手形・小切手の廃止の時期

| 時期 | できごと |
|---|
| 2026年1月1日 | 取適法の施行。対象の取引で手形払いが禁止に |
| 金融機関ごと | 手形・小切手の最終振出期限 |
| 2027年3月31日 | 電子交換所での手形・小切手の交換が終わる |
| 2029年6月29日 | 電子交換所での交換がすべて終わる |
2027年3月31日で電子交換所の交換が終わる
全国銀行協会は、2026年6月18日に、電子交換所での手形・小切手の交換を廃止する時期を「2027年3月31日」と明確にしました。あわせて、手形・小切手以外の証券も含めて、電子交換所での交換そのものを2029年6月29日で廃止することを決めています。
同協会は、2027年4月1日から手形・小切手がまったく使えなくなるわけではないとしています。ただし、それ以降は電子交換所を通さない決済となり、各金融機関が郵送などで個別に決済する必要があるため、金融機関の判断で、手形・小切手を扱うかどうかが変わる可能性があると説明しています。
金融機関によっては、もっと早く使えなくなる
全国銀行協会によると、多くの金融機関が、2027年3月を待たずに、手形帳・小切手帳の発行の終了や、2027年4月以降を期日とする手形などの取立ての受付の終了といった形で、取り扱いを縮小しています。
金融機関によっては、手形・小切手の最終振出期限を設けており、その期限のあとに振り出された手形・小切手は、原則として当座勘定から支払われません。同協会は、そうした手形・小切手を受け取った事業者は資金化できない場合があると注意を呼びかけ、各金融機関の最終振出期限を一覧にして公表しています。取引のある金融機関の期限を、早めに確かめておきます。
取適法で、対象の取引の手形払いは禁止に
手形を渡すことは「支払遅延」にあたる
2025年5月に公布された改正法により、下請法は2026年1月1日から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(中小受託取引適正化法、取適法)になりました。
取適法は、委託する事業者(委託事業者)が、代金を支払期日を過ぎても払わないことを禁じ、その中に、代金の支払いについて手形を渡すこと、そして支払期日までに代金と同じ額の現金に換えることが難しい支払手段を使うことを含めています(第5条第1項第2号)。つまり、対象の取引では、代金を手形で払うことはできません。
支払期日は受け取った日から60日以内
代金の支払期日は、委託事業者が給付を受け取った日から60日以内で、できる限り短い期間内に定めなければなりません(第3条)。支払期日までに払わなかったときは、給付を受け取った日から60日を過ぎた日から、遅延利息を払う必要があります(第6条)。
取適法の対象になるかどうかは、取引の内容(製造、修理、情報成果物の作成、役務の提供、運送の委託)と、双方の資本金の額や従業員の数で決まります。自社の取引が対象になるかは、法律の定義(第2条)で確かめます。詳しくは「取適法とは」で説明しています。
建設工事の下請は建設業法で決まる
建設業者が請け負った建設工事をほかの建設業者に請け負わせる取引は、取適法の役務提供委託から除かれています(第2条第4項)。建設工事の下請代金については、建設業法が支払いの期限を定めており、特定建設業者は、下請代金の支払いについて、支払期日までに一般の金融機関で割り引いてもらうことが難しい手形を渡してはならないとされています(建設業法第24条の6)。建設業の資金繰りは「建設業の資金調達」で説明しています。
手形・振込・でんさいの違い
手形の代わりになる主な支払い方法は、振込と、でんさいなどの電子記録債権です。

| 項目 | 手形 | 振込 | でんさい |
|---|
| 形 | 紙 | 送金 | 電子記録 |
| 期日前の資金化 | 手形割引 | ― | 割引・譲渡 |
| 分割 | できない | ― | できる |
| 紛失・盗難 | おそれあり | なし | なし |
でんさい(電子記録債権)の仕組み
でんさいは、株式会社全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)が扱う電子記録債権です。電子記録債権法では、電子記録債権は、電子債権記録機関への発生記録によって生じ(第15条)、譲渡記録をしなければ譲渡の効力が生じません(第17条)。紙の手形と違って、債権を分割し、その一部だけを譲渡することもできます(第43条)。
利用するには、取引のある金融機関を通じて申し込みます。払う側・受け取る側の両方が利用できる状態になっている必要があるため、取引先とも早めに相談します。
印紙税の負担もなくなる
紙の約束手形は、印紙税の課税文書(第3号文書)で、手形の金額に応じて印紙税がかかります。国税庁によると、税額は次のとおりです(1,000万円以下の部分の抜粋)。
| 手形の金額 | 印紙税 |
|---|
| 10万円未満 | 非課税 |
| 10万円以上100万円以下 | 200円 |
| 100万円超200万円以下 | 400円 |
| 200万円超300万円以下 | 600円 |
| 300万円超500万円以下 | 1,000円 |
| 500万円超1,000万円以下 | 2,000円 |
一方、でんさいは紙の文書ではなく電子記録です。国税庁は、印紙税の対象は文書であり、電磁的記録は文書に含まれないとしています。毎月多くの手形を振り出している会社では、印紙代や、手形用紙の管理・郵送の手間も減らせます。
でんさいを始める手順
でんさいを使い始める流れは、おおむね次のとおりです。細かな手続きや費用は、取引のある金融機関によって違います。
- 取引のある金融機関に申し込む:でんさいを扱っているか、利用料や手数料はいくらかを確かめる
- 利用の契約を結ぶ:インターネットバンキングなどで使えるように設定する
- 取引先に案内する:取引先にも利用の申込みをしてもらう
- 支払いに使う:払う側が発生記録を請求し、受け取る側は期日に入金を受けるか、割引や譲渡で資金にする
受け取る側がすべきこと
- 手持ちの手形の期日を確かめる:期日が2027年4月以降の手形は、取立てを受け付けてもらえないことがあるため、取引のある金融機関に扱いを確かめる
- 振出人の金融機関の最終振出期限を確かめる:期限後に振り出された手形は、支払われないことがある
- 取引先に切り替えを求める:振込かでんさいでの支払いに変えてもらう。取適法の対象の取引なら、手形での支払いは禁止されている
- 割引の代わりを用意する:手形割引で資金を得ていた場合は、でんさいの割引や、売掛金を担保にした融資などを検討する
手形を受け取ったら確かめること
2027年3月末までの間に手形を受け取ったときは、次の点を確かめます。
| 確かめること | 理由 |
|---|
| 支払期日 | 2027年4月以降の期日は、取立てを受け付けない金融機関がある |
| 振出日 | 振出人の金融機関の最終振出期限より後なら、支払われないことがある |
| 支払場所の金融機関 | その金融機関の取扱いの予定を確かめる |
| 取適法の対象か | 対象の取引なら、手形での支払いそのものが禁止されている |
取引先に切り替えをお願いするときの文例
手形で支払ってくる取引先に、振込への切り替えをお願いするときは、次のように伝えます(文例は説明のための例です)。
「平素より格別のお引き立てを賜り、ありがとうございます。全国銀行協会より、2027年3月31日をもって電子交換所での手形・小切手の交換が廃止されることが公表されており、当社の取引金融機関でも手形の取扱いが縮小されております。つきましては、今後のお支払いを、お振込みまたはでんさいに切り替えていただけますようお願い申し上げます。お手続きにあたってご不明な点がございましたら、担当までご連絡ください。」
割引とファクタリングの違い
期日前に資金にする方法として、でんさいの割引と、売掛金のファクタリングがあります。でんさいの割引は、金融機関がでんさいを期日前に買い取る形で資金を渡すもので、金融機関の審査があります。ファクタリングは、売掛金を専門の会社に売って資金にするもので、手数料が高くなりやすく、金融庁もファクタリングを装った高金利の貸付けに注意するよう呼びかけています。仕組みは「銀行以外の資金調達」で説明しています。