フリーレントとは
入居後の一定期間、賃料がかからない条件
フリーレントとは、賃貸借契約が始まってから一定の期間、賃料を無料にする条件のことです。「フリーレント3か月」なら、最初の3か月分の賃料を払わなくてよいという意味になります。契約書では「賃料免除期間」「賃料発生日は○年○月○日とする」などと書かれることもあります。
無料になるのは賃料だけのことがある
フリーレントの期間でも、共益費(管理費)や、水道光熱費、駐車場代は払う契約があります。「フリーレント」と書かれていても、何が無料になるのかは、契約書の定めで確かめます。
貸主がフリーレントを付ける理由
貸主がフリーレントを付けるのは、月々の賃料を下げずに、入居の条件を良くするためです。
たとえば、月額賃料100万円で5年(60か月)の契約を結ぶ場合、フリーレント3か月を付けると、5年間に払う賃料の合計は5,700万円になります。これは、月額賃料を95万円に下げたのと同じ負担です。
| 条件 | 月額賃料 | 5年間に払う賃料 |
|---|
| フリーレントなし | 100万円 | 6,000万円 |
| フリーレント3か月 | 100万円 | 5,700万円 |
| 賃料を5%下げる | 95万円 | 5,700万円 |
貸主にとっては、月額賃料を下げると、ほかの区画の賃料や、ビルの収益の見え方にも影響します。フリーレントなら、契約上の賃料は100万円のまま、実際の負担を下げられます。空室の期間が長い区画ほど、フリーレントを付けてでも早く入居してもらう理由があります。
実質の賃料で比べる
フリーレントのある物件とない物件を比べるときは、契約期間を通じた「実質の月額賃料」に直します。
実質の月額賃料 = 月額賃料 ×(契約期間の月数 − フリーレントの月数)÷ 契約期間の月数
同じフリーレントの月数でも、契約期間が短いほど、1か月あたりの値引きの効果は大きくなります。月額賃料100万円の場合の実質の月額賃料(万円)は、次のとおりです。列の1か月・3か月・6か月は、フリーレントの月数です。小数第2位を四捨五入しています。
| 期間 | 1か月 | 3か月 | 6か月 |
|---|
| 2年 | 95.8 | 87.5 | 75.0 |
| 3年 | 97.2 | 91.7 | 83.3 |
| 5年 | 98.3 | 95.0 | 90.0 |
ただし、実際に何年入居するかは契約期間どおりとは限りません。短期解約の違約金がある場合は、途中で退去したときの負担も含めて比べます。
テナントにとっての使い道
移転のときの二重家賃を減らす
移転では、新しいオフィスの契約を結んでから内装工事をし、そのあとで引っ越します。その間、今のオフィスは解約予告期間が終わるまで賃料がかかるため、両方の家賃を払う期間が生じます。フリーレントがあれば、この重なりの負担を減らせます。

内装工事の期間の賃料を抑える
新しいオフィスの内装工事は、契約が始まってから行うため、その間は使えないのに賃料がかかります。フリーレントの期間を工事の期間に充てれば、使えない期間の賃料を払わずに済みます。
入居の初期費用を抑える
フリーレントの期間は、賃料の支払いが後ろにずれるため、入居の前後にかかる資金の負担が軽くなります。敷金、内装工事費、引っ越し費用が重なる時期の資金繰りに余裕が生まれます。
たとえば、月額賃料100万円・敷金10か月分の物件に移転し、今のオフィスは月額賃料80万円、解約予告6か月の場合、新しいオフィスの契約から6か月間に出ていくお金は次のようになります。今のオフィスの敷金は、明け渡して精算が終わったあとに戻るため、この期間には入りません。表の「なし」「3か月」はフリーレントの月数です。金額は例です。
| 項目 | なし | 3か月 |
|---|
| 新しいオフィスの敷金 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 新しいオフィスの賃料(6か月) | 600万円 | 300万円 |
| 今のオフィスの賃料(重なる4か月) | 320万円 | 320万円 |
| 内装工事・引っ越し | 800万円 | 800万円 |
| 合計 | 2,720万円 | 2,420万円 |
フリーレントで300万円の負担が減っても、敷金と工事の費用が大きいことに変わりはありません。移転の資金計画は、フリーレントの月数だけでなく、敷金の額とあわせて考えます。
契約で確かめること
| 確かめる項目 | 内容 |
|---|
| 無料になるもの | 賃料だけか。共益費・駐車場代も含むか |
| 期間の数え方 | 契約開始日から数えるのか、引渡し日・賃料発生日から数えるのか |
| 短期解約の違約金 | 一定期間内に解約したとき、免除された賃料を払い戻す定めがあるか。その期間と額 |
| 敷金の基準 | 敷金を「賃料の○か月分」で計算するときの賃料は、フリーレント前の賃料か |
| 賃料の改定 | 更新や改定のときに、フリーレント分を考慮した賃料の交渉がありうるか |
| 消費税 | 違約金や免除額の計算で、消費税をどう扱うか |
特に確かめたいのは、短期解約の違約金です。フリーレントは、長く入居してもらうことを前提にした条件なので、早く出ていく場合には、免除した賃料を返してもらうという定めを置くことがあります。
短期解約の違約金の計算
たとえば、月額賃料100万円、フリーレント3か月、「契約開始から3年以内に解約した場合は、フリーレント期間の賃料相当額を違約金として支払う」という定めの契約を考えます。
| 解約の時期 | 違約金 |
|---|
| 2年で解約 | 300万円(3か月分) |
| 3年を過ぎてから解約 | なし |
定め方によっては、「残りの期間に応じて按分する」「違約金とは別に、解約予告期間の賃料も払う」とされていることもあります。解約予告期間の賃料と違約金が重なると、早期の退去は大きな負担になります。事業の見通しが立ちにくい時期の移転では、違約金がかかる期間の長さも、フリーレントの月数と同じくらい大切です。
契約書の条文の例
| 定める項目 | 条文の例 |
|---|
| 賃料の発生 | 賃料は、令和○年○月○日(以下「賃料発生日」という。)から発生するものとし、契約開始日から賃料発生日の前日までの賃料を免除する |
| 免除の範囲 | 前項の免除は賃料に限り、共益費、水道光熱費その他の費用は契約開始日から負担する |
| 短期解約 | 賃借人が契約開始日から3年以内に本契約を解約する場合、賃借人は、免除された賃料の全額を違約金として賃貸人に支払う |
| 按分 | 前項の違約金は、契約開始日から解約日までの経過月数に応じて、免除された賃料の額に(36−経過月数)÷36を乗じた額とする |
最後の「按分」の定めがあれば、長く入居するほど違約金が小さくなります。交渉では、違約金の全額払いを按分に変えてもらう、違約金がかかる期間を短くしてもらう、といった提案も考えられます。