建設業の資金繰りが苦しくなりやすい理由
建設工事では、工事にかかるお金を先に払い、代金をあとで受け取る形になりやすくなります。
- 先に出ていくお金:資材の購入、下請業者への支払い、職人の給与、建設機械のリース料
- あとで入るお金:出来高に応じた部分払い、完成・引き渡し後の残りの代金
- 受注が重なると立て替えが増える:同時に進む工事が増えるほど、先に払うお金が積み上がる
売上が伸びているのに手元のお金が足りなくなる「黒字倒産」を避けるには、工事ごとに入金と支払いの時期を並べた資金繰り表を作り、立て替えが最も大きくなる時期と額を把握しておくことが大切です。
前払金があっても立て替えは生まれる
たとえば、請負代金5,000万円、工期10か月の公共工事で、工事の費用4,500万円を毎月450万円ずつ払うとします。着工時に前払金2,000万円(4割)、工期の後半に中間前払金1,000万円(2割)、完成・引き渡しの翌月に残りの2,000万円を受け取る場合、この工事の月末の資金は次のように動きます(金額と時期は計算のための例です)。

前払金と中間前払金で代金の6割を先に受け取っていても、完成の月には1,500万円の立て替えが必要になります。最後にはこの工事で500万円が残りますが、完成までの資金を別に用意しておかなければ、支払いが止まってしまいます。同じ時期に別の工事が重なれば、立て替えはさらに大きくなります。
公共工事の前払金
材料費等の4割まで前払いを受けられる
地方公共団体が発注する公共工事では、請負代金が50万円以上の土木建築工事について、工事の材料費や労務費などに相当する経費の4割を超えない範囲で、前金払を受けられます(地方自治法施行規則附則第3条)。さらに、次の条件をすべて満たすと、2割を超えない範囲で追加の前金払(中間前金払)を受けられます。
- 工期の2分の1を経過していること
- 工程表で工期の2分の1までに行うこととされている作業が行われていること
- すでに行った作業の経費が、請負代金の2分の1以上にあたること
たとえば、請負代金5,000万円の工事で、材料費等に相当する経費が5,000万円なら、着工時に最大2,000万円、条件を満たせばさらに最大1,000万円の前払いを受けられる計算です(実際の額は発注者の定めによります)。
前払金の保証
公共工事の前払金には、国土交通大臣の登録を受けた保証事業会社による「前払金の保証」の仕組みがあります。公共工事の前払金保証事業に関する法律では、前払金の保証を、請負者が債務を履行しないために発注者が契約を解除したときに、前払いした額から工事ができている部分の代価を差し引いた額の支払いを、保証事業会社が請負者に代わって引き受けることと定めています(第2条)。請負者は保証事業会社に保証料を払います。
工事の契約では、前払金の保証のほかに、工事を完成させることを保証する履行保証(契約保証)を求められることもあります。履行保証の仕組みは「履行保証とは」で詳しく説明しています。
国土交通省の資金繰り支援制度
地域建設業経営強化融資制度
国土交通省の「地域建設業経営強化融資制度」は、中小・中堅の建設企業が、公共工事などの発注者に対して持つ工事請負代金の債権を担保にして、出来高に応じた融資を受けられる制度です。保証事業会社の保証を付けることで、工事の出来高を超える部分についても金融機関から融資を受けられます。国土交通省は、この制度の特徴を、請負金額から前払金などを差し引いた金額の範囲内で融資を受けられることだとしています。
利用するには、発注者が工事請負代金の債権の譲渡を承諾していることが必要です。保証人や不動産の担保がなくても融資を受けられるため、公共工事を受注したものの、完成までの資金が足りない場合に使えます。制度の期限は2031年(令和13年)3月末まで延長されています。
下請債権保全支援事業
下請の建設企業や資材業者が、元請の建設企業に対して持つ債権(手形を含む)について、ファクタリング会社が支払いを保証する事業です。元請が倒産しても、工事代金を受け取れるようにするためのものです。2022年12月からは、金額が確定している個別の債権の買取も対象になっています。制度の期限は2027年(令和9年)3月末までです。
下請代金の支払いの決まり
建設業法は、元請から下請への代金の支払いについて、期限を定めています。下請として工事をする会社にとっては、入金の時期を読むための決まりでもあります。
| 場面 | 決まり |
|---|
| 元請が代金を受けた | 1か月以内に下請代金を払う |
| 労務費の部分 | 現金で払うよう配慮する |
| 元請が前払金を受けた | 下請にも前払金を払うよう配慮する |
| 元請が特定建設業者 | 引き渡しの申出から50日以内に支払期日を定める |
元請は、発注者から出来高や完成後の支払いを受けた日から1か月以内で、できる限り短い期間内に、下請代金を払わなければなりません。そのうち労務費にあたる部分は、現金で払うよう配慮します。元請が前払金を受けたときは、下請にも、資材の購入や労働者の募集など着手に必要な費用を前払金として払うよう配慮しなければなりません(いずれも第24条の3)。
元請が特定建設業者の場合は、下請代金の支払期日を、引き渡しの申出の日から50日以内で、できる限り短い期間内に定めなければならず、割り引きを受けることが難しい手形を渡すことも禁じられています(第24条の6)。
特定建設業者が支払期日までに払わなかった場合は、引き渡しの申出の日から50日を過ぎた日以降について、遅延利息を払わなければなりません(第24条の6第4項)。元請が期限を守っていないときは、この決まりを示して支払いを求めることができます。