初期費用ごとの勘定科目
| 払うもの | 勘定科目の例 | 扱い | 根拠 |
|---|
| 敷金・保証金(返ってくる部分) | 差入保証金、敷金 | 資産。費用にならない | 民法第622条の2、企業会計基準適用指針第21号 設例6 |
| 礼金 | 長期前払費用 | 繰延資産。5年で償却(新築の建物の権利金、借家権として転売できるもの、5年未満の契約で更新のときに再び払うものは別の年数)。契約ごとの返ってこない額が20万円未満なら、払った年度に費用として処理すれば損金にできる | 法人税法施行令第14条・第134条、No.5460 |
| 敷金・保証金のうち返ってこない部分(償却) | 長期前払費用 | 礼金と同じく繰延資産として償却 | 法人税法施行令第14条第1項第6号ロ |
| 仲介手数料 | 支払手数料 | 払った事業年度の損金にできる | No.5460 |
| 入居する月の賃料 | 地代家賃 | その月の費用 | − |
| 翌月以降の賃料の前払い | 前払費用 | 賃料の月に費用。払った日から1年以内に受ける役務の対価を前払いした場合は、継続して払った年度の損金にできる | No.5380 |
| 保証会社の保証料 | 支払手数料、支払保証料 | 費用にする時期は保証の契約による。消費税は非課税 | No.6201 |
| 火災保険料 | 支払保険料 | 保険の期間に応じて費用。1年以内の前払いは払った年度の損金にできる場合がある。消費税は非課税 | No.5380、No.6201 |
| 入居の内装工事(造作) | 建物、建物附属設備 | 資産にして減価償却する | No.5406 |
(勘定科目の名前は例です。会社で決めている科目で処理します)

敷金・礼金の仕訳の早見表
事業用の建物を借り、消費税を税抜経理で処理している会社の例です(貸主・不動産会社から適格請求書を受け取っている前提)。
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|
| 敷金・保証金を払った | 差入保証金 | 普通預金 |
| 礼金を払った(繰延資産にする場合) | 長期前払費用/仮払消費税等 | 普通預金 |
| 礼金を払った(契約ごとの返ってこない額が20万円未満で、払った年度の費用にする場合) | 支払手数料などの費用の科目/仮払消費税等 | 普通預金 |
| 決算で礼金を償却した | 長期前払費用償却 | 長期前払費用 |
| 仲介手数料を払った | 支払手数料/仮払消費税等 | 普通預金 |
| 退去して、敷金が全額返ってきた | 普通預金 | 差入保証金 |
| 退去して、原状回復の費用を差し引かれた | 普通預金/修繕費/仮払消費税等 | 差入保証金 |
| 5年たたずに退去し、礼金の残りを費用にした | 長期前払費用償却など | 長期前払費用 |
(勘定科目の名前は例です。金額を入れた仕訳は「契約時の仕訳の例」「退去したときの仕訳の例」で示します)
敷金・保証金の勘定科目
民法は、名目にかかわらず、賃料などの支払いを担保するために借主が貸主に渡すお金を敷金と定め、賃貸借が終わって物件を返したあと、未払いの賃料などを差し引いた残りを返すとしています(民法第622条の2第1項)。返ってくることが前提のお金なので、払ったときは費用にせず、「差入保証金」「敷金」などの科目で資産に計上します。企業会計基準委員会の資産除去債務の適用指針の設例も、建物の賃貸借契約に関連して払った敷金を資産に計上しています(企業会計基準適用指針第21号 設例6)。
敷金と保証金は、契約書での呼び方が違うだけで、中身が担保であれば同じ扱いです。消費税では、契約の終了により返還される保証金や敷金は、資産の譲渡等の対価に該当しないため、課税の対象になりません(国税庁 タックスアンサーNo.6225)。
返ってこない部分(償却)の扱い
契約で「退去のときに賃料の1か月分を償却する」などと決めている場合、償却される部分は返ってこないお金です。国税庁は、貸主に払う「不動産の使用料等」の支払調書についての質疑応答事例で、保証金・敷金などの名目のものであっても、返還を要しない部分の金額や、月または年の経過により返還を要しないこととなる部分の金額は、権利金に含まれるとしています(質疑応答事例「建物の賃借に伴って支払われる保証金」、所得税基本通達36-7)。借りる側の法人税では、返ってこない部分も、建物を借りるために支出する「権利金、立ちのき料その他の費用」(法人税法施行令第14条第1項第6号ロ)にあたると考えられるため、礼金と同じく、返ってこないことが決まった部分を繰延資産(長期前払費用など)として償却します。
消費税では、事業用の建物の保証金・敷金などのうち返還しないものは、権利の設定の対価として課税の対象になります(No.6225)。償却の書き方と計算は「敷金償却(保証金償却)とは」で説明しています。
礼金の勘定科目
礼金は繰延資産として償却する
礼金は、契約のときに貸主に払い、退去しても返ってこないお金です。法人税法施行令は、繰延資産の範囲に「資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用」で、支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものを挙げています(法人税法施行令第14条第1項第6号ロ)。礼金は建物を借りるために支出する費用にあたるため、払ったときに全額を費用にせず、「長期前払費用」などの科目で資産に計上し、償却していきます。
礼金の償却期間
国税庁は、建物を賃借するために支払った権利金などの償却期間を、次のように示しています(タックスアンサーNo.5460)。
| 権利金などの中身 | 償却期間 |
|---|
| 建物の新築のときに払い、借りる部分の建設費の大部分にあたり、建物がある間は借りられる状況にあるもの | 建物の耐用年数の10分の7 |
| 明け渡しのときに借家権として転売できることになっているもの | 借りたあとの見積残存耐用年数の10分の7 |
| 上の2つ以外 | 5年 |
新築のときの権利金や、借家権として転売できることになっているものでなければ、3つ目にあたり、償却期間は5年です。ただし、契約による賃借期間が5年未満で、契約の更新のときに再び権利金などを払うことが明らかなときは、その賃借期間で償却します(No.5460)。償却期間に1年未満の端数があるときは、切り捨てます(同)。
たとえば、期間3年の契約で、更新のときに再び権利金などを払うことが契約書で決まっている場合は、3年で償却します。礼金30万円なら、1年あたり10万円です(金額は計算のための例です)。更新のときに権利金などを払わない契約なら、5年です。
償却の計算
事業年度ごとの償却の上限(償却限度額)は、繰延資産の額を償却期間の月数で割り、その事業年度の月数を掛けて計算します。事業年度の途中で払った場合は、払った日から事業年度の終わりまでの月数を使い、1か月に満たない端数は1か月とします(No.5460)。
3月決算の会社が、10月1日に礼金30万円(税抜き)を払った例です(金額は計算のための例です)。
| 事業年度 | 計算 | 償却の額 |
|---|
| 1年目(10月〜3月の6か月) | 30万円÷60か月×6か月 | 3万円 |
| 2年目〜5年目(各12か月) | 30万円÷60か月×12か月 | 各6万円 |
| 6年目 | 残りの額(限度額は30万円÷60か月×12か月=6万円) | 3万円 |
| 合計 | | 30万円 |
償却費を損金にするときは、確定申告書に繰延資産の償却額の計算に関する明細書(別表16(6))を添付します(No.5460)。

20万円未満なら、払った年度の費用にできる
礼金のような、建物を借りるための権利金などの繰延資産は、支出する金額が20万円未満なら、払った事業年度に費用として処理(損金経理)すれば、その全額を損金にできます(法人税法施行令第134条)。20万円未満かどうかは、建物を借りるための権利金などでは、契約ごとに支出する金額で判定します(法人税基本通達8-3-8)。同じ契約で、礼金のほかに返ってこない敷金(償却)なども払うときは、合わせた額が20万円未満かを確かめます。
たとえば月額賃料15万円のオフィスで、礼金が1か月分の15万円で、ほかに返ってこないお金がない契約なら、15万円を払った年度の費用にできます。
20万円未満かどうかは、礼金などの支払いに適用している経理の方式で判定します。税抜経理なら消費税を除いた金額で、税込経理なら消費税を含めた金額で判定します(平成元年直法2-1「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」の9)。売上は税抜経理でも、固定資産や繰延資産の取得を税込経理にしている会社や、消費税の免税事業者は、消費税を含めた金額で判定することになります(同2・5)。国税庁の質疑応答事例も、税込み20万円の使用料について、税抜経理の会社では繰延資産となる費用の金額が20万円未満になり、払った事業年度の損金にできるとしています(質疑応答事例「「プライバシーマーク」の使用許諾を受けるまでの費用等の税務上の取扱いについて」)。
| 礼金(消費税を除く) | 消費税を含めた額 | 税抜経理で判定 | 税込経理で判定 |
|---|
| 15万円 | 16.5万円 | 払った年度の費用にできる | 払った年度の費用にできる |
| 19万円 | 20.9万円 | 払った年度の費用にできる | 繰延資産として償却 |
| 30万円 | 33万円 | 繰延資産として償却 | 繰延資産として償却 |
(金額は判定を示すための例です。同じ契約でほかに返ってこないお金がない場合)
仲介手数料・前払いの賃料・保証料・火災保険料
仲介手数料
建物を借りるときに不動産会社に払った仲介手数料は、払った日の属する事業年度の損金にできます(No.5460)。礼金と違い、繰延資産にしなくてかまいません。
前払いの賃料
入居する月の賃料は、その月の「地代家賃」です。翌月以降の賃料を先に払った場合は、払ったときは「前払費用」で資産に計上し、その月が来たときに費用にするのが原則です。ただし、払った日から1年以内に提供を受ける役務の対価として払った前払費用は、継続してその払った事業年度の損金にしている場合に限り、払った時点で損金にできます(No.5380、法人税基本通達2-2-14)。
保証会社の保証料
連帯保証人の代わりに家賃保証会社を使うと、保証料を払います。国税庁は、信用保証料を消費税の非課税取引に挙げています(No.6201)。消費税法基本通達も、非課税となるものに「信用の保証料」を挙げています(消費税法基本通達6-3-1)。家賃保証会社が賃料の支払いを保証するのは信用の保証にあたるため、保証料は非課税です。賃料と同じ請求にまとめられていても、税区分を分けて処理します。請求書に事務手数料など保証料以外の項目があれば、その項目の税区分は請求書で確かめます。費用にする時期は保証の契約の内容によるため、科目と時期は「家賃保証料の勘定科目と仕訳」で説明しています。
火災保険料
契約で加入を求められる火災保険の保険料は「支払保険料」などで処理し、消費税は非課税です(No.6201)。1年分を前払いした場合は、前払いの賃料と同じく、短期前払費用の扱い(No.5380)を使えるかを確かめます。
入居の内装工事(造作)
借りた建物に内装工事(造作)をした場合は、その造作を一つの資産として、建物の耐用年数や、造作の種類・用途・使用材質などを勘案して合理的に見積もった耐用年数で減価償却します(国税庁 タックスアンサーNo.5406、耐用年数の適用等に関する取扱通達1-1-3)。建物附属設備に造作した場合は、その建物附属設備の耐用年数で償却します。
ただし、賃借期間の定めがあって更新ができず、有益費の請求や買取請求もできないものは、その賃借期間を耐用年数として償却できます(同)。同じ建物にした造作は、種類ごとに分けず、まとめて一つの資産として耐用年数を見積もります(同)。
契約時の仕訳の例
3月決算の会社が、10月1日に事務所の賃貸借契約を結び、その日に入居した例です(税抜経理で、適格請求書を受け取っている前提。金額は計算のための例です)。
| 前提 | 金額 |
|---|
| 月額賃料 | 30万円(税抜き) |
| 敷金 | 6か月分 180万円(償却なし) |
| 礼金 | 1か月分 30万円(税抜き) |
| 仲介手数料 | 30万円(税抜き) |
| 10月分の賃料 | 30万円(税抜き) |
| 火災保険料 | 1年分 2万円 |
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|
| 敷金を払った | 差入保証金 1,800,000 | 普通預金 1,800,000 |
| 礼金を払った | 長期前払費用 300,000/仮払消費税等 30,000 | 普通預金 330,000 |
| 仲介手数料を払った | 支払手数料 300,000/仮払消費税等 30,000 | 普通預金 330,000 |
| 10月分の賃料を払った | 地代家賃 300,000/仮払消費税等 30,000 | 普通預金 330,000 |
| 火災保険料を払った | 支払保険料 20,000 | 普通預金 20,000 |
| 3月の決算で礼金を償却した | 長期前払費用償却 30,000 | 長期前払費用 30,000 |
契約の日に出ていくお金は合計281万円です。そのうち敷金の180万円(64.1%)は資産で、この事業年度の費用になるのは、仲介手数料、10月分以降の賃料、火災保険料、礼金の償却の3万円です。火災保険料は、短期前払費用の扱いを継続して使っている前提で、払った年度の費用にしています。