敷金・保証金

賃貸ラボの敷金と初期費用|敷金・保証金の月数、入居工事と原状回復、研究資金を手元に残す方法

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賃貸ラボの敷金と初期費用|敷金・保証金の月数、入居工事と原状回復、研究資金を手元に残す方法

研究開発型のスタートアップが専有の賃貸ラボに移るとき、資金計画を大きく左右するのは月々の賃料よりも、入居と退去のときにまとまって出ていくお金です。敷金・保証金は施設によって賃料の0〜12か月分まで幅があり、これに実験設備の入居工事費が加わります。退去するときには、設備の撤去に加えて、汚染が残っていないことを確かめる費用もかかります。

この記事では、賃貸ラボを借りるときに出ていくお金の全体像を整理したうえで、敷金・保証金の月数、ラボ特有の入居工事と原状回復、定期借家の注意点、入居審査で見られることを順に説明します。あわせて、研究に使える手元資金を残す方法を、事業用の敷金を保証する保証会社の立場からまとめます。

賃貸ラボを借りるときに出ていくお金

入るとき・毎月・出るときに分けて考える

賃貸ラボは、実験ができる設備を備えた、借りられる研究スペースです。日本政策投資銀行(DBJ)は2024年2月のレポートで「オフィス機能とラボ機能(実験施設)が一体になった賃貸施設」と整理しています。オフィスと違うのは、排気・給排水・電気・床の強さを実験に合わせて整える必要があることで、その分、お金の出方もオフィスとは変わります。

タイミング費目中身
入るとき敷金・保証金賃料の数か月分を預ける。施設によって0〜12か月分まで幅がある
入るとき入居工事費ドラフトチャンバー、実験流しの配管、電気の増設、間仕切りなど
入るとき機器と引越しフリーザーや安全キャビネットの購入または移設。試料を止めない引越しの段取り
毎月賃料・共益費区画の賃料と共用部分の管理費
毎月実費・安全管理電気(空調を含む)・水道・ガス、清掃、廃液の回収委託、作業環境測定など
出るとき原状回復費設備の撤去、配管の閉止、除染、床の張り替えなど

三井不動産の賃貸ラボ「三井リンクラボ」の各施設の公式ページでも、賃料のほかに入居工事費用・敷金・電気利用料(空調利用を含む)・水道利用料・清掃費用などが別にかかると書かれています。

賃貸ラボで出ていくお金。入るときは敷金・保証金(0〜12か月分)、入居工事費、機器と引越し。毎月は賃料・共益費と実費・安全管理。出るときは原状回復と除染

敷金・保証金の月数

0〜12か月分まで幅がある

敷金・保証金の月数は、運営する主体によって大きく違います。各施設の公式ページで公表されている例は次のとおりです。

条件施設の例
なし・不要東京都立産業技術研究センター 製品開発支援ラボ、かわさき新産業創造センター、福岡バイオインキュベーションセンター、Beyond BioLAB TOKYO など
賃料の2か月分札幌市エレクトロニクスセンター 技術開発室B(入居補償金)
税抜賃料の3か月分中小企業基盤整備機構(中小機構)の施設、さがみはら産業創造センター、クリエイティブラボ神戸
賃料の6か月分機械振興協会 技術研究所 ものづくり支援スペース
賃料の12か月分相当かながわサイエンスパーク KSP Biotech Lab
物件ごとに決定三井リンクラボ各棟など、民間の物件

賃貸ラボの敷金・保証金の月数の例。東京都立産業技術研究センターは0か月、札幌市エレクトロニクスセンターは2か月、中小機構の施設は3か月、機械振興協会は6か月、KSP Biotech Labは12か月相当

注意したいのは、敷金の条件を公表していない施設が多いことです。全国の賃貸ラボを集めた検索サイト「賃貸Labo検索.com」の掲載196施設(2026年9月集計)のうち、敷金・保証金について公式に記載があるのは51施設(26%)でした。民間のデベロッパーの物件は、賃料そのものもほとんどが非公開です。入居企業ごとに必要な設備と工事の範囲が違うことや、借り手の資金調達の状況を見て条件を個別に決めていることが理由です。

敷金は退去して明け渡すまで戻らない

敷金は、賃料などの支払いを担保するために預けるお金です。民法第622条の2は、敷金を「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的」で交付する金銭と定め、賃貸借が終わって物件を返したときに、未払いの額を差し引いて返すとしています。

研究開発型のスタートアップにとって、敷金は研究に使えない現金が契約期間中ずっと寝ることを意味します。たとえば月額200万円の区画で敷金が6か月分なら1,200万円です。売上が立つ前の会社では、この金額が研究員の採用や試薬・機器の購入に回せるかどうかは大きな違いになります。

ラボ特有の入居工事と原状回復

入居工事はB工事の範囲が広がりやすい

オフィスの入居工事は、費用の負担と業者の選び方によって、A工事・B工事・C工事に分けて考えます。

区分費用を払う人業者を決める人主な対象
A工事貸主貸主建物の本体・共用部・建物全体の設備
B工事借主貸主(指定業者)専有部の中でも建物全体に影響する工事(空調・防災設備・電気の幹線など)
C工事借主借主専有部の内装・照明・家具など

ラボでは、ドラフトチャンバーの排気ダクトを屋上までつなぐ工事、実験排水の配管、非常用電源への接続など、建物全体に関わる工事が多くなります。そのため、借主が費用を払うのに業者を選べないB工事の範囲が広がりやすく、見積もりが妥当かどうかを確かめにくい点が悩みどころです。区分の中身はビルごとに違い、工事区分表で決まるので、申し込みの前に取り寄せて確かめておきましょう。

契約の期間が工事費を回収できる長さか

賃貸ラボでは、期間が来ると契約が終わり、更新がない「定期建物賃貸借(定期借家)」が多く使われています。三井リンクラボ各棟や中小機構の施設も定期借家です。続けて使うには、貸主と合意して改めて契約を結ぶ必要があります。

入居工事に大きなお金をかけるラボでは、契約の期間が工事費を回収できる長さかどうかが重要です。期間の途中で研究員が増えたときに隣の区画へ広げられるか、再契約の考え方がどうなっているかも、契約の前に確かめておきたい点です。

原状回復は「汚染がないこと」の確認まで

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は住宅を前提にしたもので、事務所やラボなどの事業用の物件にはそのまま当てはまりません。事業用では、契約書の原状回復の条項と工事区分がすべての基準になります。

ラボに特有なのは、薬品や微生物の汚染を残さないことです。放射性同位元素(RI)を使っていればRI法による汚染の除去、有害物質を使う特定施設をやめる場合は土壌汚染対策法による調査が、法律上の義務としてかかります。消毒や清掃の記録、廃棄物の処理の証明など、汚染がないことをどう示すかを入居のときに貸主と決めておくと、退去の手続きがスムーズになります。

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入居審査で見られること

赤字のスタートアップでも見られるのは支払いの見通し

賃貸ラボの借り手の中心は、大学の研究成果をもとにした大学発のスタートアップです。経済産業省の調査(2026年6月12日公表の速報)では、大学発ベンチャーは2025年10月末時点で6,220社と過去最高で、技術分野ではバイオ・ヘルスケアが最も多くなっています。

こうした会社の多くはまだ売上が立っていないため、民間の賃貸ラボの審査では、決算書に加えて資金調達の状況や事業計画が見られます。三井リンクラボでは入居の申込書類の提出と審査があり、一般社団法人LINK-Jの特別会員への入会も求められます。

公的なインキュベーション施設は、審査に加えて入居できる期間の上限があります。中小機構の施設にはインキュベーションマネージャーが常駐して経営や資金調達を支援しており、DBJは中小機構の施設の賃料を「民間水準の半額程度」としています。

研究に使える手元資金を残す方法

公的施設・補助・居抜きを組み合わせる

手元資金を残す方法として、まず考えたいのが公的施設と自治体の補助です。神戸市は、神戸医療産業都市のレンタルオフィス・ラボについて、3年間・年200万円を限度に賃料を補助しています。

前の入居者の設備を残したまま借りる「居抜き」にできれば、入居工事の費用を大きく減らせます。ただし、ドラフトチャンバーが排気型か循環型か、実験流しの位置、BSL(バイオセーフティレベル)の区分など、残っている設備が自社の研究に合うかを確かめる必要があり、貸主の同意も前提になります。

敷金を保証で減らす

敷金の負担は、保証会社の保証を使って減らすこともできます。当社の敷金半額くんは、減らした敷金の代わりに当社が貸主へ保証を提供することで、入居時の敷金を半額から最大で全額まで圧縮するサービスです。対象はオフィスや店舗などの事業用の物件で、研究施設として借りる賃貸ラボでの利用は、物件ごとにご相談ください。

利用にあたっては当社の審査があり、貸主の承諾も必要です。貸主への説明と承諾の取得は当社が行います。審査には決算書3期分、登記事項証明書、代表者の本人確認書類の3点をお願いしており、設立3期未満の会社や赤字の会社でも通過した実績があります。貸主の承諾が得られない物件では利用できないため、物件に申し込む前のご相談をおすすめしています。

すでに賃貸ラボに入居していて、まとまった敷金を預けている場合は、敷金返還くんで、預けている敷金の半額から最大で全額を、入居したまま現金に戻せます。こちらも貸主の承諾が必要です。

よくある質問

賃貸ラボの敷金は何か月分が一般的ですか?

施設によって0〜12か月分まで幅があります。中小機構の施設は税抜賃料の3か月分、かながわサイエンスパークのKSP Biotech Labは12か月分相当で、敷金が要らない公的施設もあります。民間の物件は、資金調達の状況や事業計画を見て個別に決まることが多く、公表されていない場合は問い合わせて確かめる必要があります。

ラボの原状回復はオフィスと何が違いますか?

内装や設備の撤去に加えて、薬品や微生物の汚染が残っていないことを示す必要がある点が違います。放射性同位元素を使っていた場合や、有害物質を使う特定施設をやめる場合は、法律上の手続きもかかります。消毒や清掃の記録、廃棄物の処理の証明をどう出すかを、入居のときに決めておくのが実務上の要点です。

設立間もない会社や赤字の会社でも敷金半額くんは使えますか?

当社の審査を通過すれば利用できます。設立3期未満の会社や赤字の会社でも通過した実績があります。あわせて貸主の承諾が必要で、承諾が得られない物件では利用できません。

まとめ

賃貸ラボを借りるときは、月々の賃料だけでなく、敷金・保証金、入居工事費、退去時の原状回復と除染の費用まで含めた総額で考えることが大切です。敷金は施設によって0〜12か月分まで幅があり、民間の物件ほど条件が公表されていません。

研究に使える資金を残すには、公的施設や自治体の補助、居抜きを組み合わせ、契約の期間が工事費を回収できる長さかを確かめたうえで、申し込みの前に敷金の負担を減らす方法を検討しておきましょう。

出典:日本政策投資銀行「賃貸ラボの現状と展望」(2024年2月)、経済産業省「令和7年度大学発ベンチャー実態等調査」(速報、2026年6月12日)、民法第622条の2、国土交通省「定期借家制度をご存じですか」、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」、各施設の公式ページ、賃貸Labo検索.com掲載データ(2026年9月集計)。

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