事業用(事務所)賃貸借契約上の連帯保証人
事業用(事務所)賃貸借契約での連帯保証人について
賃貸人:ビルオーナーと賃借人:エンド(テナント)が当事者として契約締結をしますが賃貸人からみて賃借人に信用(与信)がないと、賃貸人は賃借人が事業がうまくいかない等の理由で返済できなくなった場合に備えて、代わりに返済する義務を一緒に負ってもらう連帯保証人の擁立を求めてくる場合があります。
連帯保証人は非常に責任が重たい!
場合によっては連帯保証になることで自己破産等、連帯保証人の人生を狂わしかねません。よく連帯保証人と保証人を混同されていたり、誤った認識をされている場合がありますが、保証人と連帯保証人は、賃借人が返済できなくなった場合、代わりに返済する義務を負うという点では共通しますが、主に以下の3点で違いがあります。
1)ビルオーナーがいきなり連帯保証人に対して請求をしてきた場合
保証人であれば「まずは賃借人に請求してください」と主張することができますが(これを【催告の抗弁】といいます)連帯保証人はそのような主張をすることができません。賃料滞納が起きた時点で請求されることがあります。
2)賃借人が返済できる資力があるにもかかわらず返済を拒否した場合
保証人であれば賃借人に資力があることを理由に、ビルオーナーに対して賃借人の財産に強制執行をするように主張することができますが(これを【検索の抗弁】といいます)、連帯保証人はこのような主張をすることができず、賃借人に資力があってもビルオーナーに対して返済しなければりません。
3)(連帯)保証人が複数いる場合
保証人はその頭数で割った金額のみを返済すればよいのに対して、連帯保証人はすべての人が全額を返済しなければなりません(本来返済すべき額を超えて返済する必要があるわけではありませんが)。
ということからもわかるとおり、連帯保証人は簡単には引き受けるものではありません。
リスクはうまく回避すべき
事業用(事務所)を借りる際(入居時)に賃借人(法人・個人)から迷惑をかけないのでと依頼され、ついつい引き受けてしまうかもしれませんが、迷惑をかけないは連帯保証人に向けられたものではなく賃貸人に向けられたものになります。
また連帯保証人は入居時賃借人の状態は良い(儲かっている)と判断して引き受けているかもしれません。しかし、3年後、5年後どうなっているかわかりませんし、多くの場合入居時以降連帯保証した賃借人(法人・個人)がどういう状態になっているかウォッチさえしていなく、ほぼリスクしかありません。
事業用(事務所)ではありませんが、住宅ローンの連帯保証人は親族、配偶者という人的保証人を求ることから保証会社の保証を受けることにほとんど移行しています。ローンを借りる側で保証料が発生しますが連帯保証人を立てる側も立てられた側も個人ではなく保証会社であれば立てる側も気兼ねなく、立てられる側も安心で両者ハッピーです。
今後、事業用(事務所)でも民法改正(連帯保証人 限度額開示義務)等進んでくれば 連帯保証人=保証会社 の流れが基本になっていくでしょう。
また事業用(事務所)でよく連帯保証人でみられる賃借人が法人で、連帯保証人が賃借人である法人の社長の場合があります。これにつきましては残念ながら、“法人がダメであれば法人の社長もダメ”ですし、財産があったとしても移動してしまったりしている場合もあります(賃貸人がコストをかけて調査もありますが費用対効果的に悪い)。
最悪の場合、破産ということになりますが、法人社長が連帯保証人になっている場合、もちろん今後の会社がどのようになっていくかが分かります。その際に、財産を隠す(移動等)する準備をする時間が当然あります。計画的な自己破産も手段のひとつです。
今のビルオーナーは入居時に審査を厳しくする傾向にあります。
ただし賃貸時に審査しており「賃借人である法人が儲かっている」「連帯保証人である法人社長に資産(資産の流動性が低いものも多い)があるから大丈夫」という結果が出ていたとしても、期中ウォッチ(財務状況を確認したりしている)をしているビルオーナーは極少なのが現状です。
しかし、先ほども述べましたが財務状況は3年で一変していくのです。
よって、賃借人が法人で連帯保証人が賃借人である法人の社長という形ではほとんど意味がないと言えます。事業用(事務所)賃貸借契約上の連帯保証人についての考え方は、今後民法改正を機会に賃貸人、賃借人の中でシステム的(例えば連帯保証人=保証会社)に変わっていくだろうと思います。
債務問題で傷つくような連帯保証人がでないように。