物流コストとは
JILSは、物流コストを「物流に起因して(関連して)発生するコスト」としています。物流事業者に払う運賃や保管料だけでなく、自社のトラックで運ぶ費用や、物流の仕事をする社員の人件費、自社倉庫の費用も物流コストに含まれます。
JILSの物流コスト調査は、通商産業省(現在の経済産業省)の「物流コスト算定活用マニュアル」に沿って、物流コストを次の2つの切り口で集計しています。
| 切り口 | 分け方 | 中身 |
|---|
| 機能別 | 輸送費 | 運ぶ費用。仕入先から自社へ(調達)、自社の拠点の間(社内)、自社から顧客へ(販売)に分かれる |
| 機能別 | 保管費 | 倉庫に置いておく費用。材料の保管と製品の保管に分かれ、在庫の費用も含む |
| 機能別 | 荷役費 | 入出庫、ピッキング、積み降ろしなどの作業の費用 |
| 機能別 | 包装費 | 輸送や保管のための梱包の費用 |
| 機能別 | 物流管理費 | 物流の計画・管理や情報の処理にかかる費用 |
| 支払形態別 | 支払物流費 | 物流事業者や物流子会社に払う費用など |
| 支払形態別 | 自家物流費 | 自社の物流の人件費、物流施設の費用、減価償却費、在庫の費用 |
表の「中身」は一般的な説明です。物流費という言葉も、多くの場合、物流コストと同じ意味で使われます。この記事では、JILSの調査にならって物流コストと書きます。
物流コストの割合の目安(売上高物流コスト比率)
売上高物流コスト比率は、物流コストの金額を売上高で割った値です。JILSの調査では、回答した企業ごとの比率の平均値を、全業種の目安として出しています。
2025年度調査(有効回答205社、主に2024年度の実績)の売上高物流コスト比率は5.32%で、前の年度の調査から0.12ポイント下がりました。それでも、過去20年の調査の中では4番目に高い水準です。過去20年で最も高かったのは2021年度調査の5.70%で、2015年度調査の4.63%から、全体として上がってきています。

業種によっても違います。2024年度調査(有効回答191社、主に2023年度の実績)では、製造業が5.37%、卸売業が5.19%、小売業が6.38%でした(回答は製造業131社、卸売業37社、小売業18社)。JILSは、回答する企業が200社前後に限られるため、近年は数値が上下しやすいとしています。自社の比率は、同じ業種の数字に加えて、自社の過去の比率とも比べて見ます。
売上高10億円の会社で比率が5.32%なら、物流コストは年5,320万円です。その1割を下げれば、年532万円の利益が増えるのと同じです。
物流コストの内訳
2024年度調査の全業種の内訳では、輸送費が55.89%で半分を超え、保管費が19.66%、荷役費が15.52%、物流管理費が4.93%、包装費が4.00%でした。輸送費の中では、自社から顧客へ運ぶ販売輸送費が最も大きく、物流コスト全体の34.36%です。拠点の間の社内輸送費は15.19%、仕入れの調達輸送費は6.34%です(いずれも物流コスト全体に対する割合)。

支払形態別では、物流事業者や物流子会社に払う費用などの支払物流費が82.75%、自社の人件費や施設の費用などの自家物流費が17.25%でした。物流コストの8割は外に払うお金なので、運賃や料金が上がると、そのまま物流コストに表れます。
値上げの要請と応じた割合
2024年度調査では、物流事業者から値上げの要請を受けた企業が168社中154社(91.7%)で、そのうち150社(97.4%)が要請に応じました。値上げを求められた費目は、輸送費が150社で最も多く、荷役費89社、保管費78社、包装費58社、物流管理費25社の順でした。2025年度調査では、要請を受けた企業の割合は92.8%に上がっています。日本全体の物流コスト(マクロ物流コスト)も、2023年度は55.4兆円と過去最高の水準で、2024年度は56.6兆円前後に増えると見込まれています。
運賃そのものを下げてもらう交渉は、こうした状況では通りにくいと考えられます。物流コストを下げるには、運ぶ量や回数、積み方、待ち時間、保管する量といった「使い方」を見直して、同じ料金でも払う総額を減らす方法が中心になります。
自社の物流コストの出し方
物流コストは、損益計算書の1つの科目にまとまっていません。顧客へ送る運賃は販売費、仕入れの運賃は仕入れの原価、工場の中の運搬は製造原価、物流の社員の給与は給料手当、借りている倉庫の家賃は地代家賃、というように、多くの会社でいくつもの科目に分かれて入っています。JILSは、梱包のコストは生産部門、輸送のコストは物流部門が管理していることが多く、生産部門には梱包のコストを小さくしようとする力が働くと説明しています。部門ごとの部分的な最適化で、非効率が生じているケースも少なくないと見ています。
| 順番 | すること | 拾う費用の例 |
|---|
| 1 | 支払物流費を集める | 物流事業者の請求書(運賃、保管料、荷役料、梱包料、システム利用料)、物流子会社への支払 |
| 2 | 自家物流費を集める | 物流の仕事をする社員の人件費、自社倉庫の家賃や減価償却費、自社のトラックの燃料費・リース料、梱包資材、在庫の費用 |
| 3 | 機能別に振り分ける | 輸送・保管・荷役・包装・物流管理のどれにあたるか |
| 4 | 売上高で割る | 売上高物流コスト比率を出し、業種の目安や過去の自社と比べる |
| 5 | 同じ方法で続けて測る | 毎月・毎年同じ範囲で集計し、見直しの効果を確かめる |
人件費は、物流の仕事にかかった時間の割合などで按分します。最初から細かく分けられなくても、支払物流費の請求書を費目ごとに並べるだけで、どこに多く払っているかが見えます。
効果が大きかった施策の順位(JILSの調査)
JILSの2024年度調査では、2023年度に各社が実施した施策のうち、物流コストの適正化に効果が大きかったものを聞いています。1位は「輸配送改善(積載率向上、混載化、帰り便の利用など)」、2位は「在庫削減」、3位は「輸配送経路の見直し」でした。順位は、効果が大きかったと答えた企業の数の順です。物流コストの半分以上を占める輸送費に関わる施策が、上位に多く入っています。

2024年度に実施を予定している施策では、1位が「物流デジタル化の推進(AI導入、RPA導入、伝票電子化、物流情報システム導入など)」、2位が「物流の共同化」、3位が「自動化・機械化の推進(マテハン・ロボット・自動倉庫などの導入など)」でした。効果が大きかった施策には輸送と在庫に関わるものが多く、これから取り組む施策にはデジタル化・共同化・自動化が並んでいます。JILSは、実施予定の施策には、物流コストの適正化以外の効果を期待するものも含まれるとしています。
輸送費を下げる方法
輸送費は、運ぶ回数と、1回あたりの費用で決まります。1回の積載を増やし、回数と距離を減らすのが基本です。
| 方法 | 中身 |
|---|
| 積載率を上げる | 荷台の空きを減らす。混載や帰り便の利用、荷姿をそろえて積みやすくする |
| 配送頻度とロットを見直す | 少量を何度も運ぶ注文を、まとめて運べる条件に変える。顧客と納品の条件を相談する |
| 輸配送経路を見直す | 拠点から届け先までの経路と、立ち寄る順番を組み直す |
| リードタイムを見直す | 当日・翌日の急ぎ便を減らし、計画的に運べる日数をもらう |
| 共同配送 | 同じ方面に運ぶ他社と、荷物を合わせて運ぶ |
| 直送化 | 倉庫を経由せずに、仕入先や工場から顧客へ直接運ぶ |
| 荷待ち・荷役の時間を減らす | トラックの到着の予約、積み込みの準備、パレットでの積み降ろし |
荷待ちと荷役の時間は、運べる量を減らす
厚生労働省によると、自動車運転の業務には、2024年4月から時間外労働の上限(特別条項付きの36協定を結ぶ場合で年960時間)が適用されています。運転の時間や休息の時間を定めた「改善基準告示」も、同じ2024年4月から改正後の内容が適用されています。荷主の倉庫や工場での荷待ちや積み降ろしが長引くと、その分ドライバーの1日の時間が使われ、1日に運べる量が減ります。
国土交通省が2025年度に行った荷主・物流事業者の取組状況の調査では、荷主の取組として「積合せや帰り荷の確保等を行うための時間確保」(85%)や「関係部門間の連携」(83%)が進んでいる一方、手積み・手降ろしなどの改善が進まず、荷待ちが5時間を超える現場もあるという声が出ています。同じ調査では、予約システムの導入や積み込みの時間の共有、伝票の事前の準備で、荷待ちをゼロにする取り組みが進んでいるという声も挙がっています。荷待ちが減れば、ドライバーが同じ時間で運べる量が増えます。
保管費を下げる方法
保管費は、置いている物の量と、置いている場所の費用で決まります。
- 在庫を減らす:JILSの調査で2位だった施策です。売れ行きに合わせて発注の量と時期を見直し、長く動いていない在庫を整理すると、保管の面積と在庫の費用の両方が減ります
- 保管の効率を上げる:ラックの段数や通路の幅、どの品をどこに置くか(ロケーション)を見直して、同じ面積に多く置けるようにします
- 拠点の数と場所を見直す:拠点を減らすと保管費や管理の費用は下がりますが、届け先までの距離が延びて輸送費が上がることがあります。保管費と輸送費を合わせた総額で比べます
荷役費・包装費・物流管理費を下げる方法
荷役費は、物流コストの15.52%を占めます(2024年度調査)。作業の手順をそろえ、よく出る品を出入口の近くに置き、ケースやパレットの単位で動かせるようにすると、作業の時間が短くなります。倉庫管理システム(WMS)を入れて、在庫の場所と数をデータで管理すると、探す時間と数え間違いが減ります。
包装費は物流コストの4.00%(2024年度調査)と小さい費目ですが、梱包の大きさは輸送と保管の効率に影響します。JILSも、梱包のコストが少し増えても、梱包の見直しで輸送費と保管費を下げることを目指すべきだとしています。箱の大きさを荷物に合わせて詰め物と空間を減らすと、1台に積める量と、棚に置ける量が増えます。
物流事業者からの請求は、費目を問わず、契約の単価や作業の実績と照らし合わせます。物流を外部に任せている場合は、JILSの調査で6位だった「アウトソーシング料金の見直し」のように、作業の範囲と料金の決まり方を定期的に見直します。