費目別の経費削減のアイデア
| 費目 | アイデア | 確かめること |
|---|
| 地代家賃 | 使っていない席や会議室を減らし、面積を見直す | 出社する人数、会議室の使用率 |
| 地代家賃 | 契約の更新や値上げの通知のときに条件を交渉する | 周りの賃料の相場、契約の期間 |
| 地代家賃 | 移転するなら、賃料と初期費用の総額で比べる | 敷金・保証金の月数、償却、フリーレント |
| 水道光熱費 | 電力・ガスの契約とプランを見直す | 契約の容量、使っている時間帯 |
| 水道光熱費 | 照明のLED化、空調の運転時間と温度の設定 | 古い設備、使っていない部屋 |
| 通信費 | 携帯電話・回線のプランを使い方に合わせる | 使っていない回線、通話とデータの量 |
| システムの利用料 | 使っていないアカウントやライセンスを解約する | 退職者や異動者のアカウント、重なる機能 |
| リース料 | 契約の満了のときに、再リース・買い取り・解約を比べる | 機器の使用状況と残りの期間 |
| 保険料 | 補償の重なりや、今の事業に合わない補償を見直す | 複数の保険で同じものを補償していないか |
| 支払手数料 | 振込の方法と回数を見直す | 振込手数料、決済の手数料の率 |
| 人件費 | 残業の原因になっている作業を減らす | 繰り返しの手作業、二重の入力 |
| 人件費 | 定型の作業を自動化する、外部に任せる | 作業時間を金額に直して比べる |
| 広告宣伝費 | 問い合わせ1件あたりの費用で媒体を比べ、効果の低いものをやめる | 媒体ごとの問い合わせの数 |
| 運賃荷造費 | まとめて送る、梱包の大きさを見直す | 発送の回数と1回の量、箱の大きさ |
| 消耗品費・印刷費 | 紙の書類をデータに切り替える | 印刷・郵送している書類 |
| 旅費交通費 | オンラインの会議に切り替える | 移動が必要な打ち合わせか |
| 交際費・会議費 | 使う目的と上限のルールを決める | 誰が、何のために使っているか |
| 仕入・外注費 | 複数の会社から見積もりを取る、発注の単位をまとめる | 取引先と協議して決める(一方的に決めない) |
地代家賃は、賃料だけでなく初期費用も含めて比べる
地代家賃は、契約で決まる固定費の中で大きな費目です。今のオフィスや店舗の面積が、出社する人数や使い方に合っているかを、まず確かめます。広すぎる場合は、移転だけでなく、同じビルで一部の区画を返す方法もあります。返せるかどうかと、返すときの予告の期間は、賃貸借契約の条件と貸主との話し合いで決まります。賃料の値上げを求められたときは、受け入れる前に交渉の余地があります(「オフィス・店舗の賃料値上げは拒否できる?」)。
狭いオフィスや家賃の安いエリアに移ると、月々の家賃は下がりますが、移転のときは新しい物件の敷金・保証金、仲介手数料、内装工事、引越しの費用が先にかかります。当社の記事「オフィスの敷金の相場」で集計した東京都のオフィスでは、敷金の中央値は20〜50坪で6か月分(約287万円)、100坪以上で12か月分(約2,148万円)でした。移転で経費を下げるときは、仲介手数料・礼金・内装工事・引越し・今のオフィスの原状回復・家賃が二重になる期間の賃料など、返ってこない費用を、月々の家賃の差額で何か月で取り戻せるかを計算して決めます。敷金・保証金は返ってくるお金ですが、退去まで現金が寝るため、資金繰りの計画にも入れておきます。共益費(「共益費とは」)や、フリーレントの期間(「フリーレントとは」)も、総額で比べます。
電気代は、請求書の中身から確かめる
電気の請求書には、契約の種類と容量、使った電力量と単価のほか、燃料費調整額や再生可能エネルギー発電促進賦課金などが載っているのが一般的です。まず1年分の請求書を並べ、使った量が多い月と時間帯、契約の容量が使い方に合っているかを確かめます。電力会社や料金プランを比べるときは、基本料金と使った分の単価に加えて、燃料費調整額の決まり方、契約の期間と解約の条件も並べます。照明のLED化や空調の運転時間の見直しのように、使う量そのものを減らす方法も組み合わせます。
通信費とシステムの利用料は、使っていない契約を探す
通信費とシステムの利用料は、契約の数が多く、1件あたりの金額が小さいため、見直されないまま残りやすい費目です。退職した社員のアカウント、使わなくなった電話番号や回線、機能が重なっているシステムを洗い出して解約します。請求書を1年分並べ、契約ごとに「誰が・何に使っているか」を確かめると、使われていない契約が見つかります。
消耗品は、発注の担当と単位をまとめる
文具や日用品などの消耗品は、部署ごとに少しずつ買うと、単価が高くなり、在庫も増えます。発注の担当と、発注する日と単位を決めてまとめると、単価と手間の両方が下がります。
リース・システムの契約は、満了の前に決める
リースやシステムの利用の契約は、満了の前に、更新するか、再リースにするか、買い取るか、やめるかを決めておかないと、そのまま更新されることがあります。契約ごとに満了の日と解約の申し出の期限を一覧にし、期限の前に使い方を確かめます。
振込手数料は、支払の回数と方法を見直す
取引先への支払を月に何度も分けて振り込んでいる場合は、支払日をそろえると振込の回数が減ります。窓口やATMからの振込をインターネットバンキングに切り替えると、1回あたりの手数料が下がることがあります。取引先との支払日を変えるときは、相手の資金繰りにも関わるため、前もって相談します。取適法の対象の取引では、受け取った日から60日以内に払う決まりがあるため、その期限を超えないようにします。
保険料は、保険証券を一覧にする
会社が入っている保険を、保険証券をもとに一覧にし、補償の内容、保険金額、保険期間、保険料を並べます。事業の内容や拠点が変わったのに昔の補償のまま続いている保険や、複数の保険で同じ損害を補償しているものがないかを確かめます。オフィスや店舗を借りている場合は、賃貸借契約で加入を求められている保険もあるため、契約の条件を確かめてから見直します。
人件費は、作業の時間を減らす
人件費の見直しは、給与を下げることではなく、同じ人数でこなせる仕事を増やすことです。社員の1週間の作業を書き出し、繰り返しの手作業、二重の入力、決まった形の報告書づくり、長い会議を洗い出します。定型の作業をシステムで自動化したり、外部に任せたりする場合は、その費用を、社員の作業時間を金額に直した額と比べます。残業が減れば、その分の残業代が下がります(固定残業代の分を除く)。
広告宣伝費は、問い合わせ1件あたりの費用で比べる
広告宣伝費は、媒体ごとに「使った金額÷問い合わせの数」で1件あたりの費用を出して比べます。例えば、月30万円で問い合わせが10件の媒体は1件3万円、月20万円で2件の媒体は1件10万円です(計算のための例です)。1件あたりの費用が高い媒体から、やめるか内容を見直します。広告をすべて止めると売上が落ちることがあるため、効果の低いものから減らします。
紙の書類をデータに切り替える
紙の印刷、郵送、ファイリングの手間と費用は、書類をデータで受け取り、データで保存する流れにそろえると減らせます。取引先とメールなどでやりとりした請求書などのデータを、電子取引データといいます。国税庁の資料では、電子取引データは、2024年1月から、印刷したあとに消すのではなく、消さずにそのまま保存する必要があるとしています。データで受け取ったものは、データのまま保存する流れに合わせると、二重の手間も省けます。
物流費は、運ぶ回数と積み方を見直す
商品を発送する会社では、運賃荷造費も見直しの対象になります。物流事業者から運賃や料金の値上げを求められた企業は92.8%で、4年続けて増えているため(日本ロジスティクスシステム協会「2025年度物流コスト調査」)、運賃の単価よりも、まとめて送る、梱包の大きさを荷物に合わせる、といった使い方の見直しが中心になります。物流の費用の内訳と見直しの順番は、「物流コストの削減」で詳しく説明しています。
仕入や外注の単価は、協議して決める
仕入や外注の単価を下げる交渉は、取引先にとっては売上が減る話です。2026年1月1日、下請法は改正され、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」、略して中小受託取引適正化法(取適法)になりました。対象になる取引では、受ける側から費用の変動などを理由に協議を求められたのに応じず、必要な説明もしないまま一方的に代金を決めること、通常の対価より著しく低い代金を不当に定めること、発注のあとで受ける側に責任がないのに代金を減らすことが禁止されています。単価の見直しは、取引の量や発注の方法、支払の条件などとあわせて協議します。対象になる取引は「取適法とは」で説明しています。
経費削減で失敗しやすい点
| 失敗しやすい点 | 起きること | 避け方 |
|---|
| 一律に削る | 売上につながる広告や採用、設備の更新まで止まる | 費目ごとに、売上や仕事への影響を見て決める |
| 安さだけで選ぶ | 安い代わりに手間が増え、社員の時間が奪われる | 作業時間を金額に直して、総額で比べる |
| 安全や法令の費用を削る | 事故や違反のときに、削った額より大きな損が出る | 保険、セキュリティ、法定の点検は残す |
| 取引先に一方的に値下げを求める | 取引の関係が悪くなる。取適法の対象の取引では、協議の求めに応じずに一方的に代金を決めることや、著しく低い代金を不当に定めることが禁止されている | 協議して、量や条件とあわせて決める |
| 効果を測らない | 一度下がった費用が、いつの間にか元に戻る | 毎月、前の年の同じ月と比べる |
| 費用の付け替えで終わる | 人件費は減ったが、外注費やシステムの利用料が同じだけ増える | 費目ごとでなく、経費の合計で効果を確かめる |
経費削減は、社員に「なぜ減らすのか」と「減らした分を何に使うのか」を伝えると進めやすくなります。削った分を、賃上げや設備、事業への投資に回すと決めておくと、節約だけの取り組みになりません。
経費ではないが、手元の資金を増やす見直し
経費を減らすこととは別に、会社の中で動いていない資金を見直すと、手元の現金を増やせます(方法によっては保証料や手数料がかかります)。
- 敷金・保証金:オフィスや店舗、倉庫に預けている敷金・保証金は、退去するまで返ってこない資産です。経費ではないため経費削減の一覧には出てきませんが、退去まで現金が寝ています
- 在庫:売れ残っている在庫は、仕入に使った現金が止まっている状態です(「運転資金とは」)
- 入金と支払の時期:売上の入金が遅く、支払が早いと、その差の分だけ資金が必要になります(「支払サイトとは」)
敷金・保証金を資金に換える
すでに預けている敷金は、「敷金返還くん」で、半額から最大全額を、入居したまま現金で取り戻せます。これから移転する場合は、「敷金半額くん」で、新しく借りる物件の敷金・保証金を、半額から最大0円まで減らせます。減らした分の代わりに、当社が貸主に保証を提供します。どちらも、利用には当社の審査と貸主の承諾が必要で、当社への保証料がかかります。入居中の敷金を資金にする方法は「入居中のオフィスの敷金を資金にする4つの方法」で比べています。
よくある質問
経費削減は、何から始めればよいですか?
経費を費目ごとに1年分並べ、金額が大きく、一度の見直しで効果が続く固定費から始めます。地代家賃、通信費、システムの利用料、保険料、リース料は、契約を見直せば、その後は毎月効果が続きます。
固定費と変動費は、どう分けますか?
売上や作業の量にかかわらず毎月かかる費用が固定費(家賃、リース料、保険料など)、売上や作業の量に応じて増減する費用が変動費(仕入、外注費、運賃など)です。電気代や通信費のように、基本料金と使った分の料金が組み合わさった費用もあります。
小さな会社でもできる経費削減はありますか?
あります。通信費・システムの利用料・保険料・リース料のように、契約を見直すだけで済む費目は、社員が少なくても進められます。請求書を1年分並べ、使っていない契約を解約するところから始めます。
人件費は削減するべきですか?
中小企業(法人)の販管費の43.89%は人件費で、最も大きい費目です。ただし、給与を下げると社員の生活と意欲に直結します。残業の原因になっている作業や手作業を減らし、時間の使い方を見直すことから考えます。
経費削減の目標は、どう決めればよいですか?
営業利益をどれだけ増やしたいかから、削減する金額を逆算します。全産業の平均(営業利益率3.66%)の会社が営業利益を20%増やすには、経費を売上高の約0.73%分減らせば届き、売上高5億円なら年約366万円です。
節税のために経費を使うのは得ですか?
利益が出ている会社が、その年の損金になる経費を使えば、利益にかかる税金は減ります。ただし、税金が減る額は使った額の一部にとどまるため、手元に残る現金は、使わなかった場合より少なくなります。経費は、事業に必要かどうかで判断し、税金を減らすためだけに使わないようにします。
敷金は経費になりますか?
返ってくる敷金・保証金は経費にはならず、資産として記録します。返ってこない償却の部分は、支出の効果が1年以上に及ぶものは、税務では繰延資産として扱います(法人税法施行令第14条第1項第6号ロ)。詳しくは「敷金の会計処理」で説明しています。
まとめ
- 中小企業(法人・全産業)の営業利益は売上高の3.66%で、経費を売上高の1%分減らすと営業利益は約27%増える
- 販管費の内訳では人件費が43.89%で最も大きく、地代家賃は4.77%
- 固定費は、一度見直すと毎月の効果が続く
- 進め方は、一覧にする、中身を確かめる、順番を決める、担当と期限を決める、効果を確かめる
- 移転で家賃を下げるときは、返ってこない初期費用を家賃の差額で何か月で取り戻せるかで判断する
- 電子取引データは、2024年1月から電子データのまま保存する
- 仕入や外注の単価は、取引先と協議して決める
- 一律に削ると、売上につながる費用まで止まる
- 預けている敷金・保証金を資金に換えれば、経費を削らずに手元の現金を増やせる
出典:経済産業省「中小企業実態基本調査」(令和6年度決算実績、売上高及び営業費用 産業中分類別表〈法人企業〉、e-Stat 2026年6月29日公開)、国税庁「令和6年1月からの電子取引データの保存方法」、日本ロジスティクスシステム協会「2025年度物流コスト調査報告書(概要版)の公表」、Growth Office 掲載データ(東京都で募集中のオフィス3,423区画。2026年10月1日時点)。