【スペシャル対談】
SBIリートアドバイザーズ株式会社 水野文彦 様
テナント様のニーズにマッチするシステムとして 『敷金半額くん』を採用しています。
一貫したポリシーがSBIリートアドバイザーズの強み
今回、SBIリートアドバイザーズ水野氏と弊社代表の豊岡による対談を実施。
SBIリートアドバイザーズの事業内容や業界動向について伺った。
豊岡:貴社の事業についてお教えいただけますでしょうか?
水野:
SBIリートアドバイザーズのスポンサーは、SBIファイナンシャルサービシーズ、
グローバル不動産総合アドバイザーリー傘下で欧米投資家とのパイプを持つ
AM会社・クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド・アセットマネジメント、
及びアジア系投資家とのリレーションの強いAM会社・アジリティー・アセット・アドバイザーズの3社です。
リート事業に入った経緯は、端的に双日の建設不動産ビジネスの一つの転換点という位置づけです。
もともと双日の合併前個社である日商岩井、ニチメンの時代から、
両社とも永きにわたり建設不動産ビジネスを営んできたわけですが、
その生業は開発デベロップメントが主軸でありました。
造って、売って、終わり。所謂「狩猟民族」であり、「農耕」という概念がないビジネスモデルでした。
分譲マンション事業や収益不動産開発然り、ということで「造る」ということが最大のミッションであり、
機能であったわけです。
ご存知の通り、リーマンショックを契機として、造ったものが売り抜けられないという事態に直面、
謂わば「ビジネスモデルの崩壊」という結末を迎えました。
脆弱さを露呈した収益モデル、及びビジネスモデルを転換しなければならないという状況に
直面したのが2009年でした。
そこから、今まで培ってきたデベロップメント機能及び、不動産に携わる機能や知見をどういう形で生かせるか、
何を軸に建設不動産ビジネスの領域で生きていくのか、
検討に検討を重ねたどり着いたのが(上場)リート事業ということになります。
つまり、双日の国内における建設不動産ビジネスにおける知見と、
クッシュマン・アジリティ両社のアセットマネジメント事業に対する知見を融合させ、
機能提供型ビジネスとしてのリート事業に参入し、投資主価値の最大化をモットーに、
資産規模の拡大と資産価値の向上を図っていくことを目途に事業を展開しております。
豊岡:リートといっても色々あると思いますが、どのようなリートを目指しているのでしょうか?
水野:
リートには上場リートと私募リートがありますが、目指すのは上場リートでした。ゴーイングコンサーンですね。
我々が目指したのはどちらかというとパッと目を引くリートというよりは、
むしろ玄人受けする「運用力」で勝負するリートです。
それは取得ポリシーであり、期中のマネジメントであり、物件の入れ替えも含めて、
噛めば噛むほどキメ細やかさや施策の奥深さが解る、というものです。
比較的築年数が進行した中小規模オフィスが中心となっておりますので、
見栄えという部分でなかなか素人受けするものではないと思っていますが、
上場してから3年、これまでの一貫したポリシーが確実な成長レコードとしてお示しできていることで、
プロの投資家の方々を中心とした評価はじわじわと進んできているのではないかと実感しております。
豊岡:日商岩井やニチメンの時代からの長年の蓄積されたご経験や
ノウハウが生きているということですね。
水野:
不動産に携わり、旧個社も含めると40年以上の歴史があります。歴史は業界の中でも長い部類ですね。
特に、アクイジションにおけるネットワークは外部成長の速さでお示しできていますし、
スキルの部分では、内部成長、つまり物件収益力を向上させるための各施策を通じて果たしてこれたと思っています。
これから目論む新規開発の分野でもその両面を活かし、他社との差別化に繋げていければと考えています。
豊岡:弊社サービス「敷金半額くん」をご採用いただいた理由はどこにあったのでしょうか?
水野:
結論からいいますと、ターゲットしているテナント様のニーズにマッチするシステムだったから、となります。
我々のポートフォリオの戦略にマッチしているターゲットテナントという意味です。
ベンチャーも含めた中小のテナント様が我々の最大のお客様でありますが、
そのニーズを汲めるサービスとして「敷金半額くん」が合致しました。
我々のセレクトオフィスという新しいリーシング手法とコラボさせることで、
更なるシナジー効果も発揮できております。
豊岡:セレクトオフィスとはどのようなサービスでしょうか?
水野:
セレクトオフィスには、敷金半額くんと共通する概念がありまして、
イニシャルコストを抑えて入居を促進するという面があります。
VR内覧でオフィスのレイアウト・デザインを見えるようにしたり、
一定以上のイニシャルコストをリート自ら負担するものになっています。
おかげさまで、多くのテナント様からの内覧やオファーをいただき、好条件にて速やかにご入居いただきました。
豊岡:現在、空室はあまりないようにお見受けしておりますが?
水野:
オフィスは99.9%埋まっております。522テナントにご利用いただいております。
豊岡:99.9%は素晴らしいですね。
それだけ選ばれていることと思いますが、コンセプトはどこにあるのでしょうか。
水野:
オフィス・商業施設におけるコンセプトは「分散」「成長ポテンシャル」「中小規模」です。
後程ご説明しますが、特に「中小規模オフィス」の市場環境は、恒常的に需給バランスが逼迫、
旺盛な需要に対して供給量が追い付いていない環境にあります。
その中で更にテナントの分散を効かせ、現賃料のマーケット水準とのポジションや
余剰容積率の検証といった「成長ポテンシャル」を追求することで、驚異的な稼働率と、
高稼働を裏付けとした賃料増額を含めたバリューアップの実現を図っているものです。
デベロッパー型のリートではありませんので、マーケットの中で投資家目線で物件を買ってこなければなりません。
その中で何で勝負するかとなりますと、
「クライテリアとスピード」「目利き力」「取得後の運用力」で勝負するしかありません。
そこで我々がターゲットとして絞ったのが、
中小規模のオフィスを中心とした住宅・商業施設を含めた総合型のリートでした。
中小規模の不動産のストックというのは、全国含めて、築年数20~30年の間に最大の山があります。
1994年以降の中小規模オフィスの供給は劇的に少なくなります。
その結果として、中小規模オフィスのストックは、築年数にして20~30年の間に大きな山ができているわけです。
我々の戦うフィールドはこの山の中、ということになりますが、
この中でプロがマネージしている物件というのは限定的です。
その大半が、事業会社が持たれていたり、個人の方が持たれていたりと、
いわゆる「手を入れない方々」が持たれている。
つまり、あまりお金をかけたくないという方々が大半を占めているわけです。
厳選された立地パワーに加え、そこに手を加えて物件の競争力を高めることで、
我々が所有する意味がでてくるという戦略です。
エンジニアリング・マネジメントという発想で、つまり差別化ということですが、
三位一体マネジメント、取得と期中とエンジニアリング・マネジメントという、
トライアングルで物件に対峙していく、ここに我々独自の特徴があります。
豊岡:エンジニアリング・マネジメントにつきまして、もう少し詳しくご説明いただけますでしょうか。
水野:
エンジニアリング・マネジメントを構成する要素は三つありまして、
まず取得時ポリシーの一つである「ポテンシャル」活かした「収益力の増強」です。
ちょっと手を加える・・・、例えば、余剰容積率を活用して、デッドスペースに倉庫スペースや
トランクルームを創出する等、収益を生むポテンシャルがあるところに手を加えます。
また、コストですね。ピカピカのビルですと、なかなか手を加える余地がないわけですが、
コストダウンの余地は満載です。
たとえばESGも意識した照明のLED化や電力供給会社の切り替え、トイレ節水器の導入、
また管理スペックの最適化、など多岐に亘ります。
最後に、テナントの満足度を高めて「我々の物件のファンを作り退去リスクをミニマイズする」という
三つの戦略でエンジニアリング・マネジメントが構成されています。
敷金半額くんの採用やセレクトオフィスについては、三つ目のテナントの満足度を
高める施策の一環として採用しております。
豊岡:誰も手を付け切れてこなかったビルに対して、今までのノウハウをぶつけて、
収益性を高めるということですね。
水野:
そうですね。三位一体といいましたが、入口でポテンシャルの無い物件もあります。
取得部隊がどれだけ欲しいと思っていても、エンジニアリング・マネジメントの目線で
「将来的なポテンシャルが無い」という物件には投資をしない、という一種の抑止力になっています。
豊岡:ファンド等ですと、買ってからどうしようという話も聞きます。
水野:
上場リートの場合、ゴーイングコンサーンですから、めったなことでは売却しません。
中長期的な目線が必要です。
また、ポテンシャルの先食いは致しません。その発想はバブルに繋がりますし、「堅実」に反します。
これを言い続けて三年、ようやく評価が進んできたかな、と思っています。
豊岡:言い続けることで投資家の目線が変わってきたわけですね。
水野:
言い続けること、そして成果ですね。NOIも5期連続で積み上げることで2億近く積み上がってきています。
また分配金も右肩上がりで成長させていただいております。
豊岡:今後の中小ビルの需給についてはどうでしょうか。
水野:
先ほどお話させていただきました通り、中小規模のビルは供給も少なく、需給バランスは歴史的に締まっています。
来年以降の大量供給下においても、ほとんどが大規模ビルとなりますので、
中小ビルの需給バランスへの影響は限定的となりますね。
豊岡:先ほど1994年以降中小ビルは少ないとおっしゃられておりましたが、
今後は大規模ビルに変わっていくということでしょうか。
水野:
この2018年から2020年の大規模ビルの供給の特徴としては、スクラップアンドビルドです。
中小規模のビルは供給が少ないばかりか、減るわけです。
そこに大規模ビルが、賃料4万や5万円、6万円というビルが建っていくわけです。
我々がターゲットとしている賃料1.5万円のポートフォリオはまさに国宝的存在になると考えております。
豊岡:なるほど、中小ビルはさらに貴重になっていくわけですね。
水野:
従業員が29人以下の事業法人が全法人の94%くらいと、圧倒的なんですね。
そういった需給バランスに目を付けているわけです。
豊岡:それだけ29名以下の会社が多いわけですから、中小規模のビルで存在感を出し続けることで、
マーケット上での価値や成長予測が立てやすいということでしょうか。
水野:
そうですね。ただ、どのリートもそうですが、毎年1年ずつ年を取っていきます。
いま平均24年のポートフォリオが、10年後には34年になります。
どのリートも抱えている課題だと思いますが、今のストックの山が10年や20年たつと競争力が失われていきます。
40年以上になってきますと、流動性という意味で不動産の根源価値が損なわれるということもありますので、
物件の入れ替えは我々のミッションとなります。
ちょうど先月入れ替えを実施しておりますが、
入れ替えによるポートフォリオ競争力の維持・向上が重要となってきます。
またメインスポンサーである双日による建替え、再開発等も将来的には視野に入れていければと考えています。
豊岡:築年数も含めて、ビルの本来の潜在価値を見出して、適切な値段で購入し、
ビルのバリューアップをする、本来のあるべき姿をしているということですね。
水野:
おっしゃる通りです。バリューアップして価値を高め、投資家様への期待に応え、
タイムリーなタイミングで外へ出して、利益を配当させていただく、という流れです。
不動産の根源価値をしっかりと見極めて、三位一体のマネジメントで手を加えていくこと、これが大方針となります。サイクルの中で、売り時と買い時は真逆ですので、ここを見極めることも、我々の需要な役回りとなります。
豊岡:他社のリートとの違いはどのあたりにあるのでしょうか。
水野:
まず大手デベロッパーがやられているリートとは入口のところから全く違います。
大手の場合、受け皿としてのリートですので、取得というところで運用会社の力量はいらないわけです。
期中といっても、大手デベロッパーが造っているビルですので、既にコスト収益もコストも最適化されています。
また、我々と同じく、中小規模の不動産に同じく着目している企業はいくつかありますが、規模が違います。
我々は後から入ってきており、まだまだ流動性に欠けるところもございますので、先ずは3,000億に。
そして、4,000億、5,000億を目指していかなければならないと考えております。
豊岡:今後の戦略についてお教えください。
水野:
キャッチフレーズが「真面目に、地道に、堅実に」ということなので、奇を衒うような大きな野望はありません。
買える目線で買えるときに物件を買う。買ったものをしっかりとマネージしてバリューアップする。
競争力が失われる場面があったら手を入れ、または入れ替えを行う。
これを繰り返し繰り返しを行うことが、マーケットにおける確りとした存在感と評価に繋がるものと信じていますし、その結果として、資産規模も拡大していくと思います。
豊岡:不動産のことを熟知しているからこそ、不動産の大きな波に関係なく、地道に適切な値段で購入し、
バリューアップしていくことを繰り返していくわけですね。
水野:
リート事業は、鑑定価格と分配金という抑止力があるため、高値掴みができません。
常に目線が一定なため、波にのまれることは有りません。
NOI利回り4.5%という目線があります。買えない時は高いということになります。
豊岡:どんな時代がきても同じことを適切にすることでぶれないということですね。
水野:
ぶれようがありません。投資家様のビークルです。
「投資主価値」「分配金」という最大の抑止力が働いています。
豊岡:
真面目に地道に堅実に、「ぶれない視点」こそが双日リートアドバイザーズ、
また日本リート投資法人の強みということですね。
本日はありがとうございました。