退去の段取りと保証金
倉庫の明け渡しには、荷物の移動、ラックの撤去、原状回復の工事が要ります。解約の予告の期間を6か月とした場合の段取りの例です。
| 時期 | すること |
|---|
| 明け渡しの6か月前 | 解約を書面で予告する |
| 5か月前 | 原状回復の範囲を貸主と確かめ、見積もりを取る |
| 3か月前 | 新しい倉庫の契約 |
| 2か月前 | 荷物とラックを新しい倉庫に移す |
| 1か月前 | 撤去と原状回復の工事 |
| 明け渡し | 立ち会い、鍵の返却 |
| 明け渡しのあと | 精算書を受け取り、保証金が返ってくる |
東京消防庁は、少量の危険物を貯蔵・取り扱う場所(少量危険物貯蔵取扱所)を廃止したときは、消防署に遅滞なく届け出る必要があるとしています。予告の期間の賃料は、移転すると決めたあとも払います。
定期借家と保証金
定期借家は、期間の満了で更新されずに終わる契約です(借地借家法第38条第1項)。続けて使うには貸主と新たに契約(再契約)するため、再契約のときに保証金をそのまま引き継ぐのか、精算して預け直すのかを、契約の前に確かめます。期間が1年以上の定期借家では、貸主は期間の満了の1年前から6か月前までの間に、期間の満了で終わることを通知しなければ、終了を借主に主張できません(同条第6項)。
貸主が変わったとき
入居している間に倉庫が売られた場合、借主が引渡しを受けて入居していれば、貸主の地位は新しい所有者に移り(民法第605条の2第1項、借地借家法第31条)、敷金を返す義務も新しい所有者が引き継ぎます(民法第605条の2第4項)。借主が預け直す必要はなく、退去のときは新しい所有者に返還を求めます。
新しい所有者が貸主であることを借主に主張するには、所有権の移転の登記が必要です(民法第605条の2第3項)。振込先を変えるよう通知が届いたら、登記事項証明書で所有者が変わっているかを確かめてから変えます。貸主が倒産したときの扱いは「オーナーが倒産・ビル売却したら敷金はどうなる?」で説明しています。
連帯保証人と保証会社
倉庫・工場の契約では、保証金とは別に、連帯保証人や保証会社を求められることがあります。個人が連帯保証人になる場合は、保証する上限の額(極度額)を定めなければ、保証の契約は効力を生じません(民法第465条の2第2項)。保証の契約は、書面でしなければ効力を生じません(民法第446条第2項)。保証会社を使う場合は、保証料と保証の範囲を確かめます。
契約書で確かめること
| 確かめること | 理由 |
|---|
| 保証金の額と月数 | 預ける額が決まる |
| 償却・敷引きの有無と額 | 返ってこない額が決まる |
| 返す期限 | 明け渡しから何か月以内に返ってくるか |
| 差し引くものと原状回復の範囲 | 返ってくる額が決まる |
| 追加で預ける定め | 賃料が上がると、保証金も増えることがある |
| 契約の種類と中途解約 | 普通借家か定期借家か、途中で解約できるか |
契約書の読み方は「倉庫の賃貸借契約書で確かめること」で説明しています。
会計と税金の扱い
消費税
国税庁によると、事業用の建物の賃貸借の契約や更新に伴う保証金、権利金、敷金、更新料などのうち、返還しないものは権利の設定の対価として消費税の課税の対象になり、契約の終了により返還される保証金や敷金は課税の対象になりません(国税庁 タックスアンサーNo.6225)。
| 項目 | 消費税 |
|---|
| 返ってくる保証金・敷金 | 課税の対象にならない |
| 返ってこない償却・敷引き | 課税の対象になる |
| 事務所や倉庫などの建物の家賃 | 課税の対象になる |
法人税
法人が建物を借りるために支払った権利金などの費用で、支出の効果が1年以上に及ぶものは繰延資産になります(国税庁 タックスアンサーNo.5460、法人税法施行令第14条第1項第6号ロ)。償却期間は原則5年で、契約の賃借期間が5年未満で、更新のときに再び権利金などを払うことが明らかなときは、その賃借期間です。一方、建物を借りるときに不動産会社に払った仲介手数料は、払った事業年度の損金にできます(同No.5460)。
| 項目 | 法人税の扱い |
|---|
| 返ってくる保証金・敷金 | 預けている間は資産で、費用にはならない |
| 返ってこない償却など、建物を借りるための権利金等 | 繰延資産。原則5年で償却 |
| 仲介手数料 | 払った事業年度の損金にできる |
原状回復の費用の会計
借りた建物の内部造作の除去などの原状回復が契約で求められているときは、会計では資産除去債務を計上しなければならない場合があります。敷金を資産に計上しているときは、その計上に代えて、敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用に計上する方法も使えます(企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」第9項)。仕組みは「資産除去債務とは|賃貸オフィスの原状回復と敷金での処理」で説明しています。
保証金の負担を減らす方法
条件を比べて交渉する
保証金の月数と償却は、物件の条件と貸主の考え方で決まり、交渉の余地がある場合もあります。候補の物件を金額に直して並べ、月数・償却・追加で預ける定めを、契約の前に確かめます。フリーレント(入居してから一定期間の賃料がかからない条件)は賃料の支払いの条件で、保証金の額とは別に決まります。
保証金を保証に置き換える
当社の「敷金半額くん」は、新しく借りる物件の敷金・保証金を、半額から最大0円まで減らすサービスで、物流倉庫などの倉庫でも相談できます。減らした分の代わりに、当社が貸主に保証を提供します。月額賃料120万円・保証金6か月分(720万円)の例なら、360万〜720万円を、入居の工事や運転資金に回せます。
すでに借りている倉庫の保証金は、「敷金返還くん」で、入居したまま現金で取り戻せます。どちらも、利用には当社の審査と貸主の承諾が必要で、当社への保証料がかかります。
よくある質問
倉庫の敷金と保証金は何が違いますか?
民法は、名目にかかわらず、賃料などの支払いを担保するために借主が貸主に渡すお金を敷金と定めています(民法第622条の2第1項)。契約書で「保証金」と呼んでいても、中身が担保なら敷金と同じ扱いです。建設協力金のように、貸主に貸すお金は別の扱いです。
倉庫の保証金は何か月分ですか?
物件と貸主によって違います。候補の物件の募集条件を同じ地域・同じ広さで並べ、仲介会社にも近い条件の物件の月数を確かめたうえで、預ける額と償却を金額に直して比べます。
償却と敷引きは何が違いますか?
どちらも、預けたお金のうち返ってこない部分を契約で決める条件です。償却は保証金のうち返さない部分、敷引きは敷金から差し引く額として定められます。民法には定めがないため、契約書の書き方で確かめます。
保証金はいつ返ってきますか?
賃貸借が終わって倉庫を返したあとです(民法第622条の2第1項)。未払いの賃料や原状回復の費用を差し引いた残りが返ってきます。明け渡しから何か月以内に返すかは、契約書で確かめます。
最後の月の賃料を、保証金から差し引いてもらえますか?
借主の側から「賃料は保証金から差し引いてほしい」と求めることはできません(民法第622条の2第2項)。最後の月の賃料も払い、保証金は明け渡しのあとに精算されます。
仲介手数料はいくらまでですか?
国土交通省の告示で、依頼者の双方から受ける報酬の合計は、借賃(消費税を除く)の1か月分の1.1倍以内とされています。法人税では、払った事業年度の損金にできます(国税庁 タックスアンサーNo.5460)。
保証金に消費税はかかりますか?
返ってくる保証金・敷金は課税の対象になりません。返ってこない償却や敷引きは、権利の設定の対価として課税の対象になります(国税庁 タックスアンサーNo.6225)。
償却で返ってこない分は、すぐに経費になりますか?
法人税では、建物を借りるための権利金などの費用で、支出の効果が1年以上に及ぶものは繰延資産になり、原則5年で償却します(国税庁 タックスアンサーNo.5460)。扱いは、顧問の税理士にも確かめます。
貸主が倒産したら保証金はどうなりますか?
倉庫が売られて貸主が変わった場合は、借主が引渡しを受けて入居していれば、敷金を返す義務は新しい所有者が引き継ぎます(民法第605条の2第4項)。倒産のときの手続きは「オーナーが倒産・ビル売却したら敷金はどうなる?」で説明しています。
まとめ
- 倉庫・工場の敷金・保証金は、賃料などの支払いを担保するお金で、名目にかかわらず民法の敷金として扱われる
- 建設協力金は担保ではなく、貸主に貸して契約で決めた方法で返してもらうお金
- 保証金の額は「月額賃料×月数」で、月額賃料120万円なら1か月の違いで120万円変わる
- 保証金の相場は、同じ地域・同じ広さの物件で、預ける額・償却・返ってくる額を金額に直して比べる
- 保証金は、明け渡しのあと、未払いの賃料や原状回復の費用を差し引いて返ってくる(民法第622条の2)
- 移転のときは、新しい保証金を先に払い、今の保証金は明け渡しのあとに戻る
- 返ってこない償却は消費税の課税の対象で、法人税では原則5年で償却する繰延資産になる
- 保証金を保証に置き換えて減らせば、その分を入居の工事や運転資金に回せる
出典:民法第166条・第446条・第465条の2・第605条の2・第621条・第622条の2、借地借家法第31条・第33条・第37条・第38条、法人税法施行令第14条、国税庁「No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など」「No.5460 建物を賃借するための権利金等」、企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第21号 資産除去債務に関する会計基準の適用指針」第9項、東京消防庁「少量危険物貯蔵取扱所・指定可燃物貯蔵取扱所廃止届出書」、国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」、最高裁判所 平成17年12月16日判決。