠を確かめます。対処の進め方は「敷金が返ってこない・少ないときの対処」で説明しています。
ビルが売られたとき
貸主の地位が新しい所有者に移ったときは、敷金を返す義務も新しい所有者が引き継ぎます(民法第605条の2第4項)。担保として預けた保証金は、民法上の敷金なので、この定めのとおりです。建設協力金として貸した保証金は、契約の中身によって扱いが分かれることがあるため、契約書と、売買のときの貸主からの通知を確かめます。貸主が倒産したときは、預けた保証金が全額は返ってこないことがあります。保証金は貸主に預けたお金なので、額が大きいほど、貸主の信用も確かめておきたい点です。詳しくは「オーナーチェンジとは」と「オーナーが倒産・ビル売却したら敷金はどうなる?」で説明しています。
帳簿での記録
| 中身 | 借りる側の記録 | 根拠 |
|---|
| 担保の保証金 | 差入保証金などの資産。預けた額で記録(現在価値も選べる) | 適用指針第33号第33項 |
| 償却の部分 | 新しいリース会計基準では使用権資産に含める | 同第34項 |
| 建設協力金 | 返済期日までのキャッシュ・フローを割り引いた現在価値で記録 | 同第29項 |
建設協力金は、預けた額と現在価値の差を、返済までの期間にわたって毎期一定の方法で受取利息として計上します(適用指針第33号第29項)。
税務では、返ってこない償却の部分のうち、支出の効果が1年以上に及ぶものは、資産を賃借するために支出する権利金その他の費用として繰延資産にあたります(法人税法施行令第14条第1項第6号ロ)。帳簿の扱いは「差入保証金とは」、仕訳と償却の期間は「敷金の会計処理」で説明しています。
貸主の帳簿での保証金
貸主から見ると、預かった保証金は、退去のときに返す義務のあるお金です。貸主の帳簿では、預り保証金や預り敷金などの負債として記録し、償却で返さないことが決まった部分は収益に振り替えます。貸主側の勘定科目と仕訳は「預り保証金・預り敷金の勘定科目」で説明しています。
保証金と保証(連帯保証人・保証会社)
賃料などの支払いを確かにする方法は、保証金のほかに「保証」があります。保証人は、借主が支払わないときに代わりに払う責任を負い(民法第446条第1項)、保証の契約は書面でしなければ効力を生じません(同条第2項)。賃貸借の連帯保証人が個人の場合は、保証する上限の額(極度額)を決めなければ、保証の契約は効力を生じません(第465条の2第1項・第2項)。保証金を保証に置き換えて、預ける額を減らす考え方は、次の節で紹介します。
保証金の負担を減らす方法
募集条件を比べて交渉する
募集条件を並べて比べ、保証金の月数や償却の条件、礼金の有無を交渉の材料にします。月数が同じでも、償却の有無で返ってくる額は変わります。
新しく借りる店舗の保証金を減らす
当社の「敷金半額くん」は、新しく借りるオフィスや店舗の敷金(保証金)を、半額から最大0円まで減らすサービスです。減らした分の代わりに、当社が貸主に保証を提供します。
預けている保証金を、入居したまま取り戻す
いま入居している店舗に預けている保証金は、当社の「敷金返還くん」で、半額から最大全額を入居したまま取り戻せます。返す保証金の代わりに当社が貸主に保証を提供するため、借入れではなく、返済や利息はありません。
どちらのサービスも、利用には当社の審査と貸主の承諾が必要で、当社への保証料がかかります。
保証金を比べるときの注意
- 月数だけで比べない:同じ10か月分でも、償却2か月分があれば、返ってくるのは8か月分
- 金額に直す:月数に賃料を掛けて、預ける額で比べる。店舗の集計では中央値で約447万円
- 建設協力金型は返り方も比べる:返済が始まる時期、期間、回数。返ってくるまでの期間が長いほど、手元の資金に響く
- 追加の預け入れの定め:賃料が上がったときに保証金も増える契約か
償却の有無で比べる例
月額賃料50万円の2つの店舗で、保証金と償却の条件が違う例です。原状回復の費用は、どちらも同じとして除いています。
| 項目 | 店舗A | 店舗B |
|---|
| 保証金 | 10か月分(500万円) | 6か月分(300万円) |
| 償却 | なし | 2か月分(100万円) |
| 預けるお金 | 500万円 | 300万円 |
| 返ってこないお金 | 0円 | 100万円 |
店舗Bは預ける額が200万円少ない一方で、100万円は返ってきません。入居のときの資金を抑えたいのか、退去のときに返ってくる額を大きくしたいのかで、選び方が変わります(金額は計算のための例です)。
契約の前に確かめること
- 保証金の中身:賃料などの担保か、建設協力金か。契約書でどう書かれているか
- 償却:あるか、何か月分か、割合か。入居年数で変わるか
- 返ってくる時期と方法:明け渡しのあと何か月以内か。建設協力金なら、分けて返る時期と回数
- 原状回復の範囲:どこまで元に戻すか。居抜きで退去できるか
- 追加の預け入れ:賃料が上がったときに、保証金を追加で預ける定めがあるか
- 貸主が変わったとき:建物が売られたときに、保証金を返す義務が新しい貸主に移るか
よくある質問
保証金は返ってきますか?
賃料などの担保として預けた保証金は、退去して物件を返したあと、未払いの賃料などと償却の分を差し引いて返ってきます(民法第622条の2第1項)。建設協力金として貸した保証金は、契約で決めた時期と方法で返ってきます。
敷金と保証金は、どちらが高いですか?
名前で金額が決まるわけではありません。何か月分を預けるかは物件と契約によります。当社の掲載データでは、用途に店舗を含む区画の中央値は11か月分でした(28区画・参考値)。
保証金で最後の月の賃料を払えますか?
借主から「保証金を賃料にあててほしい」と求めることはできません(民法第622条の2第2項)。最後の月の賃料も、ふつうどおり払います。
保証金の月数は交渉できますか?
募集の条件は物件と貸主によって違います。比べた条件をもとに、保証金の月数や償却の条件を交渉します。応じるかどうかは貸主によります。
保証金は経費になりますか?
返ってくる保証金は経費にはならず、資産として記録します。返ってこない償却の部分は、支出の効果が1年以上に及ぶものは、税務では繰延資産として扱います(法人税法施行令第14条第1項第6号ロ)。
保証金の償却に消費税はかかりますか?
返ってこない償却の部分と、返ってくる部分で扱いが分かれます。国税庁の通達にもとづく扱いを「敷金の会計処理」の消費税の節で説明しています。
まとめ
- 民法は名前にかかわらず、賃料などの担保として預けるお金を敷金と定めている。保証金という名前でも、中身が担保なら敷金と同じ
- 建設協力金のように、貸主に貸す性格の保証金もある。返り方と帳簿の扱いが違う
- 用途に店舗を含む区画の保証金の中央値は11か月分(28区画・参考値)。同じくらいの広さのオフィスより5か月分多い
- 償却の条件と原状回復の範囲は契約で決まる。退去前に契約書で確かめる
- 新しく借りる店舗の保証金を減らす方法と、預けている保証金を入居したまま取り戻す方法がある
出典:民法第446条・第465条の2・第605条の2・第621条・第622条の2、借地借家法第38条、企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」第29項・第33項・第34項、法人税法施行令第14条、Growth Office 掲載データ(東京都で募集中・公開中の区画。2026年10月1日時点。月数・償却・賃料は、それぞれの欄が埋まっている区画のみ)。