オフィス移転

フリーレントとは|オフィス移転での使い方と違約金・会計

読了 約10分
フリーレントとは|オフィス移転での使い方と違約金・会計

オフィスや店舗の募集条件に「フリーレント3か月」と書かれていることがあります。入居してから一定の期間、賃料がかからないという条件です。移転のときは、今のオフィスの解約予告期間と新しいオフィスの契約が重なり、家賃を二重に払う期間が生じがちです。フリーレントは、その負担を軽くする条件として使われます。

一方で、フリーレントには、短い期間で解約したときに免除された賃料を払い戻す「違約金」の定めが付いていることがあり、対象が賃料だけなのか共益費も含むのか、いつから数えるのかも契約によって違います。条件をよく読まずに契約すると、思っていたほど負担が軽くならないことがあります。

この記事では、フリーレントの意味、貸主がフリーレントを付ける理由、テナントにとっての使い道、契約で確かめること、短期解約の違約金の計算、会計と税金の扱い、交渉の進め方、フリーレントと敷金の関係を整理します。

フリーレントとは

入居後の一定期間、賃料がかからない条件

フリーレントとは、賃貸借契約が始まってから一定の期間、賃料を無料にする条件のことです。「フリーレント3か月」なら、最初の3か月分の賃料を払わなくてよいという意味になります。契約書では「賃料免除期間」「賃料発生日は○年○月○日とする」などと書かれることもあります。

無料になるのは賃料だけのことがある

フリーレントの期間でも、共益費(管理費)や、水道光熱費、駐車場代は払う契約があります。「フリーレント」と書かれていても、何が無料になるのかは、契約書の定めで確かめます。

貸主がフリーレントを付ける理由

貸主がフリーレントを付けるのは、月々の賃料を下げずに、入居の条件を良くするためです。

たとえば、月額賃料100万円で5年(60か月)の契約を結ぶ場合、フリーレント3か月を付けると、5年間に払う賃料の合計は5,700万円になります。これは、月額賃料を95万円に下げたのと同じ負担です。

条件月額賃料5年間に払う賃料
フリーレントなし100万円6,000万円
フリーレント3か月100万円5,700万円
賃料を5%下げる95万円5,700万円

貸主にとっては、月額賃料を下げると、ほかの区画の賃料や、ビルの収益の見え方にも影響します。フリーレントなら、契約上の賃料は100万円のまま、実際の負担を下げられます。空室の期間が長い区画ほど、フリーレントを付けてでも早く入居してもらう理由があります。

実質の賃料で比べる

フリーレントのある物件とない物件を比べるときは、契約期間を通じた「実質の月額賃料」に直します。

実質の月額賃料 = 月額賃料 ×(契約期間の月数 − フリーレントの月数)÷ 契約期間の月数

同じフリーレントの月数でも、契約期間が短いほど、1か月あたりの値引きの効果は大きくなります。月額賃料100万円の場合の実質の月額賃料(万円)は、次のとおりです。列の1か月・3か月・6か月は、フリーレントの月数です。小数第2位を四捨五入しています。

期間1か月3か月6か月
2年95.887.575.0
3年97.291.783.3
5年98.395.090.0

ただし、実際に何年入居するかは契約期間どおりとは限りません。短期解約の違約金がある場合は、途中で退去したときの負担も含めて比べます。

テナントにとっての使い道

移転のときの二重家賃を減らす

移転では、新しいオフィスの契約を結んでから内装工事をし、そのあとで引っ越します。その間、今のオフィスは解約予告期間が終わるまで賃料がかかるため、両方の家賃を払う期間が生じます。フリーレントがあれば、この重なりの負担を減らせます。

移転のときの二重家賃とフリーレントの例。今のオフィスは解約予告から6か月間は賃料がかかる。新しいオフィスは解約予告の2か月後に契約し、2か月の内装工事のあとに入居する。新しいオフィスの契約開始から4か月間は、両方の賃料が重なる。フリーレント3か月があれば、重なる期間の新しいオフィスの賃料のうち3か月分がかからない

内装工事の期間の賃料を抑える

新しいオフィスの内装工事は、契約が始まってから行うため、その間は使えないのに賃料がかかります。フリーレントの期間を工事の期間に充てれば、使えない期間の賃料を払わずに済みます。

入居の初期費用を抑える

フリーレントの期間は、賃料の支払いが後ろにずれるため、入居の前後にかかる資金の負担が軽くなります。敷金、内装工事費、引っ越し費用が重なる時期の資金繰りに余裕が生まれます。

たとえば、月額賃料100万円・敷金10か月分の物件に移転し、今のオフィスは月額賃料80万円、解約予告6か月の場合、新しいオフィスの契約から6か月間に出ていくお金は次のようになります。今のオフィスの敷金は、明け渡して精算が終わったあとに戻るため、この期間には入りません。表の「なし」「3か月」はフリーレントの月数です。金額は例です。

項目なし3か月
新しいオフィスの敷金1,000万円1,000万円
新しいオフィスの賃料(6か月)600万円300万円
今のオフィスの賃料(重なる4か月)320万円320万円
内装工事・引っ越し800万円800万円
合計2,720万円2,420万円

フリーレントで300万円の負担が減っても、敷金と工事の費用が大きいことに変わりはありません。移転の資金計画は、フリーレントの月数だけでなく、敷金の額とあわせて考えます。

契約で確かめること

確かめる項目内容
無料になるもの賃料だけか。共益費・駐車場代も含むか
期間の数え方契約開始日から数えるのか、引渡し日・賃料発生日から数えるのか
短期解約の違約金一定期間内に解約したとき、免除された賃料を払い戻す定めがあるか。その期間と額
敷金の基準敷金を「賃料の○か月分」で計算するときの賃料は、フリーレント前の賃料か
賃料の改定更新や改定のときに、フリーレント分を考慮した賃料の交渉がありうるか
消費税違約金や免除額の計算で、消費税をどう扱うか

特に確かめたいのは、短期解約の違約金です。フリーレントは、長く入居してもらうことを前提にした条件なので、早く出ていく場合には、免除した賃料を返してもらうという定めを置くことがあります。

短期解約の違約金の計算

たとえば、月額賃料100万円、フリーレント3か月、「契約開始から3年以内に解約した場合は、フリーレント期間の賃料相当額を違約金として支払う」という定めの契約を考えます。

解約の時期違約金
2年で解約300万円(3か月分)
3年を過ぎてから解約なし

定め方によっては、「残りの期間に応じて按分する」「違約金とは別に、解約予告期間の賃料も払う」とされていることもあります。解約予告期間の賃料と違約金が重なると、早期の退去は大きな負担になります。事業の見通しが立ちにくい時期の移転では、違約金がかかる期間の長さも、フリーレントの月数と同じくらい大切です。

契約書の条文の例

定める項目条文の例
賃料の発生賃料は、令和○年○月○日(以下「賃料発生日」という。)から発生するものとし、契約開始日から賃料発生日の前日までの賃料を免除する
免除の範囲前項の免除は賃料に限り、共益費、水道光熱費その他の費用は契約開始日から負担する
短期解約賃借人が契約開始日から3年以内に本契約を解約する場合、賃借人は、免除された賃料の全額を違約金として賃貸人に支払う
按分前項の違約金は、契約開始日から解約日までの経過月数に応じて、免除された賃料の額に(36−経過月数)÷36を乗じた額とする

最後の「按分」の定めがあれば、長く入居するほど違約金が小さくなります。交渉では、違約金の全額払いを按分に変えてもらう、違約金がかかる期間を短くしてもらう、といった提案も考えられます。

スタートアップの新常識 オフィス移転の敷金、払わないという選択。 詳細を見る

会計と税金の扱い

貸主の会計

2027年4月1日以後に開始する事業年度から適用される新しいリース会計基準の適用指針は、貸主のオペレーティング・リースのリース料を、リース期間にわたり原則として定額法で計上するとしています(企業会計基準適用指針第33号 第82項)。適用指針は、フリーレントを「契約開始当初数か月間賃料が無償となる契約条項」と説明し、こうした無償賃貸期間の会計処理の実務にばらつきがあったことを、定めを置いた理由に挙げています(同BC121項)。フリーレントの期間があっても、賃料の総額を期間にわたって均して収益にする、という考え方です。

借主の会計と税金

借主の側のフリーレントの会計処理について、新しい基準に直接の記述は見当たらないため、具体的な処理は顧問の会計士と相談します。

税務について、国税庁がフリーレントを名指しして取扱いを示した資料は見当たりません。法人税では、貸主が賃貸借で受ける使用料の収益の計上時期について、支払を受けるべき日に計上している場合の取扱いなどが定められています(法人税基本通達2-1-29)。フリーレントの期間をどう扱うかは契約の内容によって判断が分かれうるため、借主・貸主とも顧問の税理士に確認します。

交渉の進め方

フリーレントは、貸主が月額賃料を下げたくない場合に使う条件なので、賃料の値下げより交渉が通りやすいことがあります。交渉では、次のような材料を示します。

  • 長く入居する見込み:契約期間を長めにする、事業計画で長期の入居を示す
  • 入居を早める:空室の期間が短くなることは、貸主の利益になる
  • 広い区画をまとめて借りる:賃料の総額が大きいほど、貸主にとってのフリーレントの意味は相対的に小さくなる

一方で、フリーレントを長くする代わりに、短期解約の違約金の期間が長くなることもあります。フリーレント、月額賃料、敷金、違約金の期間を一つずつ交渉するのではなく、入居期間の総額と、途中で退去した場合の負担の両方で比べます。

行き違いになりうる点

  • 賃料発生日と入居日:フリーレントの期間を契約開始日から数える定めなら、内装工事の期間に使い切ることがある
  • 共益費:賃料が無料でも、共益費は契約開始日から払う定めのことがある
  • 日割り:月の途中で賃料が発生するときの、日割りの計算方法が決まっていないことがある
  • 違約金の対象:違約金に、免除された賃料だけでなく共益費相当額を含める定めのことがある
  • 解約予告の起算:フリーレントの期間中に解約を予告しても、違約金の期間の数え方が変わらない定めのことがある

どれも契約書を読めばわかることですが、募集資料の「フリーレント○か月」という表示だけでは読み取れません。申込みの前に、賃料発生日と違約金の条項を確かめます。

貸主から見たフリーレントの付け方

貸主の側では、入居の条件を良くする方法として、フリーレントのほかに、月額賃料の値下げ、敷金の減額、内装工事の一部負担などがあります。それぞれの特徴は次のとおりです。

貸主が使える方法貸主にとっての特徴
フリーレント契約上の賃料を保てる。短期解約の違約金と組み合わせて、早期の退去に備えられる
月額賃料の値下げ契約期間を通じて収入が減る。ほかの区画の賃料の水準や、ビルの評価にも影響する
敷金の減額毎月の収入は変わらない。未払いへの備えが薄くなる分は、保証会社の保証などで補える
内装工事の一部負担入居の初期費用を下げられる。退去時の原状回復の範囲とあわせて決める必要がある

フリーレントは、長く入居してもらえる借主ほど貸主の負担が相対的に小さくなる条件です。反対に、すぐに退去されると負担だけが残るため、違約金の定めとセットで考えることになります。

フリーレントと敷金

フリーレントがあっても、入居のときに預ける敷金は減りません。敷金を「賃料の○か月分」で決める契約では、基準になるのは契約上の月額賃料なので、フリーレントの有無にかかわらず、同じ額を預けることになります。

移転の資金計画では、フリーレントで浮く賃料よりも、預ける敷金の方が大きくなることがあります。月額賃料100万円、敷金10か月分の物件なら、フリーレント3か月で浮く賃料は300万円、預ける敷金は1,000万円です。

当社の「敷金半額くん」は、新しく借りるオフィスや店舗の敷金を、半額から最大0円まで減らすサービスです。減らした分の敷金の代わりに、当社が貸主に保証を提供します。フリーレントの交渉とあわせて、預ける敷金そのものを減らせば、移転の前後の資金の負担はさらに軽くなります。今のオフィスの敷金を、入居したまま取り戻す「敷金返還くん」もあります。どちらも、利用には当社の審査と貸主の承諾が必要で、当社への保証料がかかります。

よくある質問

フリーレントの期間中も共益費はかかりますか?

契約によります。賃料だけを免除し、共益費は払う契約もあります。契約書で、免除の対象を確かめます。

フリーレントは、どの物件でも交渉できますか?

貸主の事情によります。空室の期間が長い区画や、広い区画では交渉の余地がありますが、人気の物件では付かないこともあります。

フリーレントの期間に解約したらどうなりますか?

短期解約の違約金の定めがあれば、その定めに従って、免除された賃料を払うことになります。解約予告期間の賃料もかかるため、契約前に確かめます。

更新のときに、もう一度フリーレントは付きますか?

フリーレントは、新しく契約するときの条件として付けるのが基本で、更新のときに付くとは限りません。更新のときの条件は、賃料の改定とあわせて貸主と話し合います。

フリーレントがあると、敷金は少なくなりますか?

敷金を「賃料の○か月分」で決める契約では、基準になるのは契約上の月額賃料なので、フリーレントがあっても預ける敷金は変わりません。

まとめ

  • フリーレントは、入居後の一定期間の賃料を無料にする条件。共益費などは対象外のことがある
  • 貸主は、月額賃料を下げずに入居の条件を良くするために付ける。5年契約で3か月のフリーレントは、賃料5%の値下げと同じ負担
  • テナントにとっては、移転の二重家賃や内装工事の期間の賃料を減らせる
  • 短期解約の違約金、期間の数え方、無料になる範囲は、契約前に確かめる
  • フリーレントがあっても敷金は減らない。預ける敷金そのものを減らす方法もあわせて考える

出典:企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」第82項・BC121項、法人税基本通達2-1-29。

Tags#オフィス移転
Share
Back to Column List
オフィス移転の敷金 半額〜最大0円に 物件探し〜敷金減額まで窓口ひとつ
オフィスの敷金が、入居したまま返ってくる! 上場企業の利用実績あり!