本店移転の登記にかかる費用の合計
本店移転の登記の費用は、管轄の中か外か、会社が自分で申請するか司法書士に依頼するかで、次のように変わります。
| 移転のしかた | 自社で申請 | 司法書士に依頼 |
|---|
| 管轄の中の移転 | 3万円+実費 | 3万円+報酬+実費(日本司法書士会連合会のアンケートに設例はない) |
| 管轄の外への移転 | 6万円+実費 | 6万円+報酬(平均4万7,168円)+実費 |
実費は、登記事項証明書の取得や郵送の費用です。代表取締役の住所の変更など、ほかの登記を同時に申請する場合は、その登録免許税が加わります。管轄の外への移転を司法書士に依頼すると、平均で約10万7,000円に実費を足した額になります。
登録免許税:管轄の中なら3万円、管轄の外なら6万円
国税庁のタックスアンサー「No.7191 登録免許税の税額表」(令和8年4月1日現在法令等)は、「本店または支店の移転の登記」について、本店または支店の数1か所につき3万円としています。
管轄の中の移転と、管轄の外への移転
「管轄」は、その住所の登記を受け付ける登記所(法務局・地方法務局とその支局・出張所)の担当の区域です。同じ登記所の管轄の中で移転する場合は、本店の所在地の登記所に1件の申請をし、登録免許税は3万円です。
別の登記所の管轄へ移転する場合は、会社法第916条により、旧所在地では「移転の登記」を、新所在地では会社の登記事項(株式会社なら会社法第911条第3項の各号の事項)を登記します。法務局の申請書の記載例は、旧所在地あての申請書と新所在地あての申請書の両方に「登録免許税 金3万円」と記載しており、合わせて6万円になります。2通の申請書は、同時に、旧所在地の登記所に提出します。新所在地の登記所に直接提出するのではありません。
東京23区の商業登記の管轄
東京法務局の「不動産登記/商業・法人登記の管轄区域一覧」(2025年5月27日更新)によると、23区の商業・法人登記の管轄は、次のように区ごとに分かれています。
| 登記所 | 商業・法人登記の管轄(23区) |
|---|
| 東京法務局(本局) | 千代田区、中央区、文京区 |
| 港出張所 | 港区 |
| 渋谷出張所 | 渋谷区、目黒区 |
| 新宿出張所 | 新宿区 |
| 品川出張所 | 品川区 |
| 城南出張所 | 大田区 |
| 世田谷出張所 | 世田谷区 |
| 中野出張所 | 中野区 |
| 杉並出張所 | 杉並区 |
| 豊島出張所 | 豊島区 |
| 板橋出張所 | 板橋区 |
| 練馬出張所 | 練馬区 |
| 北出張所 | 北区、荒川区 |
| 台東出張所 | 台東区 |
| 墨田出張所 | 墨田区、江東区 |
| 城北出張所 | 足立区、葛飾区 |
| 江戸川出張所 | 江戸川区 |
たとえば、千代田区から中央区への移転や、渋谷区から目黒区への移転は、同じ登記所の管轄の中なので3万円です(定款を区までにしている会社は、区が変わるため定款の変更も必要です)。港区から渋谷区への移転は、港出張所から渋谷出張所の管轄へ移るので6万円です。オフィスの候補が複数の区にまたがる場合は、この違いも費用の比較に入れます。東京以外の地域は、各法務局が公開している管轄の一覧で確認します。
登録免許税の納め方
登録免許税は、申請書に収入印紙を貼るか、納付した領収証書を貼って納めます(法務局の申請書の記載例)。収入印紙は、収入印紙貼付台紙に、割印をしないで貼ります。
同時に登記すると加算されるもの
本店移転と同じときに、ほかの登記事項を変えることがあります。代表取締役が転居して住所が変わった、会社の目的を変えた、支店も移した、といった場合です。登録免許税は区分ごとに足し算になります。
| 同時にする登記 | 登録免許税 |
|---|
| 支店の移転 | 1か所につき3万円 |
| 代表取締役などの住所の変更(役員に関する事項の変更) | 1件につき3万円(資本金1億円以下の会社は1万円) |
| 商号・目的などの変更(登記事項の変更) | 1件につき3万円 |
| 支店の設置 | 1か所につき6万円 |
資本金1億円以下の会社で、代表取締役の住所の変更だけを同時に申請するなら、加わる登録免許税は1万円です。登録免許税は減りませんが、申請と議事録の作成が1回で済み、司法書士に依頼する場合も報酬をまとめて見積もれます。
定款を変える必要があるか
本店の移転で株主総会の決議が必要かどうかは、定款に本店の所在地をどこまで書いているかで決まります。会社法第27条は、株式会社の定款に「本店の所在地」を記載することを求めています。記載には、最小の行政区画(市町村。東京23区では区)までにとどめる方法と、番地まで書く方法があり、法務局の記載例の議事録は「当会社は、本店を○県○市に置く。」と、市までの記載を例にしています。なお、政令指定都市の区(大阪市北区など)は最小の行政区画ではなく、その場合は「市」までが最小の行政区画です。
法務局の申請書の記載例は、定款に本店の所在地として最小行政区画までを規定している場合で、その最小行政区画の中で本店を移転するときは、株主総会の決議は不要で、取締役会の決議(取締役会のない会社は取締役の過半数の一致)で移転できるとしています。
| 定款の記載 | 移転先 | 定款の変更(株主総会) | 取締役会などで決めること |
|---|
| 最小行政区画まで(例:東京都港区) | 同じ区画の中(港区→港区) | 不要 | 具体的な所在場所と移転の日 |
| 最小行政区画まで(例:東京都港区) | 別の区画(港区→渋谷区) | 必要 | 具体的な所在場所と移転の日 |
| 番地まで(具体的な所在場所) | 番地が変わる移転 | 必要(定款の記載が変わるため) | 移転の日など |
番地まで記載している定款でも、同じ番地の建物の中で階や部屋だけが変わる場合は、定款の記載は変わりません。ただし、登記している本店の所在場所にビル名や階・部屋番号まで含めている場合は、その記載が変わるため、登記が必要になります。

定款の変更は、株主総会の特別決議
定款の変更は、会社法第466条により株主総会の決議で行い、その決議は第309条第2項第11号により特別決議になります。特別決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数(定款で3分の1以上の割合を定めた場合はその割合以上)を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上(定款でこれを上回る割合を定めた場合はその割合以上)の賛成で成立します。
株主総会を開く場合、招集の通知は、原則として株主総会の日の2週間前まで(公開会社でない会社は、書面投票や電子投票を定めた場合を除き1週間前まで。取締役会のない会社は、定款でさらに短くできます)に発します(会社法第299条)。株主全員が書面または電磁的記録で提案に同意した場合は、株主総会の決議があったものとみなされます(第319条)。株主が代表者1人だけの会社や、株主が少ない会社では、この方法で日程を短くできます。
定款を変える場合に増える費用
定款を変えても、本店移転の登録免許税は変わりません。公証人の認証が必要なのは設立のときの定款で(会社法第30条)、成立後に株主総会の決議で定款を変える場合に、認証の手続きはありません。定款を変える場合に増えるのは、株主総会の招集または書面決議の手続き、株主総会議事録と株主リストの作成、司法書士に依頼する場合はその分の報酬です。
取締役会(取締役の過半数)で決めること
定款に最小行政区画までを記載している会社では、新しい本店の具体的な所在場所(番地まで)と移転の日を、取締役会の決議(取締役会のない会社は取締役の過半数の一致)で決めます。法務局の記載例は、この議事録(または取締役の過半数の一致を証する書面)を添付書類にしています。定款に番地まで記載している会社は、株主総会で定款を変えたうえで、移転の日などを取締役会で決めます。
合同会社の場合
合同会社などの持分会社は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意で定款を変更します(会社法第637条)。業務の決定は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員が2人以上いれば社員の過半数で行い(第590条)、業務を執行する社員を定款で定めてその社員が2人以上いる場合は、その過半数で行います(第591条)。
期限と、移転の日
本店移転の流れ
本店移転は、次の順で進めます。
- 定款の本店の条文を読み、最小行政区画までか番地までかを確認する
- 移転先の住所を担当する登記所を調べ、管轄の中か外かを確認する
- 定款を変える場合は、株主総会の特別決議(または書面決議)で定款を変える
- 取締役会(または取締役の過半数)で、移転先の所在場所と移転の日を決める
- 移転の日に移転する(この日より前には登記を申請できない)
- 年金事務所(または事務センター)に、事実の発生から5日以内に届け出る
- 労働基準監督署とハローワークに、変更の翌日から10日以内に届け出る
- 移転の日から2週間以内に登記を申請する(管轄の外は2通を旧所在地の登記所へ)
- 給与支払事務所等が移る場合は、1か月以内に税務署に届け出る
- 税務署・都道府県・市町村(23区内は都税事務所)に異動を届け出る(登記が終わったら登記事項証明書を取る)
移転の日のあとの6〜10には、それぞれ期限があります(10は、東京都内に初めて事務所を置く場合は都税事務所に15日以内)。届出の中には、登記の完了を待つと期限を過ぎるものがあります。

移転の日から2週間以内に申請する
同じ管轄の中の移転は会社法第915条第1項により、管轄の外への移転は第916条により、いずれも本店を移転した日から2週間以内に登記をしなければなりません。議事録の作成と株主総会の日程は、移転の日から逆算して決めます。
移転の日より前には申請できない
法務局の申請書の記載例は、「本店移転の日より前に、本店移転の登記の申請をすることはできません」としています。登記の申請書に書く移転の日は、議事録に記載した移転の時期(実際に移転した日)です。
期限を過ぎた場合
会社法第976条は、登記をすることを怠ったときは、取締役などが100万円以下の過料に処せられると定めています。過料の対象は会社ではなく、取締役などの個人です。
必要書類と申請書の書き方
管轄の中の移転
申請書に、次の書類を添えて、本店の所在地の登記所に提出します(法務局の申請書の記載例)。
- 取締役会議事録(取締役会のない会社は、取締役の過半数の一致を証する書面)
- 株主総会議事録と株主リスト(定款を変える場合)
- 委任状(司法書士などの代理人が申請する場合)
管轄の外への移転
旧所在地あてと新所在地あての2通の申請書を作成し、同時に旧所在地の登記所に提出します。添付書類は旧所在地あての申請書に付け、新所在地あての申請書には、代理人が申請する場合の委任状だけを付けます。後述する代表取締役の住所を表示しない申し出をする場合は、新所在地あてに、その申し出の書面が加わります。
- 旧所在地あて:取締役会議事録(または取締役の過半数の一致を証する書面)、定款を変える場合の株主総会議事録と株主リスト、委任状
- 新所在地あて:委任状(代理人が申請する場合)
申請書の書き方
法務局の記載例にもとづく、申請書の主な項目は次のとおりです。
| 項目 | 記載すること |
|---|
| 会社法人等番号 | 分かる場合に記載する |
| 商号とフリガナ | フリガナは「株式会社」など会社の種類を除いて片仮名で記載する。国税庁の法人番号公表サイトで公表される(登記事項証明書には表示されない) |
| 本店 | 管轄の中の移転と、管轄の外への移転の旧所在地あては変更前の本店。新所在地あては変更後の本店 |
| 登記の事由 | 本店移転 |
| 登記すべき事項 | 管轄の中:「本店」新しい本店の所在場所、「原因年月日」移転の日。管轄の外:「登記記録に関する事項」に移転の日と移転先(新所在地あては移転元) |
| 登録免許税 | 金3万円(管轄の外は2通それぞれ) |
| 添付書類 | 議事録・株主リスト・委任状など、添付する書類と通数 |
| 申請人 | 本店、商号、代表取締役の住所と氏名。登記所に提出している印鑑を押す |
| 代理人 | 代理人が申請する場合だけ記載し、代理人の印鑑(認印)を押す。この場合、代表取締役の押印は不要 |
| 宛先 | 管轄の外への移転では、それぞれの申請書の宛先に、旧所在地・新所在地を管轄する登記所の名前を記載する |
申請書が複数ページになる場合は、各ページのつづり目に、申請書に押したものと同じ印鑑で契印をします。
議事録と株主リストの書き方
取締役会議事録には、決議事項として「当会社の本店を下記へ移転すること」と、本店移転先(番地まで)、移転の時期を記載し、出席した取締役と監査役が記名押印します。取締役会のない会社は、「取締役決定書」として、取締役の全員一致(または過半数)で本店の移転先と移転の時期を決定したことを記載します。
定款を変える場合の株主総会議事録には、株主の総数、発行済株式の総数、議決権を行使できる株主の数と議決権の数、出席した株主の数と議決権の数を記載し、議案として定款の本店の条文をどう変えるか(例:「第○条 当会社は、本店を○県○市に置く。」)と、承認されたことを記載します。
株主総会議事録を添付する場合は、株主リストも添付します。株主リストには、議決権の割合の高い株主から順に、氏名・住所・株式数・議決権数・議決権の割合を記載します。記載する人数は、議決権の割合の合計が3分の2に達するまでと、上位10位までの、どちらか少ないほうです(同じ順位の株主が複数いると、10名を超えることがあります)。株主リストは、申請人である会社の代表者の名義で作成します。
司法書士などに申請を依頼する場合は、委任状を添付します。議事録などの原本の返却を受けたいときは、委任状に「原本還付の請求及び受領の件」を記載します。
代表取締役の住所を表示しない申し出も、このときにできる
管轄の外へ本店を移転する場合、新所在地での登記の申請のときに、代表取締役の住所を登記事項証明書などで行政区画(市区町村など)までしか表示しない「代表取締役等住所非表示措置」を申し出られます(商業登記規則第31条の3)。まだこの措置を受けていない上場していない会社は、本店がその所在場所に実在することを示す書面(司法書士などが実在を確認した結果の書面、または会社あての書面が本店に配達証明郵便で送られたことを証する書面)、代表取締役の住所の公的な証明書、実質的支配者の書面を添付します。すでに措置を受けている会社は、代表取締役の住所の公的な証明書で足ります。本店がその所在場所に実在すると認められなくなると、措置は終了します。移転先がバーチャルオフィスなら、配達証明郵便を受け取れるかを運営会社に確認しておきます。
司法書士の報酬
司法書士の報酬は、日本司法書士会連合会によると、各司法書士が自由に定めることになっています。同連合会の「報酬アンケート結果(2024年(令和6年)3月実施)」は、取締役会のある株式会社が本店を管轄の外へ移転し、株主総会議事録・取締役会議事録などすべての書類を作成して申請を代理した場合の報酬を集計しています。定款の変更(株主総会)を含む設例です。
有効回答851件の平均は4万7,168円で、最も多かったのは3万円台(219件・25.7%)でした。回答を金額の順に並べた真ん中(中央値)は4万円台です。
| 報酬 | 件数 |
|---|
| 1万円台 | 31 |
| 2万円台 | 93 |
| 3万円台 | 219 |
| 4万円台 | 156 |
| 5万円台 | 146 |
| 6万円台 | 110 |
| 7万円台 | 36 |
| 8万円台 | 35 |
| 9万円台 | 3 |
| 10万円以上 | 22 |

このアンケートに管轄の中の移転の設例はなく、統計はありません。定款を変えない移転では作成する書類が少なくなるため、見積もりは設例の条件と比べて確認します。見積もりを取るときは、報酬に含まれる作業(議事録の作成、申請書の作成、登記所への提出、登記事項証明書の取得)と、報酬とは別にかかる登録免許税・実費を分けて確認します。
自社で申請するか、司法書士に依頼するか
自社で申請する場合にかかるのは、登録免許税と実費です。管轄の外への移転なら、登録免許税の6万円に、司法書士に依頼すると平均で約4万7,000円が加わります。法務局は申請書と議事録の記載例を公開しており、定款を変えない移転であれば、記載例を見ながら自社で作成できます。定款を変える移転や、代表取締役の住所の非表示の申し出のように添付書類が増える申請では、書類の不備による補正の手間も考えて、依頼するかどうかを決めます。
本店移転の費用を抑える方法
本店移転の登記の費用を抑える方法は、次の3つです。
1つ目は、移転先の候補が複数ある場合に、管轄の違いも比べることです。登録免許税は、管轄の中なら3万円、管轄の外なら6万円で、差は3万円です。東京23区では、渋谷区と目黒区、北区と荒川区、墨田区と江東区、足立区と葛飾区、千代田区・中央区・文京区が、それぞれ同じ登記所の管轄です。ただし、千代田区から中央区への移転のように管轄の中でも、定款の本店の所在地を区までにしている会社は、区が変わるため定款の変更が必要です。
2つ目は、自社で申請することです。定款を変えない移転なら、記載例をもとに申請書と議事録を作成でき、司法書士の報酬がかかりません。
3つ目は、同時にする登記をまとめることです。登録免許税は区分ごとにかかりますが、代表取締役の住所の変更や目的の変更を別々に申請すると、そのたびに議事録や申請書を作成することになり、依頼する場合の報酬もかかります。
ただし、事務所を借りて移転する場合は、登記の費用よりも、事務所を借りるときの敷金のほうがはるかに大きくなります。その比べ方は、後の「事務所を移るときにかかるお金の総額」で説明します。