法律・制度

定期借家契約とは|普通借家との違いと事業用の注意点

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定期借家契約とは|普通借家との違いと事業用の注意点

オフィスや店舗の募集資料に「定期借家契約(5年)」と書かれた物件があります。定期借家契約は、期間が満了すると更新されずに終わる賃貸借です。ふつうの賃貸借(普通借家)と同じ感覚で借りると、「期間が終わったら出なければならない」「途中で解約できない」「賃料の減額を求められない」といった場面で、思わぬ制約に直面することがあります。

定期借家契約のルールは、借地借家法第38条に定められています。普通借家との違いを押さえておけば、契約の前にどこを確かめ、何を交渉すべきかが見えてきます。貸主にとっても、期間満了で確実に明け渡してもらえる、建替えの計画を立てやすいといった理由で選ばれる契約です。

この記事では、定期借家契約の意味、普通借家との違い、契約が成り立つための条件、事業用の借主が特に気をつけたい途中解約と再契約、終了の通知、賃料改定の特約、貸主から見た利点、敷金の扱いを整理します。

定期借家契約とは

期間が満了すると、更新されずに終わる賃貸借

借地借家法は、「期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる」と定めています(第38条第1項)。この「更新がない」賃貸借が定期借家契約(定期建物賃貸借)です。

契約書に定めた期間が満了すれば、賃貸借は終わります。借主が引き続き使いたい場合は、貸主と合意して、あらためて契約を結ぶ(再契約する)必要があります。

普通借家は、期間が満了しても原則として更新される

これに対して普通借家では、期間の満了の1年前から6か月前までに更新しない旨の通知をしなければ、従前の契約と同じ条件で更新したものとみなされます(借地借家法第26条第1項)。貸主が更新を拒むには「正当の事由」が必要で、その判断では、建物を使う必要性や、明渡しと引換えに貸主が申し出た財産上の給付(いわゆる立退料)なども考慮されます(同法第28条)。

普通借家との違い

比べる項目普通借家定期借家
期間の満了原則として更新される(第26条)更新されずに終わる(第38条第1項)
貸主が終わらせる条件正当の事由が必要(第28条)期間の満了。1年以上の契約は終了の通知が必要(第38条第6項)
契約のしかた口頭でも成り立つ書面(電磁的記録を含む)に限る(第38条第1項・第2項)
事前の説明不要更新がないことを書面で説明する必要がある(第38条第3項)
1年未満の期間期間の定めがないものとみなされる(第29条第1項)1年未満でも定められる(第38条第1項)
借主の途中解約契約の定めによる法律上の解約の申入れは、居住用で200㎡未満の場合に限られる(第38条第7項)
賃料の増減の請求請求できる(第32条)賃料改定の特約があれば第32条は適用されない(第38条第9項)

普通借家と定期借家の違い。普通借家は期間が満了しても原則として更新され、貸主が終わらせるには正当の事由が必要。定期借家は期間が満了すると更新されずに終わり、1年以上の契約では貸主が期間満了の1年前から6か月前までに終了を通知する。引き続き使うには再契約が必要

契約が成り立つための条件

定期借家契約として有効になるには、次の条件を満たす必要があります。

書面(電磁的記録を含む)で契約する

定期借家契約は、公正証書などの書面で結ぶ必要があります(第38条第1項)。電磁的記録で結んだ契約も、書面によるものとみなされます(同条第2項)。

契約とは別に、更新がないことを書面で説明する

貸主は、あらかじめ、借主に対し、契約の更新がなく期間の満了で賃貸借が終わることを記載した書面を交付して説明しなければなりません(第38条第3項)。借主の承諾があれば、電磁的方法で提供することもできます(同条第4項)。

この説明をしなかったときは、「契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする」とされています(第38条第5項)。つまり、説明がなければ、普通借家として扱われることになります。借主としては、契約書とは別に、説明の書面を受け取っているかを確かめておきます。

事業用の借主が特に気をつけたいこと

途中で解約できるかは、契約の定め次第

定期借家契約では、借主からの法律上の解約の申入れは、「居住の用に供する建物の賃貸借」で床面積が200㎡未満のものに限られています(第38条第7項)。オフィスや店舗の賃貸借には、この法律上の解約権がありません。

そのため、事業用の定期借家契約で途中解約ができるかどうかは、契約書に中途解約の条項があるかどうかで決まります。条項がなければ、原則として期間の満了まで賃料を払い続けることになります。契約の前に、「借主は○か月前に予告して解約できる」「解約する場合は残りの期間の賃料の○か月分を違約金とする」といった条項を入れられないかを交渉します。

期間が満了したら、再契約できるとは限らない

期間の満了後も同じ物件を使いたい場合は、貸主と新しく契約を結ぶ必要があります。再契約に応じるかどうかは貸主の判断で、賃料や敷金などの条件も変わることがあります。建替えなどの計画があるビルでは、再契約できないこともあります。

事業の拠点として長く使う予定なら、契約の前に、再契約の見込みや、再契約のときの条件の考え方を貸主に確かめておきます。期間の満了に合わせて移転する可能性があるなら、移転先を探す時間、内装工事の期間、今の物件との家賃の重なりを見込んだ計画が必要です。

終了の通知の時期を確かめる

期間が1年以上の定期借家契約では、貸主は、期間の満了の1年前から6か月前までの間に、期間の満了で賃貸借が終わることを借主に通知しなければ、その終了を借主に主張できません(第38条第6項)。通知がこの期間を過ぎてからされた場合は、その通知の日から6か月を経過するまでは、借主は明け渡す必要がありません(同項ただし書)。

終了の通知が届いたら、明渡しの日から逆算して、移転の準備を始めます。

賃料改定の特約があると、賃料の増減を請求できない

普通借家では、経済事情の変動などで賃料が不相当になったときは、借主も貸主も賃料の増減を請求できます(第32条)。しかし定期借家契約では、賃料の改定に関する特約がある場合、この規定は適用されません(第38条第9項)。

たとえば「期間中、賃料は改定しない」「2年ごとに○%ずつ上げる」といった特約があれば、周辺の賃料が下がっても、借主は減額を請求できません。長い期間の契約ほど、賃料改定の特約の中身が大きな意味を持ちます。

契約書の条文の例

事業用の定期借家契約で、借主の立場から入れておきたい条項の例です。

項目条文の例
中途解約賃借人は、本契約の期間中であっても、6か月前までに書面で予告することにより、本契約を解約することができる
解約の違約金賃借人が契約開始日から2年以内に前項により解約する場合は、賃料の3か月分を違約金として支払う
再契約の協議賃貸人及び賃借人は、期間満了の1年前までに、再契約の可否及び条件について誠実に協議する
賃料の改定賃料は、契約開始日から3年を経過した時点で、近傍同種の建物の賃料を参考に協議のうえ改定することができる

中途解約の条項があれば、法律上の解約権がない事業用でも、予告と違約金の範囲で解約できます。再契約の協議の条項は、再契約を約束するものではありませんが、期間満了の間際になってから条件を知らされる事態を避けられます。

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普通借家と定期借家、どちらの物件を選ぶか

同じ条件なら普通借家の方が借主に有利ですが、立地や賃料、区画の条件で定期借家の物件を選ぶこともあります。事業の見通しに合わせて、次のように考えます。

借主の状況考え方
5年以上、同じ場所で事業を続けたい普通借家が向く。定期借家なら再契約の見込みを確かめる
数年以内に移転や拡張の予定がある定期借家の期間を予定に合わせれば、使い勝手がよいこともある
事業の見通しが立ちにくい中途解約の条項がない定期借家は避ける。条項を入れる交渉をする
内装に大きく投資する(飲食店・クリニックなど)期間満了で退去すると投資を回収できないことがある。期間と再契約を慎重に確かめる
賃料の下落局面を見込む賃料改定の特約で減額を請求できなくならないかを確かめる

終了の通知が来たら

期間が1年以上の定期借家契約では、貸主は期間満了の1年前から6か月前までに終了を通知します。通知を受けてから明け渡すまでの段取りは、たとえば次のとおりです。

  1. 通知を受けたらすぐ:再契約の可能性と条件を貸主に確かめる。再契約しない場合は移転の準備を始める
  2. 満了の9〜6か月前:移転先を探し、申込み・契約をする。内装工事の見積もりをとる
  3. 満了の5〜2か月前:移転先の内装工事。今の物件の原状回復の範囲と工事の手配を確かめる
  4. 満了の1か月前〜満了日:引っ越し、原状回復の工事、明渡し
  5. 明渡しのあと:敷金の精算書を確かめ、返還を受ける

通知から明渡しまで半年から1年しかないため、移転先の内装工事の期間を考えると、余裕はあまりありません。期間満了の時期が近づいたら、通知を待たずに貸主に意向を確かめておくと安心です。

普通借家から定期借家への切り替えを求められたら

更新の時期などに、貸主から「次は定期借家契約で」と求められることがあります。事業用の賃貸借で、借主が合意して新たに定期借家契約を結ぶ場合も、書面での契約と、更新がないことを説明する書面が必要です(第38条第1項・第3項)。

切り替えに合意すると、普通借家で認められていた、正当の事由がなければ更新を拒まれないという借主の立場を手放すことになります。応じるかどうかは、期間、再契約の見込み、中途解約の条項、賃料の条件とあわせて判断し、必要であれば、切り替えの見返りとして賃料や敷金の条件の見直しを求めます。

貸主から見た定期借家契約

貸主が定期借家契約を選ぶのは、期間の満了で確実に賃貸借を終わらせられるからです。普通借家では、更新を拒むのに正当の事由が必要で、立退料の支払いを求められることもあります。定期借家契約なら、建替えや大規模な改修、用途の変更などの計画に合わせて、明け渡しの時期を決められます。

また、賃料改定の特約で、期間中の賃料の動き方を決めておけます。一方で、途中解約や再契約の自由度が低い分、借主に敬遠されることもあり、募集の条件(賃料、フリーレント、中途解約の条項など)で調整することになります。

建物を取り壊すことが法令や契約で明らかな場合に、取り壊すときに賃貸借が終わると定める「取壊し予定の建物の賃貸借」(第39条)もあります。この特約は、取り壊す事由を記載した書面でする必要があります。

敷金と定期借家契約

定期借家契約でも、敷金の扱いは普通借家と同じです。期間が満了し、物件を明け渡したときに、未払いの賃料などを差し引いた残りが返されます(民法第622条の2)。

再契約する場合は、前の契約の敷金をいったん精算して新しい契約で預け直すのか、そのまま新しい契約の敷金に充てるのかを、再契約の書面で決めておきます。何も決めずに再契約すると、精算の時期や額をめぐって行き違いが起きることがあります。敷金が返ってくるまでの流れは「敷金が返ってこない・少ないときの対処」で整理しています。

期間の満了に合わせて移転する場合、今の物件の敷金が返ってくる前に、移転先で敷金を預けることになります。当社の「敷金半額くん」は、新しく借りるオフィスや店舗の敷金を、半額から最大0円まで減らすサービスです。減らした分の敷金の代わりに、当社が貸主に保証を提供します。入居中の物件の敷金を、入居したまま取り戻す「敷金返還くん」もあります。どちらも、利用には当社の審査と貸主の承諾が必要で、当社への保証料がかかります。

契約前に確かめること

  • 契約の種類:普通借家か定期借家か。定期借家なら、更新がないことを説明する書面を受け取ったか
  • 期間:事業計画と合っているか。期間満了のあと、どうするか
  • 中途解約の条項:借主から解約できるか。予告期間と違約金
  • 再契約:再契約の見込み、再契約のときの条件の考え方
  • 賃料改定の特約:期間中の賃料をどう決めるか。周辺の賃料が下がったときにどうなるか
  • 原状回復と敷金:期間満了で明け渡すときの原状回復の範囲、敷金の精算

よくある質問

定期借家契約は、途中で解約できますか?

オフィスや店舗の場合、法律上の解約の申入れの権利はありません(借地借家法第38条第7項は居住用で200㎡未満に限っています)。契約書に中途解約の条項があれば、その定めに従って解約できます。

期間が満了したら、必ず出なければなりませんか?

貸主と合意して再契約すれば、引き続き使えます。再契約に応じるかどうかは貸主の判断です。

定期借家の説明の書面を受け取っていません。どうなりますか?

貸主が更新がないことを書面で説明していなかった場合、更新がないこととする定めは無効になります(第38条第5項)。その場合は、普通借家として扱われることになります。

定期借家契約でも、賃料の減額を求められますか?

賃料改定に関する特約がなければ、普通借家と同じく賃料の増減を請求できます。特約がある場合は、第32条は適用されません(第38条第9項)。

貸主から終了の通知が来ませんでした。いつまで使えますか?

期間が1年以上の契約で、貸主が期間満了の1年前から6か月前までに通知しなかった場合、貸主は終了を借主に主張できません。通知がその後にされたときは、通知の日から6か月を経過するまでは明け渡す必要はありません(第38条第6項)。

まとめ

  • 定期借家契約は、期間が満了すると更新されずに終わる賃貸借。書面での契約と、更新がないことを説明する別の書面が必要
  • 説明の書面がなければ、更新がない定めは無効になる
  • 事業用には法律上の途中解約の権利がない。中途解約の条項を契約で入れられないか交渉する
  • 期間満了のあとは再契約が必要で、条件が変わることも、再契約できないこともある。1年以上の契約では、貸主は1年前から6か月前までに終了を通知する
  • 賃料改定の特約があれば、賃料の増減を請求できない。移転に備えて、移転先の敷金を減らす方法もあわせて考える

出典:借地借家法第26条・第28条・第29条・第30条・第32条・第38条・第39条、民法第622条の2。

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