創業・起業

クリニック開業の資金調達|開業資金の内訳、日本政策金融公庫と福祉医療機構の融資、医療機器の調達

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クリニック開業の資金調達|開業資金の内訳、日本政策金融公庫と福祉医療機構の融資、医療機器の調達

クリニック(診療所)や歯科医院を開業するには、物件を借りる費用、内装工事、医療機器、開業後しばらくの運転資金など、まとまった資金が必要です。日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」では、開業した業種のうち「医療・福祉」が16.7%を占め、サービス業に次いで多くなっています。

クリニックの開業では、一般の事業と同じ日本政策金融公庫や銀行の融資に加えて、病院や診療所の整備に融資する独立行政法人福祉医療機構(WAM)の制度も使える場合があります。一方で、医療法人は剰余金の配当が禁じられているため、株式会社のように出資で資金を集める方法はとりにくくなります。

この記事では、クリニックの開業資金の内訳、使える融資とその条件、医療機器の調達方法、物件を借りる費用を抑える方法を、公的な資料をもとに整理します。

クリニックの開業資金の内訳

クリニックの開業資金は、次のように分けて見積もります。

区分主な中身
物件を借りる費用敷金(保証金)、前払いの賃料、仲介手数料
内装・設備内装工事、給排水・電気の工事、診察室や待合室の設備
医療機器診療科に応じた検査・治療の機器、電子カルテ
運転資金開業前後の人件費、家賃、薬や診療材料、広告費

医療機器は診療科によって大きく違い、画像診断の機器などを入れる場合は高額になります。また、保険診療の報酬は請求してから入金されるまでに時間がかかるため、開業後しばらくは、人件費や家賃を手元の資金で払い続けることになります。

オフィスビルの区画を借りる場合の敷金

クリニックは、オフィスビルの区画を借りて開業することもあります。当社が運営するオフィス検索サイト「Growth Office」に掲載中の東京都の空室区画では、20〜50坪の区画の敷金の月数の中央値は6か月分でした(2026年9月28日時点、敷金の月数がわかる区画のみ)。

たとえば、月額賃料60万円の区画を敷金6か月分で借りると、敷金だけで360万円になり、退去するまで戻りません(賃料は計算のための例です)。

クリニックの開業に使える融資

クリニックの開業で使う主な融資先は、日本政策金融公庫、福祉医療機構、民間の金融機関です。

クリニックの開業資金と、使える主な融資。敷金・保証金、内装・設備、開業時の運転資金は日本政策金融公庫、医療機器はリースや日本政策金融公庫。条件を満たせば福祉医療機構の新築資金(賃借の敷金・保証金は15年以内)、機械購入資金(2,500万円以内)、長期運転資金(300万円)も使える。無床・歯科診療所が新築資金を使えるのは、診療所不足地域での新設や在宅療養支援診療所などの新設の場合で、機械購入資金と長期運転資金は新築資金を使う場合のみ

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める人や、事業開始後おおむね7年以内の人が使える融資です。融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内、運転資金10年以内で、どちらも5年以内の据置期間をとれます。女性、35歳未満または55歳以上の人、市区町村の創業支援を受けて証明書を取得した人などは、低い利率(特別利率)の対象になります。

創業時の融資の使い方は「起業・開業の資金調達」、日本政策金融公庫の制度全体は「日本政策金融公庫の融資」で説明しています。

福祉医療機構(WAM)の医療貸付

福祉医療機構は、病院や診療所、介護老人保健施設などの整備に融資している独立行政法人です。診療所を新たに開設する場合、主に次の融資があります。

資金融資額返済期間(据置期間)
新築資金(建築・購入)無床・歯科診療所は3億円以内耐火建物20年以内(2年以内)
新築資金(賃借の敷金・保証金など)同上15年以内(1年以内)
機械購入資金2,500万円以内(購入価格の80%以内)5年以内(6か月以内)
新設に伴う長期運転資金300万円(所要資金の80%以内)1年以上3年以内(6か月以内)

建物を借りて開業する場合でも、敷金・保証金などを新築資金の対象にできます。機械購入資金と長期運転資金は、新設にあたって新築資金を使う場合にだけ使えます。

注意したいのは、無床診療所と歯科診療所が新築資金を使えるのは、診療所不足地域での新設の場合と、在宅療養支援(歯科)診療所やかかりつけ医機能を持つ診療所の新設の場合に限られることです。開業する地域が診療所不足地域にあたるかは、福祉医療機構のウェブサイトで調べられます。

福祉医療機構の手続きで気をつけること

  • 事業に着手する前に相談する:貸付の内定の前に事業に着手すると(工事の請負契約を含む)、融資の対象にならないことがある
  • 都道府県知事の証明書が要る:借入申込書類に、都道府県知事の証明書が必要
  • 審査に時間がかかる:直接貸付の場合、申し込みの受付から貸付の内定まで、通常2〜3か月程度かかる
  • 窓口は2つ:受託金融機関を通じる代理貸付と、福祉医療機構に直接申し込む直接貸付がある

開業の時期から逆算して、物件の契約や内装工事の発注より前に相談を始めます。

民間の金融機関

銀行や信用金庫も、クリニックの開業に融資しています。信用保証協会の保証付きの融資や、自治体の制度融資を使える場合もあります。福祉医療機構の代理貸付は、受託金融機関を通じて申し込むため、取引のある金融機関が受託金融機関かどうかも確かめておきます。

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開業までの流れと資金の準備

クリニックの開業では、融資の審査や手続きに時間がかかるため、物件や工事の契約より前に資金の相談を始めることが大切です。おおまかな流れは次のとおりです。

  1. 開業する場所と診療の内容を決める:診療圏の患者の見込みを調べ、事業計画と資金計画を作る
  2. 融資の相談をする:日本政策金融公庫や金融機関に相談する。福祉医療機構を使う場合は、診療所不足地域にあたるかを調べ、内定の前に事業に着手しないよう注意する
  3. 物件を契約し、内装工事と医療機器を発注する:融資の見通しが立ってから契約する
  4. 診療所を開設し、届け出る:医療法では、医師や歯科医師が診療所を開設したときは、開設後10日以内に都道府県知事に届け出なければならないとされています(第8条)
  5. 保険診療の準備をする:保険診療を行うには、保険医療機関の指定を受ける必要がある

開業後、保険診療の報酬が入るまでの期間の人件費や家賃も、資金計画に入れておきます。

医療機器の調達

高額な医療機器は、買うか、リースで使うかを選べます。

方法特徴
融資で買う福祉医療機構の機械購入資金(購入価格の80%以内)や、日本政策金融公庫の設備資金を使う。機器は自分の資産になる
リースはじめにまとまったお金を払わずに使える。その後は毎月リース料を払う

リースは開業時の資金を抑えられますが、リース料には金利や手数料にあたる分が含まれるため、合計は機器の代金を上回ることがあります。機器の使う期間と、リース料の合計、買う場合の返済額を並べて比べます。

医療法人と出資

医療法人は、医療法で剰余金の配当が禁じられています(第54条)。株式会社のように、配当を見込む投資家から出資を集めて資金を調達する方法はとれないため、クリニックの開業資金は、自己資金と融資が中心になります。

物件を借りる費用を抑える

敷金(保証金)を減らす

クリニックの開業では、医療機器や内装に多くの資金がかかるため、物件の敷金を抑えられると、その分を機器や運転資金に回せます。

当社の「敷金半額くん」は、新しく借りるオフィスや店舗の敷金を、半額から最大0円まで減らすサービスです。減らした分の敷金の代わりに、当社が貸主に保証を提供します。先の例なら、敷金360万円のうち180万〜360万円を開業資金に回せます。利用には当社の審査と貸主の承諾が必要です。

すでに開業しているクリニックなら、預けている敷金を入居したまま現金に戻す「敷金返還くん」もあります。医療機器の買い替えや、分院の開設の資金にあてることができます。

よくある質問

クリニックの開業に使える融資はどれですか?

日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金、福祉医療機構の医療貸付、民間の金融機関の融資が中心です。福祉医療機構の新築資金は、無床・歯科診療所の場合、診療所不足地域での新設などに限られます。

借りた物件で開業する場合も福祉医療機構の融資を使えますか?

使える場合があります。福祉医療機構の新築資金は、建物を賃借する場合の敷金・保証金なども対象で、返済期間は15年以内(据置期間1年以内)です。ただし、新築資金を使える条件を満たす必要があります。

福祉医療機構の審査にはどのくらいかかりますか?

直接貸付の場合、借入申込書の受付から貸付の内定まで、通常のケースで2〜3か月程度とされています。内定の前に工事の契約などを進めると融資の対象にならないことがあるため、早めに相談します。

医療機器は買うのとリースのどちらがよいですか?

開業時の資金を抑えたいならリース、支払いの総額を抑えたいなら融資で買う方法が合います。リース料の合計と、買う場合の返済額を並べて比べます。

まとめ

  • クリニックの開業資金は、物件を借りる費用、内装・設備、医療機器、運転資金に分けて見積もる
  • 日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、限度額7,200万円
  • 福祉医療機構の医療貸付は、賃借の敷金・保証金、医療機器、開業時の運転資金も対象。ただし無床・歯科診療所の新築資金は診療所不足地域での新設などに限られ、内定前の着手は対象外になることがある
  • 医療法人は剰余金の配当ができないため、開業資金は自己資金と融資が中心
  • 物件の敷金は、保証に置き換えて減らし、その分を医療機器や運転資金に回す方法もある

出典:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月5日)、日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」、独立行政法人福祉医療機構「ご融資の種類(診療所)」「ご融資の手続き(診療所)」、医療法第8条・第54条、Growth Office 掲載データ(東京都の空室区画、2026年9月28日時点)。

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