3PLに任せられる業務
国土交通省は、3PLの事業者を、荷主でも単なる運送事業者でもない第三者として、アウトソーシングの流れの中で荷主の物流部門を代行し、高度な物流サービスを提供するものと説明しています。同省の「3PL契約書ガイドライン」は、3PLのサービスの例として次の業務を挙げています。
| 業務 | 中身 |
|---|
| 保管 | 商品を一定の期間、倉庫に置く |
| 荷役 | 輸送機器への積み下ろし、倉庫への入出庫(仕分けを含む) |
| 在庫管理 | 在庫の量や鮮度(賞味期限など)を管理する |
| 流通加工 | 組立て、詰め替え、包装、検品、値札貼りなどの簡易な加工 |
| 梱包 | 輸送や保管のための梱包 |
| 輸送 | 指定された場所へ商品を運ぶ |
| 返品・回収 | 取引先から返された商品の回収と保管 |
| 情報サービス | 商品・輸送・拠点の運営を情報システムで管理する |
| コンサルティング | 物流の課題の解決策を提案し、実行を支援する |
| その他 | 輸出入の手続き、納入先での据付、受注の代行や代金の回収など |
3PLは、これらのうち荷主が必要とする業務を組み合わせて受託します。任せたあとも、荷主には、物流の目標や拠点の閉鎖・移転などの方針、商品・荷姿・届け先の情報を物流事業者に示すことなどの協力が求められます(国土交通省「3PL契約書ガイドライン」)。
保管を任せるなら、倉庫業の登録を確かめる
他社から預かった物を倉庫で保管する営業は倉庫業で(倉庫業法第2条第2項)、国土交通大臣の登録を受けなければ営めません(同法第3条)。3PLに保管を任せるときは、その事業者、または保管を受け持つ倉庫の会社が、倉庫業の登録を受けているかを確かめます。登録を受けた倉庫業者は、倉庫の種類ごとの施設の基準を満たした倉庫で、倉庫ごとに選任した倉庫管理主任者に管理の業務を行わせます(倉庫業法第6条・第11条)。
国土交通省は、登録を受けた倉庫業者と倉庫の一覧(登録倉庫事業者棟別リスト)を公開しており、会社名と倉庫の種類を確かめられます。2024年3月31日時点の一覧では、7,242の事業者が28,406棟の倉庫で登録を受けています。それより後に登録された会社は載っていませんが、倉庫業者の登録簿は公衆の縦覧に供されています(倉庫業法第5条第3項)。同省の資料は、3PLの事業には貨物利用運送事業が含まれる場合が多いとしており、運送まで任せるときは、運送の事業に必要な許可や登録もあわせて確かめます。登録の中身は「倉庫業の登録が必要になる場合と手続き」で説明しています。
1つの契約の中に、性質の違う取引が入る
3PLとの取引には、保管(倉庫に物を預ける寄託)、運送、倉庫の中の作業(業務の委託)が含まれることがあります。国土交通省のガイドラインも、契約書を作るときは、各業法の約款を前提にしたうえで、ガイドラインと整合をとるよう求めています。保管の部分は、責任の範囲を倉庫業者の倉庫寄託約款が、保管料や荷役料を倉庫業者が国に届け出た料金が決めます(標準倉庫寄託約款第49条)。荷物を預ける寄託と、倉庫を借りる賃貸借の違いは「倉庫の寄託契約と賃貸借契約の違い」で説明しています。
物流コストのうち、外に払っている割合
JILSの「2024年度 物流コスト調査」(有効回答191社)で、全業種の物流コストの構成比を支払いの形で分けると、次のとおりでした。
| 区分 | 物流コストに占める割合 | 主な中身 |
|---|
| 支払物流費 | 82.75% | 物流の専業者への支払い 69.90%、物流子会社への支払い 10.50%、みなし物流費 2.35% |
| 自家物流費 | 17.25% | 物流の人件費 6.30%、在庫費用 5.08%、減価償却費 3.46%、物流施設費 2.41% |
全業種の構成比で、物流コストの8割あまりは外部への支払いです。3PLに任せるかどうかは、外に出すか出さないかの二択ではなく、どの業務をどこまで任せ、どの業務を自社に残すかの組み合わせで考えます。物流コストの内訳や、費目ごとの下げ方は「物流コストの削減方法」で説明しています。
費用のかかり方の違い
自社で倉庫を借りる場合と、3PLに任せる場合では、費用が量に応じて動くかどうかが違います。
| 比べること | 自社で借りる | 3PLに任せる |
|---|
| 量が少ない月 | 賃料、人件費、設備の費用は、ほぼ変わらずかかる | 個数や重さで料金を決める契約なら、保管料や荷役料が量に応じて下がる |
| 量が多い時期 | 同じ倉庫と人で扱えれば、1個あたりの費用は下がる。足りなければ人を増やす | 料金表どおりに費用が増える。受けられる量の上限を確かめておく |
| 料金の決まり方 | 賃料は面積で、人件費は人数と時間で決まる | 保管料は個数・重量・容積・面積など、契約で決めた単位で決まる |
| 作業の追加 | 自社の人と時間で対応する | 追加の作業は、契約で決めた料金がかかる |

扱う量が少ない、または月による差が大きい会社では、量にかかわらずかかる費用が大きい自社の倉庫は割高になりやすく、量が多く安定している会社では、自社の倉庫の固定的な費用を多くの量で割れるため、1個あたりの費用が下がりやすくなります。どこで入れ替わるかは会社ごとに違うため、同じ物量で1年間の総額を出して比べます。
3PLの料金で確かめること
3PLの料金は、保管料、荷役料(入庫・出庫)、流通加工などの作業料、輸送料、システムの利用料などを組み合わせて決まります。見積もりでは、料金の単位(1個・1ケース・1パレット・1坪あたりなど)、最低料金、繁忙期の扱い、料金を改定するときの方法を並べて確かめます。
国土交通大臣は、倉庫業者の倉庫寄託約款の標準として標準倉庫寄託約款を定めており、倉庫業者がこれと同じ約款を定めると、届出をしたものとみなされます(倉庫業法第8条第3項)。2026年4月1日から施行の標準倉庫寄託約款は、約60年ぶりの大きな改正で、次の点を定めました。
- 搬出入の車両の中での手荷役、仕分け、全数検品・開梱検品、ラベル貼りなど、保管と入出庫に付随する作業を頼んだ場合は、倉庫業者が別に定めた料金か、実際にかかった費用を請求できる
- 十分な時間の余裕のない入出庫の指図や、指図の取消しには、別に費用を請求できる
- 庫内の全部または一部の面積を対象にして料金を決める「面積建保管」を、特約で行える
同省の説明資料は、これらの作業を対価なしで求められることがあったことや、当日中の入出庫の依頼がトラックの荷役・荷待ちの時間を増やすことを、改正の背景に挙げています。新しい約款は、約款を変えたあとに結ぶ寄託契約から適用され、既存の契約に適用するには寄託者の同意が要ります。倉庫業者が旧い標準約款や独自の約款を使い続けることもあるため、相手が使っている約款を確かめます。3PLに任せる場合も、どの作業が基本の料金に含まれ、どの作業が追加の料金になるかを、契約の前に一覧にして決めておきます。
初めに要る資金と、やめるときの費用
自社で倉庫を借りる場合
自社で倉庫を借りると、保証金(敷金)、仲介手数料、前払いの賃料に加えて、ラックや照明などの入居の工事と、荷物の運搬の費用が先にかかります。当社の記事「倉庫・工場を借りるには」の計算の例では、300坪(約992㎡)・月額賃料120万円・保証金6か月分の倉庫で、初期費用1,372万円のうち保証金720万円が52.5%を占めます(金額は計算のための例で、賃料にかかる消費税は含めていません)。

保証金は、賃料などの支払いの担保として預けるお金で、退去して倉庫を明け渡したあと、未払いの賃料などを差し引いた残りが返ってきます(民法第622条の2第1項)。償却(退去のときに差し引く分)の定めがあれば、その分は返ってきません。退去するまで貸主に預けたままで、運転資金にはあてられません。
3PLに任せる場合
3PLに任せる場合は、自社で倉庫を借りないため、倉庫の賃貸借の保証金や入居の工事はかかりません。今の倉庫や取引先から3PLの倉庫へ在庫を移す費用、システムをつなぐ費用など、始めるときにかかる費用は、見積もりで確かめます。国土交通省のガイドラインは、3PLでは物流事業者に荷主のための個別の投資(倉庫・設備・情報システムなど)が生じることが多く、契約の期間がその回収に大きく関わるとしています。
やめるとき
| 比べること | 自社で借りる | 3PLに任せる |
|---|
| やめるときに決まりがある所 | 賃貸借契約の期間、中途解約の予告、原状回復の範囲 | 3PLとの契約の期間、自動更新、解約の事前の予告 |
| やめるときにかかるお金 | 予告の期間の賃料、原状回復の費用 | 在庫を次の倉庫へ移す費用、契約の期間内に解約したときの補償金など、契約で決めた費用 |
| 戻ってくるお金 | 保証金(差し引きの残り。明け渡しのあと) | なし(料金の前払いがあれば契約による) |
自社の倉庫から3PLに切り替える場合は、今の倉庫の解約予告の期間と、3PLへの移管の日程を合わせます。予告の期間の分だけ、両方の費用を払う期間ができます。倉庫を明け渡すときの精算は「倉庫・工場を退去するときの保証金の精算」で説明しています。
3PLの契約書で決めること
国土交通省の「3PL契約書ガイドライン」は、付帯費用の負担や、コスト削減の効果を誰が受け取るかをあいまいにしたまま契約するケースが多く、物流事業者が不利益を受ける例がある一方で、荷主の側にも物流コストが不透明だという声が多いと指摘し、契約書に入れる項目を挙げています。
| 項目 | 決めること |
|---|
| 目的(業務の範囲) | 委託する業務の範囲(保管・輸送・流通加工など) |
| 業務の細目 | 業務の明細と運営の方法。変わったときの改定の方法 |
| 秘密保持 | 業務で知った情報の扱い |
| 事故報告 | 事故が起きたときの連絡と措置 |
| 損害賠償 | 事故が起きたときの賠償の責任 |
| 損害保険 | 事故の責任に保険をかけること、誰がかけるか |
| 料金と支払い | 料金の発生、請求、支払いの方法 |
| 契約期間 | 期間と自動更新 |
| 解約・解除 | 解約の事前の予告、解除できる場合 |
| 再委託 | 3PLがほかの事業者に任せてよい業務 |
| 法律の遵守 | 関連する法律を守ること |
| 価格情報の扱い | 業務で知った荷主や再委託先の価格情報の扱い |
ガイドラインは、このほかに、荷主が協力すること(物流の目標や拠点の閉鎖・移転などの方針、商品・荷姿・届け先の情報を物流事業者に示すことなど)、改善の効果を測る項目と指標、改善で生まれた利益の分け方も、両者で検討して契約書に書き加えるよう勧めています。目標に届かなかったときの負担と、目標を超えたときの配分も、あらかじめ決めておくことが大切だとしています。期間の途中で解約するときの補償金の算定の根拠と負担の分け方、物流事業者が結んだリース契約の引き継ぎも、事前に決めておくことが望ましいとしています。
預けた荷物の事故の扱い
保管の部分は、倉庫寄託約款が損害の扱いを決めていることが多くあります。2026年4月から施行の標準倉庫寄託約款(非発券の倉庫業者向け)では、倉庫業者が賠償の責任を負うのは、倉庫業者またはその使用人の故意または重大な過失による損害に限られ、請求する側がそれを証明する必要があります(第39条)。滅失や損傷の賠償の額は、損害が起きたときの時価で、受寄物の火災保険の金額または寄託価額(寄託の申込みで示す荷物の価額。示さないときや不相当なときは倉庫業者が相当の額を定める。第11条)が上限です(第43条第1項)。それ以外の損害(賞味期限が逆転した順番での出庫による販売機会の損失や、納入先の工場の製造品質の低下など)の賠償は、その荷物についてすでに発生した料金の総額が上限になりました(同条第2項)。
標準倉庫寄託約款では、寄託者が反対の意思を示さない限り、倉庫業者が寄託者のために受寄物を火災保険にかけ、その保険金額は寄託価額です(第33条・第34条)。寄託価額を実際の価額より低く申し出ると、火災のときに受け取れる額も低くなります。賠償の範囲を広げたい場合や、火災以外の事故に備えたい場合は、荷主の側で保険をかけるか、契約で特約を決めます。