敷金・保証金

倉庫・工場を退去するときの保証金の精算|差し引かれるもの、原状回復の範囲、返ってこないときの進め方

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倉庫・工場を退去するときの保証金の精算|差し引かれるもの、原状回復の範囲、返ってこないときの進め方

倉庫や工場を退去するときは、預けた保証金から、未払いの賃料や原状回復の費用などを差し引いた残りが返ってきます(民法第622条の2第1項)。契約で償却を決めていれば、その分も返ってきません。倉庫・工場では、床の補修、ラックや中二階の撤去、増設した電気設備の撤去など、オフィスにはない項目が原状回復に加わることがあります。保証金も月額賃料の何か月分で決まるため、賃料の大きい倉庫では、差し引かれる額も返ってくる額も大きくなります。

この記事では、倉庫・工場を退去するときに保証金が返ってくるまでの流れ、差し引かれるもの、倉庫・工場で原状回復の対象になりやすいもの、通常の使用による損耗との境目、精算の計算の例、見積もりの確かめ方、退去の段取りと届出、返ってこないときの進め方を、民法の決まりと公的な案内をもとに整理します。

保証金が返ってくるまでの流れ

順番すること確かめること
1解約を予告する契約で決めた予告の期間。書面で知らせる
2原状回復の範囲を確かめる契約書の条項、入居時の記録、残す設備と撤去する設備
3見積もりを取る工事の内訳・数量・単価。工事の業者が指定されているか
4荷物とラックを動かす新しい倉庫への移動、撤去する物の処分
5原状回復の工事借主が工事するのか、貸主が工事して保証金から差し引くのか
6立ち会い・明け渡し貸主と一緒に状態を確かめ、鍵を返す
7精算書を受け取る差し引きの項目と金額
8保証金が返ってくる契約で決めた返還の期限

民法は、貸主が保証金(敷金)を返さなければならないときを、賃貸借が終わって物件の返還を受けたときと定めています(民法第622条の2第1項)。返ってくるのは、明け渡しのあとです。

差し引かれるもの

差し引かれるもの中身根拠
未払いの賃料・共益費最後の月の賃料、精算の残り民法第622条の2第1項
原状回復の費用借主が元に戻すべき部分を貸主が工事した費用民法第621条、契約の条項
償却契約で決めた、返ってこない部分契約の条項
明け渡しの遅れの損害金期限を過ぎて明け渡したときの損害金契約の条項
残した物の撤去の費用処分しないまま残した荷物や設備の撤去契約の条項

借主の側から、「最後の月の賃料は保証金から差し引いてほしい」と求めることはできません(民法第622条の2第2項)。最後の月の賃料も、ふつうどおり払います。

倉庫・工場で原状回復の対象になりやすいもの

項目確かめること入居時に残しておく記録
床フォークリフトの走行の跡、ひび、ラックを固定した穴、床のライン床の写真、ひびの位置
ラック・中二階撤去が要るか、次の借主に引き継げるか誰が設置したか(貸主か借主か)
照明・電気設備増設した照明、動力の電気、配線の撤去入居時の照明と電気の設備の一覧
空調・冷凍冷蔵の設備借主が持ち込んだ設備の撤去貸主の設備か借主の設備かの区分
壁・天井穴あけ、設備の取り付けの跡壁と天井の写真
シャッター・搬入口傷やへこみ、故障動作と外観の記録
外まわり外構、駐車場の路面、看板外まわりの写真
油・薬品の跡床にしみた油、薬品使う物と、床の養生の方法

民法は、借主が元に戻す損傷から、通常の使用によって生じた損耗と、年数がたって生じた変化(経年変化)を除き、借主の責任ではない理由で生じた損傷も除いています(民法第621条)。倉庫では、フォークリフトの走行やラックの設置そのものが通常の使い方に含まれることもあるため、どこまでが通常の損耗にあたるかは、契約書の原状回復の条項と、入居時の状態の記録で判断が分かれます。

特約で範囲が広がっていないか

契約書の特約で、借主が戻す範囲を広げていることがあります。最高裁は、通常の使用による損耗まで借主が補修費用を負担する特約について、負担する範囲が契約書に具体的に書かれているか、口頭で説明されて借主が明確に認識し合意したなど、明確な合意が必要だと判断しています(最高裁平成17年12月16日判決)。これは住宅の事例ですが、倉庫の契約でも、原状回復の条項がどこまでを借主の負担として具体的に書いているかが、精算を確かめる出発点になります。

条項の書き方の例戻す範囲確かめること
「通常の使用による損耗を除き、原状に復する」民法の原則に近い何が通常の損耗にあたるか
「床の塗装をやり直し、借主が設置した設備をすべて撤去する」具体的に定めた範囲入居時にすでにあった傷や設備の扱い
「入居時の状態(別紙の写真のとおり)に戻す」入居時の記録による記録が契約書に添えられているか
「建物の躯体の状態(スケルトン)で明け渡す」内装と設備をすべて撤去入居時にすでにあった内装の扱い

(条項は書き方の例です)

精算の計算の例

月額賃料120万円、保証金6か月分(720万円)、償却1か月分の倉庫を退去する例です。原状回復の工事に300万円かかり、未払いの賃料はないとします(金額は計算のための例です)。

項目金額
預けた保証金720万円
償却(1か月分)−120万円
原状回復の費用−300万円
返ってくる額300万円

倉庫を退去するときの保証金の精算の例。預けた保証金720万円から、償却120万円と原状回復の費用300万円を差し引いて、返ってくるのは300万円。返ってくるのは明け渡しのあと。金額は計算のための例

この例では、預けた保証金のうち返ってくるのは約4割です。原状回復の費用は、保証金から差し引く場合と、借主が工事の代金を直接払う場合があり、契約によって分かれます。借主が直接払う場合は、保証金が返ってくる前に工事の代金が出ていきます。

精算書の例

精算書には、差し引く項目が並びます。先の例を、項目に分けると次のようになります(金額と項目は計算のための例です)。

項目数量など金額
預けた保証金720万円
償却賃料の1か月分−120万円
床の補修傷とラックの固定穴の補修−110万円
床のラインの撤去一式−20万円
ラックの撤去・処分借主が設置したもの−90万円
増設した照明・配線の撤去一式−40万円
残した物の処分一式−15万円
外まわり(シャッターの補修など)一式−25万円
返ってくる額300万円

「一式」の項目は、数量と単価の内訳を求めます。入居時からあった傷や、前の借主が残した設備の撤去が含まれていないかを、入居時の記録と照らします。

原状回復の工事を、誰が発注するか

進め方中身確かめること
貸主が工事して、保証金から差し引く借主は工事の手配をしない工事の範囲と単価。精算書の内訳
借主が自分で業者に頼む借主が工事の代金を払い、保証金はそのまま返ってくる工事の仕上がりを貸主が確かめる方法
貸主が指定する業者に、借主が頼む業者は契約で決まっている指定の業者の見積もりの内訳。ほかの業者と比べられるか

どの進め方になるかは、契約の原状回復の条項で決まります。工事の業者が指定されている場合も、見積もりの内訳を求め、契約の範囲を超える工事が含まれていないかを確かめます。

進め方で、お金が出ていく時期が変わる

先の例(保証金720万円、償却120万円、原状回復300万円)で比べると、次のようになります(金額は計算のための例です)。

進め方工事の代金返ってくる保証金差し引きの合計
貸主が工事して、保証金から差し引く手元からは出ていかない300万円420万円
借主が自分で業者に頼む明け渡しの前に300万円を払う600万円420万円

差し引きの合計は同じですが、借主が自分で業者に頼む場合は、工事の代金を払ってから保証金が返ってくるまでの間、300万円を先に払っておくことになります。移転の時期の資金繰りを考えるときは、工事の代金を払う時期も見込みます。

残したい設備は、書面で合意する

ラック、中二階、照明、空調など、借主が付けた設備を撤去せずに残したいときは、貸主や次の借主と書面で合意しておきます。

借地借家法には、貸主の同意を得て建物に付け加えた造作を、賃貸借が終わるときに時価で買い取るよう貸主に請求できる「造作買取請求権」があります(第33条)。ただし、この規定は、特約で借主に不利に変えることを禁じる強行規定の対象に入っていません(第37条)。事業用の契約書では「造作買取請求権を行使しない」と定めていることがあり、その場合は貸主に買い取ってもらうことはできません。

残し方中身書面に残すこと
貸主に引き渡す撤去せず、貸主の設備として残す原状回復の範囲から外すこと。買い取るか、無償で引き渡すか
次の借主に引き継ぐ次の借主が設備をそのまま使う貸主の承諾。次の借主が退去するときの原状回復を誰が負うか
撤去する契約どおり撤去して返す撤去の範囲と工事の期間

次の借主に引き継ぐ進め方は「造作譲渡とは|居抜き退去の原状回復と敷金」で説明しています。

原状回復の見積もりを確かめる

見積もりは、項目ごとに次の点を確かめます。

  • 内訳:工事の項目、数量(面積・個数)、単価。「一式」だけの項目は内訳を求める
  • 範囲:契約書の条項と入居時の記録に照らして、借主の負担になる範囲か
  • 入居時からあった傷や設備:入居したときからあった傷や、前の借主の設備が含まれていないか
  • 業者:工事の業者が契約で指定されているか。指定がなければ、ほかの業者の見積もりと比べる
  • 時期:工事の期間が、明け渡しの期限に間に合うか

納得できない項目は、精算書に署名する前に、理由と根拠を書面で尋ねます。精算書の確かめ方は「敷金が返ってこない・少ないときの対処」でも説明しています。

退去の段取り

倉庫の明け渡しには、荷物の移動、ラックの撤去、原状回復の工事が要ります。解約の予告の期間を6か月とした場合の段取りの例です。

時期すること
明け渡しの6か月前解約を書面で予告する。新しい倉庫を探し始める
5か月前原状回復の範囲を貸主と確かめ、見積もりを取る
3か月前新しい倉庫の契約。入居の工事の日程を決める
2か月前荷物とラックを新しい倉庫に移す
1か月前撤去と原状回復の工事
明け渡し立ち会い、鍵の返却
明け渡しのあと精算書を受け取り、契約で決めた期限までに保証金が返ってくる

倉庫の退去の段取りの例。明け渡しの6か月前に解約を予告し、5か月前に原状回復の範囲と見積もり、3か月前に新しい倉庫の契約、2か月前に荷物とラックの移動、1か月前に撤去と原状回復の工事をして明け渡す。保証金が返ってくるのは明け渡しのあと。予告の期間の6か月は今の倉庫の賃料がかかり、新しい倉庫の契約からの3か月は両方の賃料が重なる

この例で、新しい倉庫の賃料が契約の月からかかる場合は、新しい倉庫を契約してから明け渡しまでの3か月、両方の倉庫の賃料が重なります。今の倉庫の月額賃料が120万円なら、重なる期間の今の倉庫の賃料だけで360万円です(金額は計算のための例です)。

やめる届出も忘れない

入居のときに出した届出は、退去のときに廃止の届出が要ることがあります。東京消防庁は、少量の危険物を貯蔵・取り扱う場所(少量危険物貯蔵取扱所)を廃止したときは、消防署に遅滞なく届け出る必要があるとしています。倉庫業の登録や、騒音を出す機械の届出をしている場合は、手続きをそれぞれの窓口(運輸局、市町村)に確かめます。

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立ち会いの日に確かめること

  • 傷と汚れを1か所ずつ見る:貸主と一緒に、精算の対象になる箇所を確かめ、写真を撮る
  • 入居時の記録と並べる:入居時の写真と比べて、入居したときからあった傷かどうかを確かめる
  • 設備の一覧を照らす:残す設備と撤去した設備を、合意した一覧と照らす
  • 返す物を数える:鍵、カードキー、シャッターのリモコンなど、返した物の数を書面に残す
  • 署名はあとでもよい:その場で精算書への署名を求められても、内訳と根拠を確かめてから署名する
  • 検針と解約:電気・水道・ガスの最後の検針と、回線などの解約の日を確かめる

返ってこない・少ないときの進め方

  1. 精算書と契約書を突き合わせる:差し引かれた項目が、契約の条項と入居時の記録に照らして借主の負担か
  2. 理由を書面で尋ねる:項目ごとの根拠(見積もり、写真)を求める
  3. 期限を決めて書面で請求する:送った日と内容を証明できる内容証明郵便を使うと、請求したことを記録に残せる
  4. 裁判所の手続きを使う:話し合いでまとまらなければ、民事調停、支払督促、訴訟。60万円以下の金銭の請求は少額訴訟を使え、訴訟は140万円以下なら簡易裁判所、超えると地方裁判所

保証金の返還を求める権利は、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年で、時効によって消えます(民法第166条)。精算の話し合いが長引いても、日付は記録しておきます。手続きの詳しい進め方は「敷金が返ってこない・少ないときの対処」で説明しています。

貸主が変わったとき

入居している間に倉庫が売られた場合、借主が引渡しを受けて入居していれば、貸主の地位は新しい所有者に移り(民法第605条の2第1項、借地借家法第31条)、保証金(敷金)を返す義務も新しい所有者が引き継ぎます(民法第605条の2第4項)。借主が新しい所有者に保証金を預け直す必要はなく、退去のときは新しい貸主に精算と返還を求めます。

新しい所有者が貸主であることを借主に主張するには、所有権の移転の登記が必要です(民法第605条の2第3項)。「所有者が変わったので振込先を変えてほしい」という通知が届いたら、法務局で登記事項証明書を取り、所有者が本当に変わっているかを確かめてから振込先を変えます。保証金の預り証や契約書は、退去まで保管しておきます。貸主が倒産したときの扱いは「オーナーが倒産・ビル売却したら敷金はどうなる?」で説明しています。

会計と税金

項目扱い根拠
返ってくる保証金消費税の課税の対象にならない国税庁 タックスアンサーNo.6225
返ってこない償却(消費税)権利の設定の対価として、消費税の課税の対象になる国税庁 タックスアンサーNo.6225
返ってこない償却(法人税)資産を借りるための権利金などの費用で、効果が1年以上に及ぶものは繰延資産法人税法施行令第14条第1項第6号ロ

会計では、借りた建物の内部造作の除去などの原状回復が契約で求められているときは、資産除去債務を計上しなければならない場合があります。敷金を資産に計上しているときは、その計上に代えて、敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用に計上する方法も使えます(企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」第9項)。この方法なら、原状回復の費用が退去の年に一度に出るのを避けられます。仕組みは「資産除去債務とは|賃貸オフィスの原状回復と敷金での処理」で説明しています。

移転のときの資金繰り

移転では、新しい倉庫の保証金を契約のときに払い、今の倉庫の保証金は、明け渡したあと、差し引きの残りが返ってきます。先の例なら、新しい倉庫の保証金を払ってから、今の倉庫の300万円が返ってくるまで、数か月の間があきます。新しい倉庫を借りるときの初期費用と資金繰りは「倉庫・工場を借りるには」で説明しています。

新しい倉庫の保証金を減らす

当社の「敷金半額くん」は、新しく借りる物件の敷金・保証金を、半額から最大0円まで減らすサービスで、物流倉庫などの倉庫でも相談できます。減らした分の代わりに、当社が貸主に保証を提供します。移転の時期に、新しい保証金と、戻ってくる前の今の保証金が重なる負担を軽くできます。

使い続ける倉庫の保証金を、入居したまま取り戻す

退去しないで使い続ける倉庫の保証金は、「敷金返還くん」で、入居したまま現金で取り戻せます。どちらも、利用には当社の審査と貸主の承諾が必要で、当社への保証料がかかります。

次に借りる倉庫で同じことにならないために

  • 入居のときに記録を残す:床・壁・天井・設備の写真と、残っている設備の一覧を、貸主と一緒に確かめて契約書に添える
  • 原状回復の条項を具体的にする:戻す範囲、撤去する設備、通常の損耗の扱いを、契約の前に書面で確かめる
  • 設備の持ち主をはっきりさせる:ラック、照明、空調を、貸主の設備と借主の設備に分けて書いておく
  • 入居中の工事の記録を残す:設備を増やすたびに、貸主の承諾書と図面を保管する。退去のときに、誰が付けた設備かを示す記録になる
  • 予告の期間と工事の期間を見込む:明け渡しまでに撤去と工事が終わる期間を、契約の段階で確かめる

契約書の確かめ方は「倉庫の賃貸借契約書で確かめること」で説明しています。

よくある質問

倉庫の保証金はいつ返ってきますか?

賃貸借が終わって倉庫を返したあとです(民法第622条の2第1項)。明け渡しから何か月以内に返すかを、契約書で決めていることがあります。

フォークリフトでできた床の傷は、借主が直すのですか?

民法の原則では、通常の使用による損耗と経年変化は、借主が元に戻す範囲から除かれます(民法第621条)。倉庫ではフォークリフトの走行が通常の使い方に含まれることもあるため、契約書の原状回復の条項と、入居時の床の状態の記録で判断します。

ラックは撤去しなければいけませんか?

借主が設置したラックの撤去を、契約で定めているかを確かめます。次の借主や貸主が引き継ぐことで合意できれば、撤去しなくて済む場合もあります。合意は書面で残します。

付けたラックを、貸主に買い取ってもらえますか?

貸主の同意を得て付けた造作は、賃貸借が終わるときに時価で買い取るよう請求できます(借地借家法第33条)。ただし、契約書で「造作買取請求権を行使しない」と定めていれば請求できません(第37条により特約が有効)。買い取りや無償での引き渡しは、貸主と話し合って書面で決めます。

原状回復の工事を、自分で頼んだ業者に任せてもよいですか?

契約の原状回復の条項で決まります。業者を指定していない契約なら、自分で業者に頼み、仕上がりを貸主に確かめてもらう進め方もあります。指定の業者がある場合も、見積もりの内訳を求めることはできます。

償却はいつ差し引かれますか?

契約で決めた時期に差し引かれます。「契約の終了時に償却する」と定めていれば、退去のときの精算で差し引かれます。入居の年数で償却の額が変わる定めもあるため、契約書で確かめます。

入居中に倉庫が売られたら、保証金はどうなりますか?

借主が引渡しを受けて入居していれば、保証金(敷金)を返す義務は新しい所有者が引き継ぎます(民法第605条の2第4項)。預け直す必要はなく、退去のときは新しい所有者に返還を求めます。振込先を変える前に、登記事項証明書で所有者が変わっているかを確かめます。

最後の月の賃料を保証金と相殺できますか?

借主から「賃料は保証金から差し引いてほしい」と求めることはできません(民法第622条の2第2項)。最後の月の賃料もふつうどおり払い、保証金は明け渡しのあとに精算されます。

精算に納得できないときは、どうすればよいですか?

精算書に署名する前に、項目ごとの理由と根拠を書面で尋ねます。まとまらなければ、期限を決めて書面で請求し、民事調停や訴訟などの手続きを使います(60万円以下の金銭の請求は少額訴訟)。

まとめ

  • 保証金は、明け渡しのあと、未払いの賃料や原状回復の費用を差し引いて返ってくる(民法第622条の2)
  • 契約で償却を決めていれば、その分も返ってこない
  • 倉庫・工場では、床・ラック・電気設備・外まわりなど、オフィスにはない項目が原状回復に加わることがある
  • 通常の使用による損耗と経年変化は、民法の原則では借主が戻す範囲に入らない(民法第621条)
  • 特約で戻す範囲を広げるには、明確な合意が要る(最高裁平成17年12月16日判決)
  • 保証金720万円・償却1か月分・原状回復300万円の例では、返ってくるのは300万円
  • 退去の段取りは予告の期間から逆算し、危険物などの届出はやめるときにも出す
  • 残したい設備は、買い取りや引き継ぎを貸主と書面で合意する
  • 返ってこないときは、書面で尋ねて期限を決めて請求し、まとまらなければ裁判所の手続きを使う
  • 移転のときは、新しい倉庫の保証金を保証に置き換えて減らすと、保証金が重なる負担を軽くできる

出典:民法第166条・第605条の2・第621条・第622条の2、借地借家法第31条・第33条・第37条、法人税法施行令第14条、国税庁「No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など」、企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第21号 資産除去債務に関する会計基準の適用指針」第9項、最高裁判所 平成17年12月16日判決、東京消防庁「少量危険物貯蔵取扱所・指定可燃物貯蔵取扱所廃止届出書」、民事訴訟法第368条、裁判所法第33条。

Tags#敷金・保証金
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