敷金・保証金

敷金流動化とは|入居中の敷金を資金に換える仕組み

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敷金流動化とは|入居中の敷金を資金に換える仕組み

敷金流動化とは、オフィスや店舗を借りるときに預けた敷金(保証金)を、退去を待たずに現金に換えることです。事業用の敷金は額が大きく、東京都のオフィスでは50〜100坪で賃料の10か月分、100坪以上で12か月分が中央値です。月額賃料200万円の区画なら2,400万円が、入居している間ずっと貸主の手元にあります。

民法では、敷金が返ってくるのは、賃貸借が終わって物件を明け渡したときなどに限られます。敷金流動化は、貸主の合意や、保証会社・金融機関などの第三者を介して、その資金を前倒しで使えるようにする仕組みです。

この記事では、敷金流動化と呼ばれる方法の種類、決算書への影響、税金の扱い、賃上げや賃料の値上げなど検討される場面、進め方と契約で確かめることを整理します。

敷金流動化とは

明け渡すまで動かせない資産を現金に換える

預けた敷金は、決算書では「差入保証金」や「敷金」として、固定資産(投資その他の資産)に載っています。自社の資産ですが、入居している間は使えません。

民法は、貸主が敷金を返さなければならないのは、賃貸借が終了し、かつ貸主が物件の返還を受けたときなどと定めています(第622条の2第1項)。借主の側から、敷金を未払いの賃料に充てるよう求めることもできません(同条第2項)。入居したまま敷金を資金にするには、貸主との合意か、第三者を使った仕組みが必要です。

会社の資産を現金に換えることを、一般に資産の流動化と呼びます。売掛金や不動産の流動化と同じように、敷金という資産を現金に換えるのが敷金流動化です。資産流動化の全体像は「資産流動化とは」で説明しています。

敷金流動化と呼ばれる方法

敷金流動化として使われる方法は、主に次の3つです。代預託は、金融機関などに敷金を代わりに預けてもらう方法です。

敷金流動化の方法返済と貸主の関わり
保証に置き換える返済なし。貸主の合意が必要
権利を譲る返済の要否は契約による。貸主への通知か承諾が必要
代預託返済の要否は契約による。貸主の合意が必要

このほかに、敷金の返還を受ける権利を担保にお金を借りる方法もありますが、返済と利息がある借り入れなので、分けて考えます。この方法も、貸主への通知か承諾が必要です(民法第364条)。それぞれのしくみは次のとおりです。

保証に置き換える方法は、返してもらう敷金の代わりに、保証会社の保証を貸主に提供します。貸主は、賃料の未払いなどがあったときに保証会社から支払いを受けられるため、敷金を返しても担保が減りません。借主は保証会社に保証料を払います。

権利を譲る方法は、退去したときに敷金の返還を受ける権利(敷金返還請求権)を、流動化を扱う会社などに譲り渡し、先に代金を受け取ります。債権は原則として譲り渡すことができ、まだ発生していない債権でもかまいません(民法第466条第1項・第466条の6)。譲り渡したことを貸主に主張するには、貸主への通知か貸主の承諾が必要です(第467条)。受け取れる額は、退去時に差し引かれる額や手数料を見込んで、預けた敷金より少なくなります。

代預託は、金融機関などが借主に代わって貸主に敷金を預ける形です。借主は、金融機関に保証料や手数料を払い、契約によっては預けてもらった額を期間内に返していきます。しくみは「代預託とは」で説明しています。

決算書はどう変わるか

預けている敷金3億円のうち1.5億円を資金にしたときの貸借対照表の例。保証に置き換える方法では、差入敷金が現金に入れ替わるだけで、総資産50億円も負債も変わらない。権利を担保に借りる方法では、現金と借入金が1.5億円ずつ増え、総資産は51.5億円になる

返済のない方法は、資産の中身が入れ替わる

保証に置き換える方法では、差入保証金が減り、同じ額の現金が増えます。総資産は変わらず、借入金などの負債も増えません。権利を譲る方法も、譲渡として扱える場合は差入保証金が現金に入れ替わりますが、受け取る額は手数料などを差し引いた額なので、差額は譲渡の損失になります。退去時に返還額が足りなかったときに借主が負担する約束があるなど、譲渡の条件によっては扱いが変わるため、契約の内容と会計処理を確かめます。

権利を担保に借りる方法では、差入保証金はそのまま残り、現金と借入金が両方増えます。総資産も負債も増え、返済と利息の支払いが加わります。

方法借方貸方
保証に置き換える普通預金 1.5億円差入保証金 1.5億円
権利を譲る普通預金・譲渡の損失差入保証金
権利を担保に借りる普通預金 1.5億円借入金 1.5億円

保証料や手数料、利息は、それぞれ費用として処理します。金額は例です。

ROAが変わるのは、戻った現金を使ったとき

敷金が現金に替わっただけでは、総資産は変わりません。総資産に対する利益の割合(ROA)が変わるのは、戻った現金を使ったときです。

たとえば、当期純利益2.5億円・総資産50億円の会社のROAは5.0%です。戻った1.5億円で借入金1.5億円を返すと、総資産は48.5億円になり、ROAは約5.2%になります(保証料などで利益が減る分は考えていません。数字は例です)。戻った現金を事業に投じて利益が増えた場合も、ROAは上がります。

新しいリース会計基準との関係

2027年4月1日以後に開始する事業年度から適用される新しいリース会計基準の適用指針は、借手が預ける敷金のうち、将来返還されるものは取得原価で計上し、返還されないことが契約上定められている額は使用権資産の取得価額に含めるとしています(企業会計基準適用指針第33号 第33項・第34項)。敷金流動化で返ってきた分は、差し入れている敷金の額から外れます。実際の処理は、監査法人や顧問の税理士に確認します。

税金の扱い

保証料の勘定科目や消費税の扱いは「家賃保証料の勘定科目と仕訳」で説明しています。

権利を譲る方法の場合、敷金の返還を受ける権利は金銭債権です。金銭債権の譲渡は、消費税の非課税取引にあたります(消費税法別表第二第2号、消費税法施行令第9条第1項第4号)。譲渡の損失の扱いを含め、具体的な処理は税理士に確認します。

どんな場面で検討されるか

場面検討される理由
賃上げ・採用で人件費が増える固定費の増加に備えて手元資金を厚くしたい
賃料の値上げを受け入れる賃料とあわせて敷金も増えると、固定される資金がさらに増える
拠点の集約・移転を控えている新しい物件の敷金や内装工事の資金にあてたい
財務を見直す借入金の返済や、資産の効率を高める施策にあてたい

上場企業の決算説明資料でも、拠点戦略の施策のひとつとして「敷金流動化サービスの活用」が挙げられた例があります(株式会社SHIFT、2026年8月期第2四半期決算説明資料)。

賃料の値上げで敷金が増えるとき

賃料の値上げを受け入れると、敷金の額にも影響することがあります。契約に「賃料が改定されたときは、敷金を改定後の賃料の○か月分とする」といった定めがあれば、差額の追加の預け入れを求められます。

たとえば、月額賃料200万円・敷金12か月分(2,400万円)の区画で、賃料が220万円に上がると、敷金は2,640万円になり、240万円を追加で預けることになります。値上げで月々の支払いが増えるうえに、預けたまま動かせない資金も増えます。金額は例です。

このような場面では、賃料の改定の話し合いにあわせて、預けている敷金の一部を保証に置き換えて返してもらえないか相談する方法があります。貸主にとっては、保証で担保が保たれたまま賃料の改定がまとまり、借主にとっては、値上げの負担を戻った資金で吸収できます。値上げへの対応の全体は「オフィス・店舗の賃料値上げは拒否できる?」で整理しています。

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貸主から見た敷金流動化

どの方法も、貸主の合意か、少なくとも通知・承諾が必要です。貸主にとって敷金は、賃料の未払いや原状回復の費用に備える担保なので、相談するときは貸主の立場での見え方を押さえておきます。

方法貸主から見た変化
保証に置き換える手元の敷金は減るが、同じ範囲を保証会社の保証で受けられる
権利を譲る手元の敷金はそのまま。退去時の返還先が譲受人に変わる
代預託敷金を預ける相手が借主から金融機関などに変わる

貸主が気にするのは、担保が実質的に減らないか、借主の支払いに問題がないか、自社の手続きや負担が増えないかです。これまで賃料を遅れずに払ってきた実績や、会社の業績を示せるように準備します。貸主の側で預かる敷金の扱いは「預り保証金・預り敷金の勘定科目」で整理しています。

進め方

  1. 預けている敷金の一覧を作る:物件ごとに、敷金の額、償却の有無、契約の残りの期間、更新の時期をまとめる
  2. 賃貸借契約書を確かめる:敷金返還請求権の譲渡・質入れの禁止、敷金の額を変える手続き、償却の定め
  3. 方法を選ぶ:返済の有無、決算書への影響、費用の総額で比べる
  4. 審査を受ける:保証会社や流動化を扱う会社の審査。決算書などを提出する
  5. 貸主に説明し、承諾を得る:担保が減らないことや、支払いに問題がないことを示す
  6. 契約を結び、資金を受け取る:保証の契約や譲渡の契約を結び、返還や代金の支払いを受ける

一覧は、たとえば次のような形です。金額は例です。

物件敷金償却更新の時期
本社(東京)2,400万円なし1年後
支社(大阪)600万円退去時1か月分2年後
店舗(横浜)360万円なし半年後

敷金の額が大きい物件や、更新の時期が近い物件から検討すると、貸主への相談の機会もつくりやすくなります。

費用の比べ方

保証料、手数料、利息は、資金を使う期間が長いほど総額が変わります。比べるときは、1年あたりの費用を資金にした額で割った割合にそろえます。一度だけかかる手数料は、使う予定の年数で割ってから足します。

そのうえで、返済の有無と決算書への影響をあわせて判断します。借り入れは金利が低く見えても、負債が増え、返済の予定を資金繰りに組み込む必要があります。方法ごとの比べ方は「入居中のオフィスの敷金を資金にする4つの方法」でも詳しく説明しています。

契約で確かめること

  • 譲渡の禁止:契約で敷金返還請求権の譲渡を禁じていても、譲渡そのものは無効になりません。ただし、それを知っていた譲受人などに対して、貸主は支払いを拒むことができます(民法第466条第2項・第3項)。実際には貸主の承諾を得て進める
  • 通知の方法:権利を譲ったことを貸主以外の第三者に主張するには、確定日付のある証書による通知か承諾が必要(第467条第2項)
  • 償却される額:退去時に償却される額は返ってこないので、資金にできない
  • 退去時の精算:原状回復の費用や未払いの賃料を差し引いたあと、誰に何が支払われるか
  • 保証の範囲:保証に置き換える場合、保証の対象になる債務と期間

返済のない敷金流動化

当社の「敷金返還くん」は、この記事の1つ目の方法(保証に置き換える)で、預けている敷金の半額から最大全額を、入居したまま現金で取り戻せるサービスです。返す敷金の代わりに当社が貸主に保証を提供するため、貸主の担保は減りません。借り入れではないので、返済や利息はなく、決算書に借入金も増えません。

利用には当社の審査と貸主の承諾が必要で、当社への保証料がかかります。貸主への説明は当社が行い、審査書類の提出から返還までは、1か月半から2か月ほどが目安です。オフィスや店舗など事業用の物件が対象です。

よくある質問

敷金流動化は借金ですか?

方法によります。保証に置き換える方法は、預けている敷金を返してもらうもので、借入金は増えません。権利を担保に借りる方法は借り入れです。権利を譲る方法や代預託は、返済の有無など契約の条件によって扱いが変わるため、契約と会計処理を確かめます。

貸主に知らせずにできますか?

できません。保証に置き換える方法や代預託は貸主の合意が必要で、権利を譲る方法も、貸主に主張するには通知か承諾が必要です(民法第467条第1項)。

償却される分も資金にできますか?

できません。退去時に償却される額は、もともと返ってこないお金なので、流動化の対象にはなりません。

流動化したあとに退去したら、どうなりますか?

保証に置き換えた場合は、残っている敷金から未払いの賃料や原状回復の費用を差し引き、足りない分は保証の範囲で保証会社が貸主に払ったあと、借主に求めます。権利を譲った場合は、返還される敷金が権利を譲り受けた会社に支払われます。

赤字の会社でも使えますか?

審査によります。当社の敷金返還くんでは、設立3期未満の企業や赤字の時期の企業でも審査を通った実績があります。

まとめ

  • 敷金流動化は、入居中に預けている敷金を、退去を待たずに現金に換えること
  • 主な方法は、保証に置き換える、権利を譲る、代預託の3つ。権利を担保に借りる方法は借り入れ
  • 返済のない方法は、差入保証金が現金に入れ替わるだけで、負債は増えない。ROAが変わるのは戻った現金を使ったとき
  • 賃上げや賃料の値上げで固定費が増えるとき、拠点を見直すときに検討される
  • どの方法も貸主の合意か通知・承諾が必要。保証に置き換えれば、返済なしで敷金を取り戻せる

出典:民法第364条・第466条・第466条の6・第467条・第622条の2、消費税法施行令第9条、企業会計基準適用指針第33号第33項・第34項、Growth Office 掲載データ(東京都の空室区画、2026年9月28日時点、敷金の月数がわかる区画のみ)。

Tags#敷金・保証金
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