金融・融資

資金ショート・黒字倒産を防ぐ資金繰りの改善方法

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資金ショート・黒字倒産を防ぐ資金繰りの改善方法

資金ショートとは、支払いに必要な現金が足りなくなることです。利益が出ていても、売上の入金が遅い、在庫が増える、借入の返済や設備への支払いが重なるといった理由で、現金は足りなくなります。利益が出ているのに支払いができずに倒産してしまうのが、いわゆる黒字倒産です。

中小機構のJ-Net21は、売上は立ったが売掛金の入金は60日後、というように入出金の時期と売上・費用の計上の時期がずれることで、損益計算書では利益が出ていても資金がショートし、倒産することさえ起こりうると説明しています。

この記事では、利益が出ているのに現金が足りなくなる仕組みを数字の例で示し、資金ショートの兆しのつかみ方、足りなくなりそうなときにすぐとれる対処、資金繰りそのものを改善する方法を整理します。

利益が出ているのに現金が足りなくなる仕組み

払ってから回収するまでの「すき間」

商品を仕入れて売る会社では、仕入代金を払ってから、売上代金を回収するまでに時間の差があります。この差の日数が長いほど、その間の支払いを手元の現金で立て替えることになります。

仕入れてから回収するまでのすき間。仕入れた商品を1か月後に販売し、仕入代金は1か月後に支払い、売上代金は販売の2か月後に回収する場合、支払いから回収までの60日間は、手元の現金で立て替えることになる。売上が月1,000万円から1,300万円に増えると、売掛金などに寝る現金は2,000万円から2,600万円に増え、600万円の資金が新たに必要になる(計算のための例)

たとえば、仕入れた商品を1か月後に売り、仕入代金は仕入れの1か月後に払い、売上代金は売った2か月後に回収する会社を考えます。仕入代金を払ってから売上代金が入るまでの約60日間は、会社が現金で立て替えている状態です。

売上が伸びるほど、必要な現金が増える

このすき間は、売上が大きくなるほど大きくなります。月の売上が1,000万円、仕入(原価)が売上の70%の会社で、上の条件のまま売上が1,300万円に増えた場合を計算します(金額は計算のための例です)。

項目売上1,000万円売上1,300万円
売掛金(売上2か月分)2,000万円2,600万円
在庫(仕入1か月分)700万円910万円
買掛金(仕入1か月分)▲700万円▲910万円
必要な運転資金2,000万円2,600万円

売上が3割増えると、売掛金や在庫に寝る現金が600万円増えます。営業利益率が5%なら、売上が増えたことによる利益の増加は月15万円です。利益が増えても、新たに必要な600万円を利益だけで埋めるには40か月かかる計算で、その間の資金は借入などで用意しなければなりません。成長している会社ほど資金ショートに注意が必要なのは、このためです。

すき間の日数を測る:CCC

支払いから回収までのすき間の日数は、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)という指標で測れます。

指標計算
売上債権回転日数売掛金など ÷ 年間の売上高 × 365日
棚卸資産回転日数在庫 ÷ 年間の売上原価 × 365日
仕入債務回転日数買掛金など ÷ 年間の売上原価 × 365日
CCC売上債権回転日数 + 棚卸資産回転日数 − 仕入債務回転日数

先の例(売上が月1,000万円、年1億2,000万円)では、売掛金2,000万円で売上債権回転日数は約61日、在庫と買掛金はどちらも700万円で、年間の売上原価8,400万円に対して約30日です。CCCは61+30−30で約61日となり、図で見た約60日のすき間とほぼ一致します。ここでは在庫と買掛金の日数を売上原価で計算していますが、売上高で計算する方法もあるため、比べるときは同じ計算方法にそろえます。

CCCが長いほど、売上が伸びたときに必要な運転資金が大きくなります。決算書から毎期計算して、長くなっていないかを確かめます。

決算書で、利益と現金のずれを確かめる

利益と現金のずれは、決算書からも確かめられます。本業で1年間に増えた現金(営業キャッシュフロー)は、おおまかに次の式で計算できます。

営業キャッシュフロー ≒ 税引後の利益 + 減価償却費 − 売掛金の増加 − 在庫の増加 + 買掛金の増加

たとえば、税引後の利益が700万円、減価償却費が100万円の年に、売上が伸びて売掛金が600万円、在庫が210万円、買掛金が210万円増えたとします(金額は計算のための例です)。

項目金額
税引後の利益700万円
減価償却費+100万円
売掛金の増加▲600万円
在庫の増加▲210万円
買掛金の増加+210万円
営業キャッシュフロー200万円

利益は700万円でも、本業で増えた現金は200万円にとどまります。ここから借入の返済や設備への支払いが出ていけば、現金は減ります。利益だけでなく、この差を毎期確かめることが大切です。

すき間以外に現金が出ていくもの

利益の計算に入らない、または少しずつしか入らない支出も、現金を減らします。

  • 借入の返済:返した元本は費用にならないが、現金は出ていく
  • 設備や敷金への支払い:設備は減価償却で少しずつ費用になり、敷金は資産になるが、現金はまとめて出ていく
  • 税金:決算のあとにまとめて払う

業種によって、足りなくなりやすい場面が違う

業種資金が足りなくなりやすい場面
建設大きな工事を受注し、材料費や外注費を先に払うとき
製造・卸在庫を積み増すとき。受け取った手形の期日が先のとき
小売・飲食新しい店を出すとき。売上が落ちる季節
IT・サービス採用を増やし、人件費が売上より先に増えるとき

どの業種でも、事業が伸びる場面と、事業が落ち込む場面の両方で資金は足りなくなります。建設業の立て替えについては「建設業の資金調達」で詳しく説明しています。

資金ショートの兆しをつかむ

資金繰り表で数か月先の残高を見ておけば、次のような兆しに早く気づけます。

  • 数か月先の月末残高が、月の支出(経常支出と返済の合計)を下回る月がある
  • 本業の現金の出入り(経常収支)がマイナスの月が続いている
  • 取引先からの入金の遅れや、回収条件の長期化が増えている
  • 返済や支払いのために新たな借入をしている
  • 税金や社会保険料の支払いを後回しにしている

足りなくなりそうなときの対処

早めに相談できる先

資金が足りない月が見えたら、その月より前に動きます。足りなくなってからでは、選べる手段が少なくなります。

手段内容
金融機関に相談する新たな融資や、返済の条件の変更(リスケ)を相談する
公的な融資を使う業況が悪化したときの日本政策金融公庫の融資などを相談する
税金の猶予を申請する一時に払えない税金は、換価の猶予などを申請して分割で払う
売掛金を資金化するファクタリングなどで入金を早める。手数料が高くなりやすい
資産を現金にする使っていない資産や、預けている敷金などを現金にする
公的な機関に相談する各都道府県の中小企業活性化協議会で、収益力の改善や事業再生の相談をする

売掛金の資金化など銀行以外の方法は「銀行以外の資金調達」で説明しています。

中小企業活性化協議会は、国が47都道府県に設置している公正中立な機関で、収益力改善、事業再生、廃業・再チャレンジなどの経営課題に対して支援を行っています(中小機構)。金融機関との調整が必要になる段階でも相談できる窓口です。

足りなくなりそうな月は、週ごとに資金を見る

資金が足りなくなりそうな月は、月ごとの資金繰り表だけでなく、週ごと、または日ごとに入金と支払いを並べて、月の途中の残高も確かめます。給与や手形の期日など、遅らせられない支払いの日に残高が足りるかを、日付で確認するためです。作り方は「資金繰り表の作り方」で説明しています。

動く順番の例

資金繰り表で、3か月後に資金が足りなくなるとわかった場合の動き方の例です。

  1. 足りない額と時期を確かめる:慎重な見込みの表で、いつ、いくら足りないかを出す
  2. 入金を早められないか当たる:請求の前倒しや、取引先への支払い条件の相談
  3. 金融機関に相談する:足りない額と時期、原因と改善の計画を資金繰り表とともに説明する
  4. 公的な制度を確かめる:公的な融資、税金の猶予、中小企業活性化協議会への相談
  5. 資産の現金化を進める:使っていない資産や、預けている敷金を現金にする手続きを始める

金融機関への相談や資産の現金化には、審査や手続きの時間がかかります。足りなくなる月の直前ではなく、見えた時点で2〜5を並行して進めます。

止められない支払いを先に確かめる

資金が足りない月には、どの支払いを期日どおりに払い、どの支払いを相談するかを決めることになります。支払いの種類によって、遅れたときの影響は大きく違います。

支払いが遅れたときの影響。給与は労働基準法で毎月一定の期日に全額を払うことが決められている。手形は期日に払えないと不渡りになり、6か月間に2回で取引停止処分になる。取適法の対象の取引では、下請代金の支払いを遅らせることは禁止されている。税金や社会保険料は猶予の申請ができ、借入の返済は金融機関に条件の変更を相談できる

支払い遅れたときの影響
給与労働基準法で、毎月一定の期日に全額を払うことが決められている
手形期日に払えないと不渡りになり、6か月間に2回で取引停止処分
取適法の対象の代金支払期日を過ぎて払わないことは禁止されている
税金・社会保険料延滞税がかかるが、猶予を申請できる
借入の返済金融機関に条件の変更を相談できる

給与は、労働基準法で、通貨で直接労働者に全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて払わなければならないとされています(第24条)。手形の不渡りについては「約束手形・小切手の廃止」で説明しています。取適法の対象となる取引で委託する側の会社は、受け取った日から60日以内に定めた支払期日を守らなければならず、資金が苦しいことを理由に遅らせることはできません。

してはいけないこと

資金が足りなくなりそうなときほど、次のような対応は避けます。

  • 給与を遅らせる:労働基準法に反するうえ、従業員の信頼を失う
  • 税金や社会保険料を黙って放置する:延滞税がかかり、差押えに進む。払えないなら猶予を申請する
  • 登録のない業者から借りる:お金を貸すことを業とするには貸金業の登録が必要で(貸金業法第3条)、業として年20%を超える利息の契約をすると出資法の刑事罰の対象になる。借りる前に、金融庁の検索サービスなどで登録を確かめる
  • 取引先への支払いを黙って遅らせる:相談なく遅らせると取引を止められるおそれがある。遅れそうなら、期日の前に相談する
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資金繰りを改善する5つの方法

目先の不足を乗り切ったら、同じことを繰り返さないよう、資金繰りそのものを改善します。見直すのは、入金、支払い、在庫、借入、資産の5つです。

資金繰りを改善する5つの方法。入金を早める(請求を早く出す、回収条件を見直す、前受金をもらう)。支払いを平らにする(取引先と条件を相談する、設備はリースや分割を使う)。在庫を減らす(売れ残りを処分する、発注の量を見直す)。借入を組み直す(運転資金を長期の借入に組み替える、返済期間を見直す)。資産を現金にする(使っていない資産を売る、預けている敷金を取り戻す)

1. 入金を早める

請求書を早く出す、回収の条件(締め日と支払日)を取引先と見直す、受注時に前受金をもらう、といった方法で、売上代金を早く回収します。先の例で、回収を売った2か月後から1か月後に早められれば、売上1,300万円の会社では、寝ている現金が1,300万円減ります。

2. 支払いを平らにする

仕入先や外注先に支払いの条件を相談する、設備はリースや分割払いを使ってまとまった支払いを避ける、といった方法で、支払いの山をならします。ただし、取適法の対象の取引では、支払期日は受け取った日から60日以内と決められています。

3. 在庫を減らす

売れ残っている在庫は、仕入代金を払ったまま現金に戻っていない状態です。売れ残りを処分する、発注の量やタイミングを見直すことで、在庫に寝ている現金を減らします。先の例で、年間の売上原価が8,400万円なら、在庫を10日分減らすだけで、約230万円の現金が戻る計算です。

4. 借入を組み直す

長く使い続ける運転資金を短い期間の借入でまかなっていると、返済のたびに資金が足りなくなります。運転資金を長期の借入に組み替える、返済の期間を見直すといった方法を、金融機関に相談します。たとえば、3,000万円を1年で返す借入なら、元本だけで毎月250万円の返済ですが、5年で返す借入なら毎月50万円です(利息を除いた計算の例です)。

5. 資産を現金にする

使っていない設備や不動産、解約できる保険など、事業に使っていない資産を現金にします。オフィスや店舗、倉庫を借りている会社では、貸主に預けている敷金も、退去するまで使えない資産です。

敷金は、CCCの計算には出てきませんが、事業に使えないまま寝ている現金という点では、回収前の売掛金や売れ残りの在庫と同じです。当社の「敷金返還くん」は、預けている敷金の半額から最大全額を、入居したまま現金で取り戻すサービスです。返す敷金の代わりに当社が貸主に保証を提供するため、借り入れではなく、返済や利息はなく、借入金も増えません。当社への保証料がかかり、利用には当社の審査と貸主の承諾が必要です。審査書類の提出から返還までは1か月半から2か月ほどが目安のため、資金が足りなくなる前の段階で検討します。入居中の敷金を資金にするほかの方法は「入居中のオフィス・店舗の敷金を資金にする方法」で比べています。

資金ショートを防ぐ日ごろの備え

改善策とあわせて、次のような仕組みを日ごろから作っておくと、資金ショートの兆しに早く気づけます。

  • 毎月、資金繰り表を更新する:実績を書き換え、数か月先までの予定を見直す
  • 月末残高の下限を決める:下回りそうな月が見えたら、すぐに手を打つ
  • 取引先ごとの入金を管理する:入金の遅れや、回収条件の長期化をいち早くつかむ
  • 金融機関に定期的に報告する:決算書や試算表を持って業績を説明しておくと、必要なときに相談しやすい
  • 借りられるときに借りておく:業績が良いときのほうが融資は受けやすい。手元資金の厚みを持っておく

よくある質問

黒字倒産はなぜ起きるのですか?

売上や費用を計上する時期と、実際に現金が出入りする時期がずれるためです。売掛金の入金が遅い、在庫が増える、借入の返済が重なるといったことで、利益が出ていても支払いに必要な現金が足りなくなります。

売上が伸びているのに、なぜ現金が足りなくなるのですか?

売上が伸びると、まだ回収していない売掛金や、売れる前の在庫が増え、そこに寝る現金が増えるためです。仕入代金の支払いは先に来るため、増えた分の現金を立て替える必要があります。

資金ショートしそうなとき、まず何をすればよいですか?

資金繰り表で、いつ、いくら足りなくなるかを確かめ、その月より前に金融機関に相談します。税金は猶予の申請、借入は返済の条件の変更を相談できます。給与や手形の期日の支払いは遅らせられないため、先に確保します。

資金ショートしたら、すぐに倒産するのですか?

支払いに必要な現金が足りなくなっても、すぐに倒産するとは限りません。ただし、手形の不渡りを6か月間に2回出すと取引停止処分となり、銀行との当座預金取引や貸出取引が2年間できなくなります。給与や税金の支払いが止まれば、従業員や取引先の信頼も失います。足りなくなる前に動くことが何より大切です。

まとめ

  • 資金ショートは、支払いに必要な現金が足りなくなること。利益が出ていても起き、倒産に至るのが黒字倒産
  • 支払いから回収までのすき間は、売上が伸びるほど大きくなる。売上が3割増えると、例では600万円の資金が新たに必要になる
  • 資金繰り表で数か月先の残高を見て、兆しを早くつかむ
  • 足りない月が見えたら、その前に金融機関に相談する。給与、手形、取適法の対象の代金の支払いは遅らせられない
  • 入金、支払い、在庫、借入、資産の5つを見直す。預けている敷金も、入居したまま現金にできる資産のひとつ

出典:中小機構 J-Net21「資金繰り表を活用する」、労働基準法第24条、貸金業法第3条、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第5条、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第3条・第5条、全国銀行協会「手形交換制度」、中小機構「中小企業活性化協議会による支援」。

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