仕事を受ける側の資金繰りへの影響
入金が早まり、手形の割引がいらなくなる
取適法の対象の取引では、代金は受け取った日から60日以内に払われ、手形で払われることもありません。これまで手形を受け取って、期日まで待つか、手数料を払って割り引いていた会社にとっては、入金が早まり、割引の手数料もかからなくなります。手形の廃止の流れは「約束手形・小切手の廃止」で説明しています。
入金の予定を直す
手形で受け取っていた代金が振込に変わると、資金繰り表の入金の月が変わります。たとえば、毎月500万円の代金を、納品の4か月後が期日の手形で受け取り、割り引かずに期日を待っていた会社が、納品から60日以内の振込で受け取るようになると、入金は約2か月早まります(金額と時期は計算のための例です)。切り替わる時期には、前に受け取った手形の期日と新しい振込が重なり、2か月ほど入金が多くなります。この時期に借入の返済を進めるのか、手元に残すのかを、資金繰り表を見て決めます。
費用の上昇は、価格の協議を求める根拠になる
取適法は、受ける側が、給付に関する費用の変動などを理由に代金の協議を求めたのに、委託する側が協議に応じない、または必要な説明や情報の提供をせずに一方的に代金を決めることを禁じています。原材料費や人件費、事務所の賃料などの費用が上がったときは、その根拠を示して、代金の見直しの協議を求めることができます。
協議を求めるときの文例
費用の上昇を理由に代金の見直しを求めるときは、根拠を添えて書面で伝えます(文例は説明のための例です)。
「平素より格別のご高配を賜り、ありがとうございます。貴社よりご発注いただいている○○の製造につきまして、原材料費が前年同期比で約○%、人件費が約○%上昇しております(別紙のとおり)。つきましては、令和○年○月発注分以降の単価について、ご協議の機会をいただけますようお願い申し上げます。」
協議を求めたこと、相手がどう応じたかは、日付がわかる形で記録に残します。
受ける側が手元に残しておく書類
取引の条件が守られているかを確かめ、必要なときに説明できるよう、次の書類を取引ごとに残しておきます。
- 発注の書面やメール:給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法が書かれたもの
- 納品や役務の提供の記録:受け取ってもらった日がわかる納品書、受領書、作業報告書
- 請求書と入金の記録:いつ請求し、いつ入金されたか
- 協議の記録:代金の見直しを求めた書面と、相手の回答
受け取ってもらった日は、支払期日の60日を数える起点になるため、特に大切です。
まず取引条件を確かめる
自社の取引が取適法の対象になるかを、相手の資本金と従業員の数、取引の内容で確かめ、発注の書面やメールに書かれた支払期日と支払方法を見直します。支払期日が受け取った日から60日を超えていないか、手形で払われていないかを確かめ、資金繰り表の入金の予定に反映させます。
取引先からの入金が早まる一方で、自社が仕事を出す側として外注先に払う代金も、60日以内に払う必要があります。受ける側と出す側の両方の立場がある会社では、入金と支払いの両方が早まるため、差し引きで資金が足りる月と足りない月が出てきます。工場や倉庫、事務所を借りている会社なら、預けている敷金を資金にする方法もあります。当社の「敷金返還くん」は、預けている敷金の半額から最大全額を、入居したまま現金で取り戻すサービスです。返す敷金の代わりに当社が貸主に保証を提供するため、借り入れではなく、返済や利息はありません。当社への保証料がかかり、利用には当社の審査と貸主の承諾が必要です。
よくある質問
取適法はいつから施行されていますか?
2026年1月1日からです。2025年5月23日に公布された改正法(令和7年法律第41号)により、下請法の名前と内容が改められました。
取適法で手形での支払いは禁止されましたか?
対象の取引では禁止されています。代金の支払いについて手形を渡すことや、支払期日までに代金と同じ額の現金に換えることが難しい支払手段を使うことは、支払いの遅れとして禁止されています(第5条第1項第2号)。
支払期日は何日以内ですか?
委託事業者が給付を受け取った日から60日以内で、できる限り短い期間内に定めなければなりません(第3条)。
下請法の対象でなかった取引も対象になりますか?
なることがあります。運送の委託(特定運送委託)が加わり、資本金の基準にあてはまらなくても、従業員の数の基準(300人または100人)にあてはまれば対象になります。
違反があったら、どこに知らせればよいですか?
公正取引委員会、中小企業庁長官、その取引の事業を所管する大臣に知らせることができます。知らせたことを理由に、委託する側が取引を減らしたり止めたりすることは禁止されています(第5条第1項第7号)。
個人事業主も対象になりますか?
受ける側には個人事業者も含まれます(第2条第9項)。委託する側の資本金や従業員の数が基準にあてはまれば、個人事業者への委託も対象になります。
代金の額がまだ決まっていないときも、明示が必要ですか?
発注したときは、給付の内容や代金の額、支払期日などを直ちに明示しなければなりません。内容が決められないことに正当な理由がある事項は、そのときは明示しなくてよいとされていますが、決まったあとで直ちに明示する必要があります(第4条第1項)。
まとめ
- 2026年1月1日、下請法は取適法(中小受託取引適正化法)になった。親事業者は委託事業者、下請事業者は中小受託事業者に
- 運送の委託が対象に加わり、資本金に加えて従業員の数(300人・100人)でも対象が決まる
- 代金は受け取った日から60日以内に払う。手形での支払いは禁止。遅れたら年14.6%の遅延利息
- 費用の変動などで協議を求められたのに、応じずに一方的に代金を決めることは禁止
- 受ける側は、入金の条件を確かめて資金繰り表に反映させる。入金が早まっても支払いが重なる月に備える
出典:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第1条〜第8条・第10条・第12条・第14条・第16条、同法の改正前の条文(下請代金支払遅延等防止法、2025年5月23日時点)、下請代金支払遅延等防止法第四条の二の規定による遅延利息の率を定める規則(e-Gov法令検索)。