2020年民法改正の変更点は? | 株式会社 日商保  

2020年民法改正の変更点は?

連帯保証人って必要なの?2020年民法改正の変更点は?

2020年4月、民法が改正されることになりました。
この民法改正により、連帯保証人の制度が大きく変更され、連帯保証人を取る場合には不動産オーナー様だけでなく、管理会社様や仲介会社様も対応が必要となります。

ここでは、2020年4月の民法改正の変更点と、今後の連帯保証人の扱いについて解説していきます。

そもそも連帯保証人はなぜ必要なのか?

不動産オーナー様は、保有している物件を人に貸すことによって賃料収入を得ているため、
毎月の賃料が得られない場合、大きな損失となります。

そのため、借主が賃料を滞納した場合でも、代わりに支払ってくれる人=つまり「連帯保証人」がいれば
安心して物件を貸すことができるため、求められるのです。

連帯保証人の役割や責任の範囲は?

連帯保証人が必要な理由はわかりましたが、そもそも連帯保証人とはどんな役割で、
具体的にどのような責任をどこまで負う必要があるのでしょうか。

(1)金銭債務を保証する役割

連帯保証人とは、物件を借りている人と「連帯」して債務を負う「保証人」のことです。
そもそも賃貸契約における連帯保証人とは、
「借主が賃料を支払わなかった場合に代わりに請求をすることができる人」のことです。
連帯保証人は借主と全く同じ立場とみなされ、滞納金を請求されてしまうのです。

これが借主と債務を「連帯」している、ということです。非常に責任が重く、重要な人物といえます。

(2)金銭以外の責任を保証する役割

連帯保証人が保証するのは賃料の支払いだけではありません。
解約時の原状回復義務も借主同様負う必要がありますし、契約違反の場合の違約金なども請求されてしまいます。

これらの請求を無視した場合、自宅や勤務先に督促の電話がかかってきたり、
家まで訪問されたりする可能性もあります。
「連帯保証人」とは、本来の債務者(主債務者=借主)と同等の責任を負うことを
契約により約束した人のことをいいます。
借主が何らかの事情で支払い不能となったときに、支払い責任が問われます。

家賃保証会社を利用しても連帯保証人は必要?

賃貸物件を契約する際に「連帯保証人」を求められ、
さらに「家賃保証会社」の利用を求められるケースも増えてきています。
そもそも連帯保証人がいるのに、なぜ家賃保証会社を利用しなければならないのでしょうか?

家賃保証会社と連帯保証人の役割は同じ

家賃保証会社の役割は、基本的には連帯保証人と同じです。
借主が賃料を滞納した時に、家賃保証会社が不動産オーナー様に対して賃料を立て替えて支払います。

連帯保証人の場合は、支払い能力がなかったり、連絡が取れなくなるケースもあるため、
不動産オーナー様としては、家賃保証会社の方が安心度が高いのです。

ちなみに家賃保証会社については、ひと昔前までは、
連帯保証人が頼めないような人(両親が既に死亡しているようなケース)が利用するもの、
というイメージが強かったですが、
最近では家賃保証会社の方が簡単・確実に滞納賃料を回収できるという認識が広がったため、
特に住居の賃貸借においては、連帯保証人を取ったうえで、
家賃保証会社の利用も義務付ける物件が増えているようです。

しかし、本来的には「連帯保証人」と「家賃保証会社」の役割は同じといえます。

連帯保証人になったために自己破産してしまう人も

破産申し立てを望む10人に1人が、借金の保証人や連帯保証人を頼まれ引き受けた人たちと言われています。
連帯保証人を頼まれた際は、簡単に引き受けないことが大切。
引き受けるかどうかを、十分に検討してから判断する必要があります。

しかし、2020年の民法改正では、この連帯保証人制度に大きな変更があります。
この民法改正により、個人の保証人の新しいルールが定められ「連帯保証人が自己破産しなければならない」や
「連帯保証人が多額の借金を背負う」というケースが減ることが期待されています。

2020年の民法改正で連帯保証人の制度が変わる!

2017年5月に改正民法が参議院で可決された事により、2020年4月に改正民法が施行されます。
では賃貸借契約における連帯保証人の制度はどう変更されるのでしょうか。
大きく変わる2つの変更点を解説していきます。

変更点(1):個人根保証契約の極度額ルールについて

個人が保証人になる根保証契約(※)について、
保証人が支払いの責任を負う金額の上限=「極度額」を定めなければ、保証契約が無効になる、
というルールが作られます。
これまでは、「連帯保証人は一切の責任を負う」というのが通例でしたが、
民法改正後は、例えば「1,000万円までを上限に」など、極度額を定める必要があります。

極度額は保証する人・される人の間で、書面などで合意して定める必要があります。
これまでは、連帯保証人になる人が、その重みを十分に理解せずに契約していた例も少なくありませんが、
民法改正後は、例えば「1,000万円」と金額が明示されることにより、
「こんなに多額の責任は負えない」と、連帯保証人の引受けを拒まれる可能性も考えられます。

かと言って、極度額を低く設定してしまったら、多額の賃料滞納が発生した場合に、
不動産オーナー様が回収できなくなってしまいます。

実際に滞納等が発生した場合に、どれくらいの債務額になりそうか、
事前に想定して、妥当な金額を設定する手間が発生します。

これを設定し忘れたり、手続きに不備があったりすると、
連帯保証の効果が無効になってしまいますので、不動産オーナー様にとってはリスクとなります。

また、実際に契約手続きを行う管理会社様・仲介会社様にとっては、手続きに不備があった場合、
不動産オーナー様から責任追及・損害賠償を求められる可能性も考えられる為、注意が必要です。

※(「根保証契約」とは、保証人になった時点では実際どれだけの債務が発生するかわからないケースなど「不特定の債務」を保証する契約)

変更点(2):事業用不動産の賃貸借では、借主は財務状況の説明が必要

事業用不動産の賃貸借で、個人が連帯保証人になる場合、借主は連帯保証人に対して、
自身の財務状況を説明しなければならない、というルールも新設されます。

借主となる会社の売上・利益や経費などの金額、また銀行借入や返済の状況などについて、
決算書などを開示しながら、借主が、連帯保証人に対して説明を行います。
知らずのうちに「財務状況がボロボロの会社の連帯保証人を引き受けてしまった」ということを防ぐためです。

この説明を受けなかった、あるいはその説明が虚偽であり誤認したまま連帯保証人を引き受けた場合で、
その事実を不動産オーナー様も知っていた、あるいは知ることが出来たとき、
連帯保証契約を取り消すことができます。

借主の財務状況の説明義務は借主にありますが、虚偽なく連帯保証人に対して説明がなされているかどうか、
不動産オーナー様も確認をしておかないと、万が一の際、
連帯保証人に対して請求することができなくなる可能性があります。

実務的な対応としては、財務状況の説明資料として、
借主となる会社の決算書3期分や銀行借入返済予定表などを確認し、
その内容に不備や虚偽がないかを確認した上、賃貸借契約書へ下記のような記載を残すことが必要です。

【記入例】
第〇条(財務状況の説明)
借主は連帯保証人に対し、平成〇年〇月〇日仲介業者〇〇不動産の事務所において、以下の書類を連帯保証人に示した上で、以下の事項を説明したことを借主・連帯保証人は確認する。
(1) 借主の連帯保証人への説明内容は以下の通り。
① 2019年12月31日期末の決算書の借入明細書に記載のとおり、借主会社は合計〇〇万円の借り入れを銀行からしているが、約定通り返済しており遅滞は無い。
② 2020年4月30日時点での買掛金等借主の支払いの遅滞は存在しない。
③ 2020年4月30日現在、借主が今後財政悪化により、本件賃料債務の支払い困難にさせる事象は存在しない。
(2) 借主が連帯保証人へ示した財務関係の書類
① 2019年12月31日期末の決算書・同付属明細書・税務申告書
② 2018年12月31日期末の決算書・同付属明細書・税務申告書
③ 2017年12月31日期末の決算書・同付属明細書・税務申告書
④ 〇〇銀行返済予定表(2020年4月30日付け)

連帯保証人制度の改正による変化は?

従来は保証金額の上限についての規定がなく、青天井になっていたため、
連帯保証人が自己破産してしまうケースが多くありました。

今回の民法改正では『最大限いくらまで保証すればいいのか、契約書の書面に極度額(責任を負う限度額)を明記していなければ、保証契約そのものが無効になるため、そういった自己破産のケースが減らせるという期待があります。

ただし、金額が書かれると『こんなに多額の保証なのか』と警戒され、
改正後は連帯保証人を頼むのが今より大変になるかもしれませんね。

また、連帯保証人が死亡した時点で、保証すべき金額が確定されることになりました。

連帯保証人が亡くなった場合、すぐに代わりの連帯保証人を立てないと、
その後に賃料滞納などが発生した場合、連帯保証人の相続人に請求することはできません。
契約時だけでなく、契約後も常に、連帯保証が継続されないリスクが伴います。

連帯保証人の契約書の見直しが必要

連帯保証人を付けて賃貸借契約している場合、民法改正の変更ルールに合わせて契約書を見直さないと
連帯保証人の条項が無効という扱いになってしまいます。

そのため不動産オーナー様は、賃料の未払い時に賃料回収を連帯保証人から出来なくなってしまうため、
契約書、保証人引受承諾書などの雛形を見直す必要があります。
借主は、今後契約書の見直しを求められる場合もあることを知っておきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回改正される民法の変更点と、連帯保証人の扱いについてまとめてきました。
連帯保証人を取る場合は大変な手間がかかり、また無効になったり取り消されてしまうリスクが常に付きまといます。

これまでに比べ、格段に連帯保証人を取ることが難しくなりました。
今回の民法改正では連帯保証人を保護するという主旨がメインですので、
今後は連帯保証人を取らないことが主流となっていくのではないかと考えられています。

不動産オーナー様は、担保となる敷金を多めに預かったり、保証会社を利用するなど、
連帯保証人の代わりとなる担保の確保が求められます。
民法改正の内容をしっかりと理解し、適切な対応を取ることで、賃料滞納等万が一のリスクに備えましょう。

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