立ち会いの日に確かめること
- 傷と汚れを1か所ずつ見る:貸主と一緒に、精算の対象になる箇所を確かめ、写真を撮る
- 入居時の記録と並べる:入居時の写真と比べて、入居したときからあった傷かどうかを確かめる
- 設備の一覧を照らす:残す設備と撤去した設備を、合意した一覧と照らす
- 返す物を数える:鍵、カードキー、シャッターのリモコンなど、返した物の数を書面に残す
- 署名はあとでもよい:その場で精算書への署名を求められても、内訳と根拠を確かめてから署名する
- 検針と解約:電気・水道・ガスの最後の検針と、回線などの解約の日を確かめる
返ってこない・少ないときの進め方
- 精算書と契約書を突き合わせる:差し引かれた項目が、契約の条項と入居時の記録に照らして借主の負担か
- 理由を書面で尋ねる:項目ごとの根拠(見積もり、写真)を求める
- 期限を決めて書面で請求する:送った日と内容を証明できる内容証明郵便を使うと、請求したことを記録に残せる
- 裁判所の手続きを使う:話し合いでまとまらなければ、民事調停、支払督促、訴訟。60万円以下の金銭の請求は少額訴訟を使え、訴訟は140万円以下なら簡易裁判所、超えると地方裁判所
保証金の返還を求める権利は、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年で、時効によって消えます(民法第166条)。精算の話し合いが長引いても、日付は記録しておきます。手続きの詳しい進め方は「敷金が返ってこない・少ないときの対処」で説明しています。
貸主が変わったとき
入居している間に倉庫が売られた場合、借主が引渡しを受けて入居していれば、貸主の地位は新しい所有者に移り(民法第605条の2第1項、借地借家法第31条)、保証金(敷金)を返す義務も新しい所有者が引き継ぎます(民法第605条の2第4項)。借主が新しい所有者に保証金を預け直す必要はなく、退去のときは新しい貸主に精算と返還を求めます。
新しい所有者が貸主であることを借主に主張するには、所有権の移転の登記が必要です(民法第605条の2第3項)。「所有者が変わったので振込先を変えてほしい」という通知が届いたら、法務局で登記事項証明書を取り、所有者が本当に変わっているかを確かめてから振込先を変えます。保証金の預り証や契約書は、退去まで保管しておきます。貸主が倒産したときの扱いは「オーナーが倒産・ビル売却したら敷金はどうなる?」で説明しています。
会計と税金
| 項目 | 扱い | 根拠 |
|---|
| 返ってくる保証金 | 消費税の課税の対象にならない | 国税庁 タックスアンサーNo.6225 |
| 返ってこない償却(消費税) | 権利の設定の対価として、消費税の課税の対象になる | 国税庁 タックスアンサーNo.6225 |
| 返ってこない償却(法人税) | 資産を借りるための権利金などの費用で、効果が1年以上に及ぶものは繰延資産 | 法人税法施行令第14条第1項第6号ロ |
会計では、借りた建物の内部造作の除去などの原状回復が契約で求められているときは、資産除去債務を計上しなければならない場合があります。敷金を資産に計上しているときは、その計上に代えて、敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用に計上する方法も使えます(企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」第9項)。この方法なら、原状回復の費用が退去の年に一度に出るのを避けられます。仕組みは「資産除去債務とは|賃貸オフィスの原状回復と敷金での処理」で説明しています。
移転のときの資金繰り
移転では、新しい倉庫の保証金を契約のときに払い、今の倉庫の保証金は、明け渡したあと、差し引きの残りが返ってきます。先の例なら、新しい倉庫の保証金を払ってから、今の倉庫の300万円が返ってくるまで、数か月の間があきます。新しい倉庫を借りるときの初期費用と資金繰りは「倉庫・工場を借りるには」で説明しています。
新しい倉庫の保証金を減らす
当社の「敷金半額くん」は、新しく借りる物件の敷金・保証金を、半額から最大0円まで減らすサービスで、物流倉庫などの倉庫でも相談できます。減らした分の代わりに、当社が貸主に保証を提供します。移転の時期に、新しい保証金と、戻ってくる前の今の保証金が重なる負担を軽くできます。
使い続ける倉庫の保証金を、入居したまま取り戻す
退去しないで使い続ける倉庫の保証金は、「敷金返還くん」で、入居したまま現金で取り戻せます。どちらも、利用には当社の審査と貸主の承諾が必要で、当社への保証料がかかります。
次に借りる倉庫で同じことにならないために
- 入居のときに記録を残す:床・壁・天井・設備の写真と、残っている設備の一覧を、貸主と一緒に確かめて契約書に添える
- 原状回復の条項を具体的にする:戻す範囲、撤去する設備、通常の損耗の扱いを、契約の前に書面で確かめる
- 設備の持ち主をはっきりさせる:ラック、照明、空調を、貸主の設備と借主の設備に分けて書いておく
- 入居中の工事の記録を残す:設備を増やすたびに、貸主の承諾書と図面を保管する。退去のときに、誰が付けた設備かを示す記録になる
- 予告の期間と工事の期間を見込む:明け渡しまでに撤去と工事が終わる期間を、契約の段階で確かめる
契約書の確かめ方は「倉庫の賃貸借契約書で確かめること」で説明しています。
よくある質問
倉庫の保証金はいつ返ってきますか?
賃貸借が終わって倉庫を返したあとです(民法第622条の2第1項)。明け渡しから何か月以内に返すかを、契約書で決めていることがあります。
フォークリフトでできた床の傷は、借主が直すのですか?
民法の原則では、通常の使用による損耗と経年変化は、借主が元に戻す範囲から除かれます(民法第621条)。倉庫ではフォークリフトの走行が通常の使い方に含まれることもあるため、契約書の原状回復の条項と、入居時の床の状態の記録で判断します。
ラックは撤去しなければいけませんか?
借主が設置したラックの撤去を、契約で定めているかを確かめます。次の借主や貸主が引き継ぐことで合意できれば、撤去しなくて済む場合もあります。合意は書面で残します。
付けたラックを、貸主に買い取ってもらえますか?
貸主の同意を得て付けた造作は、賃貸借が終わるときに時価で買い取るよう請求できます(借地借家法第33条)。ただし、契約書で「造作買取請求権を行使しない」と定めていれば請求できません(第37条により特約が有効)。買い取りや無償での引き渡しは、貸主と話し合って書面で決めます。
原状回復の工事を、自分で頼んだ業者に任せてもよいですか?
契約の原状回復の条項で決まります。業者を指定していない契約なら、自分で業者に頼み、仕上がりを貸主に確かめてもらう進め方もあります。指定の業者がある場合も、見積もりの内訳を求めることはできます。
償却はいつ差し引かれますか?
契約で決めた時期に差し引かれます。「契約の終了時に償却する」と定めていれば、退去のときの精算で差し引かれます。入居の年数で償却の額が変わる定めもあるため、契約書で確かめます。
入居中に倉庫が売られたら、保証金はどうなりますか?
借主が引渡しを受けて入居していれば、保証金(敷金)を返す義務は新しい所有者が引き継ぎます(民法第605条の2第4項)。預け直す必要はなく、退去のときは新しい所有者に返還を求めます。振込先を変える前に、登記事項証明書で所有者が変わっているかを確かめます。
最後の月の賃料を保証金と相殺できますか?
借主から「賃料は保証金から差し引いてほしい」と求めることはできません(民法第622条の2第2項)。最後の月の賃料もふつうどおり払い、保証金は明け渡しのあとに精算されます。
精算に納得できないときは、どうすればよいですか?
精算書に署名する前に、項目ごとの理由と根拠を書面で尋ねます。まとまらなければ、期限を決めて書面で請求し、民事調停や訴訟などの手続きを使います(60万円以下の金銭の請求は少額訴訟)。
まとめ
- 保証金は、明け渡しのあと、未払いの賃料や原状回復の費用を差し引いて返ってくる(民法第622条の2)
- 契約で償却を決めていれば、その分も返ってこない
- 倉庫・工場では、床・ラック・電気設備・外まわりなど、オフィスにはない項目が原状回復に加わることがある
- 通常の使用による損耗と経年変化は、民法の原則では借主が戻す範囲に入らない(民法第621条)
- 特約で戻す範囲を広げるには、明確な合意が要る(最高裁平成17年12月16日判決)
- 保証金720万円・償却1か月分・原状回復300万円の例では、返ってくるのは300万円
- 退去の段取りは予告の期間から逆算し、危険物などの届出はやめるときにも出す
- 残したい設備は、買い取りや引き継ぎを貸主と書面で合意する
- 返ってこないときは、書面で尋ねて期限を決めて請求し、まとまらなければ裁判所の手続きを使う
- 移転のときは、新しい倉庫の保証金を保証に置き換えて減らすと、保証金が重なる負担を軽くできる
出典:民法第166条・第605条の2・第621条・第622条の2、借地借家法第31条・第33条・第37条、法人税法施行令第14条、国税庁「No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など」、企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第21号 資産除去債務に関する会計基準の適用指針」第9項、最高裁判所 平成17年12月16日判決、東京消防庁「少量危険物貯蔵取扱所・指定可燃物貯蔵取扱所廃止届出書」、民事訴訟法第368条、裁判所法第33条。