廃棄を減らす
廃棄の原価が加盟店の負担になる方式では、廃棄を減らすことが、そのまま自社の利益になります。上の分かれ目の考え方で発注量を決めたうえで、売れ残りそうな商品は、値引きして売る見切り販売で廃棄を減らします。
2009年の公正取引委員会の命令では、見切り販売を、本部が定める販売期限が迫っている商品を、それまでの販売価格から値引きした価格で消費者に売ることとしています。計算のための例で、原価70円・売価100円の商品が1個売れ残りそうなときを比べます(売れた分だけを売上原価にする方式で、ロイヤリティの率は売上総利益の50%)。
| 売り方 | 売上総利益の増減 | ロイヤリティの増減 | 加盟店の取り分の増減 |
|---|
| 定価の100円で売れた | +30円 | +15円 | +15円 |
| 60円に値引きして売った | −10円 | −5円 | −5円 |
| 売れ残って廃棄した | 0円(原価は営業費になる) | 0円 | −70円 |
60円で売れば60円が入り、原価70円は売上原価として引かれるため、売上総利益は10円減り、ロイヤリティも5円減ります。廃棄すると、原価70円がすべて加盟店の負担になります。原価を下回る値段で売っても、加盟店の損は廃棄よりずっと小さくなります。この例のように原価を下回る値引きでは、本部のロイヤリティは見切り販売なら5円減り、廃棄なら減りません。2009年の命令は、見切り販売を制限することが、加盟者が廃棄の原価の負担を減らす機会を失わせているとしています。
2020年の調査では、デイリー商品(2009年の命令の定義では、品質が劣化しやすい食品・飲料で、原則として毎日店に納品されるもの)の見切り販売を「行っている」「たまに行うことがある」と答えたオーナーは30.0%で、88.0%が直近3年間に見切り販売を制限された経験は「ない」と答えていました。一方で、70.0%は見切り販売を行っておらず、指導員から「見切り販売をしたら契約を更新しない・契約を解除する」と言われたという報告や、「見切り販売は可能だが、かなり時間の掛かる方法のためほとんどの店舗が行えない状態」という手続上の問題の報告も寄せられています。
公正取引委員会の考え方は、売れた商品の原価だけで売上総利益を計算してロイヤリティの基準にしている場合に、取引上優越した地位にある本部が、正当な理由がないのに、品質が急速に低下する商品などの見切り販売を制限し、売れ残りとして廃棄させることを、優越的地位の濫用の例に挙げています。あわせて、本部は柔軟に売価を変えられる仕組みを作り、手続を加盟者に十分説明することが望ましい、としています。2009年には、公正取引委員会がセブン-イレブン・ジャパンに対し、推奨商品のうちデイリー商品の見切り販売をしようとする、または行っている加盟者に、取りやめを余儀なくさせていたとして、排除措置命令を出しています。
見切り販売の手続に時間がかかるなら、本部に改善を求める材料として、手続にかかる時間と、見切り販売ができずに廃棄した額を、店ごとに記録しておきます。
人件費と営業時間を見直す
令和8年度の地域別最低賃金は、各地の審議会が答申した改定額が全国加重平均で1,177円(前年度から56円の引上げ)です。発効日(予定)は都道府県ごとに2026年10月1日から12月2日までです(厚生労働省)。答申の額は、最も低い宮崎県でも1,085円です。
2020年の調査では、コンビニのアルバイトの平均時給は5年間で107円上がって926円でした。従業員給与(中央値1,500万円)の時給を、最低賃金の全国加重平均の1,177円に置き換えるだけでも、同じ時間を働いてもらうと約1,907万円になる計算です(従業員給与がすべて時給の人の分だと置いた目安)。約400万円の増加で、2020年の調査のオーナーの収入(586万円)の約7割にあたります。同じ総額に収めるには、働く時間を約2割減らす必要があります。
最低賃金を下回る時給にはできないため、人件費は時給の水準ではなく、時間の使い方で見直します。
- 時間帯ごとに、売上を働いた時間の合計で割った「人時売上高」を出し、低い時間帯からシフトの人数を見直す
- 本部のシステム(発注の支援、セルフレジなど)の機能を、使っている店と使っていない店で比べ、作業の時間の差を見る
- 品出し、清掃、発注を、人時売上高の低い時間帯に寄せる
- 複数の店で、忙しい時間帯の応援を融通し合える仕組みを作る
営業時間も、人件費と光熱費に直結します。2020年の調査では、77.1%の店舗が深夜帯は赤字と答え、66.8%のオーナーが時短営業への切り替えや試行を望んでいました。深夜帯の損益は、その時間帯の売上に売上総利益率(調査の中央値から計算すると約31%)を掛け、ロイヤリティの分を引いた額と、その時間帯の人件費(深夜の割増賃金を含む)と光熱費を比べて出します。
公正取引委員会の考え方は、取引上優越した地位にある本部が、契約期間中でも両者で合意すれば営業時間を短くできるとしているのに、24時間営業などが損益の悪化を招いていることを理由に短縮を望む加盟者との協議を、正当な理由なく一方的に拒み、協議しないまま従来の営業時間を受け入れさせることを、優越的地位の濫用の例に挙げています。時間帯ごとの損益を店ごとに出しておくと、協議の材料になります。
家賃と店舗の保証金を見直す
自前店舗型の契約では、物件の家賃と保証金は自社の負担です。本部店舗型の契約は、店舗を本部が用意する代わりにロイヤリティが高くなる契約のため、契約の更新のときに、ロイヤリティと店舗の条件をあわせて話し合います。店舗の賃貸借契約を結んでいるのが自社か本部かで、賃料を話し合う相手と、保証金が返ってくる先が変わります。
自社が借りている店舗の賃料は、借地借家法第32条により、経済事情の変動や近くの同じような建物の賃料との比較で不相当になったときは、将来に向かって増減を求められます。ただし、定期借家契約で賃料の改定について特約があるときは、この規定は適用されません(同法第38条第9項)。賃料の見直しの進め方は「店舗経営のコスト削減」で説明しています。
店舗の保証金は、原則として物件を明け渡すまで戻らず、償却の定めがある分は戻りません。日商保が運営するオフィス検索サイト「Growth Office」で、東京都で募集中の区画のうち用途に店舗を含み、保証金の月数がわかる28区画(2026年10月1日時点)を集計したところ、月数は中央値で11か月分、半数が10〜12か月分でした(区画が少ないため参考値。「敷金と保証金の違い|店舗の保証金の相場・償却・返還」)。家賃50万円の店が11か月分を預けていれば550万円で、自社で借りている店が18店あれば約1億円になります(計算のための例)。この現金は、保証金を保証会社の保証に置き換えると動かせます。日商保の「敷金返還くん」で、営業中の店舗に預けている保証金の半額が戻れば、18店で約5,000万円になり、新しい店の加盟金や内装に回せます。
水道光熱費は、調査の中央値で売上高の約0.4%と小さな費目ですが、冷蔵・冷凍の設備や空調を入れ替えた後に、電気の契約電力が以前のままになっていないか、請求書の内訳で確かめます。
本部と協議するときの記録と、公正取引委員会の考え方
仕入、見切り販売、営業時間のほかにも、公正取引委員会の考え方は、費用に関わる行為を優越的地位の濫用の例に挙げています。
- ドミナント出店(加盟店の店舗の周辺に、本部が同じ業種や似た業種の店を自ら出したり、ほかの加盟者に出させたりすること)をしない取決めがあるのに、加盟店の損益の悪化を招く場合に、取決めに反して出店すること。出店の場合に支援する取決めがあるのに、一切の支援をしないこと
- 当初の契約にない新規事業の導入で、加盟者が得られる利益を超える費用を負担することになるのに、導入しなければ不利益に扱うことを示唆して、導入を余儀なくさせること
本部が加盟者に商品を供給している場合に、加盟者の販売価格を拘束することは、原則として再販売価格の拘束にあたるとされています。考え方は、売れ残った商品を値下げして売らなければならない場合もあることを、その理由に挙げています。
2020年の調査は、コンビニの加盟者が商標や小売の機能の多くを本部に頼り、取引先を変えにくい状況などから、本部が加盟者に対して優越的な地位にあると認められる場合は多いのではないかとしています。一方で、加盟店の側にも個人のオーナーから、事業の多角化の一つとしてコンビニを経営するメガ・フランチャイジーまでさまざまな者がいるため、すべてを同列に論じるのは難しいとも述べています。あたるかどうかは、個別の契約で判断されます。
本部の要請に疑問があるときは、次の記録を店ごとに残して、まず本部と協議します。
- 指示や要請を受けた日付と、指示した人
- 品目と数量、そのときの販売数
- 見切り販売ができずに廃棄した額、手続にかかった時間
- 営業時間の短縮を申し出た日付と、本部の回答
公正取引委員会のウェブサイトには、独占禁止法の相談と申告の窓口が案内されています。
新しい店を出す前に、書面で確かめる費用
別のチェーンに加盟して店を増やすときは、契約の前に費用の条件を書面で確かめます。中小小売商業振興法は、主として中小の小売業者に対し、定型的な約款による契約にもとづいて継続して商品を販売し(または販売をあっせんし)、経営の指導も行う事業のうち、約款に、加盟者に特定の商標・商号などを使わせることと、加盟の際に加盟金・保証金などを集めることの定めがあるもの(特定連鎖化事業)を行う本部に、契約の前に決められた事項を書いた書面を渡して説明することを義務づけています(同法第11条)。同法の施行規則(第10条・第11条)で、費用に関係する事項として次の内容が定められています。
- 加盟の際に集める加盟金、保証金などの額(または算定方法)、性質、集める時期と方法、返還の有無とその条件
- 加盟者から定期的に集める金銭(ロイヤリティなど)の額または算定方法、性質、集める時期と方法
- 加盟者に販売し、または販売をあっせんする商品の種類と、代金の決済の方法
- 立地条件が似た店舗の直近3事業年度の収支(売上高、売上原価、定期的に集める金銭、人件費、販売費及び一般管理費)と、立地が似ていると判断した根拠
- 店舗の構造や内外装について、加盟者に特別の義務を課すときはその内容
- 契約の期間、更新の条件、解除の要件と、解除による損害賠償金の額(または算定方法)
外食やサービス業のフランチャイズが同法の対象になるかは、本部の事業の内容で決まります。同法の対象かどうかにかかわらず、公正取引委員会の考え方は、加盟者を募集するときに、仕入先の推奨制度、加盟金の性質・金額・返還の条件、ロイヤリティの額と算定方法、経営不振のときの本部の支援、契約の期間と中途解約の条件、ドミナント出店ができるかについての契約上の条項の有無と内容、そうした出店の計画の有無と内容などを開示することが望ましいとしています。中途解約の条件については、契約で明確にし、募集のときに十分説明することが望ましいとしています。
書面の収支の例は、そのまま自社の店の見込みになるわけではありません。2020年の調査では、予想売上げや予想収益の説明について、「加盟前に受けた説明よりも実際の状況の方が悪かった」と答えたオーナーが41.1%で、理由には来店客数の見積もりが過大だった(63.3%)、人件費の見積もりが過少だった(47.0%)、廃棄ロス・棚卸ロスの見積もりが過少だった(43.8%)が挙がっていました。家賃、人件費の水準、営業時間を自社の条件に置き換えて、収支を計算し直します。
店舗の保証金を、事業の資金にする
保証会社の株式会社日商保は、事業用の物件の敷金・保証金を、日商保の保証に置き換えるサービスを提供しています。フランチャイズの店でも、自社が貸主と賃貸借契約を結んで保証金を預ける店舗(自前店舗型の契約や、加盟店が自分で店舗を借りる業態)なら、次の2つを使えます。
| サービス | 対象の店舗 | 変わること |
|---|
| 敷金半額くん | これから借りる店舗 | 預ける保証金が、半額から最大0円になる |
| 敷金返還くん | いま営業している店舗 | 預けている保証金の半額から最大全額が、営業を続けたまま返ってくる |
仕組みはどちらも同じで、減らしたり返したりする保証金の代わりに、日商保が貸主に保証を提供します。借入れではないため、返済や利息はありません。利用には日商保の審査と貸主の承諾が必要で、貸主への説明と承諾の取り付けは日商保が行います。敷金返還くんは、審査の書類を出してから返還まで目安1か月半〜2か月ほどで、複数の店舗の預託敷金の計6,000万円のうち3,000万円が返った事例があります。本部が用意した店舗(本部店舗型)で自社が保証金を預けていない場合や、本部に預ける加盟契約の保証金は、対象になりません。
使うかどうかは、戻る現金や減る保証金の使い道の効果と、日商保に払う保証料を比べて決めます。保証料は、賃料、減らす額や返す額、契約期間などで変わり、日商保が無料で見積もりを出します。18店で約5,000万円が戻る例なら、新しい店の加盟金や内装を借入れを増やさずにまかなえるか、借入れを返して利息がどれだけ減るかを、保証料と並べて判断します。保証料は費用として利益を減らすため、使い道の効果が保証料を上回らない場合は使いません。
よくある質問
ロイヤリティの相場は、何%くらいですか?
計算のもとが売上か売上総利益かで率の意味が変わるため、率だけの相場では比べられません。自社の契約は、ロイヤリティを売上高と売上総利益のそれぞれに対する割合に直して比べます。公正取引委員会の2020年の調査の中央値で計算すると、コンビニの加盟店のロイヤリティは、売上高の約16%、売上総利益の約5割でした。売上高の5%を払う方式なら、原価率35%の店では売上総利益の約7.7%です(計算のための例)。
ロイヤリティは、交渉で下げられますか?
ロイヤリティは加盟契約で決まるため、契約の期間中に自社だけで下げることはできません。新しい店を出す前と、契約の更新や条件の見直しのときが、条件を話し合う時期です。店ごとの売上高に対する割合と、本部から受けている支援の中身を並べて、話し合いの材料にします。
本部店舗型と自前店舗型では、費用はどう違いますか?
公正取引委員会の調査は、本部が用意した店舗で営業する本部店舗型は初期投資の負担を抑えられるがロイヤリティは高くなり、加盟者が店舗の土地・建物を用意する自前店舗型は初期投資の負担がかかるがロイヤリティは低くなると説明しています。コンビニでは本部店舗型が82.8%でした。自前店舗型では、店舗の家賃と保証金が自社の負担になります。
本部が指定する仕入先以外から買ってもよいですか?
契約の内容によります。まず、契約書とマニュアルで、品目ごとに義務なのか推奨なのかを一覧にします。推奨にとどまる品目は、ほかの仕入先と単価や配送料を比べて選べます。
加盟金や本部に預けた保証金は、返ってきますか?
契約によります。中小小売商業振興法の対象となる本部は、加盟金や保証金などの性質と、返還の有無とその条件を、契約前に渡す書面に書くことになっています。新しく加盟するときは、書面で返還の条件を確かめます。
フランチャイズの店舗の保証金を減らす方法はありますか?
自社が貸主と賃貸借契約を結んで保証金を預ける店舗なら、保証金の一部または全部を保証会社の保証に置き換えられます。保証会社の日商保の「敷金半額くん」は、これから借りる店舗の保証金を半額から最大0円に減らし、「敷金返還くん」は、いま営業している店舗に預けている保証金の半額から最大全額を、営業を続けたまま返してもらうサービスです。どちらも日商保の審査と貸主の承諾が必要で、保証料がかかります。本部が用意した店舗で自社が保証金を預けていない場合や、本部に預ける保証金は対象になりません。
まとめ
- フランチャイズの店の費用は、加盟契約で決まる費用と、自社で動かせる費用に分かれる
- コンビニの加盟店のロイヤリティは、中央値で売上高の約16%、売上総利益の約5割(公正取引委員会、2020年)
- ロイヤリティの率は、売上高と売上総利益に対する割合に直して比べる
- 本部が一部を負担する契約を除き、売れた分だけを売上原価にする方式では、廃棄の原価が加盟店の負担になる
- 例の条件では、追加の1個の発注は、売れる見込みが約82%を超えないと損になる
- 原価を下回る値引きでも、見切り販売のほうが廃棄より加盟店の損は小さい
- 仕入は、品目ごとに義務か推奨かを一覧にして、推奨の品目から比べる
- 時給を最低賃金の全国加重平均(1,177円)に置き換えるだけで、2020年の中央値の従業員給与は約1,907万円になる
- 深夜帯は、売上総利益からロイヤリティを引いた額と、人件費・光熱費を比べる
- 契約で決まる条件が同じ店どうしなら、店ごとの差は人件費・廃棄・家賃に出る
- 自社が借りている店舗の保証金は、保証会社の日商保の「敷金返還くん」で、営業を続けたまま半額から最大全額を資金に回せる
- これから借りる店舗の保証金は、日商保の「敷金半額くん」で半額から最大0円に減らせる(どちらも日商保の審査と貸主の承諾が必要で、保証料がかかる)
出典:公正取引委員会「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査報告書(概要)」(2020年9月公表)、同「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」(2021年4月28日改正)、同「フランチャイズ・チェーン本部との取引に関する調査報告書」(2011年7月)、同「平成21年度年次報告」、厚生労働省「令和8年度最低賃金額答申」、同「令和8年度 地域別最低賃金 答申状況」、中小小売商業振興法第4条・第11条、同法施行規則第10条・第11条、民法第622条の2、借地借家法第32条・第38条、Growth Office 掲載データ(東京都で募集中の区画のうち用途に店舗を含むもの。2026年10月1日時点)。