敷金・保証金

建設協力金とは|仕組み・返還・会計処理

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建設協力金とは|仕組み・返還・会計処理

店舗や倉庫を出したい土地があるものの、地主に建物を建てる資金がない。そんなときに使われるのが建設協力金です。借りる側の会社が建物の建設資金を地主に預け、地主はそのお金で建物を建てて、預けた会社に貸します。預けたお金は、長い期間をかけて返してもらいます。

建設協力金は、入居のときに預けるお金という点では敷金や保証金と似ていますが、目的も、返ってくる時期も、会計の扱いも違います。建物の建設資金にあてるため額が大きくなりやすく、地主の資金繰りが悪化したり、建物が売却されたりしたときに、預けたお金をどう守るかも考えておく必要があります。

この記事では、建設協力金の仕組みと典型的な形、敷金・保証金との違い、返還の流れ、借主が気をつけたいリスク、借主の会計処理(新しいリース会計基準を含む)、契約前に確かめることを整理します。

建設協力金とは

建物を建てる資金を、借りる側が預ける

建設協力金とは、地主が賃貸用の建物を建てるときに、その建物を借りる予定の会社(テナント)が建設資金として地主に預けるお金です。地主はこのお金を使って建物を建て、完成した建物を預けた会社に貸します。預けたお金は、賃貸借の期間中に、契約で決めた方法で返してもらいます。

企業会計基準委員会の「リースに関する会計基準の適用指針」は、建設協力金を「建物建設時に消費寄託する建物等の賃貸に係る預託保証金」で、「契約に定めた期日に預り企業である貸手が現金を返還し差入企業である借手がこれを受け取る契約」であるため、金融商品にあたると説明しています(BC60項)。

典型的な形は、10年据え置いて10年で返す

同じ適用指針は、建設協力金の典型例として「当初無利息であり10年経過すると低利の金利が付き、その後10年間にわたり現金で返済されるもの」を挙げています(BC60項)。最初の10年間は返済がなく、11年目から10年かけて返してもらう、という形です。

返し方としては、借主が毎月払う賃料と、地主が返す建設協力金の返済額とを相殺する形が一般的とされ、この方法は「リースバック方式」とも呼ばれます。たとえば本来の月額賃料が150万円で、毎月約83万円ずつ建設協力金を返してもらう契約なら、その期間に借主が実際に払う賃料は約67万円になります。

建設協力金の仕組み。1 テナントが地主に建設協力金を預ける。2 地主がそのお金で建物を建てる。3 地主が完成した建物をテナントに貸す。4 賃料と返済額を相殺するなどの方法で、建設協力金を返す。テナントが土地や建物に抵当権を設定して、返還を確保することもある

地主と借主、それぞれの事情

地主にとっては、金融機関から借り入れなくても、建物を建てる資金を低い金利や無利息で用意でき、建てた時点で借り手が決まっているという面があります。借主にとっては、出店したい場所に、自社の業態に合わせた建物を用意してもらい、長く使えるという面があります。その代わり、借主は大きな額を長い期間、地主に預けたままにすることになります。

敷金・保証金との違い

建設協力金と、入居のときに預ける敷金・保証金の違いは、次のとおりです。

項目敷金・保証金建設協力金
目的未払いの賃料などを担保する建物の建設資金にあてる
返ってくる時期賃貸借が終わり、明け渡したあと契約で決めた期日(据置のあと分割など)
返し方未払いの債務を差し引いた残りを一括賃料との相殺や分割返済など、契約で決める
利息契約による当初無利息で、一定期間後に低利が付く形が典型例
額の目安賃料の数か月分から十数か月分建物の建設費に見合う額
民法の定め第622条の2(敷金の返還)契約の定めによる

民法は、敷金を「賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定め、名目は問わないとしています(第622条の2)。建設協力金は、建物の建設資金にあてることを目的とするお金で、この敷金とは目的が違います。そのため、いつ、どう返すかは、契約の定めが中心になります。

建設協力金とは別に、未払いの賃料などを担保するための敷金を預ける契約もあります。その場合、敷金の部分には敷金のルールが当てはまります。

返還の流れ

20年の賃貸借で、建設協力金1億円を預け、最初の10年は据え置き、11年目から10年かけて毎年1,000万円ずつ返してもらう例で、流れを見てみます。

建設協力金の返還の流れの例。1億円を預け、1年目から10年目までは据置で返済なし。11年目から20年目まで毎年1,000万円ずつ、賃料との相殺などで返ってくる。預けたままの残高は10年目まで1億円、20年目に0円になる

この例では、10年目まで1億円がまるごと地主のもとにあり、全額が戻るのは20年後です。預けたお金を事業に使えない期間が長いことが、建設協力金の最も大きな負担です。

無利息で預ける負担を数字で見る

この例で、各年の初めに預けたままになっている額を20年間で平均すると、約7,750万円です。20年間、平均して7,750万円を事業に使えない状態が続くことになります。

無利息で預けることの負担は、お金の時間の価値で考えるとわかりやすくなります。仮に年1.5%で運用や返済に回せたお金だとすると、20年かけて返ってくる1億円の今の価値(現在価値)は約7,946万円で、差の約2,054万円が、無利息で預けることの実質的な負担にあたります。後で説明する新しいリース会計基準の処理は、この負担を会計の数字に表すものです。

途中で退去するとき

賃貸借を途中で解約した場合に、まだ返してもらっていない建設協力金をどう扱うかは、契約によります。残りを一括で返してもらえるのか、賃料との相殺ができなくなった分をどう精算するのか、一部を放棄する定めになっていないかは、契約する前に必ず確かめます。店舗の業績が振るわず撤退したいときに、預けたお金の多くが戻らない契約になっていると、撤退の判断そのものが難しくなります。

借主が気をつけたいリスク

地主の資金繰りが悪化する

建設協力金は、地主にとっては返さなければならないお金です。地主の資金繰りが悪化したり、倒産したりすると、予定どおりに返してもらえないおそれがあります。適用指針も、貸手の支払能力から回収できないと見込まれる額がある場合は、貸倒引当金を設定するとしています(第36項)。

返還を確保する方法として、借主が土地や建物に抵当権を設定することがあります。適用指針は、借主が土地建物に抵当権を設定している場合、会計上の割引に使う利子率は原則としてリスク・フリーの利子率を使うとしています(第30項)。抵当権は、ほかの債権者より先に弁済を受けるための手段で、設定するかどうか、どの順位になるかは契約する前に決めておきます。

建物が売却される

地主が建物を売却した場合、敷金を返す義務は、原則として新しい所有者に引き継がれると民法で定められています(第605条の2第4項)。一方、この条文が対象にしているのは「敷金」の返還です。建設協力金を返す義務が新しい所有者に引き継がれるかは、そのお金の性質や契約の内容によって変わりうるため、売却された場合の扱いを契約で定めておくことが大切です。オーナーの倒産や売却と敷金の関係は「オーナーが倒産・ビル売却したら敷金はどうなる?」で整理しています。

賃料の改定

相殺で返してもらう契約では、賃料の改定があると、実際に払う額の計算も変わります。賃料が下がって返済額を下回るような場合に、差額をどう扱うかも確かめておきます。

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借主の会計処理

新しいリース会計基準での扱い

2027年4月1日以後に開始する事業年度から適用される新しいリース会計基準(2025年4月1日以後に開始する事業年度からの早期適用も可能)では、借主が差し入れた建設協力金について、適用指針が次のように定めています。

  • 将来返してもらう建設協力金は、返済期日までのキャッシュ・フローを割り引いた現在価値を、最初に計上する額(時価)とする(第29項)
  • 支払った額と、その現在価値との差額は、使用権資産の取得価額に含める(第29項)
  • 最初の時価と返済額との差額は、返済期日までの期間にわたって受取利息として計上する(第29項)
  • 返済までの期間が短いなど、影響に重要性がないものは、この処理をしないことができる(第31項)
  • 返さないことが契約で定められている額は、使用権資産の取得価額に含める(第32項)

計算の例

上の例(1億円を預け、11年目から20年目に毎年1,000万円ずつ返してもらう、無利息)で、割り引く利子率を年1.5%とすると、次のようになります。利子率は計算の例です。

項目金額
支払った建設協力金1億円
返済までのキャッシュ・フローの現在価値(最初に計上する額)約7,946万円
差額(使用権資産の取得価額に含める)約2,054万円
1年目の受取利息約119万円
20年間の受取利息の合計約2,054万円

使用権資産に含めた約2,054万円は、減価償却を通じて費用になり、同じ額が20年間の受取利息として収益になります。最終的な損益の合計は変わりませんが、毎期の費用と収益の出方が変わります。

これまでの扱い

新しい基準の前は、「金融商品会計に関する実務指針」で、支払額と時価との差額を長期前払家賃として計上して契約期間にわたって配分し、最初の時価と返済額との差額を受取利息として計上するとされていました(適用指針BC61項)。新しい基準では、この定めが金融商品の実務指針から移され、差額を長期前払家賃ではなく使用権資産に含める形に変わっています(BC59項)。どちらの基準を適用するかは、会社の状況によって違うため、顧問の会計士や税理士に確認します。

なお、敷金については、将来返してもらう額は取得原価で計上し、建設協力金と同じように割り引く処理を選ぶこともできるとされています(第33項)。

賃料と相殺するときの記録

賃料と返済額を相殺する契約でも、会計上は、賃料の支払いと建設協力金の回収を分けて記録します。たとえば月額賃料150万円のうち約83万円を返済額と相殺し、約67万円を現金で払う月は、「賃料150万円の支払い」「建設協力金約83万円の回収」「現金約67万円の支出」として扱います。相殺した後の差額だけを賃料として記録すると、建設協力金の残高が減らないままになってしまいます。

貸主の側の扱い(参考)

貸主の側では、預かった建設協力金の現在価値との差額を長期前受家賃として計上し、契約期間にわたって損益に配分するとともに、当初の時価と返済額との差額を支払利息として計上するとされています(適用指針第83項)。無利息で預かる分は、地主にとって家賃を前もって受け取ったのと同じように扱われるということです。借主が無利息で預けることは、実質的に家賃の一部を前払いしているのと同じだと説明できるため、利息を付けることや据置期間を短くすることを相談する根拠になります。

契約する前に確かめること

  • 返還の方法と時期:据置の期間、返済の開始時期と期間、賃料との相殺か現金での返済か
  • 利息:無利息か。一定期間後に利息が付くなら、その利率
  • 途中で解約したとき:返してもらっていない分を一括で返すのか、一部を放棄する定めがないか
  • 建物が売却されたとき:返還の義務が新しい所有者に引き継がれるように定めているか
  • 返還を確保する手段:抵当権を設定するか、その順位
  • 賃料の改定:賃料が改定されたとき、相殺の額や実際に払う額をどう扱うか
  • 敷金の有無:建設協力金とは別に敷金を預けるか、その額と返還の条件

交渉したい項目

建設協力金の条件は、地主と借主の交渉で決まります。借主の立場から、次のような点を相談します。

交渉したい項目求める内容の例理由
据置の期間返済の開始を早める預けたまま使えない期間を短くする
利息当初から利息を付ける無利息で預ける負担を小さくする
返還の確保土地・建物に抵当権を設定する地主の資金繰りが悪化したときに備える
途中解約未返還分は一括で返す撤退の判断をしやすくする
売却時新しい所有者が返還義務を引き継ぐことを明記する所有者が変わっても返してもらえるようにする
賃料の改定改定があっても相殺の額は変えない実際に払う額の見通しを立てやすくする

建設協力金を使う前に比べたい選択肢

出店や拠点の開設で、建設協力金を預ける方式が唯一の選択肢とは限りません。次のような方法と比べて、預けるお金、長い目で見た費用、撤退のしやすさを比べます。

方法出ていくお金特徴
建設協力金を預けて借りる建設協力金と敷金希望の仕様の建物を借りられる。預けたお金は長期間戻らない
地主が建てた建物を借りる敷金・保証金預けるお金は少ないが、建設の費用が賃料に反映されることがある
土地を借りて自社で建てる建設費と、土地の保証金など建物は自社の資産になる。事業用の定期借地権(借地借家法第23条)なら、期間は10年以上50年未満で、更新がない
既存の建物を借りる敷金・保証金すぐに入居できる。仕様は建物に合わせる

どの方法でも、預けたまま動かせないお金と、毎月の賃料の合計で比べることが大切です。

預けるお金を減らすという考え方

建設協力金も敷金も、預けている間は事業に使えないお金です。出店や移転の数が増えるほど、預けたまま動かせないお金は積み上がっていきます。

建設協力金とは別に敷金・保証金を預ける契約や、既存の建物を借りる店舗・オフィスでは、敷金・保証金そのものを減らす方法もあります。当社の「敷金半額くん」は、新しく借りるオフィスや店舗の敷金・保証金を、半額から最大0円まで減らすサービスで、減らした分の代わりに当社が貸主に保証を提供します。すでに入居している物件の敷金は、入居したまま半額から最大全額を取り戻す「敷金返還くん」もあります。どちらも、利用には当社の審査と貸主の承諾が必要で、当社への保証料がかかります。入居中の敷金を資金にするほかの方法は「入居中のオフィスの敷金を資金にする4つの方法」で整理しています。

よくある質問

建設協力金と保証金は同じものですか?

契約書で「保証金」と呼ばれていても、建物の建設資金にあてるために預け、据置のあと分割で返してもらうお金は、建設協力金の性質を持っています。未払いの賃料などを担保する敷金とは、返してもらう時期も方法も違うため、名前ではなく契約の中身で確かめます。

建設協力金に利息は付きますか?

契約によります。適用指針が挙げる典型例は、当初は無利息で、10年たつと低い利息が付くものです。無利息の場合でも、会計上は割り引いた現在価値で計上し、差額を受取利息として配分します。

地主が倒産したら、建設協力金は返ってきますか?

抵当権などで確保していなければ、ほかの債権者と同じ立場で倒産の手続きに加わることになり、全額が返ってくるとは限りません。契約の時点で、返還を確保する手段を決めておくことが大切です。

建設協力金の返済分は、賃料の支払いと相殺されるのですか?

相殺で返す形が一般的とされていますが、現金で返す契約もあります。相殺の場合、会計上は、賃料の支払いと建設協力金の回収を分けて処理します。

返してもらう前に、建設協力金を資金に換えられますか?

返してもらう権利は金銭の債権で、債権は原則として譲り渡すことができます(民法第466条)。適用指針も、建設協力金が流動化の目的で売却される場面に触れています(BC61項)。譲渡を制限する特約があるときの扱いや、地主への通知については「入居中のオフィスの敷金を資金にする4つの方法」で整理しています。

まとめ

  • 建設協力金は、地主が賃貸用の建物を建てるときに、借りる会社が建設資金として預けるお金。典型例は、当初無利息で10年据え置き、その後10年で返してもらう形
  • 返し方は、賃料との相殺(リースバック方式)が一般的とされる。敷金とは目的も、返ってくる時期も違い、契約の定めが中心になる
  • 地主の資金繰りの悪化、建物の売却、途中解約のときの扱いは、契約前に確かめる。抵当権で返還を確保することもある
  • 新しいリース会計基準では、現在価値との差額を使用権資産に含め、受取利息として配分する
  • 預けたまま動かせないお金を増やさないために、敷金・保証金の部分は減らす方法もある

出典:企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」第29項〜第33項・第36項・第83項・BC59項〜BC61項、民法第466条・第605条の2・第622条の2、借地借家法第23条、三菱UFJ不動産販売「不動産用語集 建設協力金」。

Tags#敷金・保証金
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