不動産会計

資産除去債務とは|賃貸オフィスの原状回復と敷金での処理

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資産除去債務とは|賃貸オフィスの原状回復と敷金での処理

資産除去債務とは、建物や設備を将来取り除くときに、法令や契約で求められる義務を、今の時点で負債として計上するものです。オフィスや店舗を借りて内装工事をした会社では、退去時に内装を撤去して元に戻す義務(原状回復の義務)が、資産除去債務にあたることがあります。敷金を預けている場合は、負債を計上する代わりに、敷金のうち返ってこない見込みの額を費用にしていく方法も認められています。

この記事では、企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」と適用指針第21号をもとに、賃貸オフィスの原状回復を例に、2つの処理方法と仕訳、決算書での表示、2027年4月以後に始まる事業年度から適用される新しいリース会計基準での扱い、税務との違いを整理します。

資産除去債務とは

会計基準は、資産除去債務を、有形固定資産の取得や通常の使用によって生じ、その資産の除去に関して法令や契約で求められる法律上の義務と、それに準ずるものと定めています(第3項(1))。アスベストなどの有害物質を、法律に従って特別な方法で取り除く義務も含まれます。

オフィスを借りて間仕切りや設備を入れた場合、それらは借主の有形固定資産(内部造作)です。賃貸借契約で退去時の原状回復が求められていれば、その内部造作を取り除く義務が、資産除去債務になることがあります(適用指針第9項)。

例資産除去債務になる義務
借りたオフィス・店舗の内装契約で求められる、退去時の内装の撤去(原状回復)
アスベストを使った建物解体時に法律に従って特別な方法で取り除く義務

原則の処理:負債に計上し、資産にも加える

資産除去債務は、発生したときに負債として計上します(第4項)。金額は、除去に要する将来の支出を見積り、その金額を割り引いた現在価値です(第6項)。割引率は、貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率を使います(同項(2))。

計上した負債と同じ額を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加え、減価償却を通じて費用にしていきます(第7項)。時の経過による負債の増加分(利息費用)は、期首の負債の額に当初の割引率を掛けて計算し、その期の費用にします(第9項)。

例として、内装工事の10年後に退去し、原状回復に1,000万円かかると見積ったとします。内装の耐用年数も10年、割引率を年1%とすると、計上する額は1,000万円 ÷ 1.01の10乗 ≒ 905万円です。

時点借方貸方
内装工事のとき建物附属設備 905万円資産除去債務 905万円
毎期の決算減価償却費 90.5万円減価償却累計額 90.5万円
毎期の決算(1年目)利息費用 9.1万円資産除去債務 9.1万円
退去して原状回復したとき資産除去債務 1,000万円現金預金 1,000万円

利息費用は毎期少しずつ増え、10年後に負債は1,000万円になります。実際の支払額が見積りと違えば、その差額を損益にします(第15項)。金額は計算のための例です。

敷金を預けているときの方法

建物の賃貸借契約に関連する敷金が資産に計上されているときは、その敷金に関連する部分について、資産除去債務を負債に計上する代わりに、敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用にする方法を使えます(適用指針第9項)。

適用指針は、原則どおり負債と資産を両方計上すると、敷金と除去費用が二重に資産に載るという見方があることと、実務の負担を考えて、この方法を認めたと説明しています(第27項)。毎期の費用は、同じような賃借建物への平均的な入居期間など、合理的な期間にもとづいて計算するのが適当とされています(同項)。

例として、敷金1,200万円のうち、原状回復に充てられて返ってこない見込みの額が1,000万円、平均的な入居期間が10年なら、毎期100万円を費用にします。

時点借方貸方
毎期の決算費用 100万円差入保証金(敷金) 100万円

科目の名前は会社によって異なります。

資産除去債務の2つの処理方法の比較。原則の方法では、原状回復の見積り1,000万円を年1%で割り引いた905万円を負債に計上し、同じ額を内装の資産に加えて、毎期の減価償却と利息費用で費用にする。敷金を預けているときの方法では、負債を計上せず、敷金1,200万円のうち返ってこない見込みの1,000万円を、平均的な入居期間10年で割って毎期100万円ずつ費用にする。金額は例

項目原則敷金の方法
負債資産除去債務を計上する計上しない
資産除去費用を内装の資産に加える敷金を毎期減らす
毎期の費用減価償却費と利息費用回収が見込めない額のうちその期の負担分
根拠会計基準第4項〜第9項適用指針第9項・第27項

決算書での表示と注記

項目表示根拠
資産除去債務(負債)固定負債。1年以内に履行が見込まれるものは流動負債第12項
除去費用の減価償却関連する資産の減価償却費と同じ区分第13項
利息費用関連する資産の減価償却費と同じ区分第14項

重要性が乏しい場合を除き、資産除去債務の内容、支出までの見込期間と割引率、期中の増減などを注記します(第16項)。金額を合理的に見積れない場合は、計上せず、見積れるようになった時点で計上します(第5項)。その場合も、概要と見積れない理由を注記します(第16項(5))。

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新しいリース会計基準での扱い

2027年4月1日以後に始まる事業年度から、新しいリース会計基準が適用されます(企業会計基準第34号第58項)。借主は、原則として、借りる権利を「使用権資産」として貸借対照表に載せることになります。詳しくは「新リース会計基準の変更点」で説明しています。

新しい適用指針は、資産除去債務を計上する場合で、関連する資産が使用権資産であるときは、負債と同じ額を使用権資産の帳簿価額に加えるとしています(適用指針第33号第28項)。また、敷金を預けているときの方法(適用指針第21号第9項)を選ぶ場合は、同項に従って処理するとしています(適用指針第33号第35項)。

税務との違い

法人税では、費用のうち、償却費以外のもので期末までに債務が確定していないものは、損金になりません(法人税法第22条第3項第2号)。資産除去債務は将来の支出の見積りなので、会計で計上した費用と税務の損金の額に差が生じ、申告で調整することになります。敷金の税務上の扱いは「敷金の会計処理」で整理しています。

敷金を資金にするときの注意

原状回復の見込み額が大きいほど、敷金は返ってくる額が少ない資産になります。それでも、入居しているあいだは預けたままで、資金として使えません。

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よくある質問

原状回復の費用が見積れないときはどうしますか?

資産除去債務を合理的に見積れないときは計上せず、見積れるようになった時点で負債に計上します(第5項)。その間は、概要と、見積れない理由を注記します(第16項(5))。

敷金を預けていれば、必ず敷金の方法を使うのですか?

選べる方法で、必ず使うものではありません。適用指針は、敷金が資産に計上されているときに、原則の方法に代えて使える方法としています(第9項)。

資産除去債務の計上はいつからですか?

会計基準は、2010年4月1日以後に始まる事業年度から適用されています(第17項)。

まとめ

  • 資産除去債務は、有形固定資産を取り除くときに法令や契約で求められる義務を、今の時点で負債にするもの
  • 借りたオフィス・店舗の内装を撤去する原状回復の義務が、資産除去債務にあたることがある
  • 原則は、見積った支出の現在価値を負債に計上し、同じ額を資産に加えて減価償却する
  • 敷金を預けているときは、敷金のうち返ってこない見込みの額を期間で割って費用にする方法も使える
  • 預けている敷金は、入居したまま資金にする方法がある。会計処理は事前に確かめる

出典:企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」第3項〜第9項・第12項〜第17項、企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」第9項・第27項、企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」第28項・第35項、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」第58項、法人税法第22条。

Tags#不動産会計
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