民法改正


120年ぶりの民法改正のポイント

オフィス賃貸はどう変わるか


民法が変わる。オフィス賃貸にも大きな影響

2017年度国会衆参両院において民法改正が可決され、2020年4月1日に施行されることとなりました。改正の範囲は多岐にわたっていますが、主に債権(契約)に関する部分を中心に改定が行われます。ここでは、オフィスの賃貸への実務面での影響についてまとめていきます。

賃貸借契約の実務フローにも大きな影響があります。ビルオーナーや不動産関係者だけでなく、オフィスビルの借主側も理解していく必要性がある大きな変更となります。

民法改正の概要

・2017年5月26日に国会で可決、成立
・同年6月2日公布
2020年4月1日施行
・債権法の大幅な改正

なぜ改正するのか

1896年に民法改正が制定された後、債権関係の規定(契約等)については約120年間、部分的な見直しのみでした。

社会経済は大きく変化
⇒取引の複雑高度化、情報化社会、国際的なルールにあわせる必要性がありました

多数の判例や解釈論が実務に定着
⇒基本ルールとして明文化し、国民に分かりやすくする必要性がありました

 

オフィス賃貸時の連帯保証人・現行法と改正民法

現行法の問題点/オフィス賃貸時の連帯保証人

例外的な上場企業などを除き、賃貸オフィス物件を借りる際には多くの場合、連帯保証人を求められます。事業用として企業が借り受ける場合は、その企業の代表者が個人としてなる場合が多いようですが、中には別の方になってもらうように求められることもあります。

この連帯保証人の制度ですが、案外内容を知らないまま、連帯保証人となってしまう方も多くおられます。

賃貸借契約上の賃借人(テナント)の債務は賃料だけではない

賃貸時の連帯保証人が負う可能性のある債務
①延滞の賃料
②原状回復費
③各種違約金

 

保証金額に制限が無い(包括根保証の問題)

賃貸借契約の保証人の契約は根保証契約です。根保証とは保証金額に制限がない契約で、保証人が契約時には想定していなかった金額の代位弁済を求められることがあります。前項で記載したとおり、賃料未払い、原状回復費、違約金などの請求が行われます。保証人となると根保証人として、予想外の重い負担を強いられるものでした。

 

保証人と連帯保証人は異なる

①連帯保証人は債務者(賃借人 テナント)本人に請求してくれとは言えません。
(催告の抗弁権)
保証人(≠連帯)の場合、賃貸人から賃料を支払うように請求されても、「まずは賃借人に請求して下さい」というようにまずは請求を拒否することができます。連帯保証人の場合は、この賃借人に請求してくれというように抗弁できません。
請求をされれば債務を支払わなければならないという立場です。

②連帯保証人の場合は保証人同士で責任を分割できません。(分別の利益)
例えば、債務者(賃借人 テナント)の債務が300万円とします。保証人(≠連帯)が3人であったなら、100万円毎しか返済する義務がないのに対し、連帯保証人は、何人いたとしてもそれぞれが総額である300万円の返済支払い義務があります。
債権者(賃貸人 オーナー)は連帯保証人のうちのだれかに請求すればそのだれかはその支払い義務を負っていることになります。

③債務者(賃借人 テナント)の資産の存在を証明しても対抗できません。(検索の抗弁権)
債務者(賃借人 テナント)に資産があり、支払い能力がある事を証明すれば、その財産を差し押さえるように主張することが、保証人(≠連帯)ならできます。しかし、連帯保証人の場合は、証明しても対抗することができません。

連帯保証人は債務に関しては債務者(賃借人 テナント)と責任は同じということになります。

 

連帯保証人契約の解除はなかなか難しい

とても重く大きな金額の責任を負う連帯保証人です。やっぱり止めたい、連帯保証人契約を解除したいと考える方はいるでしょう。
でもこの連帯保証人の契約解除は、なかなか関係者合意が取れません。
債務者(賃借人 テナント)が債務を支払えない際の担保ですので、対象とした契約がなくなるまでは原則として解除することができません
法律に定められている契約の解除事由は、「法定解除」「約定解除」「合意解除」の3つですが、連帯保証人をやめたい際には、なかなかに合意が取れない関係者の合意解除しかありません。

 

改正民法はこうなる/オフィス賃貸時の連帯保証人

①敷金返還のルールが民法上で明確化された

敷金について、賃貸借契約が終了して明け渡しを受けたときに、賃貸人は、敷金から賃借人の債務を差し引いた額を賃貸借契約終了時に遅滞なく速やかに賃借人に返還しなければならないことが明確化されました。

②原状回復のルールが民法上で明確化された

賃借人は通常損耗(通常の使用によって生じた傷みや経年劣化)については原状回復義務を課されないことが明確化されました。

③連帯保証人についての極度額設定が義務化された

不動産賃貸借契約書に変更が必要になる要注意点です。
不動産賃貸借契約に個人の連帯保証人を付けるときは、極度額(連帯保証人の責任限度額)を定めて記載しなければならないことになりました。
「極度額を定めていない連帯保証契約は無効とされます。」

④賃借人の賃料支払状況など連帯保証人からの問い合わせに対する回答義務が賃貸人に課せられた

個人の連帯保証人から賃借人による家賃の支払状況について問い合わせを受けたときは、賃貸人は遅滞なく回答することが義務付けられました。 回答しないと、賃借人が家賃を滞納するなどした際に、連帯保証人への請求に支障が生じることも予想されます。

⑤個人第3者の連帯保証人への会社の「財務状況など」情報提供義務が賃借人に課せられた

事業用の賃貸については、賃借人から個人第3者の連帯保証人に賃借人の財産状況などを情報提供することが義務付けられました。
個人の第3者(当該事業の経営等を行っている者以外)が連帯保証人になることを検討する際に、当該法人・事業 賃借人にどの程度の財産があるかを把握する情報と機会を与えることで、連帯保証人になるかどうかについて十分な検討をさせようとするものです。 そして賃借人がこの情報提供を怠り、賃借人が連帯保証人に情報提供をしなかったことにより、連帯保証人が賃借人の財産状況等を誤解して連帯保証人になることを承諾した場合で、かつ賃貸人が賃借人が情報提供義務を果たしていないことについて知っていたり、あるいは知らないことに過失があった場合は、連帯保証人は連帯保証契約を取り消すことができるとされました。

参考 賃貸人から連帯保証人への情報提供が義務付けられた項目
項目1:賃借人の財産状況
項目2:賃借人の収支の状況
項目3:賃借人が賃貸借契約の他に負担している債務の有無並びにその額
項目4:賃借人が賃貸借契約の他に負担している債務がある場合、その支払状況
項目5:賃借人が賃貸人に保証金などの担保を提供するときはその事実および担保提供の内容

まとめ/オフィス賃貸時の連帯保証人

個人の連帯保証人が大きな負担であること、連帯保証人を辞めることは難しいことは変わりませんが、上記のように保証人保護のための民法改正であることが分かります。

とくに、根保証契約についてが大きな変更点となります。
改正前は、保証人は債務者の責任をいくらでも保証する契約でしたが、民法改正後は、保証する金額の上限を契約で定める必要性があります。
保証人はその範囲内で保証することになります(極度額の設定)

 

 

民法改正により不動産賃貸はどう変わるか

法人保証・保証会社の利用が増える

民法改正で、不動産賃貸において変更や対応が必要な5点を記載させていただきましたが、そのうち3つが保証に関わることであるから、法人保証・保証会社の利用が増えるのではないかといわれております。

連帯保証人をつけるのが難しくなっていく

理由1:
民法改正により個人の連帯保証人に極度額を設定することが必要になりますが、連帯保証人が極度額の金額に拒否反応を示し、連帯保証人をつけることが難しくなると思われます。

理由2:
民法改正により事業用の賃貸借契約では、賃借人は個人の連帯保証人に会社・事業の財産状況等の情報提供をすることが義務付けられましたが、賃借人がこれに拒否反応を示し、連帯保証人に情報提供することを避け連帯保証人の設定に難色を示すものと思われます。

連帯保証人を付帯する賃貸借契約においては連帯保証人が責任を負う極度額の記載・取り決めのない契約は無効とされることになりました。

参考:民法改正後の連帯保証条項の記載例
第 条(連帯保証)
丙(連帯保証人)は、甲(賃貸人)に対し、乙(賃借人)が本契約上負担する一切の債務を極度額●●●万円の範囲内で連帯して保証する。

極度額をどう定めるか

極度額設定については特に法律上のルールはなく、賃貸人と連帯保証人の間で合意した金額を設定することになります。

実際の極度額の設定は以下の点を検討のうえ、決めるのがよいでしょう。

極度額設定の注意点

(1)賃貸人からすると極度額は連帯保証人への請求限度額になりますので、多ければ多いほどよいという側面があります。
賃借人の破綻や 特に、悪質な賃借人の中には、即時退去せず(できず)、裁判所による判決をもって退去させなければならないケースもあります。
その場合、滞納発生から明け渡しまで半年から1年ちかい期間がかかることもあります。
その期間中の賃料を連帯保証人に請求できるようにしておくためには、極度額は「1年程度の賃料相当額程度」あれば、安心でしょう。
ただし、敷金を比較的小さめに設定している物件については賃料のほかに原状回復費用も連帯保証人に請求することも考えておく必要がありますので、1年程度の賃料相当額に原状回復費用の見込み額を加算した額を敷金預かりと連帯保証人への極度額の合算目安と考えておくべきでしょう。 加えて、この目安には違約金の類は含まれていないので違約金の設定で損害額の回収を図るなどの契約趣旨があるのであればこの金額も積算する必要があります。

(2)一方で、書面に記載され明示されることとなる極度額が高額になると、連帯保証人の候補が、連帯保証に応じない(あるいは応じられない)ということもあるでしょう。

これらの2つの点を考慮して連帯保証人の極度額を設定することになります。

上記(1)(2)は 極度額としての金額設定について、一方で賃貸人の権利である 占有期間相応の未収賃料+原状回復費+違約金 を目安に設定すればよいという賃貸人の立場に沿った考え方がある反面で連帯保証人の立場では巨額に上る金額を保証しなければならないのは許諾したくないという2者の矛盾を生じることともなります。 従前は、極度額の設定が義務化されていなかったので、連帯保証人は 代位支払いについてリスクの存在をさほどには意識してこなかったようですが、月額賃料の10倍以上の極度額を目の前にするとリスク顕在を意識することになります。

 

専門の保証会社の利用

連帯保証人への適正な極度額の設定は賃貸人としては当然なことですが、過大な金額として連帯保証人となることを辞退されてしまうことが懸念されます。法人専門の保証会社の弊社としては、敷金+保証支払限度額(極度額)= 12ヶ月~18ヶ月程度に設定されることを推奨し、賃借人法人の財務内容を確認のうえ、保証をお引き受けしております。

法人への一般的な入居審査・条件と法人保証

オフィス入居の際に、賃貸人は賃借人の入居審査を行っています。一般的な信用情報会社である帝国データーバンクやTSRなどの当該企業様への評点で、賃貸借契約の詳細を決定することが一般的となっています。評点が低い場合は、敷金や賃料の条件の引き上げや、連帯保証人を要求して対応しています。

しかし、今回の民法改正により、連帯保証人の設定が厳格化することとなり、賃貸人側も賃借人側も対応が求められていくこととなります。

弊社では、連帯保証人の付帯を必要としない法人評価のシステムにより保証を提供しており、法人保証専業のパイオニアとして皆様のお役に立てる点があるかと思います。
是非、お問い合わせ・ご指名をいただければ幸いです。