ファクタリングで売掛金を売ったときは、売掛金を帳簿から外し、差し引かれた手数料を費用として記録します。消費税では、ファクタリング会社が差し引く手数料は非課税です。ただし、売主が買い戻す約束がある契約では、売掛金を外せず、借入れとして記録することがあります。
この記事では、企業会計基準と国税庁の質疑応答事例、消費税法施行令をもとに、2社間・3社間それぞれの仕訳、償還請求権があるときの扱い、消費税の区分を整理します。
ファクタリングで売掛金を売ったときは、売掛金を帳簿から外し、差し引かれた手数料を費用として記録します。消費税では、ファクタリング会社が差し引く手数料は非課税です。ただし、売主が買い戻す約束がある契約では、売掛金を外せず、借入れとして記録することがあります。
この記事では、企業会計基準と国税庁の質疑応答事例、消費税法施行令をもとに、2社間・3社間それぞれの仕訳、償還請求権があるときの扱い、消費税の区分を整理します。
ファクタリングで売掛金を売ったとき、帳簿から売掛金を外す(消滅を認識する)には、会計基準の要件を満たす必要があります。企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」は、金融資産の支配が他に移るのは、次の3つの要件がすべて満たされた場合としています(第9項)。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 法的な保全 | 買い手の権利が、売主とその債権者から法的に守られている |
| 権利の享受 | 買い手が、その権利を通常の方法で使える |
| 買戻しがない | 売主が、満期日前に買い戻す権利と義務を実質的に持っていない |
要件を満たして売掛金を外したときは、売掛金の帳簿価額と受け取った対価の差額を、その期の損益にします(第11項)。一方、売主が満期日前に買い戻す権利と義務を実質的に持つ取引は、売買契約の形をとっていても、金融資産を担保にした金銭の貸借と実質的に同じだとして、売買ではなく金融取引として処理します(第58項)。
以下の仕訳は、要件を満たし、売掛金を外せる場合の例です。
売掛先に知らせない2社間では、支払期日に売掛先から売主に入金があり、売主がそれをファクタリング会社に渡します。
例として、売掛金100万円を売り、手数料5万円を差し引かれて95万円を受け取ったとします。勘定科目の名前は会社によって異なります。この記事では、手数料を「売上債権売却損」、ファクタリング会社に渡すまで預かっているお金を「預り金」とします。

① 売掛金を売ったとき
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 950,000 | 売掛金 | 1,000,000 |
| 売上債権売却損 | 50,000 |
② 支払期日に、売掛先から入金があったとき
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 1,000,000 | 預り金 | 1,000,000 |
③ ファクタリング会社へ渡したとき
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 預り金 | 1,000,000 | 普通預金 | 1,000,000 |
売掛金はすでに売っているので、②で受け取ったお金は売主のものではありません。売上や売掛金の回収として記録しないように注意します。
3社間では、売掛先が支払期日にファクタリング会社へ直接払います。売主の仕訳は、①の売ったときだけです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 950,000 | 売掛金 | 1,000,000 |
| 売上債権売却損 | 50,000 |
事務手数料が別の名目で差し引かれたときも、①の売却損に含めるか、別の科目にするかを決めて、毎回同じ扱いにします。消費税の区分は、次の節のとおり名目にかかわらず非課税です。
2社間では、ファクタリング会社が債権譲渡登記を求めることがあります。登記の登録免許税は、譲り渡す債権の個数が5,000個以下なら1件7,500円です(租税特別措置法第84条の6第1項第2号)。司法書士に手続きを頼めば、その報酬もかかります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 租税公課 | 7,500 | 普通預金 | 7,500 |
登録免許税を「租税公課」、司法書士の報酬を「支払報酬」とするなど、科目は内容がわかる名前にします。ファクタリング会社が登記費用を代金から差し引く契約なら、何に対する費用かを契約書と明細で確かめ、手数料と分けて記録します。登記の手続きは「債権譲渡登記とは」で説明しています。
償還請求権(リコース)は、売掛先が払わなかったときに、ファクタリング会社が売主に代わりの支払いを求められる権利です。扱いは、会計基準の3つの要件を満たすかどうかで分かれます。
| 場合 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 要件を満たす | 売掛金を外す。新たに負う義務(遡求義務)は時価で負債に計上する | 第9項・第13項 |
| 満期日前に買い戻す権利と義務を実質的に持つ | 売買ではなく金融取引。売掛金は残し、受け取ったお金は借入れとして記録する | 第58項 |
金融取引として扱う場合の、お金を受け取ったときの仕訳は次のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 950,000 | 借入金 | 950,000 |
売主が買い戻す約束のある取引は、法律上も貸金業にあたるおそれがあると金融庁は説明しています。詳しくは「違法なファクタリングの見分け方」で整理しています。

| 取引 | 消費税 | 根拠 |
|---|---|---|
| ファクタリング会社が差し引く手数料 | 非課税 | 消費税法施行令第10条第3項第8号 |
| 売掛金の譲渡そのもの | 非課税 | 消費税法別表第二第2号、施行令第9条第1項第4号 |
| 課税売上割合の計算 | 自社の売上で得た売掛金の譲渡は、分母に入れない | 施行令第48条第2項第2号 |
国税庁の質疑応答事例は、金銭債権を譲り受けるときに差し引く割引料・保証料・手数料は、その名目にかかわらず、金銭債権の譲受けの対価として非課税になるとしています。回収できなかったときに売主に代金の返還を求める契約(償還請求権がある契約)でも、契約上が金銭債権の譲受けであれば、非課税とされています。
非課税の取引は、支払っても仕入税額控除の対象になりません。手数料を課税仕入れとして処理しないように注意します。
売掛金の譲渡は非課税の取引ですが、消費税法施行令は、自社の売上の対価として得た売掛金の譲渡を、課税売上割合を計算するときの売上の額(分母)に含めないと定めています(第48条第2項第2号)。ファクタリングで売掛金を売っても、課税売上割合は下がりません。
| 項目 | 売掛金を外す | 金融取引 |
|---|---|---|
| 貸借対照表 | 売掛金が減り、預金が増える | 売掛金は残り、預金と借入金が増える |
| 損益計算書 | 手数料との差額を、売ったときの損益にする | 受け取った額と返す額の差は、借入れの費用として扱う |
売掛金を外した場合、借入金は増えません。手数料の分だけ、同じ売上から入るお金は少なくなります。毎月ファクタリングを使うと、売上に対する費用の割合が続けて上がることになります。
法人税では、別段の定めがあるものを除き、資本等取引以外の取引による損失の額は損金の額に算入されます(法人税法第22条第3項第3号)。売掛金を売ったときの売却損もこの計算に含まれます。
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科目の名前は会社で決めて、毎回同じものを使います。ただし、ファクタリング会社が差し引く手数料は消費税では非課税です。「支払手数料」で処理するときも、課税仕入れにしないよう区分に注意します。
償還請求権のない契約で、売掛金を外していれば、売主の帳簿に追加の仕訳は生じません。償還請求権がある契約では、契約に従って売主が支払います。
売上にはなりません。売上は、商品やサービスを提供したときにすでに計上しています。ファクタリングは、その対価である売掛金を売る取引です。
出典:企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第9項・第11項・第13項・第58項、国税庁 質疑応答事例「金銭債権の買取り等に対する課税関係」「課税資産の譲渡等に該当しない売掛債権の取得に係る貸倒れ」、消費税法施行令第9条・第10条・第48条、法人税法第22条、租税特別措置法第84条の6、金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」。
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