クラフトバンク株式会社
コーポレート統括室 執行役員CFO 木村 幸夫氏
『敷金半額くん』は、資金調達の一環だと思っています。
建設会社としての内装仕上げ工事業だけでなく、建築業界のIT化を牽引しているクラフトバンク株式会社。
日本最大級の工事会社データベースを保有する受発注プラットフォーム「CraftBank(クラフトバンク)」を展開。
積み上げてきた実績と経験を武器に更なるステージへと向かう中、
オフィス移転の際に「敷金半額くん」を採用いただいた理由をお聞きした。
Q:御社の事業内容についてお聞かせいただけますか?
弊社は2000年に創業し、Creative事業として店舗やオフィスの企画・設計・施工業を行っています。
また5年ほど前から新規事業として工事の元請け会社と協力工事会社を繋げるマッチングプラットフォームサービス『クラフトバンク』を立ち上げ、そちらの拡大に取り組んでいます。
店舗やオフィスを作る際、弊社が元請の立場で協力会社に色々な工事を発注するのですが、職人や工事会社の方々が高齢化に伴い廃業されることも増え、今までお願いしていた工事会社に頼めず発注先がなかなか見つからない、という状況が増えてきました。
技術力がある工事会社と出会う場所が世の中になく、そういう場があれば自分たちが助かるな、また他の工事会社もそういった場があれば使ってくださるのではないかと考え、『クラフトバンク』を立ち上げました。
自分たちが欲しかったものを自分たちで作ったという、もともと本業である内装業から生まれたサービスです。
Q:そういったプラットフォームサービスはほかにもあるんでしょうか?
弊社以外にもありますが、本業が建設業の会社から提供されているサービスというのは珍しいのではと思っています。
また、マッチングだけではなく、弊社が建設業免許を持っていることを活かし、弊社が工事を請けて登録会社に個別に工事を発注する『クラフトバンク工事請負』というサービスも始めました。
発注側からしても、知らない工事会社がマッチングされて「あとは当事者で取引してください」だけでは発注しづらいこともあります。『クラフトバンク工事請負』なら「クラフトバンクに発注するので、クラフトバンクの方で工事の手配をお願いします」ということができますので、そこはクラフトバンクの特長、かつ差別化のポイントです。
弊社は社員の半分が職人や現場管理などを10年20年やってきたメンバーですので、工事会社とも同じ言葉で会話できますから。
Q:現在『クラフトバンク』には約2万社の工事会社さんが登録されているそうですが、どのように登録者数が増えているのでしょうか。
この業界は高齢化が進む一方、30代40代、あるいは20代の方々も起業されています。
弊社代表・大川も20歳でこの会社を立ち上げていますので、そういった若い経営者から利用が広がっています。
SNSやSEOなどデジタルマーケティングからの問い合わせ、また横の繋がりがある業界ですので「友人知人から聞いて登録した」というケースも結構ありますね。
Q:建設業界は「一人親方」という言葉もあるくらい、まだまだ職人の世界は小規模な構造という印象があります。
この業界は寡占化が全く進んでおらず、大手ゼネコンのシェアも建設業全体売上の数%という程度です。街中の工務店とか一人親方がたくさんいて何十兆というマーケットを構成しています。
だからこそ、色々な方が集まる弊社のマッチングプラットフォームが業界全体のお役に立てたら良いなと考えています。
Q:今後の展望をお伺いできますか?
現在『クラフトバンク』サービスには約2万社の会社様にご登録いただいていますが、単純に数を増やせば良いプラットフォームになるかというとそれだけではないかもしれないという仮説を持っています。
2万社という数は、首都圏であればかなりの数をカバーできている状態です。
まだ少ない業種・地域は補完していきますが、弊社としてはこの2万社をただマッチングするだけではなく、工事に不可欠な「差配」の自動化を目指したいと考えています。
私もこの会社に来て初めて知りましたが、この業界は工事が始まるまでの工程が非常に大変です。
オフィスを1つ作るにしても電気はどこに頼むか、壁はどこか、床は、家具は、それらはいつ入ってくるのか、と作業が30業種ぐらい入ります。もちろん工事には順番があり、まず床をやってくれる人、次に壁、次に電気…という風に、工事会社を順番に割当ててスケジュールを組まなくてはなりません。これを差配といいますが、この差配が大変で、現場が実際に動くまで非常に時間がかかります。
さらにオフィスなど屋内であれば工事のスケジュールもあまり変動ありませんが、屋外、例えばビルを建築するなどの場合、天候の影響で1週間遅れるとか、あるいは建築したものが台風で壊れて再度作業が戻ったりしてしまうこともあります。そうすると当然、連鎖的にスケジュールがずれてしまいますので、予定していた工事会社では対応できなくなり急きょ別の工事会社さんの手配が必要になる、ということがよく起こります。
なので、最終的なスケジュールに収めるためにどの会社にどの工事をお願いするのかというのが非常に大事になってきます。
弊社としては、各工事会社の技術や費用感、対応可能な領域などのデータベースがクラフトバンクに集積され、『クラフトバンク』を使えばこれまでお付き合いのない工事会社であっても安心して発注できるという状況を実現したいと考えています。
そのためには『クラフトバンク』の登録社数をただ増やしていくだけでなく、各社がどこまでできるのか、どの工種を、いくらで、何人で、という内容をより磨き込んでいく必要があります。
そして最終的には見積もりの自動化までできると良いですね。差配同様、見積もりにも膨大な時間がかかりますので。まだ時間はかかりますが、そこまで『クラフトバンク』で実現できると思っています。
Q:今回、オフィスを移転される理由をお聞かせください。
コロナ禍でリモートワークになったから、というのが非常に大きいです。
職人たちは現場に直接行きますし、設計のメンバー・データベース事業のメンバーもリモート対応が可能ですので、今はオフィスの中には社員の3分の1とか、多くても半分も出社していません。スペースの見直しを行った結果、今回の移転に至りました。
Q:今回、東京建物様が保有するビルにご入居されるにあたり、「敷金半額くん」をご利用いただきました。『敷金半額くん』を知ったきっかけを教えてください。
仲介会社さんからご紹介いただいて知りました。
オフィス移転の際の敷金って非常に大きいです。多額のキャッシュが固定化してしまうので流動化したいのですが、金融機関に依頼して流動化する、というほどの話でもないので、こういったサービスがあるのは非常に大きいですね。
年間保証料率5%というところに関しても、特にネガティブなイメージはなく、妥当だろうな、と感じました。
Q:預けずに済んだ敷金は、今後どのように活用されますか?
運転資金にあて、今後の事業の成長に使いたいと考えています。
『敷金半額くん』は、資金調達の一環だと思っています。多額のキャッシュが固定化されないということは、残ったキャッシュを使うことができます。資金計画表を見ながらその分の資金調達に時間と手間を使うぐらいなら、預けるはずだったお金を『敷金半額くん』で手元に残しておいた方が効率が良い、という考え方です。
それに対するコストとして年間保証料5%が高いか安いかは感じ方次第なのかもしれないですが、特にステージが若い企業ほど使った方が良いのではないかという気はします。
借入金利と比較すると高いと感じてしまいがちですが、事業を始めて間もないフェーズだとまだまだ借入ができないことも多いと思います。私どもは建設業という祖業が順調なので借入できていますが、普通のスタートアップではなかなか借入できません。
増資での調達だと投資家から求められる利回りはこれよりはるかに大きいので、それに比べたら有利ですよね。
10億円資金調達したとして、移転で敷金として3億円寝かせてその3億円に対しても大きなリターンを求められたら経営側としてはかなり厳しい。それを5%で調達できるという意味でも「資金調達の一環」という発想はあっても良いと思います。
確かに敷金は将来オフィスを退去する際に返ってくるお金ではありますが、それって何年後なの、という話ですよね。今使える資金をどう効率的に運用していくかという観点で判断することが大事だと思います。