不動産会計

預り保証金・預り敷金の勘定科目|オーナー側の仕訳と税務

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預り保証金・預り敷金の勘定科目|オーナー側の仕訳と税務

ビルのオーナーがテナントから受け取る敷金や保証金は、入金があっても売上ではありません。退去のときに返す義務のある預かり金なので、貸借対照表では負債に計上します。一方、契約で「償却」や「退去時に賃料○か月分を差し引く」と定めた部分は返さないお金なので、どこかの時点で収益になります。

その時点は、会計と税務とで同じとは限りません。新しいリース会計基準を適用する会社では、返さない部分を賃貸予定期間にわたって収益に配分します。法人税では、返還しないこととなった日の事業年度の益金に算入します。個人のオーナーの不動産所得では、償却の定め方によって収入に計上する日が変わります。

この記事では、オーナーの側から、預り保証金・預り敷金の勘定科目、受け取ったときと返すときの仕訳、返さない部分の会計・法人税・所得税・消費税の扱い、建設協力金との違いを、基準と通達の番号とあわせて整理します。借りる側の処理は「敷金の会計処理」で扱っています。

預り保証金・預り敷金とは

返す義務のある預かり金

敷金は、民法で「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定められています(第622条の2第1項)。「保証金」という名目で受け取っていても、この目的のものは敷金にあたります。

貸主は、賃貸借が終わって物件の返還を受けたときなどに、受け取った敷金から賃借人の債務の額を差し引いた残りを返さなければなりません(同項)。オーナーにとっては、将来返す義務のある負債です。

勘定科目

科目の例使う場面
預り敷金敷金の名目で受け取ったもの
預り保証金保証金の名目で受け取ったもの
長期預り保証金返す時期が決算日の翌日から1年を超えるもの

科目の名前は会社が決め、同じ科目を続けて使います。流動負債と固定負債の区分については、企業会計原則注解16が、受入保証金などの債務で「貸借対照表日の翌日から起算して一年以内に入金又は支払の期限が到来するもの」は流動負債、「一年をこえて到来するもの」は固定負債に属すると定めています。退去の予告を受けて返す時期が1年以内になったら、流動負債に振り替えます。

受け取ったときと返すときの仕訳

例の条件

  • 月額賃料 100万円(税抜)のオフィス
  • 敷金 1,200万円(賃料12か月分)
  • 退去時に賃料2か月分(200万円)を償却し、返さない
  • 賃貸予定期間 5年

新しいリース会計基準を適用する会社の仕訳の例です。返さない200万円は、収益に配分する前の額として、返す額とは分けて負債に置きます。

受け取ったとき

借方金額貸方金額
現金預金1,200万円預り敷金1,000万円
長期前受収益(例)200万円

敷金は賃料ではないので、この入金は売上になりません。返さない部分の科目名は例です。

決算のたび(5年間)

借方金額貸方金額
長期前受収益(例)40万円受取賃料など40万円

退去して返すとき

原状回復の費用などテナントの債務がなかった場合、預り敷金の1,000万円を返します。

借方金額貸方金額
預り敷金1,000万円現金預金1,000万円

テナントの未払い賃料や原状回復の費用がある場合は、敷金をその債務の弁済に充てることができます(民法第622条の2第2項)。その分を差し引いて返します。

未払い賃料に充てて返すとき

退去の時点で、すでに未収賃料として計上している未払いの賃料が100万円あった場合です。

借方金額貸方金額
預り敷金1,000万円未収賃料100万円
現金預金900万円

差し引いた額と内訳は、精算書でテナントに示します。差し引く根拠が契約書と民法のどちらにあるかも、精算書に書いておくと、あとで説明を求められたときに困りません。

新しいリース会計基準を適用しない会社の会計処理は、次の節の税務の扱いとあわせて、顧問の税理士・会計士と決めておきます。

オーナーが受け取った敷金1,200万円のうち、返す1,000万円は負債のまま置く。返さない200万円は、新リース会計基準では5年にわたり年40万円ずつ収益に配分する。個人オーナーの所得税では、契約で当初から返さない額が決まっていれば、退去の年の収入とは限らない。法人税は契約の定め方で時期が変わる

返さない部分の扱い

会計:賃貸予定期間にわたって定額で収益に

新しいリース会計基準の適用指針は、貸手が預かる敷金について、次のように定めています(企業会計基準適用指針第33号 第86項)。

預り企業である貸手は、将来返還する預り敷金について、債務額をもって貸借対照表価額とする。預り敷金のうち、預り敷金の預り企業である貸手から差入企業である借手に返還されないことが契約上定められている金額について、賃貸予定期間にわたり定額法により収益に計上する。

例の条件では、返さない200万円を賃貸予定期間の5年にわたって、1年あたり40万円ずつ収益に計上します。返す1,000万円は、債務の額のまま負債に置きます。

この基準は、2027年4月1日以後に開始する事業年度の期首から適用され、2025年4月1日以後に開始する事業年度の期首からの早期適用も認められています(企業会計基準第34号 第58項)。

法人税:返還しないこととなった日の事業年度の益金

法人税基本通達2-1-41は、保証金や敷金として受け入れた金額(賃貸借の開始当初から返還が不要なものを除く)であっても、「期間の経過その他当該賃貸借契約等の終了前における一定の事由の発生により返還しないこととなる部分の金額は、その返還しないこととなった日の属する事業年度の益金の額に算入する」としています。

会計で期間にわたって配分した額と、税務で益金に算入する時期は、ずれることがあります。例のように契約の当初から返さない額が決まっている場合を含め、どの時点で益金になるかは契約の定め方によるため、契約書の償却の条項を税理士と確かめて、処理を決めておきます。

所得税:個人オーナーの不動産所得

個人のオーナーの場合、所得税基本通達36-7が、敷金や保証金のうち返さない部分を不動産所得の収入に計上する日を、3つに分けて定めています。

返さない部分の定め方収入に計上する日
貸付期間の経過に関係なく返さない資産の引渡しの日など(36-6の日)
貸付期間の経過に応じて返さない契約で返さないこととなった日
貸付けが終わるまで確定しない貸付けが終了した日

国税庁は、質疑応答事例「返還を要しない敷金等に係る提出時期」で、敷金や保証金のうち、当初から、あるいは一定期間が経過すれば貸主に帰属すると契約書で取り決められているものは不動産所得の収入金額となり、その計上時期は「必ずしもその賃貸借契約の終了時ではなく、返還を要しないことが確定した都度、その確定した金額を収入金額として計上する」と説明しています。

例の「退去時に賃料2か月分を償却」は、期間の経過に関係なく、契約の当初から返さない額が決まっているので、表の1つ目にあたると考えられます。「退去時に償却」と書いてあっても、退去の年にまとめて収入にすればよいとは限りません。

消費税:返さない部分は課税

消費税法基本通達5-4-3は、建物の賃貸借契約の締結などに当たって受ける保証金や敷金のうち、「賃貸借期間の経過その他当該賃貸借契約等の終了前における一定の事由の発生により返還しないこととなるものは、権利の設定の対価であるから資産の譲渡等の対価に該当する」とし、契約の終了に伴って返すものは該当しないとしています。

国税庁のタックスアンサーNo.6225は、事業用の建物の賃貸借で返還しない保証金や敷金は課税の対象となり、住宅の賃貸借で返還しないものは非課税になると説明しています。オフィスや店舗のオーナーにとって、償却の部分は課税売上です。

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建設協力金との違い

テナントが建物の建設資金を貸す建設協力金は、敷金とは別の扱いです。適用指針は、建設協力金など「預り預託保証金(敷金を除く。)」について、次のように定めています。

比べる項目建設協力金など預り敷金
返す部分返済までのキャッシュ・フローを割り引いた現在価値で計上し、受取額との差額は長期前受家賃(第83項)債務額のまま(第86項)
影響が小さいもの現在価値の処理をせず、債務に準じて処理できる(第84項)―
返さない部分賃貸予定期間にわたり定額法で収益(第85項)賃貸予定期間にわたり定額法で収益(第86項)

建設協力金の仕組みは「建設協力金とは」で整理しています。

決算のたびに確かめること

  • テナントごとの預り敷金の残高が、契約書の額と一致しているか
  • 償却の定めがあるテナントについて、返さない額と、その扱い(会計の配分、税務の計上時期)が決まっているか
  • 退去の予告を受けたテナントの敷金を、流動負債に振り替えたか
  • 返還のときに差し引いた原状回復費用や未払い賃料の精算書を保存しているか

テナントごとに、次のような一覧を作っておくと、決算での確認と、退去のときの精算が早くなります。

テナント敷金と返さない額返す時期
A社預り敷金1,000万円。返さない額200万円(配分済み80万円)未定
B社預り敷金600万円。返さない額なし。退去の予告を受けている来年3月
C社預り敷金450万円。返さない額90万円(配分済み90万円)未定

「配分済み」は、新しいリース会計基準で収益に配分した累計です。B社のように退去の予告を受けて返す時期が1年以内になったものは、流動負債に振り替えます。金額は例です。

物件を売却するときは、預り敷金を返す債務が買主に引き継がれます(民法第605条の2第4項)。売買の精算の方法は「オーナーチェンジと敷金」で整理しています。

預かり敷金を抱えるオーナーの選択肢

預り敷金は、テナントが退去するたびに現金で返す負債です。複数のテナントの退去が重なれば、まとまった資金が必要になります。

当社の「敷金返還くん(不動産オーナー向け)」は、預かっている敷金を当社の保証に置き換えて、テナントに返還できる仕組みです。賃料の不払いや原状回復の費用などの債務は当社の保証でカバーするため、敷金を返しても担保力は保たれます。賃料の改定や契約の更新の交渉で、テナントに示せる材料のひとつとして使えます。利用には当社の審査があり、当社への保証料がかかります。

よくある質問

敷金を受け取ったら、売上に計上しますか?

しません。返す義務のある預かり金なので、預り敷金や預り保証金として負債に計上します。返さない部分だけが、会計・税務それぞれの時期に収益になります。

「保証金」の名目で受け取ったお金も、預り敷金と同じ扱いですか?

民法は、名目を問わず、賃料などの債務を担保する目的で受け取る金銭を敷金としています(第622条の2第1項)。建設資金として受け取る建設協力金は、会計基準で別の扱いになります(適用指針第33号 第83項〜第85項)。

償却の部分は、受け取ったときに収益にしてよいですか?

新しいリース会計基準を適用する会社では、賃貸予定期間にわたって定額で収益に計上します(第86項)。税務の計上時期は、法人は法人税基本通達2-1-41、個人は所得税基本通達36-7によります。どちらも契約の定め方で変わるため、税理士に確認します。

預り敷金に利息を付けて返す必要はありますか?

民法第622条の2第1項は、受け取った敷金の額から賃借人の債務の額を控除した残額を返すと定めており、利息を付ける定めはありません。契約で利息を付けると定めている場合は、その定めによります。

預り敷金は、流動負債と固定負債のどちらですか?

返す時期が決算日の翌日から1年以内なら流動負債、1年を超えるなら固定負債です(企業会計原則注解16)。

まとめ

  • 受け取った敷金・保証金は売上ではなく負債。科目は預り敷金・預り保証金・長期預り保証金など
  • 返す時期が1年以内になったら流動負債に振り替える
  • 返さない部分は、新リース会計基準では賃貸予定期間にわたり定額で収益。法人税は法人税基本通達2-1-41、個人は所得税基本通達36-7の区分による
  • 「退去時に償却」でも、当初から返さない額が決まっていれば、退去の年の収入とは限らない
  • 事業用の建物で返さない部分は、消費税の課税の対象
  • 建設協力金は、現在価値で計上する別の扱い。預かり敷金を保証に置き換える方法もある

出典:民法第605条の2・第622条の2、企業会計基準第34号第58項、企業会計基準適用指針第33号第83項〜第86項、企業会計原則注解注16、法人税基本通達2-1-41、所得税基本通達36-7、国税庁 質疑応答事例「返還を要しない敷金等に係る提出時期」、消費税法基本通達5-4-3、国税庁「No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など」。

Tags#不動産会計
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