不動産会計

新リース会計基準の変更点は?2027年適用の改正点と実務対応を徹底解説

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新リース会計基準の変更点は?2027年適用の改正点と実務対応を徹底解説

2027年4月から、新しいリース会計基準が強制適用されます。オフィスや店舗を借りている企業にとっては、これまで家賃として費用処理していた賃貸借契約が、貸借対照表に資産と負債の両方で載るようになる改正です。

この記事では、自社が対象になるのか、何がどう変わるのか、オフィスの賃借と敷金はどう扱うのか、2027年4月までに何をすればよいのかを順に整理します。

結論

  • 借りている資産を使う権利(使用権資産)と、将来払うリース料(リース負債)を、貸借対照表に計上する。
  • 強制適用は2027年4月1日以後に開始する連結会計年度・事業年度の期首から。3月決算なら2028年3月期から。
  • 費用の総額は変わらないが、前半に寄る。総資産と負債が増え、自己資本比率とROAは下がる。
  • オフィスの賃借はほぼ全件が対象。敷金は「戻ってくる分」と「戻らない分」で扱いが分かれる。

自社は対象になるのか

対象は、会計監査人による監査を受けている企業です。具体的には、金融商品取引法の適用を受ける上場企業とその連結子会社、会社法上の大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)などが該当します。

会計監査を受けていない中小企業に、直ちに強制されるものではありません。ただし上場企業の子会社は、連結の都合で親会社と同じ対応が必要になります。将来の上場を考えている企業も、準備しておくに越したことはありません。

新リース会計基準の適用までの流れ

強制適用は2027年4月1日以後に開始する年度から、連結・個別ともに期首からです。3月決算の会社は2028年3月期、12月決算の会社は2028年12月期が最初の決算になります。前の年度は比較のために新旧どちらの数値も必要になるため、実質的な準備は2026年度から始まります。

何がどう変わるのか

借手の扱いが新旧でどう変わるか

これまでの基準では、リース取引はファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分かれ、オペレーティング・リースは支払った金額を費用に計上するだけで済んでいました。オフィスや店舗の賃貸借契約は、その代表例です。

新基準では、借手についてこの区分がなくなります。リースに当たる契約は、原則としてすべて使用権資産とリース負債を計上します。これを使用権モデルといいます。借りた資産そのものではなく、「一定期間その資産を使う権利」を資産として捉える考え方です。

損益計算書も変わります。これまで支払家賃として営業費用に入っていたものが、使用権資産の減価償却費と、リース負債にかかる支払利息に分かれます。

どの契約が「リース」に当たるのか

新基準では、契約の名前ではなく中身で判断します。契約が特定された資産の使用を支配する権利を、一定期間にわたり対価と交換に移転している場合、その契約はリースを含むと判定されます。判断のポイントは次の2つです。

  • 資産が特定されているか:契約で対象の資産が決まっているか。貸手が自由に別の資産に入れ替えられる場合は、特定されていないと判断されることがあります。
  • 使用を支配しているか:その資産から得られる経済的利益のほとんどすべてを享受でき、どのように使うかを指図できるか。

問題になるのが、契約書の名前からはリースとわからない「隠れリース」です。社内を洗い出すときは、次のような契約も対象に含めて確認します。

  • 自社専用のサーバーやラックを使うデータ保管サービス
  • 特定の車両を専属で使う運送委託
  • 工場や倉庫の一角を専有して使う保管契約
  • 建設現場の仮設事務所・資材置場
  • 駐車場、社宅、寮、サテライトオフィス

賃貸借契約書として管理されていない契約ほど、経理部門が把握しにくく、洗い出しの漏れが起きやすい部分です。

いくら計上するのか

先にリース負債を計算し、そこから使用権資産を出します。

  • リース負債=まだ支払っていないリース料を、利息相当額を差し引いて現在価値に割り引いた額
  • 使用権資産=リース負債+前払リース料+付随費用+資産除去債務に対応する除去費用−貸手から受け取ったインセンティブ

割引率は、リースの計算利子率が容易に算定できる場合はその利率、算定できない場合は借手の追加借入利子率を使います。

仕訳例:月額100万円・5年・割引率3%

年1回、各年度末に1,200万円を支払う契約として計算します。

  • リース負債=54,956,486円(1,200万円×5年分を現在価値に割り引いた額)
  • 使用権資産=同額(前払リース料や付随費用がない場合)
  • 減価償却費=54,956,486円÷5年=10,991,297円/年

リース開始時

借方金額貸方金額
使用権資産54,956,486リース負債54,956,486

1年目の支払時

借方金額貸方金額
支払利息1,648,695現預金12,000,000
リース負債10,351,305

1年目の決算

借方金額貸方金額
減価償却費10,991,297使用権資産10,991,297

費用は前の年ほど大きくなる

利息費用は残高が多い初期ほど大きくなります。この例では1年目の費用は12,639,992円で、これまでの支払家賃1,200万円より約64万円多くなります。5年目は11,340,812円と逆に少なくなり、5年間の合計は支払総額6,000万円と一致します。総額は変わらず、前半に寄るのが特徴です。

割引率の決め方

割引率は、次の順で決めます。

  1. リースの計算利子率:リース料総額と残存価額の現在価値が、原資産の時価と等しくなる利率。容易に算定できる場合に使います。
  2. 借手の追加借入利子率:同じ期間・同じ金額を、同じような担保条件で借り入れる場合の利率。

実務では、貸手の情報が手に入らないため、2を使う場面が多くなります。追加借入利子率は、契約ごとの期間や通貨に合わせて決める必要があり、全社一律の利率を使うと監査で説明を求められます。

支払額が変わる契約・契約を変更した場合

物価指数や市場金利に連動して賃料が変わる契約では、その変動が生じたときにリース負債を見直します。売上に連動する変動賃料のように、指数やレートに基づかないものは、リース負債には含めず、発生した期の費用として処理します。

契約期間を延ばす、借りる面積を増減するといった条件変更があった場合も、リース負債と使用権資産を計算し直します。借りる範囲が広がる場合と狭まる場合で処理が異なるため、契約変更の記録を残しておく必要があります。

原状回復義務との関係

賃貸借契約では、退去時の原状回復義務が定められているのが一般的です。この義務が資産除去債務として負債に計上される場合、対応する除去費用は使用権資産に加えます。原状回復にかかる見積額が大きい店舗や工場では、使用権資産がその分ふくらみます。

オフィス・店舗の賃借はどうなるか

オフィスや店舗の賃貸借は、期間が数年、金額も数千万円規模になるため、ほとんどが計上の対象になります。実務で判断が要る論点を挙げます。

敷金・保証金

敷金は戻ってくる分と戻らない分に分かれる

敷金・保証金は、契約上の性質で扱いが分かれます。

戻ってくる部分は、退去時に返ってくるお金なので、リースではなく金融資産(差入保証金)として扱います。返還までの期間が長い場合は、返還予定額を現在価値に割り引いて計上し、額面との差額は前払家賃として期間にわたって費用にしていきます。

賃料12ヶ月分にあたる1,200万円の敷金を預け、5年後に全額返還される契約で割引率を3%とすると、計上額は10,351,305円、差額の1,648,695円が前払家賃相当になります。

戻らない部分(契約で償却が定められている分)は、実質的に家賃の前払いです。前払リース料として使用権資産に含め、リース期間にわたって減価償却します。

オフィスの敷金は賃料の6〜12ヶ月分が一般的です。複数拠点を構える企業では数千万円から数億円になり、計上額もその分大きくなります。

実務で確認したいのは、契約書の次の記載です。

  • 償却(敷引き)の有無と割合:戻らない部分がいくらかを決めます。契約書に「賃料の2ヶ月分を償却する」と書かれていれば、その分が前払リース料になります。
  • 返還の時期と条件:退去後何ヶ月で返還されるか。期間が長いほど、現在価値に割り引いたときの差額が大きくなります。
  • 中途解約時の扱い:解約時に追加で差し引かれる条件があるか。
  • 賃料改定との連動:賃料が上がったときに敷金を積み増す条項があるか。

契約書が古い、内訳が口頭でしか決まっていない、という物件ほど判断に時間がかかります。契約書を集める段階で、敷金の条項も一緒に確認しておくと二度手間になりません。

リース期間の判断

解約できない期間に、行使することが合理的に確実と判断される延長オプションの期間を加えて決めます。判断は、これまで何回更新したかという実績ではなく、行使したくなる経済的な理由があるかどうかで行います。

  • 内装や設備に多額の投資をしていて、移転すると回収できない
  • 立地が事業に不可欠で、代わりの物件を見つけにくい
  • 更新しない場合の原状回復費用が大きい

2年契約でも更新が事実上確実であれば、リース期間はそれより長く見積もることになります。期間が延びれば使用権資産もリース負債も増えます。

共益費・管理費

賃料のほかに共益費・管理費・駐車場代が含まれる契約では、資産を使う対価ではないもの(サービスの対価)をリースの構成部分と区分して処理するのが原則です。契約書に内訳がない場合は、区分の根拠を整理しておく必要があります。

サブリース・セール&リースバック

借りた物件を転貸している場合は、借手としての処理と貸手としての処理の両方が必要です。貸手側では、原資産ではなく使用権資産を基準にリースを分類します。

保有不動産を売却して借り戻す取引では、その売却が収益認識の基準上の「売却」に当たるかをまず判定します。売却に当たらない場合は、受け取った金額を借入として扱います。

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計上しなくてよいもの

次のいずれかに当てはまれば、使用権資産とリース負債を計上せず、リース料を費用として処理できます。

区分条件
短期リースリース開始日の借手のリース期間が12ヶ月以内で、購入オプションを含まない
少額リース重要性が乏しい減価償却資産の購入時の基準額以下、借手のリース料が300万円以下、または新品時の原資産価値が5千米ドル程度以下

複合機やパソコンのリースはこの範囲に収まることが多い一方、オフィスの賃貸借は期間も金額も大きく、ほとんどが対象になります。

財務指標への影響

財務指標への影響

貸借対照表では、使用権資産の分だけ総資産が、リース負債の分だけ負債が増えます。純資産は増えないため、自己資本比率とROAは下がります。損益計算書では、これまで営業費用だった家賃が減価償却費と支払利息に分かれ、支払利息が営業外費用になるため、営業利益とEBITDAは増えます。

借入契約に財務制限条項(コベナンツ)が付いている場合は注意が必要です。自己資本比率や負債比率が条件に入っていると、会計基準の変更だけで抵触する可能性があります。金融機関への事前の相談をおすすめします。

移行時の処理(経過措置)

適用初年度は、原則として過去の期間すべてに遡って新基準を適用します(完全遡及アプローチ)。ただし実務負担が大きいため、簡便的な方法も認められています。

修正遡及アプローチでは、適用初年度の期首時点のオペレーティング・リースについて、残っているリース料を割り引いた現在価値でリース負債を計上し、使用権資産をリース負債と同額にできます。過去の数値を作り直さずに済むため、この方法を選ぶ企業が多いと見られます。

このほか、現行基準でリース取引として処理してきたものについて、新基準のリースの定義に当たるかどうかの判定を省略できる取扱いや、連結でIFRSを適用している企業が個別財務諸表でも連結と同じ方法で算定できる取扱いがあります。どの方法を選ぶかで作業量が大きく変わるため、方針は早めに決める必要があります。

注記で求められること

新基準では、リースに関する注記が拡充されます。求められるのは、会計方針に関する情報、リース特有の取引に関する情報、当期および翌期以降のリースの金額を理解するための情報です。財務諸表の利用者が、リースが企業の財政状態やキャッシュ・フローに与える影響を評価できるようにすることが目的です。

貸手についても、ファイナンス・リースではリース料債権部分と見積残存価額部分の金額、翌期以後5年以内における1年ごとの回収予定額と5年超の回収予定額などが求められます。オペレーティング・リースでも、同様に回収予定額の注記が必要です。

注記に必要な数値は、契約単位のデータがそろっていないと作れません。契約を集める段階で、注記に必要な項目まで見据えて整理しておくと、後戻りが減ります。

貸手側の扱い

借手の処理が大きく変わる一方、貸手は従来の考え方が基本的に引き継がれます。ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分は残り、次の基準で判定します。

  • 現在価値基準:リース料の現在価値が、原資産の見積現金購入価額のおおむね90%以上
  • 経済的耐用年数基準:リース期間が、原資産の経済的耐用年数のおおむね75%以上

いずれにも当てはまらない場合はオペレーティング・リースです。なお、リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法(第2法)は廃止されました。

自社で借りた物件を転貸しているサブリースでは、原則としてヘッドリース(借りる契約)とサブリース(貸す契約)を別々の契約として、借手と貸手の両方の処理を行います。

2027年4月までにやること

監査法人の解説では、次の4段階で進める方法が示されています。

  1. 事前検討:契約を洗い出し、影響額を概算する
  2. 方針決定・プロセス構築:リース期間の判断、割引率、免除規定の使い方、注記の方針を決める
  3. 適用準備:試行運用(ドライラン)を行い、比較年度の数値を新旧で並行管理する
  4. 本番適用:期首の仕訳を作成し、注記と内部統制を整える

もっとも時間がかかるのが1の契約の洗い出しです。賃貸借契約書だけでなく、駐車場、社宅、倉庫、複合機、サーバーの利用契約まで、リースに当たる契約は社内に散らばっています。自社専用のサーバーでデータを預かるサービスのように、契約書の名前からはリースとわからない「隠れリース」もあります。3月決算の会社であれば、2026年度は比較年度にあたるため、この期のうちに方針を固めておく必要があります。

業種によって重さが違う

  • 小売・飲食:店舗数が多く、契約も1店舗ごとに条件が違います。件数の多さがそのまま作業量になります。建設協力金や造作譲渡の条件も確認が要ります。
  • オフィス中心の企業:件数は少ない一方、1件あたりの金額と敷金が大きく、リース期間の判断が財務数値に直結します。
  • 製造業:工場・倉庫に加え、設備や車両のリースが多く、既存のリース管理と新基準の対象範囲を突き合わせる作業が発生します。

つまずきやすいところ

  • 契約書が紙で散在している:本社に原本がなく、支店や現場が保管しているケース。まず所在を特定する作業から始まります。
  • 子会社の把握が漏れる:連結対象の子会社が個別に結んでいる契約は、親会社の経理からは見えません。
  • 税務との差異:会計と税務で処理が分かれるため、申告調整と税効果の検討が必要になります。
  • システム対応:契約件数が多い企業では、表計算での管理に限界があります。システムを入れる場合は選定と導入の時間も見込む必要があります。

よくある質問

Q. 中小企業も対応が必要ですか。 会計監査を受けていない中小企業に直ちに強制されるものではありません。上場企業の子会社や、将来の上場を見据える企業は対応が必要です。

Q. 税務の扱いも変わりますか。 法人税法上の扱いは会計基準の変更に自動的には連動しません。会計と税務で処理が異なる部分は申告調整が必要です。

Q. 敷金が多いと不利になりますか。 戻らない部分は使用権資産に含まれ、戻ってくる部分も現在価値への割引計算が必要になります。預けている敷金が大きいほど、実務も財務数値への影響も大きくなります。

Q. 2年ごとに更新している賃貸借は、リース期間を2年としてよいですか。 更新が合理的に確実であれば、更新後の期間も含めて見積もります。内装投資の回収状況や移転コストなど、更新したくなる経済的な理由があるかで判断します。

Q. 短期リースの12ヶ月は、契約期間ではなくリース期間で見るのですか。 はい。更新が合理的に確実な場合はその期間も含めたリース期間で判断するため、1年契約でも短期リースに当たらないことがあります。

Q. 期の途中で解約した場合はどうなりますか。 リース負債と使用権資産を見直します。解約による差額は損益として処理します。

Q. 早期適用したほうがよいですか。 比較年度の並行管理が必要になるため、準備が整っていない段階で急ぐ必要はありません。IFRSを適用している親会社との整合を取りたい場合などに検討します。

まとめ

新リース会計基準は、2027年4月1日以後に開始する事業年度から強制適用されます。オフィスや店舗を借りている企業にとっては、これまで費用処理だけで済んでいた賃貸借契約が、貸借対照表に載る大きな変更です。

出発点は、社内に散らばっている契約を集め、リース期間をどう判断するかを決めることです。そのうえで自己資本比率やROAへの影響を試算し、金融機関との関係も含めて確認しておく必要があります。

あわせて検討したいのが、預けている敷金そのものの見直しです。オフィスの敷金は賃料の6〜12ヶ月分にのぼり、退去するまで戻ってこない資金です。日商保の「敷金返還くん」は、入居したまま預けている敷金を現金化できるサービスです。新規の移転・出店時であれば、「敷金半額くん」で預ける敷金そのものを半額〜最大全額まで圧縮できます。オフィスの敷金でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

参考にした資料

  • EY「新リース会計基準の概要の解説」(2024年12月)
  • EY「新リース会計基準における実務上のポイント」(2025年4月)
  • PwC「新リース会計基準の解説」「新リース会計基準の適用に向けた準備およびスケジュール」(2025年2〜3月)
Tags#不動産会計
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