税金の扱い
受け取る側(借主)
個人(個人事業主)が事務所などを明け渡して立ち退き料を受け取った場合、国税庁は、次のように分けて扱うとしています(タックスアンサー No.3155)。
| 立ち退き料の中身 | 所得の区分 |
|---|
| 借家権の消滅の対価にあたる部分 | 譲渡所得(総合課税) |
| 休業などによる収入の減少や必要経費を補う部分 | 事業所得など |
| 上のどちらにもあたらない部分 | 一時所得 |
法人が受け取った立ち退き料については、国税庁に専用の説明は見当たりませんが、法人税法は、資産の譲渡や役務の提供などの取引による収益の額を益金の額に算入すると定めています(第22条第2項)。受け取った立ち退き料は、原則として受け取った事業年度の収益として扱うことになると考えられ、具体的な処理は顧問の税理士に確認します。
消費税については、賃借人が契約の解除に伴い賃貸人から受け取る立ち退き料は、「賃貸借の権利が消滅することに対する補償、営業上の損失又は移転等に要する実費補償などに伴い授受されるもの」であり、資産の譲渡等の対価に該当しないとされています(消費税法基本通達5-2-7)。ただし、賃借人の地位を貸主以外の第三者に譲り渡して受け取るお金は、賃借権の譲渡の対価として課税の対象になります(同通達の注)。
払う側(貸主)
個人の貸主が払う立ち退き料は、次のように扱われます(タックスアンサー No.1382)。
- 賃貸している建物や敷地を譲渡するために払う立ち退き料は、譲渡所得の計算で譲渡に要した費用になる
- それ以外で、不動産所得のもとになっていた建物の賃借人を立ち退かせるために払う立ち退き料は、不動産所得の必要経費になる(所得税基本通達37-23)
- 土地や建物を取得するときに、その使用者に払う立ち退き料は、取得費・取得価額になる
法人が土地や建物の取得に際して、その使用者に払う立ち退き料は、取得価額に算入します(法人税基本通達7-3-5)。取得に伴わない立ち退き料の扱いは、状況によって変わるため、顧問の税理士に確認します。
敷金と立ち退き
立ち退きで明け渡す場合も、敷金は、明け渡したあとに未払いの賃料などを差し引いた残りが返されます(民法第622条の2)。立ち退きの合意では、原状回復の免除や償却の扱いを決めておかないと、立ち退き料を受け取っても、敷金の精算で差し引かれることがあります。合意書に、敷金を全額返すのか、何を差し引くのかを書いておきます。
移転先では、今の物件の敷金が返ってくる前に、新しい敷金を預けることになります。当社の「敷金半額くん」は、新しく借りるオフィスや店舗の敷金を、半額から最大0円まで減らすサービスです。減らした分の敷金の代わりに、当社が貸主に保証を提供します。立ち退きで移転先を急いで決めなければならないときも、預ける敷金を抑えれば、移転の前後の資金の負担を軽くできます。利用には当社の審査と貸主の承諾が必要で、当社への保証料がかかります。
貸主の側で気をつけること
建替えなどで立ち退きを求める貸主の側では、次の点が交渉の行方を左右します。
- 計画の具体性:建替えの設計や工程、資金の計画がどこまで具体的か
- 通知の時期:期間満了の1年前から6か月前までに通知しているか
- 早めの相談:借主の移転先探しと工事の時間を見込んで、余裕をもって申し入れる
- 今後の契約:建替えの予定があるビルでは、新しく貸す区画を定期借家契約や、取壊し予定の建物の賃貸借(借地借家法第39条)にしておくと、将来の立ち退きの交渉を避けやすい
よくある質問
立ち退き料は必ずもらえますか?
法律で支払いが義務づけられているものではありません。普通借家で貸主が更新を拒むには正当の事由が必要で、立ち退き料の申出はその判断で考慮される事情のひとつです。金額や有無は、交渉や裁判所の判断で決まります。
立ち退き料の相場はありますか?
決まった相場はありません。移転にかかる費用や営業上の損失を積み上げ、貸主の事情と借主の事情を比べて決まります。内訳ごとに根拠を示して交渉することが大切です。
定期借家契約でも立ち退き料はもらえますか?
定期借家契約は期間の満了で終わるため、原則として立ち退き料は問題になりません。期間の途中で貸主の都合で明け渡すことになった場合は、合意の条件として話し合うことになります。
立ち退き料に消費税はかかりますか?
借主が契約の解除に伴い貸主から受け取る立ち退き料は、資産の譲渡等の対価にあたらないとされています(消費税法基本通達5-2-7)。
敷金は全額返ってきますか?
合意の内容によります。原状回復の免除や償却の扱いを合意書で決めておかないと、敷金の精算で差し引かれることがあります。
まとめ
- 立ち退き料は、普通借家で貸主が更新を拒んだり解約を申し入れたりするときの、正当の事由を補う財産上の給付。法律で額は決まっていない
- 貸主は、期間満了の1年前から6か月前までに通知し、正当の事由が必要。定期借家契約では原則として問題にならない
- 内訳は、移転先の契約費用、賃料の差額、引っ越し、内装工事、営業の休止・損失、原状回復など。公共用地の補償の基準が参考になる
- 合意書では、明渡し日、額と支払時期、原状回復、敷金の返還を決める
- 個人が受け取る立ち退き料は譲渡所得・事業所得・一時所得に分かれ、消費税の対象外。移転先では、預ける敷金を減らす方法もある
出典:借地借家法第26条・第27条・第28条・第38条・第39条、民法第622条の2、法人税法第22条、国税庁「No.3155 借家人が受け取る立退料」「No.1382 賃貸住宅の立退料」、所得税基本通達33-6・34-1・37-23、法人税基本通達7-3-5、消費税法基本通達5-2-7、国土交通省「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」。