敷金・保証金を中心にした初期費用
初期費用の内訳
| 費用 | 中身 |
|---|
| 敷金・保証金 | 賃料などの支払いの担保として預けるお金。退去のあと、差し引きの残りが返ってくる |
| 礼金 | 契約のときに貸主に払う。返ってこない |
| 仲介手数料 | 不動産会社に払う。上限は賃料(消費税を除く)の1か月分の1.1倍(消費税込み) |
| 前払いの賃料 | 入居する月などの賃料 |
| 保証会社の保証料 | 連帯保証人の代わりに保証会社を使うとき |
| 火災保険料 | 契約で加入を求められることがある |
| 入居の工事 | ラック、照明、床のライン、電気の工事 |
| 引越し・運搬 | 荷物とラックの移動 |
民法は、名目にかかわらず、賃料などの支払いを担保するために借主が貸主に渡すお金を「敷金」と定めています(民法第622条の2第1項)。契約書で「保証金」と呼んでいても、中身が担保なら敷金と同じ扱いで、退去のあと、未払いの賃料などを差し引いた残りが返ってきます。
一方で、貸主が倉庫を建てるときに、借主が建設の資金の一部を「建設協力金」として貸主に貸す契約もあります。これは担保ではなく、貸したお金を契約で決めた方法で返してもらうもので、敷金とは扱いが違います。仕組みは「建設協力金とは」で説明しています。
計算の例
300坪(約992㎡)の倉庫を、月額賃料120万円、保証金6か月分で借りる場合の例です。賃料と保証金の月数は計算のための例で、実際の条件は物件ごとに違います。賃料は消費税を除いた額で、賃料にかかる消費税は含めていません。倉庫の賃料や保証金の月数は物件と貸主によって違うため、候補の物件ごとに、同じ式で計算して比べます。
| 費用 | 金額 | 前提 |
|---|
| 保証金 | 720万円 | 月額賃料120万円の6か月分 |
| 仲介手数料 | 132万円 | 上限の賃料1か月分の1.1倍 |
| 前払いの賃料 | 120万円 | 1か月分 |
| 入居の工事(ラック・照明など) | 300万円 | 見積もりで決まる |
| 引越し・運搬 | 100万円 | 見積もりで決まる |
| 合計 | 1,372万円 | |

この例では、保証金が初期費用の52.5%を占めます。保証金は退去するまで貸主に預けたままのお金で、運転資金にはあてられません。賃料が大きい倉庫では、保証金の月数が1か月違うだけで、預ける額が120万円変わります。
保証金の額の早見表
保証金の額は「月額賃料×月数」です。倉庫は賃料が大きいため、月数の違いが大きな金額の差になります。
| 月額賃料 | 3か月分 | 6か月分 | 10か月分 | 12か月分 |
|---|
| 50万円 | 150万円 | 300万円 | 500万円 | 600万円 |
| 100万円 | 300万円 | 600万円 | 1,000万円 | 1,200万円 |
| 200万円 | 600万円 | 1,200万円 | 2,000万円 | 2,400万円 |
保証金の月数は、交渉と組み合わせで変わる
保証金の月数は、物件の条件と貸主の考え方で決まり、交渉の余地がある場合もあります。償却(退去のときに差し引く分)があるか、敷金とは別に建設協力金を求められていないか、賃料が上がったときに保証金を追加で預ける定めがないかも、あわせて確かめます。契約書の確かめ方は「倉庫の賃貸借契約書で確かめること」で説明しています。
申し込みと審査
申し込みのあと、貸主や保証会社が、会社の財務の状況や事業の内容を確かめます。倉庫・工場では、何を保管し、どう使うか(危険物の有無、夜間の出入り、フォークリフトの使用など)が、契約の使い方の制限に関わります。保管する物と使い方を申し込みの段階で具体的に伝えておくと、契約の段階で条件が食い違うのを避けられます。
連帯保証人の代わりに保証会社を使う場合は、保証料がかかります。保証会社の仕組みは「オフィス・店舗の保証会社の選び方」で説明しています。個人が連帯保証人になる場合は、保証する上限の額(極度額)を決めなければ、保証の契約は効力を生じません(民法第465条の2)。
移転のときの資金繰り
今の倉庫から移るときは、新しい倉庫の保証金を契約のときに払い、今の倉庫の保証金は、明け渡したあと、原状回復の費用などを差し引いて返ってきます(民法第622条の2第1項)。そのあいだは、両方の倉庫の賃料を払う期間もできます。
| 時点 | 出ていくお金 | 入ってくるお金 |
|---|
| 新しい倉庫の契約 | 新しい保証金、仲介手数料、前払いの賃料 | − |
| 移転までの期間 | 両方の倉庫の賃料、新しい倉庫の入居の工事 | − |
| 今の倉庫の明け渡しのあと | 今の倉庫の原状回復の費用(工事を借主がする場合) | 今の倉庫の保証金(差し引きの残り) |
金額で並べると、次のようになります。今の倉庫は月額賃料80万円・保証金6か月分(480万円)、新しい倉庫は先の例(月額賃料120万円・保証金720万円)とし、2か月間は両方の賃料を払い、今の倉庫の原状回復に200万円かかるとします(金額は計算のための例です)。
| 時点 | 出ていくお金 | 入ってくるお金 |
|---|
| 新しい倉庫の契約 | 972万円(保証金720万円・仲介手数料132万円・1か月目の前払いの賃料120万円) | − |
| 移転までの2か月 | 280万円(今の倉庫の賃料80万円×2か月と、新しい倉庫の2か月目の賃料120万円)、入居の工事と引越し 400万円 | − |
| 今の倉庫の明け渡しのあと | − | 280万円(保証金480万円−原状回復200万円) |
この例では、今の倉庫の保証金が戻るまでに1,652万円が先に出ていき、戻ってくるのは280万円です(賃料にかかる消費税は含めていません)。倉庫の原状回復には、ラックの撤去や床の補修などが含まれることがあり、その費用の分、返ってくる保証金が少なくなります。退去のときの精算は「倉庫・工場を退去するときの保証金の精算」で説明しています。
保証金の負担を減らす方法
条件を比べて交渉する
候補の物件ごとに、保証金の月数、償却、礼金、フリーレントを並べて比べます。フリーレント(入居してから一定期間の賃料がかからない条件)は賃料の支払いの条件で、保証金の額(月額賃料×月数)とは別に決まります。保証金を減らすには、月数そのものを比べて交渉します。フリーレントの仕組みは「フリーレントとは」で説明しています。
保証金を保証に置き換える
当社の「敷金半額くん」は、新しく借りる物件の敷金・保証金を、半額から最大0円まで減らすサービスで、物流倉庫などの倉庫でも相談できます。減らした分の代わりに、当社が貸主に保証を提供します。先の例なら、保証金720万円のうち360万〜720万円を、入居の工事や運転資金に回せます。
すでに借りている倉庫の保証金は、「敷金返還くん」で、入居したまま現金で取り戻せます。どちらも、利用には当社の審査と貸主の承諾が必要で、当社への保証料がかかります。
よくある質問
倉庫を借りるのに、倉庫業の登録は要りますか?
自社の商品や原材料を置くだけなら要りません(自家保管)。他社から物を預かり、保管料を受け取る場合は、倉庫業法にもとづく登録が必要です(倉庫業法第3条)。
どの地域でも倉庫を借りられますか?
倉庫業を営む倉庫は、準住居地域を除く住居地域と、開発許可のない市街化調整区域では、原則として認められません(国土交通省の手引き)。自社の物を置く倉庫でも、用途地域ごとに建てられる建物が決まっているため(建築基準法第48条)、物件の所在地の自治体に確かめます。
床の強さはどう確かめますか?
物件の資料にある床の荷重(1㎡あたりに載せられる重さ)を、ラックや荷物、フォークリフトの重さと比べます。営業倉庫(1類倉庫)の基準は1㎡あたり3,900N(約400kg)以上で、重い物を置くときの目安になります。資料に書かれていなければ、貸主や管理会社に確かめます。
倉庫の保証金は何か月分ですか?
物件と貸主によって違います。候補の物件ごとに、保証金の額(月額賃料×月数)と償却を並べて比べます。
保証金と建設協力金は何が違いますか?
保証金(敷金)は賃料などの支払いの担保として預けるお金で、退去のあと差し引きの残りが返ってきます(民法第622条の2)。建設協力金は、貸主が建物を建てる資金として借主が貸すお金で、契約で決めた方法で返してもらいます。
工場として借りる場合は、何が違いますか?
用途地域ごとに建てられる建物が決まっているため、予定している工場として使えるかを自治体に確かめます。騒音規制法の指定地域で、決められた機械(特定施設)を置く場合は、設置の工事を始める日の30日前までに市町村長への届出が必要です(騒音規制法第6条第1項)。
保証金のほかに確かめるお金はありますか?
償却(退去のときに保証金から差し引く分)、礼金、更新料、退去のときの原状回復の費用です。消費税では、事業用の建物の賃貸借の契約や更新に伴う保証金・敷金・更新料などのうち、返還しないものは課税の対象になり、契約の終了で返還される保証金・敷金は課税の対象になりません(国税庁 タックスアンサーNo.6225)。返ってくるお金と返ってこないお金を分けて、契約の条件を比べます。
危険物を置く場合はどうすればよいですか?
量によって、消防署への届出や許可が要ります。東京消防庁は、少量の危険物を貯蔵・取り扱う場所を設けるときは、設置の10日前までに消防署長への届出が必要としています。契約で危険物の保管を禁じていないかも、契約の前に確かめます。
まとめ
- 用途地域・建物の用途・床の強さ・天井の高さは、借りたあとに直せないため、申し込みの前に確かめる
- 他社の物を預かって保管料を受け取るなら、倉庫業の登録が要る
- 自社の物を置くだけ(自家保管)なら、倉庫業の登録は要らない
- 倉庫業を営む倉庫は、準住居地域を除く住居地域と、開発許可のない市街化調整区域では原則として認められない
- 床の強さは、営業倉庫の基準(1㎡あたり3,900N、約400kg)が目安になる
- 300坪・月額賃料120万円・保証金6か月分の例では、初期費用1,372万円のうち保証金が720万円(52.5%)
- 移転では新しい保証金を先に払い、今の保証金は明け渡しのあとに戻る
- 保証金を保証に置き換えて減らせば、その分を入居の工事や運転資金に回せる
出典:国土交通省「倉庫業法」「倉庫業登録申請の手引き」「用途規制」、環境省「特定施設設置の届出」、東京消防庁「少量危険物貯蔵取扱所、指定可燃物貯蔵取扱所設置(変更)届出書」、民法第465条の2・第622条の2、借地借家法第26条・第28条・第38条、倉庫業法第2条・第3条・第6条・第11条、国税庁「No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など」、国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」。