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入居中のオフィスの敷金を資金にする4つの方法

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入居中のオフィスの敷金を資金にする4つの方法

オフィスや店舗を借りるときに預けた敷金(保証金)は、退去して物件を明け渡すまで戻ってきません。東京都のオフィスでは、50〜100坪で賃料10か月分、100坪以上で12か月分が中央値で、月額賃料200万円の区画なら2,400万円が、入居している間ずっと貸主の手元にあることになります。

この敷金を、退去を待たずに資金に変える方法はいくつかあります。貸主と交渉して一部を返してもらう、敷金の代わりに保証会社の保証を入れる、敷金の返還を受ける権利を譲り渡す、その権利を担保にお金を借りる、といった方法です。それぞれ、返済の要否、貸主の承諾、かかる費用が違います。

この記事では、敷金が退去まで戻らない理由を民法の決まりから確かめたうえで、入居中の敷金を資金にする方法を比べ、選ぶときの考え方を整理します。

敷金は退去して明け渡すまで戻らない

返してもらえるのは「終了」と「明け渡し」のあと

民法は、貸主が敷金を返さなければならないときを、次の2つと定めています(第622条の2第1項)。

  • 賃貸借が終了し、かつ、貸主が物件の返還を受けたとき
  • 借主が適法に賃借権を譲り渡したとき

返す額は、預けた敷金から、未払いの賃料など借主が貸主に払うべき額を差し引いた残りです。つまり、契約が続いていて入居している間は、借主の側から敷金を返すよう求める権利はありません。

家賃に充ててもらうこともできない

資金が苦しいときに「預けている敷金から家賃を払ってほしい」と考えることがありますが、民法は、借主が貸主に対して、敷金を未払いの賃料などに充てるよう求めることはできないと定めています(第622条の2第2項)。敷金を未払いに充てるかどうかは、貸主が決めることです。

オフィス・店舗の敷金は、入居してから退去して明け渡すまで貸主の手元にあり、借主は使えない。返ってくるのは明け渡しのあとで、未払いの賃料や原状回復の費用を差し引いた残り。入居中に資金にするには、貸主の承諾を得て一部を返してもらうか、敷金の返還を受ける権利を譲り渡すか担保にする

広いオフィスほど預けている額が大きい

当社が運営するオフィス検索サイト「Growth Office」に掲載中の東京都の空室区画では、敷金の月数の中央値は広さによって次のように違いました(2026年9月28日時点、敷金の月数がわかる区画のみ)。

広さ敷金の月数(中央値)
10坪未満2か月
10〜50坪6か月
50〜100坪10か月
100坪以上12か月

10〜50坪は、10〜20坪、20〜30坪、30〜50坪のいずれも中央値が6か月でした。たとえば月額賃料60万円の区画を敷金6か月分で借りていれば360万円、月額賃料200万円の区画を敷金12か月分で借りていれば2,400万円を預けていることになります(賃料は計算のための例です)。

自社がいくら預けているかを確かめる

まず、自社が預けている敷金の額を確かめます。決算書の貸借対照表では、敷金は「差入保証金」や「敷金」として、固定資産(投資その他の資産)に載っています。拠点が複数ある会社では、物件ごとに賃貸借契約書で敷金の額と償却の有無を確かめ、一覧にしておくと、どの物件の敷金を資金にできるかを検討しやすくなります。

入居中の敷金を資金にする4つの方法

入居したまま敷金を資金にする方法は、主に次の4つです。

入居中の敷金を資金にする4つの方法の比較。貸主と交渉して一部を返してもらう方法と、保証に置き換えて返してもらう方法は、返済がなく貸主の承諾が必要。敷金の返還を受ける権利を譲り渡す方法は、貸主への通知や承諾が必要で、手数料がかかる。権利を担保に借りる方法は、返済と利息があり、貸主への通知か承諾が必要

方法返済貸主の承諾費用
交渉して返してもらうなし必要条件の見直しを求められることがある
保証に置き換えるなし必要保証料
返還を受ける権利を譲る契約による通知・承諾手数料
権利を担保に借りるあり通知・承諾利息

1. 貸主と交渉して一部を返してもらう

敷金の額は、貸主と借主の契約で決めたものです。契約を変えることに貸主が合意すれば、入居中でも敷金の一部を返してもらえます。

ただし、敷金は貸主にとって、賃料の未払いや原状回復の費用に備える担保です。担保を減らすことになるため、何も見返りがなければ応じてもらうのは難しく、長く入居していて賃料を遅れずに払ってきた実績や、契約の更新の時期などが交渉の材料になります。賃料の見直しや契約期間の延長など、ほかの条件の変更を求められることもあります。

2. 敷金の代わりに保証を入れて返してもらう

貸主が敷金を減らしにくいのは、担保が減るからです。そこで、返してもらう敷金の代わりに、保証会社の保証を貸主に提供する方法があります。貸主は、賃料の未払いなどがあったときに保証会社から支払いを受けられるため、敷金を返しても担保が減りません。

借主は保証会社に保証料を払いますが、借り入れではないため返済や利息はありません。保証会社の審査と、貸主の承諾が必要です。保証料の会計処理は「家賃保証料の勘定科目と仕訳」で説明しています。

3. 敷金の返還を受ける権利を譲り渡す(流動化)

将来、退去したときに敷金の返還を受ける権利(敷金返還請求権)を、リース会社などに譲り渡して、先に現金を受け取る方法です。債権は原則として譲り渡すことができ(民法第466条第1項)、譲り渡す時点でまだ発生していない債権でもかまいません(第466条の6)。

譲り渡したことを貸主に主張するには、貸主への通知か、貸主の承諾が必要で、貸主以外の第三者に主張するには、確定日付のある証書による通知か承諾が必要です(第467条)。また、賃貸借契約で敷金返還請求権の譲渡を禁じていることがあります。禁じていても譲渡そのものは無効になりませんが、そのことを知っていた譲受人などに対しては、貸主は支払いを拒むことができます(第466条第2項・第3項)。このため実際には、貸主の承諾を得て進めることになります。

受け取れる額は、退去時に差し引かれる未払いの賃料や原状回復の費用、手数料を見込んで、預けた敷金より少なくなります。費用や、退去時に返還額が足りなかった場合の扱いは、会社や契約によって違います。資産流動化の考え方は「資産流動化とは」で説明しています。

4. 敷金の返還を受ける権利を担保にお金を借りる

敷金返還請求権に質権を設定して、金融機関から借りる方法です。債権も質権の対象にでき(民法第362条)、質権の設定を貸主などに主張するには、貸主への通知か、貸主の承諾が必要です(第364条)。

借り入れなので、返済と利息があります。また、担保としての価値は、預けた敷金から、退去時に差し引かれる額を見込んだ残りで評価されます。借りられる額や条件は、金融機関の判断によります。

選ぶときの考え方

返済のある方法と、ない方法を分けて考える

4つの方法のうち、権利を担保に借りる方法は借り入れなので、決算書では負債が増え、返済の予定を資金繰りに組み込む必要があります。交渉して返してもらう方法と、保証に置き換える方法は、預けている資産(差入保証金)が現金に戻るだけで、負債は増えません。

方法決算書の変化
交渉・保証への置き換え差入保証金が減り、現金が増える
権利を担保に借りる現金と借入金が両方増える

方法ごとの仕訳の例

預けている敷金2,400万円のうち1,200万円を資金にした場合、方法ごとの仕訳は次のようになります(金額は計算のための例です。流動化の手数料や譲渡の条件は契約によって違います)。

方法借方貸方
交渉・保証への置き換え普通預金 1,200万円差入保証金 1,200万円
権利を譲る(流動化)普通預金・譲渡の損失差入保証金
権利を担保に借りる普通預金 1,200万円借入金 1,200万円

保証に置き換えた場合は、このほかに保証料を費用として処理します。権利を担保に借りた場合は、差入保証金はそのまま残り、借入金と利息の支払いが加わります。

敷金の会計処理は「敷金の会計処理」で説明しています。

費用は「何年使うか」で比べる

保証料、手数料、利息はどれも、資金を使う期間が長いほど総額が変わります。退去の予定や契約の残りの期間、戻った資金を何に使うかをはっきりさせてから、それぞれの総額を並べて比べます。

比べるときは、1年あたりの費用を、資金にした額で割った割合にそろえると、借入の金利と同じ物差しで比べられます。たとえば、1,200万円を資金にして、1年あたりの費用が36万円なら3%です。一度だけかかる手数料は、使う予定の年数で割ってから足します。そのうえで、返済の有無や決算書への影響の違いもあわせて判断します。

貸主との関係を保つ

どの方法も、貸主の合意や承諾、少なくとも通知が必要です。貸主にとって担保が減らないこと、賃料の支払いに問題がないことを示せるかどうかが、話を進めるうえで大切になります。

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どんな場面で使われるか

入居中の敷金を資金にするのは、資金が苦しいときだけではありません。次のような場面で検討されます。

場面使い道の例
事業を広げる採用、広告、新しい拠点の開設
移転・拠点の集約を控えている新しい物件の敷金や内装工事
設備を入れ替える設備投資の自己資金
財務を見直す借入金の返済、手元資金の積み増し

上場企業の決算説明資料でも、拠点戦略の施策のひとつとして「敷金流動化サービスの活用」が挙げられた例があります(株式会社SHIFT、2026年8月期第2四半期決算説明資料)。預けている敷金を、使えない固定資産から事業に使える資金に変えるという考え方です。

一方で、どの方法も貸主の承諾が必要で、保証や融資には審査があります。資金が必要になる時期から逆算して、早めに準備を始めることが大切です。

退去するときの精算はどうなるか

入居中に敷金を資金にしても、退去するときには、未払いの賃料や原状回復の費用を精算する必要があります。方法によって、精算の形が変わります。

方法退去時の精算
交渉して返してもらう残っている敷金から差し引き、足りなければ借主が払う
保証に置き換える残っている敷金から差し引き、足りない分は保証の範囲で保証会社が貸主に払い、あとで借主に求める
権利を譲る返還される敷金は、権利を譲り受けた会社に支払われる
権利を担保に借りる返還される敷金から借入を返す。足りなければ借主が返す

どの方法でも、原状回復の費用が敷金の残りを上回れば、その分は借主の負担になります。退去の予定が近い場合は、原状回復の費用の見込みも含めて、どの方法が合うかを考えます。

賃貸借契約で確かめること

入居中の敷金を資金にする前に、今の賃貸借契約書で次の点を確かめます。

  • 敷金返還請求権の譲渡・質入れの禁止:禁止や貸主の承諾を求める条項があるか。流動化や担保にする方法では、この条項が問題になる
  • 敷金の額を変える手続き:敷金の額の変更に、書面での合意が必要とされているか
  • 敷金の補充:敷金を賃料に充てたときなどに、補充を求める条項があるか
  • 償却:退去時に償却される額があるか。償却される分は、資金にしても退去時には戻らない
  • 契約の残りの期間と更新:更新の時期が近ければ、更新の条件の話し合いとあわせて相談できる

償却の条件は「敷金償却(保証金償却)とは」で説明しています。

貸主への相談の進め方

貸主が気にすること

貸主にとって、敷金は賃料の未払いや原状回復の費用に備える担保です。敷金を減らす相談をするときは、次の点に答えられるよう準備します。

  • 担保は減らないか:返す敷金の代わりに、どのような保証が入るのか
  • 支払いに問題はないか:これまで賃料を遅れずに払ってきたか。会社の業績はどうか
  • 手間や負担は増えないか:貸主の側で必要な手続きや書類は何か

相談の文例

貸主や管理会社に最初に相談するときは、次のように伝えます(文例は説明のための例です)。

「いつも大変お世話になっております。現在お預けしている敷金について、事業の拡大に向けた資金として活用したく、一部をご返還いただけないかご相談させていただけないでしょうか。返還いただく分については、保証会社による保証をお付けし、賃料や原状回復の費用のお支払いに対する担保が減らないようにいたします。詳しい内容は、改めて資料をお持ちしてご説明いたします。」

退去・移転のときは二重の負担に注意

オフィスを移転するときは、新しいオフィスの敷金を先に預ける一方で、今のオフィスの敷金が戻るのは明け渡しのあとです。そのうえ、戻る額から原状回復の費用などが差し引かれます。移転の前後は、新旧2つの敷金を同時に負担する期間が生まれます。

移転の資金計画では、今の敷金が戻る時期と額を控えめに見積もり、新しいオフィスの敷金を減らせないかもあわせて考えます。敷金が戻る時期については「オフィス移転時の敷金はいつ返ってくるの?」で説明しています。

返済なしで入居中の敷金を取り戻す

この記事の2つ目の方法(保証に置き換える)を、当社が行うのが「敷金返還くん」です。預けている敷金の半額から最大全額を、入居したまま現金で取り戻せます。返す敷金の代わりに当社が貸主に保証を提供するので、貸主の担保は減りません。借主の側は借り入れではないため、返済や利息はなく、決算書に借入金も増えません。代わりに当社への保証料がかかり、利用には当社の審査と貸主の承諾が必要です。手続きは、審査、貸主への説明と承諾、契約の調整を経て敷金の返還となり、審査書類の提出から返還までは、貸主への説明の状況などにより異なりますが、1か月半から2か月ほどが目安です。

これから新しく借りるオフィスや店舗であれば、敷金を半額から最大0円まで減らす「敷金半額くん」もあります。

よくある質問

入居中に敷金を返してほしいと貸主に求めることはできますか?

求める権利はありません。民法では、貸主が敷金を返さなければならないのは、賃貸借が終了して物件の返還を受けたときなどです(第622条の2)。入居中に返してもらうには、貸主との合意が必要です。

預けている敷金で家賃を払うことはできますか?

借主の側から、敷金を未払いの賃料に充てるよう求めることはできません(第622条の2第2項)。敷金を未払いに充てるかどうかは貸主が決めます。

敷金を担保にお金を借りられますか?

敷金の返還を受ける権利に質権を設定して借りる方法があります。質権の設定を主張するには貸主への通知か承諾が必要で(民法第364条)、借りられる額や条件は金融機関の判断によります。

敷金を保証に置き換えると、借金になりますか?

なりません。保証会社は貸主に保証を提供し、借主は保証料を払います。預けていた敷金が現金に戻るだけで、決算書に借入金は増えません。

貸主に断られたらどうすればよいですか?

断られた理由を確かめます。担保が減ることが理由なら、保証の内容をあらためて説明します。時期が理由なら、契約の更新の時期にあわせて再度相談する方法もあります。どうしても合意できない場合は、今の物件の敷金ではなく、次に借りる物件の敷金を減らすことを検討します。

複数の拠点の敷金を、まとめて資金にできますか?

敷金は物件ごとに、それぞれの貸主と契約しているため、貸主の承諾も物件ごとに必要です。拠点が多い会社は、敷金の額が大きい物件や、更新の時期が近い物件から順に検討します。

まとめ

  • 敷金が返ってくるのは、賃貸借が終了して物件を明け渡したときなど。入居中に返すよう求める権利はない(民法第622条の2)
  • 東京都のオフィスの敷金は、50〜100坪で10か月分、100坪以上で12か月分が中央値
  • 入居中に資金にする方法は、交渉して返してもらう、保証に置き換える、返還を受ける権利を譲る、その権利を担保に借りる、の4つ
  • 権利を担保に借りる方法は借り入れで返済と利息がある。交渉と保証への置き換えは負債が増えない
  • 敷金の代わりに保証を入れれば、返済なしで入居中に敷金を取り戻せる

出典:民法第362条・第364条・第466条・第466条の6・第467条・第622条の2、Growth Office 掲載データ(東京都の空室区画、2026年9月28日時点、敷金の月数がわかる区画のみ)。

Tags#金融・融資
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