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新しいビルの供給が増えるとき、既存のビルがやること|二次空室、新築と比べられる条件、竣工の前の備え

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新しいビルの供給が増えるとき、既存のビルがやること|二次空室、新築と比べられる条件、竣工の前の備え

近くに新しいビルが建つと、既存のビルのオーナーは、今のテナントが新しいビルに移ること、募集中の区画が新しいビルや周りのビルに出る二次空室と比べられることの2つに備える必要があります。新しいビルに移った会社が、もとのビルに残す空室は「二次空室」と呼ばれ、竣工の時期から少し遅れて、既存のビルに出てきます。

都心5区では、2026年1月から9月までに竣工した新築ビルの貸付面積は16万1,569坪で、10月1日時点で募集中の面積の3割(13万6,846坪)は、まだ建築中のビルの面積です(三幸エステート)。東京で募集中のオフィスの空室を見ると、2026年以降に竣工する(した)ビルの区画の坪単価の中央値は3万6,200円で、1982〜1999年のビル(1万8,000円)の約2倍です。新しいビルは都心に多いため、都心5区の中だけで比べても、3万7,000円と2万2,000円で約1.7倍の差があります。

※東京の空室の区画数・坪単価・敷金の月数・内装付きの割合・入居の時期・建築年・区画の広さは、日商保が運営するオフィス検索サイト「Growth Office」に掲載している東京の空室(2026年10月24日時点。募集情報の更新日が30日以内の区画で、シェアオフィスと店舗の区画を除く)を集計した値です。坪単価と敷金の月数は区画ごとの中央値で、坪単価は、そのうち賃料を表示している区画だけで集計しており、共益費を含む区画と含まない区画があります。内装付きは、募集情報に内装付き(セットアップ)と書かれている区画の割合です。

この記事では、新しいビルの供給と入居の動き、二次空室の出方、新しいビルと既存のビルの募集条件の違い、竣工の前に確かめておくこと、既存のビルが竣工の前後にやることを、ビルオーナーの立場から整理します。

新しいビルの供給と、入居の動き

三幸エステートの「オフィスマーケット調査月報 東京都心5区」によると、都心5区の新規供給(その年に竣工した新築ビルの貸付面積)は、2024年が12万2,589坪、2025年が16万9,884坪で、2026年は1月から9月までで16万1,569坪でした。

新しいビルの供給と、入居済みの面積の増え方(都心5区)。2024年は新規供給122,589坪・吸収需要279,864坪、2025年は新規供給169,884坪・吸収需要414,789坪、2026年1〜9月は新規供給161,569坪・吸収需要214,999坪。新規供給=その年に竣工した新築ビルの貸付面積の合計。吸収需要(ネット・アブソープション)=入居済みの面積の増減。三幸エステート「オフィスマーケット調査月報 東京都心5区」(2026年10月)から作成

入居済みの面積の増減を表すネット・アブソープション(吸収需要)は、どの年も新規供給を上回っています。新しいビルの面積以上に入居が増えたため、都心5区の空室率は、2024年1月の5.10%から、2026年10月には1.48%まで下がりました。

ただし、2026年1月から9月までの吸収需要は21万4,999坪で、前年の同じ期間(36万8,436坪)より15万3,437坪少なくなっています。新規供給は前年の同じ期間とほぼ同じ水準のため、供給に対する入居の増え方は、前年より小さくなっています。

既存のビルの空室は、いまは減っている側です。竣工から1年以上たったビルの募集中の面積は、2024年1月の65万8,646坪から、2026年1月に34万4,128坪、10月には28万8,288坪まで減りました。

建築中のビルの募集は増えている

10月1日時点で都心5区で募集中の面積44万9,165坪のうち、建築中のビルの面積は13万6,846坪(38棟)で、全体の30.5%を占めます。前月より21.6%増えました。

そのうち、竣工が1年以上先のビルの面積は、前月の9万2,939坪から11万8,504坪に増えています。新しいビルは、竣工のかなり前から募集を始めます。既存のビルの区画は、竣工の前から、これらの区画と比べられることがあります。

9月に竣工した大規模ビルは、竣工の時点でほぼ成約していた

2026年9月に竣工した都心5区の大規模ビル2棟(貸付面積4万4,017坪)は、竣工の時点で未成約の面積が1,791坪で、竣工時点の空室率は4.07%でした。竣工の前の募集で、面積の多くが成約していたことになります。

新しいビルに移る会社は、竣工の1年以上前から移転を決めていることがあります。既存のビルにとっては、竣工の前後に、移っていく会社の退去の予告が届くことがあります。

二次空室:新しいビルに移った会社の跡

二次空室は、新しいビルに移った会社が、もとのビルに残す空室です。新しいビルの竣工から、もとのビルの退去までには、内装の工事と引っ越しの期間があり、退去の予告もその前に届きます。そのため二次空室は、竣工の時期から少し遅れて、既存のビルに出てきます。流れの例は次のとおりです(時期はビルと会社によって違います)。

時期新しいビル既存のビル
竣工の1年以上前募集を始め、成約が進む移転を考えるテナントが、新しいビルを内見する
竣工の前成約した会社が内装の計画を進める移るテナントと、退去の時期の話が始まる
竣工の前後竣工し、内装の工事が始まる退去の予告が届き、次の募集を始める
竣工の数か月後内装の工事を終えた会社から入居する退去と原状回復のあと、区画が空室になる(二次空室)

退去の予告の期間は契約によって違い、オフィスでは6か月前の予告を定めることが多く見られます。予告が届いたら、退去を待たずに次の募集を始めることが、二次空室の期間を短くします。段取りは「テナントから解約予告が届いたら」で説明しています。

大きなテナントの移転ほど、影響は大きい

1社で1フロアや1棟を借りている大きなテナントが新しいビルに移ると、まとまった面積が一度に空きます。大きな区画は借りる会社の数が限られるため、区画を分けて貸すかどうかも含めて考えます。進め方は「大口テナントが退去するとき」で説明しています。

新しいビルと既存のビルの、募集条件の違い

東京で募集中のオフィスの空室を、建物の建築年ごとに比べました。新しいビルほど坪単価は高く、2020年以降のビルでは、内装付きの区画が3割を超えます。

建築年区画数坪単価(中央値)敷金(中央値)内装付きすぐ入居
1981年以前6051万7,200円(119)8か月分3.1%53.2%
1982〜1999年1,6971万8,000円(347)8か月分12.7%52.1%
2000〜2009年3202万3,900円(64)12か月分9.7%45.0%
2010〜2019年1952万円(29)12か月分8.2%32.8%
2020〜2025年3042万8,100円(67)8か月分31.9%54.6%
2026年以降(竣工予定を含む)2843万6,200円(62)8か月分32.7%32.4%

坪単価のかっこ内は、坪単価を集計した区画の数です。「すぐ入居」は、即入居か、入居の日付が10月までの区画の割合です。2010〜2019年は、坪単価を集計した区画が29と少ないため、坪単価の中央値は参考の値です。2026年以降の坪単価は、17棟(都心5区の中は14棟)の区画から集計しています。

新しいビルは、都心3区に集まっている

2026年以降に竣工する(した)ビルの区画284区画(53棟)のうち、中央区が74区画、港区が72区画、千代田区が61区画で、この3区で7割を占めます。渋谷区が28区画、新宿区が19区画、品川区が16区画で続きます。

自分のビルの近くで新しいビルの募集が始まっていないかは、仲介会社への聞き取りや、建築中のビルの工事の看板などで確かめられます。新しいビルの竣工の時期と募集する面積を早めに知っておくと、今のテナントの更新の時期と照らし合わせて、備えを始められます。

既存のビルが比べられる点

新しいビルと既存のビルは、坪単価が大きく違うため、新しいビルと直接比べられるのは、予算の合う一部の会社です。多くの既存のビルにとっては、新しいビルに移った会社が周りの既存のビルに残した二次空室が、同じ予算の会社を取り合う相手になります。新しいビルに移った会社の跡に別の会社が移り、その会社の跡がまた空く、という形で、移転は順につながっていきます。

既存のビルを選ぶ会社は、賃料のほかに、入居までの初期費用、内装の工事の要否、入居できる時期、建物の耐震と設備の状態を比べます。既存のビルは、坪単価の差を前提に、これらの条件で選ばれる区画にしておくことが大切です。

区画の広さにも違いがあります。2026年以降に竣工する(した)ビルの区画は、50坪未満が32.0%で、広さの中央値は72.2坪でした。1999年以前に建てられたビルでは、50坪未満が52.8%、中央値は45.8坪です。50坪未満の小さめの区画を探す会社にとっては、既存のビルのほうが候補が多いことになります。

一方、敷金の月数の中央値は、2020年以降のビルも1999年以前のビルも8か月分で、大きな差はありません。初期費用で差をつけるには、敷金の月数を同じ広さの周りの区画より軽くするか、敷金の一部を保証に置き換える方法を考えます。

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新しいビルの竣工の前に、確かめておくこと

近くで新しいビルの計画や工事が始まったら、竣工の1年以上前から、次の点を確かめておきます。備えを始める時期を、竣工より前に置くことができます。

確かめること見るもの
新しいビルの竣工の時期と、募集する面積仲介会社への聞き取り、工事の看板、募集の資料
新しいビルの賃料と区画の広さの水準募集の資料、周りの区画の募集条件
今のテナントの契約の満了と更新の時期賃貸借契約書、テナントの一覧(レントロール)
退去の予告の期間賃貸借契約書の解約の定め
今のテナントの増員や減員の予定更新の前の面談
自分のビルの区画と、周りの区画の条件の差坪単価・敷金の月数・内装・入居の時期

周りの区画の条件と比べるときの基準になる数字は、「東京のオフィスの空室【2026年10月】」で、区・広さ・築年ごとに示しています。

契約の満了が竣工に重なるテナントを先に見る

新しいビルの竣工の時期と、今のテナントの契約の満了や更新の時期が重なる場合は、移転の候補になりやすいと考えて、先に話を聞きます。予告は、退去の日から予告の期間だけ前に届きます。移る会社は竣工のあとに内装の工事をするため、予告は竣工の前後に届くことがあります。

既存のビルが、竣工の前後にやること

新しいビルの竣工が近いときは、今のテナントを引き留めることと、空いた区画を早く埋めることの両方を進めます。次の順に、竣工より前から始めます。

今のテナントと、更新の前に話す

新しいビルへの移転は、今の契約の更新の時期に合わせて決められることがあります。更新の時期が近いテナントには、更新の前に、増床や減床の予定、今の区画への不満を聞きます。

不満が設備や共用部にあるなら、改修の計画を伝えることで、移転を考え直してもらえることがあります。人数が増える予定のテナントには、同じビルの空いている区画への増床を提案できます。

更新の条件を見直す場合は、賃料だけでなく、内装の更新や共用部の改修、増床のときの条件など、移転の手間と費用と比べられる提案を用意します。移転には、新しいビルの内装の工事や引っ越し、今の区画の原状回復の費用がかかるため、残ることの利点を具体的に示します。

退去の予告を受けたら、すぐに募集を始める

移るテナントから退去の予告が届いたら、退去を待たずに、入居できる日を決めて募集を始めます。入居中の区画を、日時を決めて見てもらう居ながら内見を取り決めておくと、退去の前から内見を進められます。

初期費用と入居までの手間で選ばれる区画にする

新しいビルと比べられたとき、既存のビルが差をつけやすいのは、入居までの初期費用と手間です。

  • 敷金:同じ広さの多くの区画より重くないか。敷金の一部を保証に置き換える方法もある
  • 内装:内装付き(セットアップ)にすれば、入居の工事の期間と費用を減らせる
  • 入居の時期:すぐ入居できる区画は、移転を急ぐ会社の候補になる
  • 区画の広さ:大きな区画は、分けて貸すことで借りる会社の数を広げられる

空室対策の打ち手の比べ方は「オフィスビルの空室対策」で説明しています。

建物の状態を説明できるようにする

1981年以前に建てられたビルは、旧耐震基準で建てられている可能性があります。耐震診断の結果や補強の状況、設備の更新の履歴を、書面で説明できるようにしておきます(「旧耐震基準と新耐震基準の違い」)。

賃料は、下げる前に比べる

新しいビルとの競争を賃料の値下げで受けると、下げた賃料が契約の期間中続き、ほかの区画の賃料の見直しにも響くことがあります。賃料を下げる前に、敷金や内装、入居の時期で差をつけられないかを比べます。賃料と敷金がビルの価格に与える影響は「キャップレート(還元利回り)とは」で説明しています。

保証会社の日商保の「リーシングマネジメント」では、オフィスビルを対象に、周りの新しいビルと比べた賃料と募集条件の見直しから、仲介会社への展開、内覧会、入居審査と敷金の保証まで、ビルオーナーの立場でお引き受けしています。

入居時の敷金の一部を、審査のうえで日商保の保証に置き換える「敷金半額くん(オーナー様向け)」を組み合わせると、賃料を下げずに初期費用を抑えた条件で募集できます。

よくある質問

新しいビルの供給と、既存のビルの募集について、ビルオーナーからよくいただく質問にお答えします。

二次空室とは何ですか?

新しいビルに移った会社が、もとのビルに残す空室です。新しいビルの竣工から少し遅れて、既存のビルに出てきます。

都心5区の新しいビルの供給は、どれくらいありますか?

三幸エステートの月報によると、都心5区の新規供給は2024年が12万2,589坪、2025年が16万9,884坪、2026年は1月から9月までで16万1,569坪でした。2026年10月1日時点で、募集中の面積の30.5%が建築中のビルです。

二次空室は、いつごろ出てきますか?

新しいビルの竣工から少し遅れて出てきます。移る会社は新しいビルの内装の工事と引っ越しを終えてから、もとの区画を明け渡すためです。退去の予告は、予告の期間(オフィスでは6か月が多い)だけ前に届くため、予告を受けた時点で次の募集を始められます。

新しいビルが増えると、空室率は上がりますか?

供給より入居の増え方が大きければ、空室率は下がります。都心5区では、2024年から2026年9月まで入居済みの面積の増加が新規供給を上回り、空室率は5.10%(2024年1月)から1.48%(2026年10月)に下がりました。ただし、2026年の入居の増え方は前年より小さくなっています。

新しいビルと既存のビルの賃料は、どれくらい違いますか?

2026年10月24日時点で東京で募集中のオフィスを見ると、坪単価の中央値は、2026年以降に竣工する(した)ビルが3万6,200円、2020〜2025年のビルが2万8,100円、1982〜1999年のビルが1万8,000円でした。

新しいビルの竣工の前に、何を確かめればよいですか?

新しいビルの竣工の時期と募集する面積、賃料と区画の広さの水準、今のテナントの契約の満了と更新の時期、退去の予告の期間を確かめます。竣工の時期と更新の時期が重なるテナントには、先に話を聞きます。

既存のビルは、新しいビルとどう競えばよいですか?

坪単価の差を前提に、初期費用、内装、入居の時期、区画の広さ、建物の状態で選ばれる区画にします。今のテナントとは更新の前に話し、退去の予告を受けたらすぐに募集を始めます。

まとめ

  • 新しいビルに移った会社がもとのビルに残す空室を、二次空室という
  • 二次空室は、新しいビルの竣工から少し遅れて既存のビルに出てくる
  • 都心5区の新規供給は、2025年が16万9,884坪、2026年1〜9月が16万1,569坪
  • 入居済みの面積の増加は供給を上回ってきたが、2026年は前年より小さい
  • 都心5区で募集中の面積の3割は、建築中のビル
  • 新しいビルは竣工の前から募集し、9月に竣工した大規模ビル2棟は竣工の時点で96%が成約していた
  • 2026年以降に竣工する(した)ビルの坪単価の中央値は3万6,200円で、7割が都心3区
  • 多くの既存のビルが取り合う相手は、周りのビルに出る二次空室
  • 2026年以降に竣工する(した)ビルの区画は広めで、50坪未満の区画は既存のビルのほうが多い
  • 竣工の1年以上前から、竣工の時期と今のテナントの更新の時期を照らし合わせる
  • 既存のビルは、初期費用・内装・入居の時期・区画の広さ・建物の状態で選ばれる区画にする
  • 今のテナントとは更新の前に話し、退去の予告を受けたらすぐに募集を始める
  • 保証会社の日商保は、周りの新しいビルと比べた募集条件の見直しから入居審査と敷金の保証まで「リーシングマネジメント」でお引き受けしている

出典:三幸エステート「オフィスマーケット調査月報 東京都心5区」(2024年1月〜2026年10月の空室率・募集中在庫面積の推移、2024年〜2026年9月の新規供給面積・ネット・アブソープション、2026年9月竣工の大規模ビル)。

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