建設協力金とは
建物を建てる資金を、借りる側が預ける
建設協力金とは、地主が賃貸用の建物を建てるときに、その建物を借りる予定の会社(テナント)が建設資金として地主に預けるお金です。地主はこのお金を使って建物を建て、完成した建物を預けた会社に貸します。預けたお金は、賃貸借の期間中に、契約で決めた方法で返してもらいます。
企業会計基準委員会の「リースに関する会計基準の適用指針」は、建設協力金を「建物建設時に消費寄託する建物等の賃貸に係る預託保証金」で、「契約に定めた期日に預り企業である貸手が現金を返還し差入企業である借手がこれを受け取る契約」であるため、金融商品にあたると説明しています(BC60項)。
典型的な形は、10年据え置いて10年で返す
同じ適用指針は、建設協力金の典型例として「当初無利息であり10年経過すると低利の金利が付き、その後10年間にわたり現金で返済されるもの」を挙げています(BC60項)。最初の10年間は返済がなく、11年目から10年かけて返してもらう、という形です。
返し方としては、借主が毎月払う賃料と、地主が返す建設協力金の返済額とを相殺する形が一般的とされ、この方法は「リースバック方式」とも呼ばれます。たとえば本来の月額賃料が150万円で、毎月約83万円ずつ建設協力金を返してもらう契約なら、その期間に借主が実際に払う賃料は約67万円になります。

地主と借主、それぞれの事情
地主にとっては、金融機関から借り入れなくても、建物を建てる資金を低い金利や無利息で用意でき、建てた時点で借り手が決まっているという面があります。借主にとっては、出店したい場所に、自社の業態に合わせた建物を用意してもらい、長く使えるという面があります。その代わり、借主は大きな額を長い期間、地主に預けたままにすることになります。
敷金・保証金との違い
建設協力金と、入居のときに預ける敷金・保証金の違いは、次のとおりです。
| 項目 | 敷金・保証金 | 建設協力金 |
|---|
| 目的 | 未払いの賃料などを担保する | 建物の建設資金にあてる |
| 返ってくる時期 | 賃貸借が終わり、明け渡したあと | 契約で決めた期日(据置のあと分割など) |
| 返し方 | 未払いの債務を差し引いた残りを一括 | 賃料との相殺や分割返済など、契約で決める |
| 利息 | 契約による | 当初無利息で、一定期間後に低利が付く形が典型例 |
| 額の目安 | 賃料の数か月分から十数か月分 | 建物の建設費に見合う額 |
| 民法の定め | 第622条の2(敷金の返還) | 契約の定めによる |
民法は、敷金を「賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定め、名目は問わないとしています(第622条の2)。建設協力金は、建物の建設資金にあてることを目的とするお金で、この敷金とは目的が違います。そのため、いつ、どう返すかは、契約の定めが中心になります。
建設協力金とは別に、未払いの賃料などを担保するための敷金を預ける契約もあります。その場合、敷金の部分には敷金のルールが当てはまります。
返還の流れ
20年の賃貸借で、建設協力金1億円を預け、最初の10年は据え置き、11年目から10年かけて毎年1,000万円ずつ返してもらう例で、流れを見てみます。

この例では、10年目まで1億円がまるごと地主のもとにあり、全額が戻るのは20年後です。預けたお金を事業に使えない期間が長いことが、建設協力金の最も大きな負担です。
無利息で預ける負担を数字で見る
この例で、各年の初めに預けたままになっている額を20年間で平均すると、約7,750万円です。20年間、平均して7,750万円を事業に使えない状態が続くことになります。
無利息で預けることの負担は、お金の時間の価値で考えるとわかりやすくなります。仮に年1.5%で運用や返済に回せたお金だとすると、20年かけて返ってくる1億円の今の価値(現在価値)は約7,946万円で、差の約2,054万円が、無利息で預けることの実質的な負担にあたります。後で説明する新しいリース会計基準の処理は、この負担を会計の数字に表すものです。
途中で退去するとき
賃貸借を途中で解約した場合に、まだ返してもらっていない建設協力金をどう扱うかは、契約によります。残りを一括で返してもらえるのか、賃料との相殺ができなくなった分をどう精算するのか、一部を放棄する定めになっていないかは、契約する前に必ず確かめます。店舗の業績が振るわず撤退したいときに、預けたお金の多くが戻らない契約になっていると、撤退の判断そのものが難しくなります。
借主が気をつけたいリスク
地主の資金繰りが悪化する
建設協力金は、地主にとっては返さなければならないお金です。地主の資金繰りが悪化したり、倒産したりすると、予定どおりに返してもらえないおそれがあります。適用指針も、貸手の支払能力から回収できないと見込まれる額がある場合は、貸倒引当金を設定するとしています(第36項)。
返還を確保する方法として、借主が土地や建物に抵当権を設定することがあります。適用指針は、借主が土地建物に抵当権を設定している場合、会計上の割引に使う利子率は原則としてリスク・フリーの利子率を使うとしています(第30項)。抵当権は、ほかの債権者より先に弁済を受けるための手段で、設定するかどうか、どの順位になるかは契約する前に決めておきます。
建物が売却される
地主が建物を売却した場合、敷金を返す義務は、原則として新しい所有者に引き継がれると民法で定められています(第605条の2第4項)。一方、この条文が対象にしているのは「敷金」の返還です。建設協力金を返す義務が新しい所有者に引き継がれるかは、そのお金の性質や契約の内容によって変わりうるため、売却された場合の扱いを契約で定めておくことが大切です。オーナーの倒産や売却と敷金の関係は「オーナーが倒産・ビル売却したら敷金はどうなる?」で整理しています。
賃料の改定
相殺で返してもらう契約では、賃料の改定があると、実際に払う額の計算も変わります。賃料が下がって返済額を下回るような場合に、差額をどう扱うかも確かめておきます。