普通賃貸借契約と定期建物賃貸借契約の違いとは

事務所(事業用)を賃借する時の契約形態

大きく分けて2種類。普通賃貸借契約定期建物賃貸借契約があります。
賃借人にとって分かりづらく、賃借人は賃貸人からきちんと説明を受け理解しないと、
事業計画に影響を与える等重大な事象になりかねません。

違いの大きなポイントは3つ
①期間満了時の更新
②中途解約
③賃料の増減

①期間満了時の更新について

賃借人が一番理解しておかなければならない内容です。

定期建物賃貸借:期間満了により、当然に終了します。
従来の賃貸借契約は「正当事由」がある場合でなければ、
賃貸人から契約の更新拒絶や解約の申入れができないこととされてきました。

これに対し契約で定めた期間が満了することにより、更新されることなく、
確定的に賃貸借が終了する建物賃貸借のことを定期建物賃貸借(平成12年施行)といいます。

賃貸人は期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、賃借人に契約が終了することを通知する必要があります。
再契約の特約をつけるケースがありますが、
基本的に賃貸人と賃借人が合意すれば再契約可能と記載されているケースがほとんどです。
“合意すれば”ですので賃貸人が強い立場です。

再契約の特約があるから更新ができるだろうと、誤った認識をしている賃借人も少なくありません。
賃貸人も賃借人も十分注意するべき点と考えます。

再契約について少し追記しますと、賃借人が再契約を希望する場合、
賃貸人が再契約を受け入れるかどうか判断する際の考え方として例を挙げます。

◆賃借人の業容や与信能力を確認
 確認した内容への問題の有無を検証し、問題があれば再契約しません。
◆賃貸マーケット(周辺賃料マーケットが上がっているのか下がっているのか、稼働率の状況等)を確認
 賃借人の業容や与信能力に問題なく、賃借人の既存条件が賃貸マーケットと比較して、
 それ以上の条件で賃借人既契約区画の引き合いもほとんどなければ、
 賃貸人は賃借人の再契約要望を第一優先に交渉していきます。

賃貸マーケットが良く、賃料が賃借人の既存条件より上がりそうであれば、
賃借人既契約区画の引き合い状況を確認し、
賃借人の既存条件と新賃借人候補の条件(業容や与信能力等含め)とを総合的に比較し、
賃借人の既存条件がそれ以上であれば第一優先に再契約交渉をしていきます。

普通賃貸借契約:賃貸人からの正当な事由が無い限り賃借人の契約は更新します。

②中途解約

定期建物賃貸借:特約があればその定めに従います。
契約の終了を確定的にする為の契約形態であり、中途解約は別途特約を定めることができます。

普通賃貸借契約:特約があればその定めに従います。
一般的に6ヶ月前(3ヶ月前や1年前等のケースもありますが6ヶ月のケースが多いです)に
賃借人より賃貸人に対して通知することで、中途解約が可能となります。

③賃料の増減

定期建物賃貸借:賃料増減をしない旨の特約が可能
賃貸人が賃料を固定させたい、安定させたい時に使う場合が多いです。
また、賃貸マーケットを予測してタイミングを図り期間を定めたりします。

賃貸人が戦略的に定期建物賃貸借を使うケースの考え方をざっくりとした例で記載します。

例1:2017年に定期建物賃貸借を開始する場合
ビルの供給が2018年、2019年と多く、今後の生産人口推移はネガティブなど市況は
2020年(オリンピック)までは上昇するだろう、そこからは下降するかもしれない、
と予測する賃貸人がいたとします。
その賃貸人は、今は比較的に賃料が高く良い条件で賃借人を集められるケースが多いので、
今の条件で2020年を越える期間ができるだけ長くするように
“長期で”定期建物賃貸借を締結する方が得策と考えます。

例2:2017年に定期建物賃貸借を開始する場合
ビルの供給が2018年、2019年は多く、人口移動等生産人口推移はポジティブ、増加分も消化できる等、
市況は2020年まで上昇、2020年以降さらに上昇するだろうと予測する賃貸人がいたとします。
その賃貸人は、今よりさらに賃料が高く良い条件をアグレッシブに狙い、
2~3年という“短期”の期間で定期建物賃貸借を締結し、
終期である2017年から2~3年後:2019年、2020年でさらなる高条件を獲得しにいこうと考えます。

普通賃貸借契約:賃料増減請求権が認められ、減額しない内容の特約は無効

定期建物賃貸借契約は施行されてから17年とそこそこ時間は経過していますが、
普通賃貸借契約が一般的である現状、まだ賃借人も全てが理解しているとは言えない状況。

前述で挙げた3つの大きなポイントを中心に定期建物賃貸借契約を
ざっくりとでも知っていただければ大きな誤認識にはつながらないと思います。

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