退去するときに返ってくるお金
敷金は原状回復の費用を除いて全額返る
敷金は、退去するときに居室の原状回復の費用を除いて全額返すのが国の指針の考え方です。原状回復の費用をどちらが負担するかについて、指針は国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」を参考にするとしています。
このガイドラインは、普通に暮らしていても生じる傷みや、年月がたつことによる劣化は、原則として貸す側の負担とする考え方をとっています。入居者の不注意で壊したり汚したりした部分は、入居者の負担になります。入居するときに居室の状態を写真に残し、退去のときに何が差し引かれたのか、明細を確かめることが大切です。
前払金は入居から3か月以内なら利用した分だけ差し引いて返る
前払金には、いわゆる「90日ルール」があります。老人福祉法施行規則第21条は、入居から3か月が経過するまでに契約を解除した場合や入居者が亡くなった場合には、家賃などの月額を30で割った額に、入居の日から契約が終わった日までの日数を掛けた額だけを差し引き、残りを返すと定めています。
3か月を過ぎた後でも、前払金の算定の基礎として想定した居住期間が終わるまでに契約が終わった場合は、残りの期間の分を日割りで計算した額が返ってきます。どのくらいの期間を想定しているかは施設ごとに違うので、契約の前に重要事項説明書で確かめておきましょう。
サービス付き高齢者向け住宅の場合
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)にも、受け取ってよいお金の決まりがあります。高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)第7条は、サ高住の登録の基準として、敷金と家賃等、家賃等の前払金のほかに、権利金その他の金銭を受け取らない契約であることを求めています。
前払金を受け取る場合は、算定の基礎と返す額の計算方法を契約で示すこと、一定の期間内の解約や死亡のときに返すこと、保全措置を講じることが必要です。また、新しく建てるサ高住では、工事が終わる前に敷金や前払金を受け取らないことも登録の基準になっています。
契約する前に確かめたいこと
老人ホームやサ高住の契約の前には、重要事項説明書と契約書で次の点を確かめておきましょう。
- 敷金は家賃の何か月分か。退去するときに差し引かれるのはどんな費用か
- 原状回復で入居者が負担する範囲。入居時の居室の状態をどう記録するか
- 前払金がある場合、算定の基礎として想定している居住期間と、返す額の計算方法
- 入居から3か月以内に契約が終わったときの返し方
- 前払金の保全措置の方法
- 月払いと前払いの両方がある場合、住む年数によって総額がどう変わるか
日商保のサービスは老人ホームには使えません
当社は、オフィスや店舗などの事業用の物件の敷金を保証する保証会社です。敷金半額くんや敷金返還くんは事業用の物件が対象で、老人ホームやサ高住、賃貸住宅などの住まいには利用できません。老人ホームの敷金や前払金について迷ったときは、施設の運営会社や、お住まいの自治体の有料老人ホームの担当窓口にご相談ください。
よくある質問
老人ホームの敷金は必ず返ってきますか?
国の指針では、退去するときに居室の原状回復の費用を除いて全額返すこととされています。差し引かれるのは、入居者の不注意による傷や汚れを直す費用などで、普通に暮らしていて生じる傷みや年月による劣化は、原則として差し引かれません。未払いの費用があれば、その分も差し引かれます。
入居一時金と敷金は両方払うのですか?
施設やプランによります。東京都の有料老人ホームの料金表を集計すると、敷金をとるのは主に月払いのプランで、前払金のあるプランで敷金もとる施設はほとんどありませんでした。
敷金が家賃の6か月分を超えることはありますか?
国の指針は、敷金の額を家賃の6か月分を超えないこととしています。東京都の有料老人ホームを集計した結果でも、月払いで敷金をとる80施設のうち79施設は6か月分以内でした。契約の前に、敷金の額が家賃の何か月分にあたるかを確かめておくと安心です。
まとめ
老人ホームの敷金は、家賃の滞納や原状回復に備えて預けるお金で、退去するときには原状回復の費用を除いて返ってきます。国の指針では家賃の6か月分が上限で、東京都の有料老人ホームでは月払いのプランがある施設の約2割が敷金をとり、中央値は6か月分でした。
入居一時金(前払金)は家賃などの前払いで、入居から3か月以内なら利用した日数分だけを差し引いて返ってきます。どちらも施設ごとに条件が違うため、重要事項説明書で金額と返し方を確かめてから契約することが大切です。
出典:老人福祉法第29条、老人福祉法施行規則第21条、高齢者の居住の安定確保に関する法律第7条、厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」(最終改正 令和6年12月6日)、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」、東京都が公開している有料老人ホームの重要事項説明書の料金表(玉苑の掲載施設、2026年9月集計)。