定期借家契約とは
期間が満了すると、更新されずに終わる賃貸借
借地借家法は、「期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる」と定めています(第38条第1項)。この「更新がない」賃貸借が定期借家契約(定期建物賃貸借)です。
契約書に定めた期間が満了すれば、賃貸借は終わります。借主が引き続き使いたい場合は、貸主と合意して、あらためて契約を結ぶ(再契約する)必要があります。
普通借家は、期間が満了しても原則として更新される
これに対して普通借家では、期間の満了の1年前から6か月前までに更新しない旨の通知をしなければ、従前の契約と同じ条件で更新したものとみなされます(借地借家法第26条第1項)。貸主が更新を拒むには「正当の事由」が必要で、その判断では、建物を使う必要性や、明渡しと引換えに貸主が申し出た財産上の給付(いわゆる立退料)なども考慮されます(同法第28条)。
普通借家との違い
| 比べる項目 | 普通借家 | 定期借家 |
|---|
| 期間の満了 | 原則として更新される(第26条) | 更新されずに終わる(第38条第1項) |
| 貸主が終わらせる条件 | 正当の事由が必要(第28条) | 期間の満了。1年以上の契約は終了の通知が必要(第38条第6項) |
| 契約のしかた | 口頭でも成り立つ | 書面(電磁的記録を含む)に限る(第38条第1項・第2項) |
| 事前の説明 | 不要 | 更新がないことを書面で説明する必要がある(第38条第3項) |
| 1年未満の期間 | 期間の定めがないものとみなされる(第29条第1項) | 1年未満でも定められる(第38条第1項) |
| 借主の途中解約 | 契約の定めによる | 法律上の解約の申入れは、居住用で200㎡未満の場合に限られる(第38条第7項) |
| 賃料の増減の請求 | 請求できる(第32条) | 賃料改定の特約があれば第32条は適用されない(第38条第9項) |

契約が成り立つための条件
定期借家契約として有効になるには、次の条件を満たす必要があります。
書面(電磁的記録を含む)で契約する
定期借家契約は、公正証書などの書面で結ぶ必要があります(第38条第1項)。電磁的記録で結んだ契約も、書面によるものとみなされます(同条第2項)。
契約とは別に、更新がないことを書面で説明する
貸主は、あらかじめ、借主に対し、契約の更新がなく期間の満了で賃貸借が終わることを記載した書面を交付して説明しなければなりません(第38条第3項)。借主の承諾があれば、電磁的方法で提供することもできます(同条第4項)。
この説明をしなかったときは、「契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする」とされています(第38条第5項)。つまり、説明がなければ、普通借家として扱われることになります。借主としては、契約書とは別に、説明の書面を受け取っているかを確かめておきます。
事業用の借主が特に気をつけたいこと
途中で解約できるかは、契約の定め次第
定期借家契約では、借主からの法律上の解約の申入れは、「居住の用に供する建物の賃貸借」で床面積が200㎡未満のものに限られています(第38条第7項)。オフィスや店舗の賃貸借には、この法律上の解約権がありません。
そのため、事業用の定期借家契約で途中解約ができるかどうかは、契約書に中途解約の条項があるかどうかで決まります。条項がなければ、原則として期間の満了まで賃料を払い続けることになります。契約の前に、「借主は○か月前に予告して解約できる」「解約する場合は残りの期間の賃料の○か月分を違約金とする」といった条項を入れられないかを交渉します。
期間が満了したら、再契約できるとは限らない
期間の満了後も同じ物件を使いたい場合は、貸主と新しく契約を結ぶ必要があります。再契約に応じるかどうかは貸主の判断で、賃料や敷金などの条件も変わることがあります。建替えなどの計画があるビルでは、再契約できないこともあります。
事業の拠点として長く使う予定なら、契約の前に、再契約の見込みや、再契約のときの条件の考え方を貸主に確かめておきます。期間の満了に合わせて移転する可能性があるなら、移転先を探す時間、内装工事の期間、今の物件との家賃の重なりを見込んだ計画が必要です。
終了の通知の時期を確かめる
期間が1年以上の定期借家契約では、貸主は、期間の満了の1年前から6か月前までの間に、期間の満了で賃貸借が終わることを借主に通知しなければ、その終了を借主に主張できません(第38条第6項)。通知がこの期間を過ぎてからされた場合は、その通知の日から6か月を経過するまでは、借主は明け渡す必要がありません(同項ただし書)。
終了の通知が届いたら、明渡しの日から逆算して、移転の準備を始めます。
賃料改定の特約があると、賃料の増減を請求できない
普通借家では、経済事情の変動などで賃料が不相当になったときは、借主も貸主も賃料の増減を請求できます(第32条)。しかし定期借家契約では、賃料の改定に関する特約がある場合、この規定は適用されません(第38条第9項)。
たとえば「期間中、賃料は改定しない」「2年ごとに○%ずつ上げる」といった特約があれば、周辺の賃料が下がっても、借主は減額を請求できません。長い期間の契約ほど、賃料改定の特約の中身が大きな意味を持ちます。
契約書の条文の例
事業用の定期借家契約で、借主の立場から入れておきたい条項の例です。
| 項目 | 条文の例 |
|---|
| 中途解約 | 賃借人は、本契約の期間中であっても、6か月前までに書面で予告することにより、本契約を解約することができる |
| 解約の違約金 | 賃借人が契約開始日から2年以内に前項により解約する場合は、賃料の3か月分を違約金として支払う |
| 再契約の協議 | 賃貸人及び賃借人は、期間満了の1年前までに、再契約の可否及び条件について誠実に協議する |
| 賃料の改定 | 賃料は、契約開始日から3年を経過した時点で、近傍同種の建物の賃料を参考に協議のうえ改定することができる |
中途解約の条項があれば、法律上の解約権がない事業用でも、予告と違約金の範囲で解約できます。再契約の協議の条項は、再契約を約束するものではありませんが、期間満了の間際になってから条件を知らされる事態を避けられます。