売上の見込み方
カフェの売上は、「客単価×席数×回転数×営業日数」で見込みます。日本政策金融公庫の解説でも、飲食店の売上予測は「客単価×座席数×回転数」で出すのが一般的とされています。
先の10坪・16席の例で、客単価900円、1日3回転、月25日営業とすると、次のとおりです。
| 項目 | 数字 |
|---|
| 1日の売上 | 900円×16席×3回転=4万3,200円 |
| 1か月の売上 | 4万3,200円×25日=108万円 |
| 1年の売上 | 1,296万円 |
| 1席あたりの売上(年) | 81万円 |
喫茶店の経営指標と比べる
日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」(2025年度調査、2026年8月公表)には、喫茶店の経営指標があります。公庫が融資した従業者50人未満の法人のうち、喫茶店35社の決算(2024年7月以降の決算期)を集計したものです。
| 指標 | 平均 | 中央値 |
|---|
| 1客席あたりの売上高(年) | 192.6万円 | 129.8万円 |
| 店舗面積1坪(3.3㎡)あたりの売上高(年) | 189.3万円 | 140.6万円 |
| 1社あたりの店舗面積 | 138.5㎡ | 101.0㎡ |
| 売上高総利益率 | 71.9% | 72.2% |
| 人件費の売上に対する割合 | 29.8% | 31.0% |
| 諸経費の売上に対する割合 | 34.1% | 33.3% |
| 営業利益の売上に対する割合 | −2.2% | 0.5% |
この調査の店舗面積は、事務所・倉庫・厨房などを除いた面積です。調査した喫茶店は法人で、店舗面積の中央値は101㎡(約31坪)と、10坪の店より広い店が中心です。社数も35社と少ないため、目安として使います。
先の例の1席あたりの売上(年81万円)は、中央値の129.8万円の約6割です。見込みが中央値から大きく離れるときは、客単価、回転数、営業日数の前提を一つずつ見直します。売上高総利益率が約72%ということは、売上のうち約28%が材料などの原価で、さらに人件費が約3割、家賃や水道光熱費を含む諸経費が約3割を占め、営業利益はほとんど残らない、という構造です。
損益分岐点の売上と、1日に必要な客数
売上から原価を引いた残り(売上総利益)で、家賃や人件費などの固定費をまかなえる売上が「損益分岐点」です。喫茶店の売上高総利益率の中央値72.2%を使い、先の例の固定費(月60万円)から計算します。
| 項目 | 計算 | 結果 |
|---|
| 損益分岐点の売上(月) | 60万円÷72.2% | 約83万円 |
| 1日あたり(25日営業) | 83万円÷25日 | 約3.3万円 |
| 1日に必要な客数(客単価900円) | 3.3万円÷900円 | 約37人 |
この固定費には、開業した本人の生活費と、借りたお金の返済が入っていません。たとえば640万円を10年で返すと、元金だけで月約5.3万円です。これを固定費に足すと、損益分岐点は月約90万円、1日に必要な客数は約41人になります(金額は計算のための例です)。16席で1日41人は、1日2.6回転です。
予想どおりの売上になるとは限らない
日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」では、開業前に予想していた月商を調査時点で達成していた人は58.7%でした。残りの41.3%は予想に届かず、10.5%は予想の半分にも届いていません。採算が「黒字基調」と答えた人は67.0%、「赤字基調」は33.0%でした。
| 予想月商に対する実際の月商 | 割合 |
|---|
| 50%未満 | 10.5% |
| 50〜75%未満 | 16.6% |
| 75〜100%未満 | 14.2% |
| 100〜125%未満 | 24.5% |
| 125%以上 | 34.2% |
同じ調査で、開業時に苦労したこと(三つまでの複数回答)は、「資金繰り、資金調達」が56.9%で最も多く、「顧客・販路の開拓」が49.9%、「財務・税務・法務に関する知識の不足」が36.4%と続きます。運転資金は、売上が予想に届かない月が続いても家賃と人件費を払える額を見込みます。月ごとのお金の出入りは「資金繰り表の作り方」の方法で並べられます。
家賃は売上に見合っているか
先の例では、家賃20万円は月の売上108万円の18.5%にあたります。経済産業省の「中小企業実態基本調査」(令和6年度決算実績)で、中小企業の飲食店の地代家賃は売上高の約5.7%(法人)、約5.9%(個人)でした。この数字は自社の建物で営業する企業も含めた平均なので、店を借りている店はもっと高くなりますが、18.5%は大きく上回ります。
喫茶店の諸経費は売上の約3割で、その中に家賃、水道光熱費、広告費などがすべて入ります。家賃だけで売上の2割近くになると、ほかの経費の分が残りません。物件を決める前に、家賃と見込みの売上を並べて確かめます。家賃と売上の関係は「飲食店の家賃比率」で詳しく説明しています。
開業資金を抑える方法
居抜きの物件を使う
前の店の内装や厨房設備が残っている居抜きの物件を使うと、内装・設備工事を減らせます。ただし、残っている設備が誰のものか(前の借主か貸主か)、故障していないか、退去のときにどこまで元に戻す(原状回復する)かを、契約の前に確かめます。前の借主に設備の代金(造作譲渡料)を払う場合は、その額も開業資金に入れます。仕組みと注意点は「造作譲渡とは」で説明しています。
広さと席数を決めてから物件を探す
保証金は「月額賃料×月数」で決まるため、広い物件ほど賃料も保証金も大きくなります。必要な席数と厨房の広さを先に決め、その広さの前後で物件を比べると、使わない広さに賃料と保証金を払わずに済みます。
保証金を減らす
保証金を減らせれば、その分を内装や運転資金に回せます。当社の「敷金半額くん」は、新しく借りるオフィスや店舗の敷金・保証金を、半額から最大0円まで減らすサービスです。減らした分の代わりに、当社が貸主に保証を提供します。個人事業主や設立3期未満の会社も使えます。先の例なら、保証金200万円のうち100万〜200万円を、開業資金に回せます。利用には当社の審査と貸主の承諾が必要で、当社への保証料がかかります。
開業資金の集め方
カフェは、日本政策金融公庫の「生活衛生貸付」の対象です。喫茶店や飲食店の設備資金は7,200万円まで借りられ、返済期間は13年以内です。申込金額が500万円を超える場合は、原則として都道府県知事の推せん書が必要です。創業する人向けの「生活衛生新企業育成資金」もあります。
業種を問わない「新規開業・スタートアップ支援資金」も使えます。融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内、運転資金10年以内です。利用の条件に自己資金の割合の定めはありませんが、一般に自己資金は多いほうが金融機関から高く評価されやすいとされています。
それぞれの制度の条件は「飲食店の資金調達」、申し込む順番は「起業・開業の資金調達」で説明しています。補助金は後払いのため、開業時の支払いにはあてられません(「返済不要の資金調達」)。
よくある質問
カフェの開業資金はいくら必要ですか?
物件と規模で大きく変わります。日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」では、開業費用は平均975万円、中央値600万円でした(業種をまとめた数字)。この記事の10坪・16席の例では、運転資金3か月分を含めて920万円です。
小さなカフェなら自己資金はいくら用意しますか?
同じ調査で、開業時の自己資金は平均279万円でした。日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」には自己資金の割合の定めはありませんが、自己資金が少ないと、借りられる額が小さくなったり、審査が厳しくなったりすることを見込んでおきます。
カフェを開くのに必要な資格は何ですか?
店に食品衛生責任者を置き、保健所から飲食店営業の許可を受けます。食品衛生責任者は、調理師の免許がなくても、計6時間ほどの講習会を受ければなれます。収容人数30人以上の店は防火管理者も必要です。午前0時から6時の間にお酒を出す場合は、警察署への届出も要ります。
喫茶店とカフェで許可は違いますか?
違いません。2021年6月1日の食品衛生法の改正で「喫茶店営業」は「飲食店営業」に統合され、いまはどちらも飲食店営業の許可で営業します。
店で焼いたケーキを持ち帰りで売れますか?
店で出している食品の持ち帰りの範囲内であれば、飲食店営業の許可のままで売れます。新たに菓子製造業の許可は要りません(東京都保健医療局)。範囲を超えて製造・販売する場合は、保健所に確かめます。
カフェの家賃はいくらまでなら払えますか?
見込みの売上から逆算します。中小企業の飲食店の地代家賃は売上高の約5.7%(法人、経済産業省「中小企業実態基本調査」)で、これは自社の建物で営業する企業も含めた平均です。この記事の例では、家賃20万円が売上108万円の18.5%で、喫茶店の諸経費(売上の約3割)の半分以上を家賃が占めます。家賃から必要な売上を出す方法は「飲食店の家賃比率」で説明しています。
預けた保証金は返ってきますか?
退去して店を返したあと、未払いの賃料や原状回復の費用、契約で決めた償却の分を差し引いて返ってきます。返ってくる時期と差し引かれるものは「敷金が返ってこない・少ないときの対処」で説明しています。
まとめ
- カフェの開業資金は、物件を借りる費用、内装・設備工事、厨房機器、什器・備品、開業の準備、運転資金に分けて見積もる
- 日本政策金融公庫の調査では、開業費用は平均975万円、中央値600万円(業種をまとめた数字)。集めた資金の9割は借り入れと自己資金
- 10坪・16席の例では920万円。そのうち保証金200万円(21.7%)は退去まで返ってこない
- 喫茶店営業は飲食店営業に統合された。食品衛生責任者を置き、保健所の許可を受ける
- 売上は「客単価×席数×回転数×営業日数」で見込み、喫茶店の経営指標(1席あたり年129.8万円が中央値)と比べる
- 家賃が売上に見合っているかを、物件を決める前に確かめる。公庫の調査では、開業前の予想月商に届かなかった人が41.3%
- 保証金を保証に置き換えて減らせば、その分を内装や運転資金に回せる
出典:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」、日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」(2025年度調査、2026年8月公表。業種別(飲食店,宿泊業)、利用の手引き)、日本政策金融公庫「居酒屋の創業ポイント」「第6回 資金調達の準備をしよう」「一般貸付(生活衛生貸付)」「新規開業・スタートアップ支援資金」、東京都保健医療局「営業許可・届出の概要」「食品衛生責任者」「新たな営業の許可制度・営業の届出制度(リーフレット)」、国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」、経済産業省「中小企業実態基本調査」(令和6年度決算実績、売上高及び営業費用 産業中分類別表)、国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」、Growth Office 掲載データ(東京都で募集中・公開中の区画のうち用途に店舗を含むもの。2026年10月1日時点)。