国民金融公庫・国民生活金融公庫と日本政策金融公庫の関係
日本政策金融公庫は、いくつかの政府系金融機関が統合してできた会社です。小規模事業者向けの融資の流れをたどると、次のようになります。

| 時期 | できごと |
|---|
| 1949年6月 | 国民金融公庫が発足 |
| 1999年10月 | 国民金融公庫と環境衛生金融公庫が統合し、国民生活金融公庫が発足 |
| 2008年10月 | 国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行(国際金融等業務)が統合し、日本政策金融公庫が発足 |
「国民金融公庫」「国民生活金融公庫」で融資を探している場合は、日本政策金融公庫の国民生活事業が申し込み先です。「国民政策金融公庫」と呼ばれることもありますが、正しい名前は日本政策金融公庫です。
日本政策金融公庫法は、日本公庫の目的を「一般の金融機関が行う金融を補完することを旨としつつ」、国民一般や中小企業者、農林水産業者の資金調達を支援することと定めています(第1条)。銀行と競うのではなく、銀行だけでは借りにくい事業者を支える役割です。
日本公庫の中は、小規模事業者や創業企業への融資と教育ローンを扱う「国民生活事業」、中小企業の成長・発展を融資や信用保険で支える「中小企業事業」、農林漁業や食品産業を支える「農林水産事業」に分かれています。個人事業主や小さな会社が使うのは、主に国民生活事業です。
数字で見る日本公庫の融資
日本公庫の「国民生活事業のご案内2025」によると、国民生活事業の融資には次のような特徴があります(2024年度)。
- 融資先は115万先。1先あたりの平均融資残高は822万円
- 融資実績の約9割が1,000万円以下で、全体の9割以上が無担保融資
- 融資先の約9割が従業者9人以下の小規模事業者で、約4割が個人企業
- 創業前と創業後1年以内の企業への融資は、年間2万8,032先

同じ資料で比べると、1先あたりの平均融資残高は、信用金庫が4,420万円、国内銀行が1億1,836万円でした。日本公庫は、少額で無担保の融資を、多くの小さな事業者に出していることがわかります。
主な融資制度
国民生活事業には多くの融資制度があります。小規模事業者や個人事業主がよく使うものをまとめると、次のとおりです。
| 制度 | 限度額(円) | 使う場面 |
|---|
| 一般貸付 | 4,800万 | 運転資金・設備資金 |
| 新規開業・スタートアップ支援資金 | 7,200万 | 創業前〜開業7年 |
| マル経融資 | 2,000万 | 商工会議所の指導 |
| 経営環境変化対応資金 | 7,200万 | 業況の一時的な悪化 |
| 資本性ローン | 7,200万 | 財務体質の強化 |
資本性ローンの7,200万円は、ほかの融資とは別枠です。
返済期間は制度ごとに違うため、次の説明で制度ごとに示します。
いずれも審査があり、希望どおりに借りられるとは限りません。
一般貸付
ほとんどの業種の中小企業が使える、基本の融資です。融資限度額は運転資金・設備資金とも4,800万円で、特定の設備資金は7,200万円まで借りられます。返済期間は、運転資金が5年以内(特に必要な場合は7年以内)、設備資金が10年以内です。飲食店や理容・美容、クリーニング、旅館などの生活衛生関係の業種は、次の「生活衛生貸付」も使えます。
生活衛生貸付(飲食店・理容・美容など)
生活衛生関係の事業を営む人が、店舗の改装などの設備資金に使える制度です。融資限度額は業種によって違い、飲食店・喫茶店・理容業・美容業などは7,200万円、クリーニング業は1億2,000万円、旅館業は4億円です。返済期間は13年以内です。
申し込みには、原則として都道府県知事の「推せん書」が必要です(設備資金の申込金額が500万円以下なら不要)。なお、住宅宿泊事業法にもとづく民泊は対象外です。
新規開業・スタートアップ支援資金
新たに事業を始める人や、事業開始後おおむね7年以内の人が使える制度です。融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内、運転資金10年以内で、どちらも5年以内の据置期間をとれます。創業時の使い方は「起業・開業の資金調達」で詳しく説明しています。
マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
商工会議所や商工会などの経営指導を受けている小規模事業者(商工業者)が、商工会議所等の長の推薦を受けて使える制度です。融資限度額は2,000万円、返済期間は10年以内で、無担保・無保証人で借りられます。利率も、2026年9月1日時点で年2.90%と、一般の制度より低く設定されています。
経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)
外的な要因で一時的に業況が悪化しているものの、中長期的には回復が見込まれる事業者向けの制度です。たとえば、最近の決算期の売上高が前期または前々期より5%以上減った場合や、最近3か月の売上高が前年同期より5%以上減り、今後も減る見込みの場合などが対象です。融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内、運転資金10年以内(どちらも据置期間3年以内)です。
資本性ローン(挑戦支援資本強化特別貸付)
返済は最終回の一括払いで、それまでは利息だけを払う融資です。利率は業績に応じて毎年決まり、税引後当期純利益が0円未満の年は年0.50%になります。金融機関の資産査定上、自己資本とみなすことができるため、財務体質を強くしながら、銀行など他の金融機関から借りやすくする効果があります。株式ではないので、既存の株主の持ち分も減りません。無担保・無保証人で、別枠で7,200万円まで借りられます。返済期間は5年1か月以上20年以内です。
経営者保証免除特例制度
一定の要件を満たす法人は、経営者の個人保証なしで借りられます。たとえば、税務申告を2期以上していて、法人と経営者の資産や経理が分けられており、最近2期の減価償却前経常利益が連続して赤字でない場合などです。利率の上乗せはありません。
金利
日本公庫の金利は、融資制度、返済期間、担保の有無などで決まる固定金利です。国民生活事業の主な利率は次のとおりです(2026年9月1日時点)。
| 区分 | 基準利率 | 特別利率A |
|---|
| 無担保・税務申告を2期終えている | 年3.80〜5.40% | 年3.40〜5.00% |
| 無担保・税務申告を2期終えていない | 年3.75〜5.35% | 年3.35〜4.95% |
| 有担保 | 年2.80〜5.00% | 年2.40〜4.60% |
マル経融資は年2.90%(特別利率F)、経営者保証免除特例制度を使う場合も上乗せはありません。利率は金融情勢によって変わるため、借りる時点の利率は日本公庫の「金利情報」で確かめます。
金利を下げられる条件
同じ融資制度でも、条件に当てはまると基準利率より低い「特別利率」が使えます。新規開業・スタートアップ支援資金を例にすると、主な条件は次のとおりです。
- 女性、35歳未満、55歳以上の人
- 市区町村の創業塾や創業セミナーなど(認定特定創業支援等事業)を受け、証明書を取得した人
- 中小企業の会計に関する基本要領などを適用し、税理士や中小企業診断士などの認定経営革新等支援機関の指導と助言を受けて、自分で事業計画書を作った人
- 東京圏から地方に移って事業を始める人(Uターンなど)
- ベンチャーキャピタルなどから出資を受けている人
経営環境変化対応資金では、原材料・エネルギーコストの上昇などの影響を受け、売上高や利益率が前期より5%以上下がった事業者に、特別利率Qが適用されます。申し込む前に、自分が当てはまる条件がないかを確かめておきます。