敷金・保証金

敷金償却(保証金償却)とは|書き方・計算方法と交渉

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敷金償却(保証金償却)とは|書き方・計算方法と交渉

オフィスや店舗の賃貸借契約書に「敷金償却 賃料2か月分」「解約時に保証金の20%を償却」と書かれていることがあります。この償却の分は、退去するときに原状回復の費用とは別に差し引かれ、戻ってきません。預けた敷金が全額戻ると考えて資金計画を組んでいると、退去のときに想定より少ない額しか返ってこないことになります。

償却があるかどうかは、物件によって大きく違います。当社が運営するオフィス検索サイト「Growth Office」に掲載中の東京都の空室区画では、償却の条件がわかる区画の約3分の1に償却の定めがあり、50坪未満の区画では約半数にのぼりました。区によっても、敷金の月数によっても、償却のある割合は大きく変わります。

この記事では、敷金償却(保証金償却)の意味、契約書での書き方と計算方法、広さ・区・敷金の月数別にみた償却の実態、償却があると入居期間の総額がどう変わるか、退去時の精算書の見方、契約前に確かめることと交渉の余地を整理します。

敷金償却(保証金償却)とは

退去時に差し引かれて戻らない分

敷金償却とは、預けた敷金(保証金)のうち、契約で定めた額を差し引いて、借主に返さないとする取り決めのことです。「償却」のほか、「敷引き」「解約引き」「保証金償却」などとも呼ばれます。

民法は、敷金を「賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定め、名目は問わないとしています(第622条の2)。賃貸借が終わって物件を返したときは、預かった敷金から未払いの賃料などを差し引いた残りを返さなければなりません。

償却は、この返還の決まりとは別に、契約で「一定の額は返さない」と合意するものです。そのため、償却があるかどうか、いくらかは、契約書の定めで決まります。

事業用の契約は、合意した内容が基準になる

住居の賃貸では、借主が個人の場合に、消費者契約法をもとに償却などの特約が争われることがあります。しかし、会社がオフィスや店舗を借りる契約は事業者どうしの契約で、同法の「消費者契約」にはあたりません(消費者契約法第2条)。個人事業主が事業のために借りる場合も同じです。事業用の償却は、原則として契約で合意した内容が基準になるため、署名する前に条件を確かめておくことが大切です。

原状回復の費用とは別のもの

償却と原状回復の費用は、どちらも返ってくる敷金を減らしますが、性質が違います。

項目償却原状回復の費用
差し引かれる額契約で決めた額(月数や割合)実際に工事にかかった額
使い方との関係きれいに使っても差し引かれる使い方や工事の範囲で変わる
根拠契約の特約契約で定めた原状回復の義務

契約によっては、償却と原状回復の費用の両方が差し引かれます。償却分で原状回復の費用をまかなう契約なのか、別に実費を請求される契約なのかで、退去時の負担は大きく変わります。

償却の書き方の種類と計算方法

契約書での償却の書き方には、主に次のような種類があります。償却額は、月額賃料40万円・敷金240万円(6か月分)の場合の例です。

書き方契約書の例償却額
賃料の月数賃料2か月分を償却80万円
敷金の割合敷金の20%を償却48万円
スライド入居期間で償却が変わる契約による
更新ごと更新ごとに賃料1か月分更新1回40万円

契約書ではこう書かれる

実際の契約書では、償却は敷金の条項か、契約終了時の精算の条項に書かれています。書き方の例は次のとおりです(条文は説明のための例です)。

  • 月数で決める例:「本契約が終了し、借主が本物件を明け渡したときは、貸主は、敷金から賃料の2か月分に相当する額を償却し、借主の未払い債務を差し引いた残額を借主に返還する。」
  • 割合で決める例:「敷金のうち20%は、契約の終了時に償却するものとし、借主に返還しない。」
  • スライドの例:「償却の額は、入居期間が3年未満のときは敷金の20%、3年以上5年未満のときは15%、5年以上のときは10%とする。」
  • 更新ごとの例:「本契約を更新するときは、賃料の1か月分を償却し、借主は償却した額を敷金に補充する。」

「償却」という言葉がなく、「敷引」「解約引き」「返還しない」と書かれていることもあります。敷金の条項だけでなく、解約・明渡し・精算の条項まで読んで確かめます。

基準の賃料と消費税に注意する

賃料の月数で決める場合は、いつの賃料を基準にするかで額が変わります。契約時の賃料か、退去時の賃料かが書かれていなければ、入居中に賃料が上がったときに争いになることがあります。

また、事業用の償却分は消費税の課税取引です。契約書で償却額が「税別」とされている場合は、退去時に償却額とは別に消費税相当額を求められることがあります。償却額が税込か税別かも確かめます。

償却の実態:50坪未満の区画は約半数に償却がある

当社が運営する「Growth Office」に掲載中の東京都の空室区画のうち、償却の条件がわかる2,425区画を集計しました(2026年9月29日時点。「相談」「確認中」の区画は除いています)。

東京都の募集中のオフィス区画の償却の条件を広さ別にみると、償却なしの割合は20坪未満で57%、20〜50坪で51%、50〜100坪で76%、100坪以上で94%。20〜50坪では賃料1か月分が21%、2か月分が20%、敷金の一定割合が6%だった(Growth Office掲載、2026年9月29日時点、償却の条件がわかる2,425区画)

広さ区画数償却なし償却あり
20坪未満18057%43%
20〜50坪1,17851%49%
50〜100坪60176%24%
100坪以上46694%6%
合計2,42566%34%

償却が賃料1か月分か2か月分の区画は、20坪未満で39%、20〜50坪で41%を占めました。残りは、敷金の一定割合、3か月分以上、期間に応じて変わる(スライド)などです。

全体では約3分の2の区画が償却なしでした。一方で、50坪未満の区画では約半数に償却があり、そのほとんどは賃料1か月分か2か月分です。100坪以上の区画では、償却があるのは約6%にとどまりました。

区によっても違う

同じ集計を、区画数が60以上ある区で分けると、償却のある区画の割合は次のとおりでした。

区区画数償却あり
台東区10849%
豊島区8147%
文京区7246%
千代田区42241%
新宿区26038%
中央区42236%
渋谷区20234%
港区49828%
品川区13315%
江東区11610%

台東区や豊島区、文京区では約半数に償却がある一方、品川区や江東区では1〜2割程度でした。区ごとの違いには、その区にある区画の広さの違いも影響していると考えられます。

敷金が11か月以上の区画は、償却がほとんどない

敷金の月数別にみると、償却のある区画の割合は、敷金3か月以下で29%、4〜6か月で48%、7〜10か月で55%でした。一方、11か月以上の区画では9%にとどまり、敷金の月数が多い区画では、償却を設けていないことが多いといえます。敷金の月数と償却の有無は、あわせて見ておく必要があります。

償却があると、入居期間の総額はどう変わるか

償却のある物件とない物件を比べるときは、賃料だけでなく、入居する期間の総額で比べます。次の2つの物件を例にします(金額は計算のための例です)。

項目物件A物件B
月額賃料40万円42万円
敷金6か月分6か月分
償却賃料2か月分(80万円)なし

物件Aは賃料が月2万円安い代わりに、退去時に80万円が償却されます。賃料と償却の合計を入居期間ごとに比べると、次のようになります。

入居期間物件A物件B差
2年1,040万円1,008万円Bが32万円少ない
3年1,520万円1,512万円Bが8万円少ない
5年2,480万円2,520万円Aが40万円少ない

償却のある物件Aと償却のない物件Bの、賃料と償却の合計の差。物件Aは月額賃料40万円で退去時に80万円を償却、物件Bは月額賃料42万円で償却なし。賃料の差は月2万円なので、入居期間が40か月(3年4か月)より短ければ物件B、長ければ物件Aのほうが総額は少ない。金額は計算のための例

償却の80万円を、月2万円の賃料の差で割ると40か月です。入居期間が40か月(3年4か月)より短ければ償却のない物件Bが、長ければ賃料の安い物件Aが、総額では有利になります。償却のある物件を選ぶときは、何年入居するつもりかをはっきりさせてから比べます。

預ける敷金の額もあわせて比べる

総額が少ない物件が、資金繰りの面でも有利とは限りません。敷金の月数が多い物件では、入居中に使えない資金が大きくなるからです。先の2つに、敷金10か月分で償却が敷金の20%の物件Cを加えて、4年(48か月)入居する場合を比べます(金額は計算のための例です)。

項目物件A物件B物件C
月額賃料40万円42万円39万円
預ける敷金240万円252万円390万円
償却80万円なし78万円
4年の賃料と償却2,000万円2,016万円1,950万円

4年の総額は物件Cがいちばん少なくなりますが、入居するときに預ける敷金は390万円で、物件Aより150万円多くなります。入居の初期費用を抑えたい会社や、手元の資金を事業に回したい会社にとっては、総額だけでなく、入居中に寝かせる敷金の額も比べる材料になります。

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退去時の精算書の見方

退去して明け渡すと、貸主から、敷金から差し引く額と返す額をまとめた精算書が届きます。月額賃料40万円、敷金240万円、償却2か月分の区画を退去する場合の例は次のとおりです(金額は計算のための例です)。

項目金額
預けた敷金240万円
償却(賃料2か月分)▲80万円
原状回復の費用▲100万円
未払いの賃料・共益費▲0円
返ってくる額60万円

精算書を受け取ったら、次の点を確かめます。

  • 償却の額:契約書に書かれた月数や割合、基準の賃料と一致しているか。消費税の扱いは契約どおりか
  • 原状回復の費用:工事の範囲と単価が、契約で定めた原状回復の範囲に収まっているか。償却と二重に請求されていないか
  • 日割りの賃料:退去した月の賃料や共益費が、正しく日割りされているか
  • 返還の時期:契約で定めた返還の時期に振り込まれるか

原状回復の費用で意見が合わないときは、工事の見積書と内訳を求めて、項目ごとに話し合います。

退去の時期が決まったら、資金繰り表にも、戻ってくる敷金を償却と原状回復の費用を差し引いた額で書いておきます。移転する場合は、新しい物件の敷金を先に預けることになるため、戻る額と時期を控えめに見積もっておくことが大切です。

償却の会計と税務

返ってこない償却の分は、預け金ではなく費用になります。主な扱いは次のとおりです。

  • 勘定科目:返ってくる部分は差入保証金、償却で返ってこない部分は長期前払費用(繰延資産)として扱う
  • 税務上の償却期間:原則5年。契約期間が5年未満で、更新のたびに再び支払う必要がある場合はその契約期間
  • 20万円未満:支出した事業年度に全額を損金にできる
  • 消費税:事業用の償却分は課税取引で、償却が確定した時点で仕入税額控除の対象になる

詳しい仕訳と根拠の条文は「敷金の会計処理」で説明しています。

契約前に確かめること

償却は契約で決まるため、契約前に次の点を確かめます。

  • 償却の有無と額:「償却」という言葉がなくても、「敷引」「解約引き」「返還しない」といった定めがないかを、解約時の精算の条項まで読む
  • 償却の時期:退去時にまとめて差し引くのか、一定期間ごとや更新ごとに差し引くのか
  • 基準の賃料:月数で決める場合、契約時と退去時のどちらの賃料を基準にするか
  • 消費税:償却額が税込か税別か
  • 原状回復との関係:償却とは別に原状回復の実費を請求されるのか
  • 中途解約の扱い:早く退去した場合に償却が増えないか
  • 定期借家の再契約:定期借家契約で再契約するときに、償却が改めて発生しないか

同じ賃料の物件でも、償却の有無で実質の負担は変わります。候補の物件を比べるときは、賃料と敷金の月数だけでなく、償却の額と入居の予定期間も含めた総額で比べます。

償却は交渉できるか

交渉の材料になるもの

償却は契約で決める条件なので、交渉の余地があります。空室の期間が長い物件や、貸主が早く次の借主を決めたい状況では、償却の月数を減らしたり、償却なしにしたりする交渉が通ることもあります。賃料を下げると貸主の収入はずっと減りますが、償却は一時的な条件のため、賃料はそのままで償却を減らす交渉のほうが受け入れられやすい面があります。

償却そのものをなくすのが難しい場合でも、次のような形で負担を軽くできることがあります。

  • 入居期間の約束と引き換えにする:長く入居する予定なら、一定期間の入居を約束する代わりに償却を減らしてもらう
  • スライドにする:入居期間が長いほど償却が減る形にしてもらう
  • 原状回復に充てる形にする:償却分を原状回復の費用に充て、別に実費を請求しない形にしてもらう

交渉の文例

申込みの段階で条件を相談するときは、次のように伝えます(文例は説明のための例です)。

「貴社の物件を前向きに検討しております。当社は5年以上の入居を予定しておりますので、敷金の償却(賃料2か月分)について、入居期間に応じて減る形か、原状回復の費用に充てる形にご調整いただけないでしょうか。賃料の条件はご提示のとおりで考えております。」

更新のときも交渉の機会になる

契約の更新時も交渉の機会です。更新のたびに償却が発生する契約であれば、賃料を遅れずに払ってきた実績を示して、更新時の償却を減らせないかを相談します。

預ける敷金そのものを減らす

償却は、預けた敷金の中から差し引かれます。そして償却があってもなくても、敷金は退去するまで戻らず、入居している間は使えないお金です。敷金の月数が多い物件ほど、手元の資金が減ります。

償却が「敷金の○%」で決まる契約では、契約の定め方によっては、預ける敷金を減らせば償却の額も小さくなります。月数で決まる契約でも、預ける額が減れば、入居中に使えない資金はその分だけ少なくなります。

当社の「敷金半額くん」は、新しく借りるオフィスや店舗の敷金を、半額から最大0円まで減らすサービスです。減らした分の敷金の代わりに、当社が貸主に保証を提供します。償却のある物件を契約するときに、償却の条件とあわせて、預ける敷金の額そのものも見直せます。すでに入居している場合は、預けている敷金の半額から最大全額を入居したまま取り戻す「敷金返還くん」もあります。どちらも、利用には当社の審査と貸主の承諾が必要で、当社への保証料がかかります。

よくある質問

敷金償却と敷引きは同じですか?

どちらも、預けた敷金のうち契約で決めた額を差し引いて返さない取り決めを指します。「敷引き」は主に関西で使われる呼び方で、「解約引き」「保証金償却」と書かれることもあります。

償却があるのに原状回復の費用も取られますか?

契約によります。償却とは別に原状回復の実費を請求する契約もあれば、償却分で原状回復をまかなう契約もあります。契約書の解約時の精算の条項と、原状回復の条項をあわせて確かめます。

償却なしの物件は多いですか?

Growth Office に掲載中の東京都の空室区画では、償却の条件がわかる区画の約3分の2が償却なしでした。ただし50坪未満の区画では約半数に償却があり、広さや区、敷金の月数によって大きく違います。

償却分に消費税はかかりますか?

事業用の物件の償却分は、消費税の課税取引です。契約書で償却額が税別とされている場合は、償却額とは別に消費税相当額を求められることがあります。

途中で解約すると償却は増えますか?

契約によります。入居期間が短いほど償却が大きくなるスライドの定めや、中途解約の違約金の定めがある場合は、早く退去すると負担が増えます。解約の条項とあわせて確かめます。

敷金償却は経費になりますか?

返ってこない償却の分は費用になります。20万円未満なら支出した事業年度に全額を損金にでき、20万円以上なら原則として5年で償却します。詳しくは「敷金の会計処理」をご覧ください。

まとめ

  • 敷金償却は、預けた敷金のうち契約で決めた額を、原状回復の費用とは別に差し引いて返さない取り決め。事業用の契約では、合意した内容が基準になる
  • 書き方は、賃料の月数、敷金の割合、期間に応じたスライド、更新ごとなど。基準の賃料と消費税の扱いも確かめる
  • Growth Office 掲載の東京都の区画では約3分の2が償却なし。ただし50坪未満では約半数に償却があり、区や敷金の月数でも大きく違う
  • 償却のある物件とない物件は、入居の予定期間の総額で比べる。例では40か月を境に有利な物件が入れ替わる
  • 償却は交渉できる条件。預ける敷金そのものを保証に置き換えて減らす方法もある

出典:民法第622条の2、消費者契約法第2条、Growth Office 掲載データ(東京都の空室区画、2026年9月29日時点、償却の条件がわかる2,425区画)。会計・税務の根拠は「敷金の会計処理」に記載。

Tags#敷金・保証金
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