申請の手順
国税庁の手引によると、手順は次のとおりです。
- 要件を確かめる:換価の猶予か納税の猶予か、どちらにあたるかを確かめる
- 書類をそろえて税務署に出す:申請書に、財産と収支の状況がわかる書類を添える。e-Taxでも作成・提出できる
- 審査を受ける:税務署が許可・不許可、猶予する金額と期間を審査する。不備があれば補正を求められる
- 許可されたら計画どおりに払う:「猶予許可通知書」に書かれた分割納付計画のとおりに払う
添える書類は、猶予を受けようとする金額で変わります。
| 金額 | 主な書類 |
|---|
| 100万円以下 | 申請書、財産収支状況書 |
| 100万円超 | 申請書、財産目録、収支の明細書 |
申請書に書く金額の考え方
換価の猶予申請書では、納めるべき国税の合計から、今すぐ納められるお金(現在納付可能資金額)を差し引いた額を、猶予を受けようとする金額として書きます。国税庁の手引の記載例では、納めるべき国税の合計78万円から、現在納付可能資金額18万円を差し引いた60万円を、猶予を受けようとする金額としています。
今すぐ納められるお金は、手元の現金や預金から、当面の事業の支払いや生活費に必要な額を差し引いて計算します。猶予を受けたい額だけでなく、今払える分は先に払う前提で書くことになります。
事情の説明と分割の計画
申請書には、一時に納めると事業の継続が難しくなる事情を具体的に書きます。手引の記載例では、取引先からの単価の引下げなどで売上が前年の65%まで落ち込み、仕入先への支払いも遅れがちで、入金をすべて国税の納付に充てると仕入先に払えなくなる、といった事情が書かれています。
分割して納める額は、財産と収支の状況をもとに、毎月の収入から事業の支出や生活費を差し引いて、無理なく納められる額で計画します。税務署の審査の結果、申請した金額の一部だけが許可されたり、申請より短い期間や、申請と違う分割の計画で許可されたりすることもあります。
許可されない場合・取り消される場合
次のような場合は、猶予が許可されなかったり、許可された猶予が取り消されたりすることがあります。
| 場面 | 主な例 |
|---|
| 許可されない | 要件にあてはまらない。税務署の質問に答えない、帳簿の検査を拒む。不当な目的で申請した |
| 取り消される | 分割の計画どおりに納めない。猶予中に新たに納めるべき国税を滞納した。担保の変更などの命令に応じない |
許可されない場合や取り消された場合に不服があるときは、決められた期間内に不服申立てをすることができます。
やむを得ない事情がある場合は、分割の計画の変更や猶予期間の延長が認められることもあるため、計画どおりに納められなくなりそうなときは、早めに所轄の税務署(徴収担当)に相談します。
社会保険料と地方税の猶予
厚生年金保険料などは年金事務所へ
日本年金機構によると、厚生年金保険料などにも「換価の猶予」と「納付の猶予」があります。換価の猶予は、保険料を一時に払うことで事業の継続などが難しくなるおそれがあり、誠実な意思があると認められる場合に、納期限から6か月以内に申請することで受けられ、保険料を分割して払えるようになり、猶予期間の延滞金の一部が免除されます。相談の窓口は、管轄の年金事務所です。同機構は、猶予を受けずに納付期限を過ぎると督促状が送られ、指定された期限を過ぎると延滞金がかかることがあるとして、早めの相談を呼びかけています。
住民税や事業税は各自治体へ
地方税にも、申請による換価の猶予の制度があります(地方税法第15条の6)。申請できる期間は各自治体の条例で定められているため、納付先の自治体に確かめます。
猶予を受ける前後の資金繰り
新しい税金は期限内に払う
換価の猶予には、猶予を受ける国税のほかに国税の滞納がないことが要件になっています。猶予を受けている間も、消費税や源泉所得税など、新たに納期限が来る税金は期限内に払う必要があります。分割の支払いと新しい納税の両方を資金繰り表に組み込み、毎月の資金が足りるかを確かめます。
消費税と源泉所得税は、預かったお金として分けておく
滞納が起きやすいのは、消費税と、給与などから差し引いた源泉所得税です。どちらも、売上とともに受け取った消費税や、従業員の給与から差し引いた所得税を、あとでまとめて納める税金で、本来は会社のお金ではありません。受け取った時点で別の口座に分けておく、資金繰り表で納付の月にあらかじめ計上しておく、といった方法で、納付のときに資金が足りなくなるのを防ぎます。
払えない原因に手を打つ
猶予は、支払いを先に延ばす制度で、税金そのものが減るわけではありません。資金が足りなくなった原因が、売上の減少なのか、入金と支払いの時期のずれなのかを見極め、借入の返済条件の見直し(リスケ)や、公的な融資の利用もあわせて考えます。
換価の猶予の要件では、事業に不要不急の資産を処分するなど、経営の合理化を行ったうえでなお払えないかが見られます。手元の資産を見直し、現金にできるものがないかを確かめることも、資金繰りを立て直す手段になります。
オフィスや店舗に預けている敷金も、その一つです。当社の「敷金返還くん」は、預けている敷金の半額から最大全額を、入居したまま現金で取り戻すサービスです。返す敷金の代わりに当社が貸主に保証を提供するため、借り入れではなく、返済や利息はありません。戻った資金は、滞納している税金の納付や、猶予中に納期限が来る新しい税金の支払いに充てることができます。当社への保証料がかかり、利用には当社の審査と貸主の承諾が必要です。審査書類の提出から返還までは1か月半から2か月ほどが目安のため、納期限に間に合うかもあわせて確かめます。
よくある質問
税金は分割で払えますか?
換価の猶予や納税の猶予が認められれば、分割して払えます。換価の猶予では、原則として猶予期間中の各月に分割して払います。
換価の猶予はいつまでに申請すればよいですか?
猶予を受けようとする国税の納期限から6か月以内に、「換価の猶予申請書」を所轄の税務署に出します(国税徴収法第151条の2)。
猶予を受けるのに担保は必要ですか?
原則として必要です。ただし、猶予を受ける金額が100万円以下の場合、猶予の期間が3か月以内の場合、担保を提供できない特別の事情がある場合は、担保はいりません。
延滞税はどのくらいかかりますか?
2026年の割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以後が年9.1%です。猶予が認められると、猶予期間中の延滞税は軽減(納税の猶予では軽減または免除)されます。
猶予を受けている間に、別の税金を滞納したらどうなりますか?
猶予が取り消されることがあります。国税庁の手引は、猶予を受けている国税以外に新たに納めるべきこととなった国税が滞納になったときを、猶予の取消しや期間の短縮の理由として挙げています。猶予中も、新しい税金は期限内に納めます。
延滞税はいつまでかかりますか?
法定納期限の翌日から、納める日までの日数に応じてかかります。猶予が認められると、猶予期間中の延滞税は軽減(納税の猶予では軽減または免除)されるため、払えないとわかったら早めに申請するほど負担を抑えられます。
まとめ
- 納期限を過ぎると延滞税がかかり(2026年は2か月まで年2.8%、以後年9.1%)、督促状を出した日から10日を過ぎると差押えの対象になる
- 一時に払うと事業が続けられなくなるおそれがあるときは、納期限から6か月以内に換価の猶予を申請できる
- 災害、病気、事業の休廃業、著しい損失などがあるときは、納税の猶予を申請できる
- 猶予期間は1年以内(最長2年)。担保は原則必要だが、100万円以下か3か月以内なら不要
- 社会保険料は年金事務所、地方税は各自治体に相談する。猶予中も新しい税金は期限内に払うため、資産の現金化も含めて資金繰りを組み直す
出典:国税庁「猶予の申請の手引」(令和8年4月)、国税庁タックスアンサー「No.9205 延滞税について」、国税通則法第37条・第118条・第119条、国税徴収法第47条・第151条の2、地方税法第15条の6、日本年金機構「厚生年金保険料等の猶予(換価の猶予・納付の猶予)」。