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オーナーチェンジとは|敷金の引継ぎと売買での精算

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オーナーチェンジとは|敷金の引継ぎと売買での精算

テナントが入居したままビルや区分の所有権が売買されることを、オーナーチェンジと呼びます。買主は、賃料の入る物件をそのまま引き継げる一方で、テナントとの賃貸借契約も、テナントから預かっている敷金を返す義務も引き継ぎます。売主と買主のどちらがいくらの敷金を負担するのかを決めずに取引すると、テナントの退去のときに、思わぬ支払いを迫られることがあります。

民法は、対抗要件を備えた賃貸借がある不動産が譲渡されたときは、貸主の地位が買主に移り、敷金を返す債務も買主が引き継ぐと定めています。テナントの承諾は要りませんが、買主がテナントに賃料を請求するには、所有権の移転の登記が必要です。

この記事では、オーナーチェンジで貸主の地位がどう移るか、敷金の引継ぎと売買代金での精算、買主が確かめること、売主が準備すること、テナントへの通知、税務の注意点、テナントの立場から見た注意点を整理します。

オーナーチェンジとは

賃貸借はそのまま、貸主だけが入れ替わる

オーナーチェンジでは、テナントとの賃貸借契約は終わらず、そのまま続きます。変わるのは貸主です。賃料の振込先、契約の更新や賃料改定の相手、退去のときに敷金を返す相手が、売主から買主に変わります。

貸主の地位が移る条件

民法は、「前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する」と定めています(第605条の2第1項)。

建物の賃貸借では、賃借権の登記がなくても、建物の引渡しを受けていれば、その後に建物の所有権を取得した人に賃貸借の効力を主張できます(借地借家法第31条)。入居しているテナントは建物の引渡しを受けているので、この対抗要件を備えています。

また、売主と買主の合意によっても、貸主の地位を移すことができ、この場合もテナントの承諾は要りません(民法第605条の3)。

オーナーチェンジで移るもの。売主から買主に建物の所有権と貸主の地位が移り、テナントの賃貸借はそのまま続く。敷金を返す債務も買主が引き継ぐ。買主がテナントに賃料を請求するには所有権移転の登記が必要。売主と買主は、預り敷金に相当する額を売買代金などで精算する

買主が貸主の地位を主張するには登記が必要

貸主の地位の移転は、「賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない」とされています(第605条の2第3項)。買主がテナントに賃料を請求したり、契約の解除を求めたりするには、所有権の移転の登記を済ませておく必要があります。

貸主の地位を売主に残す場合

売主と買主が、貸主の地位を売主に残すこと(留保)と、買主が売主にその不動産を貸すことに合意したときは、貸主の地位は買主に移りません(第605条の2第2項)。売主が引き続きテナントとの窓口になり、買主から一括して借りる形です。この場合、売主と買主の賃貸借が終わったときに、留保していた貸主の地位は買主に移ります。

敷金の引継ぎ

敷金を返す債務は、買主が引き継ぐ

民法は、貸主の地位が買主に移ったときは、「第六百二十二条の二第一項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する」と定めています(第605条の2第4項)。テナントが退去するとき、敷金を返すのは買主です。

同じ項により、テナントが建物に支出した必要費や有益費を貸主に請求できる場合(民法第608条)の、その費用を償還する債務も買主が引き継ぎます。テナントが自分の負担で行った工事の記録も、買主が確かめておく対象です。

国税庁も、質疑応答事例の中で、「賃貸中の建物の所有権の移転があった場合には、旧所有者に差し入れた敷金が現存する限り、たとえ新旧所有者間に敷金の引継ぎがなくても、賃貸中の建物の新所有者は当然に敷金を引き継ぐ(判例・通説)とされています」と説明しています。

売買代金で精算する

買主は、売主が受け取っていた敷金を、将来テナントに返す債務を負います。そのため、売買の契約では、預り敷金に相当する額をどう精算するかを決めておきます。

精算の方法内容
売買代金から差し引く預り敷金の合計を売買代金から差し引き、買主が返還の債務を負う
別に引き渡す売買代金とは別に、売主が預り敷金に相当する額を買主に渡す

どちらの方法でも、精算の基準日の預り敷金の額と、償却などで返さない部分の扱いを、テナントごとに確定させることが大切です。

精算の例

テナント預り敷金償却精算の額
A社(3階)1,200万円なし1,200万円
B社(4階)900万円退去時に賃料1か月分(75万円)償却分の扱いを契約で決める
C社(5階)600万円なし(賃料の未払い 20万円あり)未払い分の扱いを契約で決める

償却の分は、退去のときに返さない額なので、その分を売主と買主のどちらに帰属させるかで精算の額が変わります。未払いの賃料があるテナントについても、未払い分を売主が回収するのか、買主が引き継ぐのかを決めておきます。金額は例です。

売買契約で決めておくこと

項目決めておくこと
精算の基準日賃料・敷金・公租公課を売主と買主で分ける日(決済日など)
賃料の精算基準日を含む月の賃料を、日割りで分けるか
預り敷金精算の方法と、償却・未払い分の帰属
未払い賃料基準日より前の未払い分を、どちらが回収するか
交渉中の事項賃料改定や原状回復の交渉を、買主が引き継ぐか
テナントへの通知誰が、いつ、どの書面で知らせるか

たとえば9月15日に決済し、売主がすでに9月分の賃料100万円を受け取っている場合、日割りで精算するなら、9月15日から30日までの16日分(100万円×16/30=約53万円)を売主から買主に渡します。金額は例です。

買主が確かめること

項目確かめること
賃貸借契約書原本(または写し)と、更新・改定の合意書。普通借家か定期借家か
預り敷金テナントごとの額、償却の定め、預り証の写し
賃料の入金状況過去の入金の記録、未払いの有無、滞納の経緯
賃料改定・更新近い時期に更新や改定の予定があるか、交渉中の事項
転貸転貸の承諾をしているか、その条件
保証保証会社や連帯保証人がいるか。貸主が変わったときの扱い
原状回復退去のときの原状回復の範囲、造作の買取りの定め
テナントの状況退去の予告や、立ち退きの交渉の有無

レントロール(賃料の一覧表)だけでなく、契約書と入金の記録で、敷金と賃料の額を突き合わせます。テナントに、賃料や敷金の額、契約の条件に相違がないかを確認する書面をもらうこともあります。

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売主が準備すること

  • テナントごとの賃貸借契約書、更新・改定の合意書、預り証の写し
  • 預り敷金の一覧(額、償却の定め、精算の基準日時点の残高)
  • 賃料・共益費の入金の記録と、未払いの一覧
  • 転貸や造作譲渡の承諾書、保証会社との契約の写し
  • テナントとの交渉中の事項(賃料改定、原状回復、立ち退きなど)の記録

テナントへの通知

貸主が変わったことを、テナントに書面で知らせます。賃料の振込先が変わるため、いつの支払分から新しい振込先に払うのかを明確にします。

○○ビルの所有権は、令和○年○月○日付で、○○株式会社(旧所有者)から△△株式会社(新所有者)に移転いたしました。これに伴い、貴社との賃貸借契約における賃貸人の地位は新所有者が承継し、お預かりしている敷金の返還債務も新所有者が承継しております。令和○年○月分以降の賃料等は、下記の口座にお振り込みください。

旧所有者と新所有者の連名で通知すると、テナントが二重に払ったり、払い先を迷ったりするのを防げます。

税務の注意点

事業用の建物の賃料は、消費税の課税の対象です(国税庁 タックスアンサー No.6225)。売買のあとは、買主が賃料を受け取る事業者として申告します。

一方、売買で預り敷金を買主に引き継ぐときの、消費税や譲渡所得での扱いを明示した国税庁の資料は見当たりません。精算の方法によって計算が変わる可能性があるため、取引の前に税理士に確認します。

なお、売買ではなく贈与で賃貸物件を移す場合について、国税庁は、父親が長男に賃貸アパートを贈与し、預かっている敷金に相当する現金も同時に贈与した事例で、実質的な負担はなく、負担付贈与にあたらないと解するのが相当としています(質疑応答事例「賃貸アパートの贈与に係る負担付贈与通達の適用関係」)。事業承継や相続対策で物件を移すときも、敷金の扱いが論点になります。

テナントの立場から見たオーナーチェンジ

テナントの側では、貸主が変わっても、賃貸借の条件はそのまま続きます。敷金は新しい貸主が返す義務を負います(民法第605条の2第4項)。通知を受けたら、新しい貸主に、引き継いだ敷金の額と条件を書面で確認しておきます。旧所有者が倒産した場合を含め、テナントの立場からの注意点は「オーナーが倒産・ビル売却したら敷金はどうなる?」で整理しています。

預かり敷金を抱えるオーナーの選択肢

預かり敷金は、退去のときに返す負債です。多くのテナントの敷金を預かっている物件ほど、売買の精算でも、テナントの入れ替わりのときの資金繰りでも、その額が大きな意味を持ちます。

当社の「敷金返還くん(不動産オーナー向け)」は、預かっている敷金を当社の保証に置き換えて、テナントに返還できる仕組みです。賃料の不払いや原状回復の費用などは当社の保証でカバーするため、敷金を返しても担保力は保たれます。テナントとの契約更新や賃料改定の交渉の材料としても使えます。利用には当社の審査があり、当社への保証料がかかります。

よくある質問

オーナーチェンジに、テナントの承諾は必要ですか?

必要ありません。対抗要件を備えた賃貸借がある不動産が譲渡されれば、貸主の地位は買主に移ります(民法第605条の2第1項)。売主と買主の合意で移す場合も、テナントの承諾は要りません(第605条の3)。

売主と買主の間で敷金を引き継がなかったら、どうなりますか?

テナントに対して敷金を返す債務は、買主が引き継ぎます(第605条の2第4項)。売主と買主の間で精算していなければ、買主が自分の負担で返すことになり、あとから売主に請求できるかは売買の契約によります。

買主は、いつからテナントに賃料を請求できますか?

所有権の移転の登記をすれば、貸主の地位をテナントに主張できます(第605条の2第3項)。決済日などを基準に、その後の賃料を買主が受け取るよう、売買の契約で精算を定めておきます。

定期借家契約も、そのまま引き継がれますか?

引き継がれます。移るのは貸主の地位なので、契約の内容はそのままです。期間が1年以上の定期借家契約では、期間の満了の1年前から6か月前までの間に、テナントに契約が終わることを通知しなければ、その終了をテナントに主張できません(借地借家法第38条第6項)。売買の時期がこの通知の期間にかかるときは、売主と買主のどちらが通知するかを決めておきます。

買主は、引き継いだ賃料を変えられますか?

買主は、売主が結んだ契約の条件をそのまま引き継ぎます。賃料を変えるには、テナントとの合意か、借地借家法第32条の賃料増減額請求によります。進め方は「賃料増額請求の進め方」で整理しています。

テナントが賃料を滞納している場合、売買の前の未払い分は誰のものですか?

売買の契約で決めます。売主が回収するのか、買主が引き継ぐのかを明確にし、テナントにもどちらに払うのかを知らせます。

まとめ

  • オーナーチェンジでは、テナントとの賃貸借はそのまま続き、貸主の地位が買主に移る。テナントの承諾は要らない
  • 買主がテナントに貸主の地位を主張するには、所有権の移転の登記が必要
  • 敷金を返す債務は買主が引き継ぐ。売買の契約で、預り敷金の精算の方法と、償却・未払い分の扱いを決める
  • 買主は、契約書・預り敷金・入金の記録を突き合わせて確かめる。テナントには連名で通知する
  • 預り敷金の引継ぎの税務は、事前に税理士に確認する。預かり敷金を保証に置き換える方法もある

出典:民法第605条・第605条の2・第605条の3・第608条・第622条の2、借地借家法第31条・第32条・第38条、国税庁 質疑応答事例「賃貸アパートの贈与に係る負担付贈与通達の適用関係」、国税庁「No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など」。

Tags#ビルオーナー
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