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税金が払えないときの対処法|換価の猶予・納税の猶予

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税金が払えないときの対処法|換価の猶予・納税の猶予

資金繰りが苦しいときに、税金や社会保険料の支払いが重なることがあります。払えないまま納期限を過ぎると、延滞税がかかり、督促のあとには財産の差押えに進みます。一方で、税金には、一時に払うと事業が続けられなくなるおそれがある場合などに、分割して払えるようにする「換価の猶予」や「納税の猶予」という制度があります。

猶予には申請の期限や要件があり、差押えを受けてからでは選べる手段が少なくなります。国税庁は、税金を一時に払うことが難しい場合は、税務署に申請することで、財産の換価(売却)や差押えなどの猶予が認められる場合があると案内しています。

この記事では、税金を払えないときに起きることと、換価の猶予・納税の猶予の要件と申請の方法を、国税庁の「猶予の申請の手引」と法律の条文をもとに整理し、社会保険料と地方税の猶予、猶予を受ける前後の資金繰りの考え方までまとめます。

払えないまま納期限を過ぎると

延滞税が日数に応じてかかる

税金が納期限までに払われないと、法定納期限の翌日から払う日までの日数に応じて、利息にあたる延滞税が自動的にかかります。2026年(令和8年)の延滞税の割合は次のとおりです。

期間年率
納期限の翌日から2か月を経過する日まで2.8%
納期限の翌日から2か月を経過した日以後9.1%

2か月を過ぎると割合が大きく上がるため、払えないとわかった時点で早めに動くことが大切です。

延滞税の計算例

消費税300万円を、納期限の翌日から90日目に納めた場合を計算します。2か月を経過する日までが61日、その後が29日だったとします(金額と日数は計算のための例です)。

期間計算金額
2か月を経過する日まで(61日)300万円 × 2.8% × 61日 ÷ 365日14,038円
それ以後(29日)300万円 × 9.1% × 29日 ÷ 365日21,690円
合計100円未満を切り捨て35,700円

延滞税を計算するときは、もとになる税額の1万円未満の端数を切り捨て(国税通則法第118条第3項)、延滞税の額の100円未満の端数を切り捨てます。延滞税の全額が1,000円未満のときは納める必要はありません(第119条第4項)。この例では、61日で約1万4,000円なのに対し、その後はわずか29日で約2万2,000円かかります。2か月を過ぎると、1日あたりの延滞税が3倍以上になるためです。

督促から10日を過ぎると差押えの対象になる

納期限までに払わないと、税務署は督促状で支払いを求めます。督促状は、原則として納期限から50日以内に出されます(国税通則法第37条)。督促状を出した日から起算して10日を経過した日までに払わなければ、徴収職員は、滞納者の財産を差し押さえなければならないとされています(国税徴収法第47条)。売掛金や預金が差し押さえられると、事業の資金繰りはさらに苦しくなります。

税金を払えないときの流れ。納期限の翌日から延滞税がかかり、2か月を過ぎると年2.8%から年9.1%に上がる(2026年の割合)。納期限から50日以内に督促状が出され、督促状を出した日から10日を過ぎても払わないと差押えの対象になる。換価の猶予は、納期限から6か月以内に申請する

税金を分割で払う2つの猶予

国税の猶予には、主に「換価の猶予」と「納税の猶予」の2つがあります。

換価の猶予と納税の猶予の比較。換価の猶予は、一時に払うと事業の継続や生活の維持が難しくなるおそれがある場合に、納期限から6か月以内に申請する。納税の猶予は、災害、病気、事業の休廃業、事業の著しい損失などで一時に払えない場合に申請する。どちらも猶予期間は1年以内で、最長2年まで延長できることがあり、担保は原則必要だが100万円以下か3か月以内なら不要。延滞税は軽減される

項目換価の猶予納税の猶予
使える場面一時に払うと事業や生活が続けられなくなるおそれ災害、病気、事業の休廃業、著しい損失など
申請の期限納期限から6か月以内要件にあたる事実があるとき
猶予期間1年以内(延長で最長2年)1年以内(延長で最長2年)
延滞税軽減軽減または免除

どちらも、猶予期間は財産や収支の状況に応じて、最も早く完納できると認められる期間に限られ、原則として猶予を受ける金額に相当する担保が必要です。ただし、猶予を受ける金額が100万円以下の場合や、猶予の期間が3か月以内の場合などは、担保はいりません。

換価の猶予:事業を続けながら分割で払う

5つの要件

換価の猶予は、次の5つの要件すべてにあてはまる場合に受けられます(国税徴収法第151条の2)。

  1. 国税を一時に納付することで、事業の継続または生活の維持を困難にするおそれがあると認められること
  2. 納税について誠実な意思を有すると認められること
  3. 猶予を受けようとする国税以外に、国税の滞納がないこと
  4. 納期限から6か月以内に「換価の猶予申請書」を税務署に出していること
  5. 原則として、猶予を受けようとする金額に相当する担保を提供すること

「事業の継続を困難にするおそれがある」とは、事業に不要不急の資産を処分するなど、事業経営の合理化を行ったあとでも、なお国税を一時に払うことで、事業を休止または廃止させるおそれがある場合をいいます。「誠実な意思」とは、その国税を優先的に払う意思があると税務署長が認められることをいいます。

差押えを受けたあとでも申請できる

換価の猶予は、納期限から6か月以内であれば、すでに財産を差し押さえられたあとでも申請できます。認められると、差し押さえられた財産の売却が猶予され、事業の継続に欠かせない財産については、差押えの猶予や解除が認められる場合があります。ただし、6か月を過ぎると申請できなくなるため、督促状が届いた段階で準備を始めるのが安全です。

認められると、毎月分割して払う

換価の猶予が認められると、すでに差し押さえられた財産の換価(売却)が猶予され、差押えが事業の継続を難しくする財産については、差押えの猶予や解除がされる場合があります。猶予期間中の延滞税も軽減されます。猶予を受けた国税は、原則として、猶予期間中の各月に分割して払います。

納税の猶予:災害や事業の損失があったとき

納税の猶予は、次のような事実があり、そのために国税を一時に払えないと認められる場合に受けられます。

  • 災害や盗難で財産に損害を受けた
  • 納税者や生計を一にする親族が病気やけがをした
  • 事業を廃止または休止した
  • 事業で著しい損失を受けた
  • これらに類する事実があった

「事業で著しい損失を受けた」とは、猶予を受けようとする期間の始まる前日までの1年間の損益計算で、その前の1年間の利益の2分の1を超える損失が生じていることをいいます。これに類する事実として、売上の著しい減少や経費の著しい増加による損失も含まれます。

たとえば、前の1年間(基準期間)の利益が1,000万円だった会社が、直近の1年間(調査期間)に600万円の損失を出した場合、損失の600万円が利益の2分の1の500万円を超えるため、「著しい損失」にあたります(金額は計算のための例です)。基準期間も損失だった場合は、調査期間の損失が基準期間の損失を超えているかで判断します。

納税の猶予が認められると、新たな差押えや換価などの滞納処分を受けず、すでに差し押さえられた財産の差押えが解除される場合があります。猶予期間中の延滞税は、軽減または免除されます。

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申請の手順

国税庁の手引によると、手順は次のとおりです。

  1. 要件を確かめる:換価の猶予か納税の猶予か、どちらにあたるかを確かめる
  2. 書類をそろえて税務署に出す:申請書に、財産と収支の状況がわかる書類を添える。e-Taxでも作成・提出できる
  3. 審査を受ける:税務署が許可・不許可、猶予する金額と期間を審査する。不備があれば補正を求められる
  4. 許可されたら計画どおりに払う:「猶予許可通知書」に書かれた分割納付計画のとおりに払う

添える書類は、猶予を受けようとする金額で変わります。

金額主な書類
100万円以下申請書、財産収支状況書
100万円超申請書、財産目録、収支の明細書

申請書に書く金額の考え方

換価の猶予申請書では、納めるべき国税の合計から、今すぐ納められるお金(現在納付可能資金額)を差し引いた額を、猶予を受けようとする金額として書きます。国税庁の手引の記載例では、納めるべき国税の合計78万円から、現在納付可能資金額18万円を差し引いた60万円を、猶予を受けようとする金額としています。

今すぐ納められるお金は、手元の現金や預金から、当面の事業の支払いや生活費に必要な額を差し引いて計算します。猶予を受けたい額だけでなく、今払える分は先に払う前提で書くことになります。

事情の説明と分割の計画

申請書には、一時に納めると事業の継続が難しくなる事情を具体的に書きます。手引の記載例では、取引先からの単価の引下げなどで売上が前年の65%まで落ち込み、仕入先への支払いも遅れがちで、入金をすべて国税の納付に充てると仕入先に払えなくなる、といった事情が書かれています。

分割して納める額は、財産と収支の状況をもとに、毎月の収入から事業の支出や生活費を差し引いて、無理なく納められる額で計画します。税務署の審査の結果、申請した金額の一部だけが許可されたり、申請より短い期間や、申請と違う分割の計画で許可されたりすることもあります。

許可されない場合・取り消される場合

次のような場合は、猶予が許可されなかったり、許可された猶予が取り消されたりすることがあります。

場面主な例
許可されない要件にあてはまらない。税務署の質問に答えない、帳簿の検査を拒む。不当な目的で申請した
取り消される分割の計画どおりに納めない。猶予中に新たに納めるべき国税を滞納した。担保の変更などの命令に応じない

許可されない場合や取り消された場合に不服があるときは、決められた期間内に不服申立てをすることができます。

やむを得ない事情がある場合は、分割の計画の変更や猶予期間の延長が認められることもあるため、計画どおりに納められなくなりそうなときは、早めに所轄の税務署(徴収担当)に相談します。

社会保険料と地方税の猶予

厚生年金保険料などは年金事務所へ

日本年金機構によると、厚生年金保険料などにも「換価の猶予」と「納付の猶予」があります。換価の猶予は、保険料を一時に払うことで事業の継続などが難しくなるおそれがあり、誠実な意思があると認められる場合に、納期限から6か月以内に申請することで受けられ、保険料を分割して払えるようになり、猶予期間の延滞金の一部が免除されます。相談の窓口は、管轄の年金事務所です。同機構は、猶予を受けずに納付期限を過ぎると督促状が送られ、指定された期限を過ぎると延滞金がかかることがあるとして、早めの相談を呼びかけています。

住民税や事業税は各自治体へ

地方税にも、申請による換価の猶予の制度があります(地方税法第15条の6)。申請できる期間は各自治体の条例で定められているため、納付先の自治体に確かめます。

猶予を受ける前後の資金繰り

新しい税金は期限内に払う

換価の猶予には、猶予を受ける国税のほかに国税の滞納がないことが要件になっています。猶予を受けている間も、消費税や源泉所得税など、新たに納期限が来る税金は期限内に払う必要があります。分割の支払いと新しい納税の両方を資金繰り表に組み込み、毎月の資金が足りるかを確かめます。

消費税と源泉所得税は、預かったお金として分けておく

滞納が起きやすいのは、消費税と、給与などから差し引いた源泉所得税です。どちらも、売上とともに受け取った消費税や、従業員の給与から差し引いた所得税を、あとでまとめて納める税金で、本来は会社のお金ではありません。受け取った時点で別の口座に分けておく、資金繰り表で納付の月にあらかじめ計上しておく、といった方法で、納付のときに資金が足りなくなるのを防ぎます。

払えない原因に手を打つ

猶予は、支払いを先に延ばす制度で、税金そのものが減るわけではありません。資金が足りなくなった原因が、売上の減少なのか、入金と支払いの時期のずれなのかを見極め、借入の返済条件の見直し(リスケ)や、公的な融資の利用もあわせて考えます。

換価の猶予の要件では、事業に不要不急の資産を処分するなど、経営の合理化を行ったうえでなお払えないかが見られます。手元の資産を見直し、現金にできるものがないかを確かめることも、資金繰りを立て直す手段になります。

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よくある質問

税金は分割で払えますか?

換価の猶予や納税の猶予が認められれば、分割して払えます。換価の猶予では、原則として猶予期間中の各月に分割して払います。

換価の猶予はいつまでに申請すればよいですか?

猶予を受けようとする国税の納期限から6か月以内に、「換価の猶予申請書」を所轄の税務署に出します(国税徴収法第151条の2)。

猶予を受けるのに担保は必要ですか?

原則として必要です。ただし、猶予を受ける金額が100万円以下の場合、猶予の期間が3か月以内の場合、担保を提供できない特別の事情がある場合は、担保はいりません。

延滞税はどのくらいかかりますか?

2026年の割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以後が年9.1%です。猶予が認められると、猶予期間中の延滞税は軽減(納税の猶予では軽減または免除)されます。

猶予を受けている間に、別の税金を滞納したらどうなりますか?

猶予が取り消されることがあります。国税庁の手引は、猶予を受けている国税以外に新たに納めるべきこととなった国税が滞納になったときを、猶予の取消しや期間の短縮の理由として挙げています。猶予中も、新しい税金は期限内に納めます。

延滞税はいつまでかかりますか?

法定納期限の翌日から、納める日までの日数に応じてかかります。猶予が認められると、猶予期間中の延滞税は軽減(納税の猶予では軽減または免除)されるため、払えないとわかったら早めに申請するほど負担を抑えられます。

まとめ

  • 納期限を過ぎると延滞税がかかり(2026年は2か月まで年2.8%、以後年9.1%)、督促状を出した日から10日を過ぎると差押えの対象になる
  • 一時に払うと事業が続けられなくなるおそれがあるときは、納期限から6か月以内に換価の猶予を申請できる
  • 災害、病気、事業の休廃業、著しい損失などがあるときは、納税の猶予を申請できる
  • 猶予期間は1年以内(最長2年)。担保は原則必要だが、100万円以下か3か月以内なら不要
  • 社会保険料は年金事務所、地方税は各自治体に相談する。猶予中も新しい税金は期限内に払うため、資産の現金化も含めて資金繰りを組み直す

出典:国税庁「猶予の申請の手引」(令和8年4月)、国税庁タックスアンサー「No.9205 延滞税について」、国税通則法第37条・第118条・第119条、国税徴収法第47条・第151条の2、地方税法第15条の6、日本年金機構「厚生年金保険料等の猶予(換価の猶予・納付の猶予)」。

Tags#金融・融資
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