法律・制度

取適法とは|下請法からの変更点と支払いのルール

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取適法とは|下請法からの変更点と支払いのルール

2026年1月1日、下請法(下請代金支払遅延等防止法)は改正され、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」、略して中小受託取引適正化法(取適法)になりました。名前が変わっただけでなく、代金を手形で払うことの禁止、価格の協議に応じないまま一方的に代金を決めることの禁止、従業員の数による対象の拡大、運送の委託の追加など、中身も変わっています。

仕事を受ける側(中小受託事業者)にとって、取適法は、代金をいつまでに、どのように払ってもらえるか、価格をどう話し合えるかを決める法律です。資金繰りの面では、受け取った日から60日以内の支払い、手形での支払いの禁止、支払いが遅れたときの遅延利息が、とくに大切になります。

この記事では、取適法の対象になる取引と会社、下請法から変わった点、委託する側が守るべきことを、改正前後の法律の条文をもとに整理し、仕事を受ける側の資金繰りにどう関わるかをまとめます。

取適法とは

取適法は、製造や修理、プログラムやデザインなどの作成、役務の提供、運送を、規模の大きい事業者が中小の事業者に委託するときに、代金の支払いの遅れなどを防ぐための法律です。委託する側の取引を公正にし、仕事を受ける中小の事業者の利益を守ることを目的としています(第1条)。

2025年5月23日に公布された改正法(令和7年法律第41号)により、2026年1月1日から、下請法はこの名前に変わりました。あわせて、法律の中の呼び方も次のように変わっています。

下請法取適法
親事業者委託事業者
下請事業者中小受託事業者
下請代金製造委託等代金

下請法から変わった主な点

下請法から取適法で変わった主な点。対象の取引に運送の委託(特定運送委託)が加わった。対象の会社を資本金に加えて従業員の数でも判断するようになった。手形による支払いは、割引が難しい手形だけでなく手形そのものが禁止に。価格の協議に応じず一方的に代金を決めることが禁止に。発注内容の明示は、受け取る側の承諾がなくても電子メールなどでできるように。違反を知らせる先に事業を所管する大臣が加わり、指導・助言もできるように

項目下請法取適法
運送の委託対象外対象に追加
対象の会社資本金で判断従業員の数でも判断
手形割引が難しい手形は禁止手形での支払いは禁止
価格の協議定めなし協議に応じない一方的な決定は禁止
発注内容の明示書面(電子は承諾が必要)書面か電磁的方法

改正前の下請法でも、支払期日までに金融機関で割り引いてもらうことが難しい手形を渡すことは禁じられていましたが(旧第4条第2項第2号)、手形で払うこと自体は認められていました。取適法では、代金の支払いについて手形を渡すことや、支払期日までに代金と同じ額の現金に換えることが難しい支払手段を使うことが、支払いの遅れとして禁止されています(第5条第1項第2号)。

また、委託事業者の違反を知らせる先に、公正取引委員会と中小企業庁長官に加えて、その取引の事業を所管する大臣が加わり(第5条第1項第7号)、これらの機関が委託事業者に指導や助言をできるようになりました(第8条)。

対象になる取引と会社

5つの取引

取適法の対象になるのは、次の5つの委託です(第2条)。

  • 製造委託:物品や部品、原材料、金型などの製造を委託する
  • 修理委託:物品の修理を委託する
  • 情報成果物作成委託:プログラム、映像、デザインや文書などの作成を委託する
  • 役務提供委託:サービスの提供を委託する(建設工事の下請負は除く)
  • 特定運送委託:販売する物品などを取引の相手方に届ける運送を委託する

建設工事の下請は建設業法で決まる

建設業者が請け負った建設工事をほかの建設業者に請け負わせる取引は、取適法の役務提供委託から除かれています(第2条第4項)。建設工事の下請代金は、建設業法が支払いの期限などを定めています。建設業の資金繰りと下請代金の決まりは「建設業の資金調達」で説明しています。

資本金と従業員の数で決まる

委託する側とされる側の規模の組み合わせで、対象になるかどうかが決まります。改正で、資本金の基準に加えて、常時使用する従業員の数の基準が加わりました。

取適法の対象になる会社の組み合わせ。製造、修理、運送の委託と、政令で定める情報成果物・役務の委託では、委託する側の資本金が3億円超で受ける側が3億円以下、1,000万円超3億円以下で受ける側が1,000万円以下、または委託する側の従業員が300人超で受ける側が300人以下。それ以外の情報成果物・役務の委託では、資本金5,000万円超と5,000万円以下、1,000万円超5,000万円以下と1,000万円以下、または従業員100人超と100人以下

取引委託する側受ける側
製造・修理・運送など資本金3億円超3億円以下
〃資本金1千万円超3億円以下1千万円以下
〃従業員300人超300人以下
情報成果物・役務資本金5千万円超5千万円以下
〃資本金1千万円超5千万円以下1千万円以下
〃従業員100人超100人以下

情報成果物の作成と役務の提供のうち、政令で定めるものは、製造・修理・運送と同じ基準(3億円・300人)で判断します。受ける側は個人事業者も含みます(第2条第8項・第9項)。

対象になるかの判定の例

たとえば、次のような取引で考えます(会社は説明のための例です)。

取引委託する側受ける側判定
部品の製造を委託資本金5,000万円・従業員350人資本金1,000万円・従業員40人対象(資本金1千万円超3億円以下→1千万円以下)
部品の製造を委託資本金5,000万円・従業員350人資本金2,000万円・従業員80人対象(従業員300人超→300人以下)
デザインの作成を委託資本金3,000万円・従業員50人資本金500万円・従業員5人対象(資本金1千万円超5千万円以下→1千万円以下)
デザインの作成を委託資本金3,000万円・従業員50人資本金2,000万円・従業員10人対象外(どちらの基準にもあてはまらない)

2つ目の例は、資本金の基準(受ける側が1千万円以下)にはあてはまりませんが、従業員の数の基準にあてはまるため、改正後は対象になります。改正前の下請法では、資本金の基準だけで判断していたため、対象外でした。

委託する側が守ること

代金は受け取った日から60日以内に払う

代金の支払期日は、委託事業者が給付を受け取った日(役務や運送の場合は提供を受けた日)から60日以内で、できる限り短い期間内に定めなければなりません(第3条第1項)。支払期日を定めなかったときは受け取った日が、60日を超えて定めたときは受け取った日から60日を過ぎた日の前日が、支払期日とみなされます(同条第2項)。

日数は、受け取った日を1日目として数えます。たとえば4月10日に納品を受けた場合、60日目は6月8日で、支払期日は6月8日までに定める必要があります。締め日と支払日の組み合わせによっては、受け取った日によって60日を超えることがあるため、実際の日付で確かめます。

支払いが遅れたら遅延利息を払う

支払期日までに払わなかったときは、受け取った日から60日を過ぎた日から、払う日までの日数に応じて遅延利息を払わなければなりません(第6条)。遅延利息の率は、公正取引委員会規則で年14.6%と定められています。先の例で、100万円の代金を6月9日から30日遅れて払うと、遅延利息は100万円×14.6%×30日÷365日で1万2,000円です(金額は計算のための例です)。

禁止されている主な行為

禁止される行為条文
支払期日を過ぎても払わない(手形での支払いを含む)第5条第1項第2号
受ける側に責任がないのに代金を減らす第5条第1項第3号
通常の対価より著しく低い代金を不当に定める第5条第1項第5号
費用の変動などで協議を求められたのに応じず、一方的に代金を決める第5条第2項第4号
違反を当局に知らせたことを理由に取引を減らす・止める第5条第1項第7号

発注するときは、給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法などを、書面か電子メールなどの電磁的方法で、直ちに明示しなければなりません。電磁的方法で明示した場合でも、受ける側から書面を求められたときは、原則として交付する必要があります(第4条)。

委託する側のチェックリスト

仕事を出す側の会社は、次の点を社内で確かめておきます。

  • 対象の取引を把握する:取引先ごとに、資本金と従業員の数、取引の内容から、取適法の対象かを確かめる
  • 発注内容を明示する:給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法などを、書面か電磁的方法で直ちに明示する(第4条)
  • 支払期日を60日以内に定める:締め日と支払日の組み合わせを、受け取った日から数えて確かめる
  • 手形での支払いをやめる:振込やでんさいなど、支払期日までに満額の現金に換えられる方法に切り替える
  • 協議の求めに応じる:費用の変動などを理由に協議を求められたら、応じて必要な説明をする
  • 記録を残す:給付の受領や代金の支払いなどを記載した書類を作成して保存する(第7条)

違反するとどうなるか

公正取引委員会は、第5条に違反する行為があると認めるときは、委託事業者に対し、代金や遅延利息を払うことや、減らした代金を払うことなど、必要な措置をとるよう勧告します(第10条)。公正取引委員会や中小企業庁長官は、委託事業者や中小受託事業者に報告をさせたり、事務所に立ち入って帳簿書類を検査したりすることもできます(第12条)。

また、発注の内容を明示しなかった、求められた書面を交付しなかった、取引の書類を作成・保存しなかったといった場合には、違反した委託事業者の代表者や従業者などが50万円以下の罰金に処せられ、法人である委託事業者にも同じ罰金が科されます(第14条・第16条)。

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仕事を受ける側の資金繰りへの影響

入金が早まり、手形の割引がいらなくなる

取適法の対象の取引では、代金は受け取った日から60日以内に払われ、手形で払われることもありません。これまで手形を受け取って、期日まで待つか、手数料を払って割り引いていた会社にとっては、入金が早まり、割引の手数料もかからなくなります。手形の廃止の流れは「約束手形・小切手の廃止」で説明しています。

入金の予定を直す

手形で受け取っていた代金が振込に変わると、資金繰り表の入金の月が変わります。たとえば、毎月500万円の代金を、納品の4か月後が期日の手形で受け取り、割り引かずに期日を待っていた会社が、納品から60日以内の振込で受け取るようになると、入金は約2か月早まります(金額と時期は計算のための例です)。切り替わる時期には、前に受け取った手形の期日と新しい振込が重なり、2か月ほど入金が多くなります。この時期に借入の返済を進めるのか、手元に残すのかを、資金繰り表を見て決めます。

費用の上昇は、価格の協議を求める根拠になる

取適法は、受ける側が、給付に関する費用の変動などを理由に代金の協議を求めたのに、委託する側が協議に応じない、または必要な説明や情報の提供をせずに一方的に代金を決めることを禁じています。原材料費や人件費、事務所の賃料などの費用が上がったときは、その根拠を示して、代金の見直しの協議を求めることができます。

協議を求めるときの文例

費用の上昇を理由に代金の見直しを求めるときは、根拠を添えて書面で伝えます(文例は説明のための例です)。

「平素より格別のご高配を賜り、ありがとうございます。貴社よりご発注いただいている○○の製造につきまして、原材料費が前年同期比で約○%、人件費が約○%上昇しております(別紙のとおり)。つきましては、令和○年○月発注分以降の単価について、ご協議の機会をいただけますようお願い申し上げます。」

協議を求めたこと、相手がどう応じたかは、日付がわかる形で記録に残します。

受ける側が手元に残しておく書類

取引の条件が守られているかを確かめ、必要なときに説明できるよう、次の書類を取引ごとに残しておきます。

  • 発注の書面やメール:給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法が書かれたもの
  • 納品や役務の提供の記録:受け取ってもらった日がわかる納品書、受領書、作業報告書
  • 請求書と入金の記録:いつ請求し、いつ入金されたか
  • 協議の記録:代金の見直しを求めた書面と、相手の回答

受け取ってもらった日は、支払期日の60日を数える起点になるため、特に大切です。

まず取引条件を確かめる

自社の取引が取適法の対象になるかを、相手の資本金と従業員の数、取引の内容で確かめ、発注の書面やメールに書かれた支払期日と支払方法を見直します。支払期日が受け取った日から60日を超えていないか、手形で払われていないかを確かめ、資金繰り表の入金の予定に反映させます。

取引先からの入金が早まる一方で、自社が仕事を出す側として外注先に払う代金も、60日以内に払う必要があります。受ける側と出す側の両方の立場がある会社では、入金と支払いの両方が早まるため、差し引きで資金が足りる月と足りない月が出てきます。工場や倉庫、事務所を借りている会社なら、預けている敷金を資金にする方法もあります。当社の「敷金返還くん」は、預けている敷金の半額から最大全額を、入居したまま現金で取り戻すサービスです。返す敷金の代わりに当社が貸主に保証を提供するため、借り入れではなく、返済や利息はありません。当社への保証料がかかり、利用には当社の審査と貸主の承諾が必要です。

よくある質問

取適法はいつから施行されていますか?

2026年1月1日からです。2025年5月23日に公布された改正法(令和7年法律第41号)により、下請法の名前と内容が改められました。

取適法で手形での支払いは禁止されましたか?

対象の取引では禁止されています。代金の支払いについて手形を渡すことや、支払期日までに代金と同じ額の現金に換えることが難しい支払手段を使うことは、支払いの遅れとして禁止されています(第5条第1項第2号)。

支払期日は何日以内ですか?

委託事業者が給付を受け取った日から60日以内で、できる限り短い期間内に定めなければなりません(第3条)。

下請法の対象でなかった取引も対象になりますか?

なることがあります。運送の委託(特定運送委託)が加わり、資本金の基準にあてはまらなくても、従業員の数の基準(300人または100人)にあてはまれば対象になります。

違反があったら、どこに知らせればよいですか?

公正取引委員会、中小企業庁長官、その取引の事業を所管する大臣に知らせることができます。知らせたことを理由に、委託する側が取引を減らしたり止めたりすることは禁止されています(第5条第1項第7号)。

個人事業主も対象になりますか?

受ける側には個人事業者も含まれます(第2条第9項)。委託する側の資本金や従業員の数が基準にあてはまれば、個人事業者への委託も対象になります。

代金の額がまだ決まっていないときも、明示が必要ですか?

発注したときは、給付の内容や代金の額、支払期日などを直ちに明示しなければなりません。内容が決められないことに正当な理由がある事項は、そのときは明示しなくてよいとされていますが、決まったあとで直ちに明示する必要があります(第4条第1項)。

まとめ

  • 2026年1月1日、下請法は取適法(中小受託取引適正化法)になった。親事業者は委託事業者、下請事業者は中小受託事業者に
  • 運送の委託が対象に加わり、資本金に加えて従業員の数(300人・100人)でも対象が決まる
  • 代金は受け取った日から60日以内に払う。手形での支払いは禁止。遅れたら年14.6%の遅延利息
  • 費用の変動などで協議を求められたのに、応じずに一方的に代金を決めることは禁止
  • 受ける側は、入金の条件を確かめて資金繰り表に反映させる。入金が早まっても支払いが重なる月に備える

出典:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第1条〜第8条・第10条・第12条・第14条・第16条、同法の改正前の条文(下請代金支払遅延等防止法、2025年5月23日時点)、下請代金支払遅延等防止法第四条の二の規定による遅延利息の率を定める規則(e-Gov法令検索)。

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