金融・融資

資金繰り表の作り方|項目の意味と記入の手順

読了 約11分
資金繰り表の作り方|項目の意味と記入の手順

資金繰り表は、これから先の現金の入りと出を月ごとに並べ、毎月末に手元にいくら残るかを見る表です。決算書で利益が出ていても、売上の入金が遅れたり、借入の返済や設備への支払いが重なったりすれば、現金は足りなくなります。資金繰り表は、その不足を前もって見つけるための道具です。

中小機構のJ-Net21は、資金繰り表を、将来の現金の流れを把握して資金のショートを未然に防ぐためのツールと説明し、過去の資金繰りをもとに3〜6か月先の資金の状況を予見できる表を作ってみるよう勧めています。

この記事では、資金繰り表の構成と各項目の意味、日本政策金融公庫の書式に沿った作り方の手順を説明し、オフィスの移転を例に、家賃や敷金をどこにどう書くかまで具体的に示します。

資金繰り表とは:利益ではなく現金の動きを見る

損益計算書・キャッシュフロー計算書との違い

書類見るもの時点
損益計算書利益過去
キャッシュフロー計算書現金の動き過去
資金繰り表現金の動きこれから先

キャッシュフロー計算書も現金の動きを表しますが、過去の一定期間の流れをまとめたものです。資金繰り表は、これから先の現金の流れを見て、資金が足りなくならないようにするために作ります。

利益が出ていても現金が足りなくなる理由

利益と手元の現金は、次のような理由で一致しません。

  • 売上の入金が遅れる:売上を計上しても、売掛金の入金は翌月末や60日後になる
  • 仕入や外注費は先に払う:売上が増えるほど、入金前に払う額が増える
  • 借入の返済は費用にならない:返済した元本は利益を減らさないが、現金は出ていく
  • 設備や敷金への支払い:費用として少しずつ計上される、または資産になる支出でも、現金はまとめて出ていく
  • 税金の支払い:決算のあとにまとめて払う

利益が出ているのに資金が足りなくなって倒産するのが、いわゆる黒字倒産です。

資金繰り表の構成

日本政策金融公庫の資金繰り表の書式は、次のような構成になっています。

資金繰り表の構成。前月繰越金(A)に、経常収支の差引過不足(D)、経常外収支(E)、財務収支(F)を足したものが翌月繰越金(G)になる。経常収支は売上の回収などの収入(B)から仕入や人件費などの支出(C)を引いたもの。経常外収支は設備の購入や売却など、財務収支は借入と返済

区分主な項目
前月繰越金(A)月初の現金・預金の残高
経常収入(B)現金売上、売掛金の回収、手形の入金・割引
経常支出(C)仕入、買掛金の支払い、外注費、人件費、諸経費
差引過不足(D)B − C
経常外収支(E)設備の売却、設備の購入など
財務収支(F)借入、借入金の返済
翌月繰越金(G)A + D + E + F

大事なのは、本業の現金の出入り(経常収支)と、それ以外の出入り(経常外収支・財務収支)を分けて見ることです。経常収支がマイナスの月が続くなら、本業で現金が減っているということで、借入で埋めても一時しのぎにしかなりません。

作り方の手順

日本政策金融公庫の資金繰り表の記入例は、次の手順で書くよう説明しています。

  1. 売上高:直近1か月分の実績を書き、次の月からは、確定している分、過去の実績や季節による変動を考えて、予定の売上高を書く
  2. 前月繰越金:決算書や試算表、総勘定元帳を見て、期首の残高を書く
  3. 収入:前月の実績を書き、それ以降は、予定の売上に対して回収できる予定の額を月ごとに書く
  4. 支出:前月の実績を書き、それ以降は、予定の仕入や外注費などの支払い予定の額を月ごとに書く
  5. 経常外収支:設備の売却などの収入、設備の購入などの支出を月ごとに書く
  6. 財務収支:返済予定表などから、借入の予定と返済の予定を月ごとに書く。新しく借りる予定の分の返済も書く
  7. 算出根拠:売上高や収支の欄に書いた金額の根拠を書く

公庫の記入例を読む

日本政策金融公庫の記入例では、1月を実績、2月から4月を予定として、次のような数字が書かれています(記入例の数字のまま。単位の記載はありません)。

項目1月2月3月4月
差引過不足621▲1,825▲8,859▲7,742
経常外収支▲20,000000
財務収支▲2,00018,000▲2,300▲2,300
翌月繰越金18,46834,64323,48413,442

1月は、経常外の支出(設備の購入など)20,000で残高が大きく減っています。2月は、公庫と金融機関から合わせて20,000を借りる予定で、残高を持ち直します。しかし3月と4月は本業の差引過不足がマイナスで、4月末の残高は13,442まで減る見込みです。この表からは、借入で一時的に残高を戻しても、本業の収支を改善しなければ残高が減り続けることが読み取れます。

入金は「売上の月」ではなく「回収の月」に書く

いちばん間違えやすいのが、収入の欄です。4月に請求した売上でも、入金が翌月末なら、収入の欄には5月に書きます。取引先ごとの支払いの条件(締め日と支払日)を一覧にしておき、それにしたがって回収の月をずらして書きます。支出も同じで、仕入先への支払日にしたがって書きます。

残高は預金通帳と合わせる

前月繰越金は、実際の現金と預金の残高と一致させます。月が終わるたびに、予定の欄を実績に書き換え、通帳の残高と合っているかを確かめると、予定の立て方のくせ(入金を楽観的に見すぎている、など)もわかります。

Excelで作るときの組み方

資金繰り表は、表計算ソフトで作れます。組み方の一例は次のとおりです。

場所入れるもの
1列目項目(前月繰越金、収入の内訳、支出の内訳、財務収支、翌月繰越金)
2列目から月ごとの列(実績の月と予定の月を色などで分ける)
収入計・支出計の行内訳の合計(SUM)
差引過不足の行収入計 − 支出計
翌月繰越金の行前月繰越金 + 差引過不足 + 経常外収支 + 財務収支
次の月の前月繰越金前の月の翌月繰越金を参照する

数式でつないでおけば、ある月の入金の予定を変えるだけで、それ以降の月末残高がすべて自動で変わります。「入金が1か月遅れたら」「借入を2か月早めたら」といった場合を、その場で試せるようになります。

売上の予定は、慎重な見込みも作る

予定の欄でいちばん難しいのが、売上の見込みです。確定している受注、過去の実績、季節による変動をもとに標準の見込みを作り、あわせて「売上が1割少ない場合」の表も作っておくと、厳しい場合にいつ資金が足りなくなるかがわかります。資金繰りを判断するときは、楽観的な見込みではなく、慎重な見込みの表を基準にします。

見落としやすい支出

毎月決まって出ていく支出は書き忘れにくい一方、年に数回だけの支出は漏れやすくなります。次のようなものを、該当する月に入れておきます。

支出入れる月
賞与支給する月
法人税・消費税(中間・確定)納付する月
賃料の更新料・保険の年払い払う月
設備の更新・修繕予定している月
借入の返済返済予定表の月
移転・出店の敷金や工事契約・工事の月

週ごと・日ごとの資金繰り表

月ごとの資金繰り表では、月末の残高は足りていても、月の途中で一時的に足りなくなることがあります。たとえば、売上の入金が月末で、給与の支払いが25日、仕入先への支払いが20日という会社では、20日から月末までの間に残高がいちばん少なくなります。

月末の残高に余裕がない月や、大きな支払いが月の前半に集中する月は、週ごと、または日ごとに入金と支払いを並べた表(日繰り表)を作り、月の途中の残高も確かめます。

オフィスの移転を例に作ってみる

オフィスや店舗を借りている会社では、家賃や敷金が資金繰りに大きく影響します。特に移転や出店の月は、新しい物件の敷金などがまとめて出ていきます。

次の例は、7月に新しいオフィスへ移転する会社の資金繰りを、6か月分まとめたものです(単位:万円。金額は計算のための例です)。

  • 売上の入金(売掛金の回収):月800万〜950万円
  • 経常支出:人件費、外注費、家賃、諸経費で月740万円。移転後は家賃が60万円から90万円に上がり、月770万円
  • 7月の経常外支出:新しいオフィスの敷金540万円(賃料6か月分)、仲介手数料99万円、内装工事300万円の計939万円
  • 9月の経常外収入:前のオフィスの敷金360万円から原状回復の費用120万円を差し引いた240万円が戻る
  • 財務収支:借入金の返済が毎月50万円
月経常経常外財務月末残高
4月600▲501,510
5月600▲501,520
6月1100▲501,580
7月130▲939▲50721
8月1300▲50801
9月180240▲501,171

(4月の前月繰越金は1,500万円。経常は差引過不足)

オフィスの移転を例にした資金繰り表の月末残高。4〜6月は1,500万円台で推移するが、7月に新しいオフィスの敷金540万円、仲介手数料99万円、内装工事300万円の計939万円が出て、月末残高は721万円に下がる。前のオフィスの敷金から原状回復の費用を差し引いた240万円が戻るのは9月で、月末残高は1,171万円。金額は計算のための例

敷金は「経常外支出」に分けて書く

敷金は、退去するときに戻る前提のお金なので費用にはなりませんが、預けた時点で現金は出ていきます。家賃のような毎月の支出と混ぜず、経常外支出に分けて書くと、移転や出店による一時的な出費と、本業の収支とを分けて見られます。前のオフィスの敷金が戻る時期は、明け渡したあとです。戻る額からは原状回復の費用などが差し引かれるため、控えめに見積もって書きます。敷金が戻る時期は「オフィス移転時の敷金はいつ返ってくるの?」で説明しています。

表にすると、谷の深さと時期が見える

この例では、利益は毎月出ていますが、7月の月末残高は721万円まで下がり、月の支出(経常支出と返済で820万円)を下回ります。このタイミングで売上の入金が1社でも遅れれば、支払いが苦しくなります。資金繰り表を作っておけば、この谷を移転の前から見つけて、借入の時期や額、移転の時期、支払い条件を前もって考えられます。

仮に、新しいオフィスの敷金を半分の270万円にできれば、7月の月末残高は270万円多い991万円になります。

スタートアップの新常識 オフィス移転の敷金、払わないという選択。 詳細を見る

作ったあとに見るところ

  • 月末残高の下限:会社として、月末残高の下限を決め、下回りそうな月を探す。たとえば「月の経常支出と返済の合計の1か月分」のように、自社の支払いの大きさをもとに決める
  • 経常収支の符号:本業の差引過不足がマイナスの月が続いていないか
  • 予定と実績の差:J-Net21は、実績の資金繰り表と予定の資金繰り表を比べて問題点を洗い出すよう勧めている
  • 年に数回の支出:納税、賞与、設備の更新、契約の更新料など、毎月ではない支出が入っているか

予定と実績を比べる

月が終わったら、予定の欄を実績に書き換え、予定と実績の差を確かめます。

項目予定実績差理由
売掛金の回収900万円820万円▲80万円1社の入金が翌月にずれた
外注費150万円170万円+20万円追加の発注があった
月末残高721万円621万円▲100万円

(金額は計算のための例です)

差が出た理由を書いておくと、次の予定を立てるときに、同じずれを見込めるようになります。入金の遅れがくり返し起きる取引先があれば、その取引先の入金は1か月遅らせて予定に入れる、といった直し方をします。

金融機関に出すときは根拠を添える

融資の相談で資金繰り表を出すときは、日本政策金融公庫の記入例にあるように、売上高や収支の金額の算出根拠も書き添えます。受注済みの案件の一覧や、取引先ごとの支払い条件、過去の実績との比較があると、予定の数字の確からしさが伝わります。

業種によって違う書き方のポイント

資金繰り表の形は同じでも、業種によって、特に気をつける行が違います。

業種気をつける点
建設工事の支払いが先で、代金は出来高や完成後に入る。前払金や中間前払金の入る月を書く
製造・卸在庫と仕入の支払いが大きい。受取手形やでんさいの期日と割引を書く
小売・飲食売上の多くがその場で入るが、カード決済の入金は後になる。仕入の支払日と家賃の比重が大きい
サービス・IT支出の中心は人件費。売掛金の回収が遅れると給与の支払いに響く

業種ごとの資金調達は「建設業の資金調達」「飲食店の資金調達」でも説明しています。手形やでんさいの扱いは「約束手形・小切手の廃止」をご覧ください。

一緒に用意しておく表

資金繰り表の数字は、ほかの表から持ってくると正確になります。次の表を一緒に作っておくと、毎月の更新が楽になります。

  • 取引先別の入金予定表:取引先ごとの請求額、締め日、入金日
  • 支払予定表:仕入先・外注先ごとの支払額と支払日
  • 借入の返済予定表:金融機関ごとの返済額と返済日(金融機関から受け取る)
  • 固定費の一覧:家賃、共益費、保険料、リース料、保証料など、毎月・毎年決まって出ていく支出

資金が足りないとわかったら

足りない月が見つかったら、その月より前に手を打ちます。

方法内容
入金を早める請求を早める、支払い条件の見直しを取引先に相談する
支出を平らにする設備の購入を分ける、リースを使う
借りる金融機関や日本政策金融公庫の融資を早めに相談する
返済を見直す返済の条件の変更を金融機関に相談する(リスケ)
資産を現金にする売掛金や、預けている敷金を現金にする

借入の相談は、資金が足りなくなってからではなく、資金繰り表で不足が見えた段階で始めるほうが、選べる方法が多くなります。銀行以外の方法は「銀行以外の資金調達」でまとめています。

先の移転の例で、7月の谷をつくっていたのは、新しいオフィスの敷金540万円でした。当社の「敷金半額くん」は、新しく借りるオフィスや店舗の敷金を半額から最大0円まで減らすサービスで、減らした分の代わりに当社が貸主に保証を提供します。資金繰り表では、経常外支出の敷金が減り、谷そのものが浅くなります。今のオフィスに預けている敷金を、退去を待たずに入居したまま取り戻す「敷金返還くん」もあり、こちらは経常外収入として、戻る月に書き込めます。どちらも借り入れではないため財務収支には入らず、返済もありません。当社への保証料がかかり、利用には当社の審査と貸主の承諾が必要です。

よくある質問

資金繰り表とキャッシュフロー計算書の違いは何ですか?

キャッシュフロー計算書は、過去の一定期間の現金の流れをまとめた書類で、財務三表の1つです。資金繰り表は、これから先の現金の流れを月ごとに見て、資金が足りなくならないようにするために作る表です。

何か月先まで作ればよいですか?

J-Net21は、過去の資金繰り表をもとに、3〜6か月先の資金の状況を予見できる表を作ってみるよう勧めています。移転や大きな設備投資を予定しているなら、その月まで含めて作ります。

テンプレートはありますか?

日本政策金融公庫が、資金繰り表の書式と記入例をウェブサイトで公開しています(中小企業事業、国民生活事業の各種書式のページ)。

敷金は資金繰り表のどこに書きますか?

新しい物件の敷金は、費用ではありませんが現金が出ていくため、経常外支出に書くとわかりやすくなります。退去して戻る敷金は、明け渡したあとの月に、原状回復の費用などを差し引いた額で経常外収入に書きます。

個人事業主や小さな会社にも必要ですか?

必要です。規模が小さいほど、1件の入金の遅れや大きな支払いが残高に与える影響が大きくなります。項目を減らした簡単な表でもかまわないので、数か月先までの入金と支払いを並べておきます。

毎月作るのは手間がかかりませんか?

一度数式でつないだ表を作れば、毎月の作業は、実績の書き換えと、翌月以降の予定の見直しが中心です。入金予定表や支払予定表と一緒に管理すると、転記の手間も減ります。

まとめ

  • 資金繰り表は、これから先の現金の入りと出を月ごとに並べ、月末の残高を見る表
  • 構成は、前月繰越金+経常収支+経常外収支+財務収支=翌月繰越金
  • 入金は回収の月、支出は支払いの月に書く。残高は通帳と合わせる
  • 移転や出店の月は、敷金などがまとめて出ていき、残高の谷ができる。敷金は経常外に分けて書く
  • 足りない月が見えたら、その前に借入や返済の見直し、資産の現金化を考える。敷金を減らせば、谷そのものを浅くできる

出典:中小機構 J-Net21「資金繰り表を活用する」(2023年2月10日)、日本政策金融公庫「資金繰り表(記入例)」。

Tags#金融・融資
Share
Back to Column List
オフィス移転の敷金 半額〜最大0円に 物件探し〜敷金減額まで窓口ひとつ
オフィスの敷金が、入居したまま返ってくる! 上場企業の利用実績あり!