開業までの流れと資金の準備
クリニックの開業では、融資の審査や手続きに時間がかかるため、物件や工事の契約より前に資金の相談を始めることが大切です。おおまかな流れは次のとおりです。
- 開業する場所と診療の内容を決める:診療圏の患者の見込みを調べ、事業計画と資金計画を作る
- 融資の相談をする:日本政策金融公庫や金融機関に相談する。福祉医療機構を使う場合は、診療所不足地域にあたるかを調べ、内定の前に事業に着手しないよう注意する
- 物件を契約し、内装工事と医療機器を発注する:融資の見通しが立ってから契約する
- 診療所を開設し、届け出る:医療法では、医師や歯科医師が診療所を開設したときは、開設後10日以内に都道府県知事に届け出なければならないとされています(第8条)
- 保険診療の準備をする:保険診療を行うには、保険医療機関の指定を受ける必要がある
開業後、保険診療の報酬が入るまでの期間の人件費や家賃も、資金計画に入れておきます。
医療機器の調達
高額な医療機器は、買うか、リースで使うかを選べます。
| 方法 | 特徴 |
|---|
| 融資で買う | 福祉医療機構の機械購入資金(購入価格の80%以内)や、日本政策金融公庫の設備資金を使う。機器は自分の資産になる |
| リース | はじめにまとまったお金を払わずに使える。その後は毎月リース料を払う |
リースは開業時の資金を抑えられますが、リース料には金利や手数料にあたる分が含まれるため、合計は機器の代金を上回ることがあります。機器の使う期間と、リース料の合計、買う場合の返済額を並べて比べます。
医療法人と出資
医療法人は、医療法で剰余金の配当が禁じられています(第54条)。株式会社のように、配当を見込む投資家から出資を集めて資金を調達する方法はとれないため、クリニックの開業資金は、自己資金と融資が中心になります。
物件を借りる費用を抑える
敷金(保証金)を減らす
クリニックの開業では、医療機器や内装に多くの資金がかかるため、物件の敷金を抑えられると、その分を機器や運転資金に回せます。
当社の「敷金半額くん」は、新しく借りるオフィスや店舗の敷金を、半額から最大0円まで減らすサービスです。減らした分の敷金の代わりに、当社が貸主に保証を提供します。先の例なら、敷金360万円のうち180万〜360万円を開業資金に回せます。利用には当社の審査と貸主の承諾が必要です。
すでに開業しているクリニックなら、預けている敷金を入居したまま現金に戻す「敷金返還くん」もあります。医療機器の買い替えや、分院の開設の資金にあてることができます。
よくある質問
クリニックの開業に使える融資はどれですか?
日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金、福祉医療機構の医療貸付、民間の金融機関の融資が中心です。福祉医療機構の新築資金は、無床・歯科診療所の場合、診療所不足地域での新設などに限られます。
借りた物件で開業する場合も福祉医療機構の融資を使えますか?
使える場合があります。福祉医療機構の新築資金は、建物を賃借する場合の敷金・保証金なども対象で、返済期間は15年以内(据置期間1年以内)です。ただし、新築資金を使える条件を満たす必要があります。
福祉医療機構の審査にはどのくらいかかりますか?
直接貸付の場合、借入申込書の受付から貸付の内定まで、通常のケースで2〜3か月程度とされています。内定の前に工事の契約などを進めると融資の対象にならないことがあるため、早めに相談します。
医療機器は買うのとリースのどちらがよいですか?
開業時の資金を抑えたいならリース、支払いの総額を抑えたいなら融資で買う方法が合います。リース料の合計と、買う場合の返済額を並べて比べます。
まとめ
- クリニックの開業資金は、物件を借りる費用、内装・設備、医療機器、運転資金に分けて見積もる
- 日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、限度額7,200万円
- 福祉医療機構の医療貸付は、賃借の敷金・保証金、医療機器、開業時の運転資金も対象。ただし無床・歯科診療所の新築資金は診療所不足地域での新設などに限られ、内定前の着手は対象外になることがある
- 医療法人は剰余金の配当ができないため、開業資金は自己資金と融資が中心
- 物件の敷金は、保証に置き換えて減らし、その分を医療機器や運転資金に回す方法もある
出典:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月5日)、日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」、独立行政法人福祉医療機構「ご融資の種類(診療所)」「ご融資の手続き(診療所)」、医療法第8条・第54条、Growth Office 掲載データ(東京都の空室区画、2026年9月28日時点)。